朝のドラめもん

2016/08/31

お題「だいたいイエレン議長講演ネタの続きと一部雑談」

最初いつもの冒頭マクラのつもりだったのがついうっかり血圧が上昇して次の小見出しに化けてしまいましたのでこちらでも置いておきますね。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016083000565&g=pol
「証券会社勤務はやばいやつ」=所管閣僚の麻生氏が放言
(2016/08/30-16:06)

・・・・・・・・・・・アチャー。


○賃金上昇をという話だがだったら金融政策は最初からいらんかったんや!!!ではないのかね

ふむふむ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-29/OCIH6B6K50YG01
山本地方創生相:デフレ脱却へ2%以上の賃金上昇を−インタビュー
2016年8月29日 10:00 JST

『山本氏は日本銀行が目指す2%の物価安定目標の達成には「賃金がきちんと2%以上、上がるという状況が確保されていないと難しい」と指摘。』(上記URL先より)


ところで・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/tk0646951-interview-ldp-yamamoto-idJPTYE93204D20130403?sp=true
Business | 2013年 04月 3日 15:54 JST
インタビュー:2%達成にはマネタリーベース拡大を=自民・山本氏

『「抜本的にマネタリーベースを増やす施策を打ち出してもらわなければならない」と指摘。「早く160兆円、170兆円にもっていけば、半年後くらいには、ブレークイーブン・インフレ率は2%に達する」とした。』(上記URL先より)


ついでに・・・・・・・・
http://diamond.jp/articles/-/30804?page=6
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー
「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」
【第15回】 2013年1月20日

『よく「名目賃金が上がらないとダメ」と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるからです。それだとインフレ政策の意味がなくなってしまい、むしろこれ以上物価が上昇しないよう、止める必要が出て来る。こうしたことは、あまり理解されていないように思います。』(上記URL先より)


それではもんだいです。各発言が整合的になるような理論と、実際にその理論通りに結果が出るのかについて300字以内で論考してください(10点)。


・・・・・てかね、置物MB直線一気理論に関しましては、そらまあ実際にやったの始めてみたいなもんですから「やってみて思ったほどの効果が出てなくて当初大口叩いた通りに行きませんでしたねえ」となって「総括検証」をするのは何せやった事のない施策だからそういう事だってあるかも知れないのですけど、もともとの人たちが「実際の政策を行いながら徐々に考えてやっていく」としながら行っている政策を捕まえて「金融政策だけで可能」「いつも他のせいにして結果を出していない」って大口叩いて石持て追い出した後に座っている人たちなのですから、自分たちが行っていた口汚い日銀への誹謗と同じものを受けるべきなんじゃないですかねえとしか思えん訳ですけど。

と、マクラのつもりがこの有様ですが、今回の総括検証に関しても「効果があった」という話のオンパレードになるのは間違いを認めると死んじゃう病に罹患されている皆様なのでそう出てくると思うのですが、何をどう言いつくろっても結局のところ「2年を念頭に出来るだけ早期に」と大口叩いて2年よりも早い位の勢いで達成する筈の物価安定目標が全然達成できていないという事実を踏まえた「効果」の分析をして頂きたいものであります。


○イエレン議長講演ネタの続き

昨日台風のため(かどうかはさておき)途中だったので続きをば。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20160826a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20160826a.pdf

Chair Janet L. Yellen
At "Designing Resilient Monetary Policy Frameworks for the Future,"
a symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming
August 26, 2016
The Federal Reserve's Monetary Policy Toolkit: Past, Present, and Future


・フォワードガイダンスと資産買入が効くという話をしながらも副作用にも言及

昨日ネタにしたところまでの続きになりまして、ネタにした部分までのお話は「中立金利が低下しているという試算が多い」→「今般の正常化の後の短期金利水準は過去の平均的な水準より低い」→「それって次に景気後退が起きた時に容易にゼロ金利制約に引っ掛かるのではないか」というお話が続いていて、それに対して対応可能という話をしている所まででした。でもってその具体的な説明の所から参ります。

『Figure 2 in your handout illustrates this point. It shows simulated paths for interest rates, the unemployment rate, and inflation under three different monetary policy responses--the aggressive rule in the absence of the zero lower bound constraint, the constrained aggressive rule, and the constrained aggressive rule combined with $2 trillion in asset purchases and guidance that the federal funds rate will depart from the rule by staying lower for longer.21』

『As the red dashed line shows, the federal funds rate would fall far below zero if policy were unconstrained, thereby causing long-term interest rates to fall sharply.i But despite the lower bound, asset purchases and forward guidance can push long-term interest rates even lower on average than in the unconstrained case (especially when adjusted for inflation) by reducing term premiums and increasing the downward pressure on the expected average value of future short-term interest rates. Thus, the use of such tools could result in even better outcomes for unemployment and inflation on average.』

でもって図表2ってのが
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen-figure2-20160826.png

なんですけれども、政策金利を名目ゼロから下にできないという状況においては、フォワードガイダンス政策とAPPによって金利水準全体への押し下げ効果を出すことによって、図表のように効果が出て来ますよウヘヘヘヘというお話をしておりまして、ホンマカイナ感はだいぶ漂う怪しげな話になっておりますが、これはまあ「今のツールキットが効くんじゃ」という話をすることによって、別の政策論議みたいなのに釘を差しているという事もあるのかなあとか思ったりしましたよ。

『Of course, this analysis could be too optimistic.』

そらそうだ。

『For one, the FRB/US simulations may overstate the effectiveness of forward guidance and asset purchases, particularly in an environment where long-term interest rates are also likely to be unusually low.22 In addition, policymakers could have less ability to cut short-term interest rates in the future than the simulations assume. By some calculations, the real neutral rate is currently close to zero, and it could remain at this low level if we were to continue to see slow productivity growth and high global saving.23 If so, then the average level of the nominal federal funds rate down the road might turn out to be only 2 percent, implying that asset purchases and forward guidance might have to be pushed to extremes to compensate.24』

つーことで、リセッションの影響に加えて、生産性などの低下による構造的な問題が加わっている中で、一部の試算では現在の中立金利がゼロで、将来においても2%程度にしかならん、というような計算もあったりしまして、そういうような状況下で景気後退時にゼロ金利制約に対応した適正なガイダンスと資産買入を行う事になった場合には、きわめてエクストリームな買入を実施しないと行けなくなる可能性もあります。という問題提起に加えまして・・・・・・・・・・


『Moreover, relying too heavily on these nontraditional tools could have unintended consequences. For example, if future policymakers responded to a severe recession by announcing their intention to keep the federal funds rate near zero for a very long time after the economy had substantially recovered and followed through on that guidance, then they might inadvertently encourage excessive risk-taking and so undermine financial stability.』

(;∀;)イイハナシダナー

さらなる問題として、これらの非伝統的政策に過大に依存することによって期待していない結果を生む、と非伝統的政策の副作用にも言及しているのが、副作用の話を何もしないでマイナス金利政策の自画自賛のオンパレードを行うという置物師匠の生霊が乗り移ったのではないかという黒田総裁の講演と比較致しますと何という普通の話をしているのでしょう!!!!!つーかまあ黒田総裁の方がおかしくて、あんな話をジャクソンホールでさせて恥ずかしくないのかね日銀スタッフの皆さんと申し上げておきますけど。

でまあそういう悪態は兎も角として、思いっきり「if future policymakers responded to a severe recession by announcing their intention to keep the federal funds rate near zero for a very long time after the economy had substantially recovered and followed through on that guidance, then they might inadvertently encourage excessive risk-taking and so undermine financial stability」とか日本にイヤミを言っているつもりはなくて、普通の話をしている&低金利政策の長期化を織り込みまくっている市場に対するイヤミを言っているだけだと思うのですが、日銀に対してもいい感じで砲撃成分があるなあと思うのでした。


・フォワードガイダンス政策の有効性を過信しているようなイメージはややある

『Finally, the simulation analysis certainly overstates the FOMC's current ability to respond to a recession, given that there is little scope to cut the federal funds rate at the moment. But that does not mean that the Federal Reserve would be unable to provide appreciable accommodation should the ongoing expansion falter in the near term.』

現時点で経済がコケた時にはどうなるのという話ですが。

『In addition to taking the federal funds rate back down to nearly zero, the FOMC could resume asset purchases and announce its intention to keep the federal funds rate at this level until conditions had improved markedly--although with long-term interest rates already quite low, the net stimulus that would result might be somewhat reduced.』

従来の政策を復活させればヨロシという話をしていてこれは従来の説明通り。

『Despite these caveats, I expect that forward guidance and asset purchases will remain important components of the Fed's policy toolkit.』

フォワードガイダンスが今後も重要なツールキットになるでしょうとの話だが、ただまあアタクシ思いますに、前回のガイダンスってのは1回目が期限付き、2回目は「労働市場の著しい改善」という定性的な文言となっていましたが、この2回目の定性的な文言が成功したのって初回で「オープンエンド」を強調したというのもあって、じゃあ次回に同じことやったらどうなるのか、という点についてですが、前回の場合は導入当初はそれこそ結構長い期間の緩和という期待になったのですが、割とあっさり味でテーパリングトークになってきた、という実績になりましたので、次回に同じようなガイダンス文言を使った時に「前回のことからすると実はこのガイダンス文言ってそんなに強力なコミットメントではないのでは」みたいなイメージが出来てしまっている可能性もある話。

つまりですな、本来的にはガイダンス政策で「余計に」政策を効かせに行こうとするのであれば、「本来政策として見た場合に止めるべき時点以上まで緩和政策を継続することをコミットする」というのが一番効くのですが、結局のところFEDもそれをやっている訳ではない以上、このガイダンス政策って市場の先行き経済物価見通しに効き方が依存するところがあるというふうに思うのですよ。でもってまあ市場の人間がそういうのもなんですけど、所詮市場のプライスアクションってバックワードルッキングな所が多々あって、本当におまいらフォワードルッキングで動いているのかと小一時間問い詰めたくなるような所があるとあたしゃ思ってまして(違うというのでたらすいません)、そういう点で言えばガイダンス文言使った政策ってどこかの閾値に達すると時間軸が急速に短期化してしまうという欠点があって、そこを無理に引っ張ろうとすると今度は異時点間のなんちゃらみたいな問題が拡大してくると思うので、ガイダンスを有効なツールと言っているイエレンさんって1回上手く行ったように見える結果を過大評価している節があるような気がしますし、FEDも同じ認識だとちょっとそこは将来の罠かもしれないなあとか思うのでありました。

『In addition, it is critical that the Federal Reserve and other supervisory agencies continue to do all they can to ensure a strong and resilient financial system.』

ほう。

『That said, these tools are not a panacea, and future policymakers could find that they are not adequate to deal with deep and prolonged economic downturns. For these reasons, policymakers and society more broadly may want to explore additional options for helping to foster a strong economy.』

金融政策だけではなくてそもそも経済の構造をレジリアントにしないといけませんよねと。


・他の政策ツールを導入する場合は・・・・・・・・・・・

『On the monetary policy side, future policymakers might choose to consider some additional tools that have been employed by other central banks, though adding them to our toolkit would require a very careful weighing of costs and benefits and, in some cases, could require legislation.』

欧州でやっているからと言って副作用をよく検討しないで勢いでマイナス金利を突っ込んだ日銀に対する嫌味で言っている・・・・・・・わけではありませんかそうですかw

『For example, future policymakers may wish to explore the possibility of purchasing a broader range of assets. Beyond that, some observers have suggested raising the FOMC's 2 percent inflation objective or implementing policy through alternative monetary policy frameworks, such as price-level or nominal GDP targeting.』

より幅広い資産を買えとか、2%の物価目標ではなくてプライスレベルターゲットにしろ(この話についてはかつてブランシャールが言及した時に当時副議長のイエレンさんが「お話としてはあり得るがそんなことをしたら前年比のインフレが安定しなくなって、結果としてインフレ期待が不安定化するから机上の空論」と思いっきりdisっていたのですけどね)とか、名目GDP目標にしろとかいう議論もありますが・・・・・・・・

『I should stress, however, that the FOMC is not actively considering these additional tools and policy frameworks, although they are important subjects for research.』

お勉強の課題としてはどうぞどうぞだけど別にワシら考えとらんのじゃがのうというあっさり味の否定となっております。

あと、イエレンの子飼い(かどうか知らんが)みたいなSF連銀のウィリアムス総裁がインフレ目標の引き上げみたいなのをアイデアの一つに並べていたとかいうのがあった気がしますが(まだ詳細見てない)、このネタも「時間軸の強化」というメリットに対して「インフレ期待の不安定化」に加えて「物価目標の達成を遠くすることによる中央銀行に対する信認の低下」というデメリットの方が大きいように思えます。

名目GDP目標もそもそも中央銀行が直接操作できる所から遠すぎる訳で、これまた「時間軸の強化」のメリットに対して「中銀の信認低下のデメリット」の方が大きいと思います(そういや日本では「中央銀行による賃金上昇ターゲット」とかもはやお前それは中央銀行の仕事じゃないだろというのを堂々提唱する学者がいて頭がクラクラする。トレンドインフレを見る上で賃金上昇動向が重要なのでその数値を参照しながら金融政策の調整を行う、というのなら話は分かるが目標にするのは馬鹿としか言いようがない)。


・金融政策を超えて

『Beyond monetary policy, fiscal policy has traditionally played an important role in dealing with severe economic downturns.』

そらそうよ。

『A wide range of possible fiscal policy tools and approaches could enhance the cyclical stability of the economy.25 For example, steps could be taken to increase the effectiveness of the automatic stabilizers, and some economists have proposed that greater fiscal support could be usefully provided to state and local governments during recessions.』

『As always, it would be important to ensure that any fiscal policy changes did not compromise long-run fiscal sustainability.』

ということで金融政策だけではなく財政や構造政策が重要という当たり前っちゃあ当たり前だしこの点も通常から話をしているから新しい話ではないけど、まあ打ち込んできたのは結構なお話。

『Finally, and most ambitiously, as a society we should explore ways to raise productivity growth. Stronger productivity growth would tend to raise the average level of interest rates and therefore would provide the Federal Reserve with greater scope to ease monetary policy in the event of a recession. But more importantly, stronger productivity growth would enhance Americans' living standards. Though outside the narrow field of monetary policy, many possibilities in this arena are worth considering, including improving our educational system and investing more in worker training; promoting capital investment and research spending, both private and public; and looking for ways to reduce regulatory burdens while protecting important economic, financial, and social goals.』

でもって最後にとしてそもそも経済の成長力を高めていくことが大事ということで、まあ金融政策は万能薬ではない、という話は以前よりしていましたが、金融政策に過度に依存していたように見えるステージの時よりも、こういう所への言及もちゃんと扱われるようになったように思えます。


・最後のまとめは普通

最後の『Conclusion』をとりあえず引用。

『Although fiscal policies and structural reforms can play an important role in strengthening the U.S. economy, my primary message today is that I expect monetary policy will continue to play a vital part in promoting a stable and healthy economy.』

でも金融政策が重要とかお洒落というかそらまあ場所がジャクソンホールですからね。

『New policy tools, which helped the Federal Reserve respond to the financial crisis and Great Recession, are likely to remain useful in dealing with future downturns. Additional tools may be needed and will be the subject of research and debate. But even if average interest rates remain lower than in the past, I believe that monetary policy will, under most conditions, be able to respond effectively.』

ちなみに途中すっ飛ばした非伝統的政策ツールキットの説明はまあ一応整理っちゃあ整理にはなっているような気もするという感じです。


○その他少々メモ

・布野審議委員金懇だぜヒャッハー!!!!

http://www.boj.or.jp/announcements/press/index.htm/
今後の講演・挨拶等の予定

日程 講演者等 講演内容等
2016年 8月31日 布野審議委員 新潟県金融経済懇談会における挨拶


ということで正座して待機です。


・10月に早速ドル特則のおかわりですよ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160824a.pdf
成長基盤強化支援資金供給(米ドル特則・第17期)にかかる
新規貸付の追加実施スケジュール

って先週出てたので今更ですが、日銀最近の各種施策が悉く評判の悪い中で唯一どこからも文句の飛んでこない成長基盤ドル特則強化ですよ!!!!!!

なお7日オファーです。


・CPIェ・・・・・・・・・・・

これも先週のネタですが、
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpipre.pdf

総合(除く生鮮食品・エネルギー): 6月0.7→7月0.5
刈込平均値: 6月0.2→7月0.1
上昇品目比率−下落品目比率: 6月34.2→7月29.6

ってどうみてもアカンやつやという感じで、総括検証とか言ってああでもないこうでもない検討しているうちに戦局が一段と悪化しているというのが実にあばばばばーですな。


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