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朝鮮ミサイル対応の大失態
野田政府・発射発表大幅遅れ
               米軍事戦略に踊る無様な姿     2012年4月16日付
 
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「ミサイル」発射問題を巡り、野田政府は沖縄を中心に迎撃ミサイルやイージス艦を配備、また全国の自治体にも厳戒態勢をとらせて大騒動を繰り広げた。だが発射しても住民に危険を知らせる全国瞬時警報システム(Jアラート)は機能せず、なんの対応もできないお粗末な姿を暴露した。北朝鮮は「人工衛星打上げに失敗した」と表明したが、日本政府のミサイル対応の大失敗も暴露した。それは今度の沖縄県への自衛隊配備が、国民の安全を守るためなどではなく、ミサイル対応にかこつけて、対中国戦争をにらんで在日米軍を後方に下げ、沖縄や南西諸島を最前線にして日本に代理戦争をさせようと企むアメリカの軍事戦略に踊らされているからにほかならない。
 
 国民の安全守る体制はなし

 日本政府は現在、「ミサイル発射は失敗したが威信回復のため核実験の可能性がある」と主張し国連安全保障理事会で北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難する議長声明を採択するよう要求している。アメリカは朝鮮に対する24万dの食糧支援とりやめを表明するとともに追加制裁の検討に着手。同時にキャンベル国務次官補が来日し、「アジアの周辺国が、さらなる挑発行為に対し、はっきりとしたメッセージを北朝鮮に伝える固い決意があると認識している」と日本をたきつけ、在日米軍再編を促進する協議に入っている。しかし中国やロシア、アラブ諸国などは「冷静に対応すべきだ」という対応。
 日本側の対応について韓国の政府関係者は「加熱のあまりか、正確でない日本発の報道もあり困惑している」と評し、台湾のメディアも「国民は冷静だが日本の政府は騒ぎすぎ」と報じている。日本政府だけがアメリカの意のままに踊らされ、大騒ぎする姿は国際的にも異常視されている。

 自衛隊や自治体総動員 09年と違い沖縄重視

 この間、北朝鮮の「ミサイル発射」をめぐって日本中で大騒ぎが演じられた。先月16日、北朝鮮が「衛星打上げ」を発表すると、野田政府は自衛隊に「迎撃」準備命令を発令。3月30日に政府の安全保障会議で「ミサイル迎撃」を決定し、田中防衛相が「破壊措置命令」を発令した。それにもとづき、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦「きりしま」「ちょうかい」の2隻を沖縄周辺の東シナ海に展開。日本海に「みょうこう」を配置した。イージス艦には照射距離1000`を超すレーダーSPY1で警戒させた。「前回の無防備を教訓にする」といってイージス艦一隻にF15戦斗機二機を常時警護にあたらせ、空中戦の体制までとった。
 さらに「撃ち漏らしや、破片を迎撃する」として、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を沖縄の自衛隊基地(空自那覇基地、同知念分屯基地)や石垣島、宮古島に初めて配備。首都圏(陸自習志野演習場、空自市ケ谷基地、陸自朝霞訓練場)もふくめ七カ所に配備した。石垣島、宮古島、与那国島、竹富町、多良間村には陸自の災害派遣部隊である救援隊約700人やヘリコプター10機(100人)も配置した。石垣島は市街地と1本の橋で結ばれた埋立地を10日以上も封鎖してPAC3を配備し、警戒にあたった450人の自衛隊員には実弾入りの銃を携行させた。市街地を実弾をこめた自衛隊員が警備するという、かつてないものものしい体制がとられた。佐渡島(新潟)、下甑島(鹿児島)、余座岳(沖縄)にある空自の警戒管制レーダーEPS5も「ミサイル追尾」でフル稼働した。
 09年のロケット発射時は、イージス艦は日本海に2隻、太平洋に1隻配置し、PAC3は秋田や岩手など東北に配備した。だが今回は米軍が中東とアジアの両方の戦争で勝利する二正面作戦を転換し、対中国戦争重視の米軍再編計画に乗り出すなかで変化している。自衛隊も「防衛大綱」で全国の装備や兵員を日本のどこへでも集中配備するための「動的防衛力整備」を具体化している。こうしたなかで「朝鮮のミサイル迎撃!」を隠れ蓑にして、中国海軍が太平洋に出ていく玄関口へイージス艦やF15やPAC3や陸海空自衛隊を本格配備し、対中国戦争の最前線基地として矢面に立たせる準備を進行させている。
 全国の自治体、とりわけ沖縄県下は情報収集や伝達体制整備で大動員がかけられ大わらわとなった。
 沖縄では3日、政府が沖縄県庁で全市町村を対象に説明会を開催。5日には沖縄県内の41市町村を対象に「ミサイル」発射を伝えるJアラートの試験放送を実施した。Jアラートは07年から津波警報などの送信に使われたが、弾道ミサイル発射情報に使うのは初。内閣官房や気象庁から発信された武力攻撃情報や気象情報が人工衛星を経由し1〜2秒後には各自治体に届き、自動的に防災行政無線などで住民に危険を知らせるものだ。
 だが試験で内閣官房が情報を流しても、那覇、浦添、糸満、沖縄、南城の各市、嘉手納町、東村など各地で音声が出ないなどのトラブルが発生。Jアラート受信体制がない自治体もふくめ、トラブル対処、新体制構築などに追われた。5日後の再試験では那覇市や宮古島でまたもトラブルが発生し恥の上塗りとなった。
 産業にも甚大な影響を及ぼした。旅行会社のジャンボツアーズ(那覇市)はミサイル騒ぎ以後沖縄や石垣島への旅行が40件もキャンセルされる事態に直面。香川県の中学五校、岡山県の中学三校が沖縄への修学旅行を延期したほか、修学旅行の行き先を石垣島から札幌に変更する高校も出た。石垣市観光協会が「これ以上騒がないでほしい。政府やマスコミは責任をとれるのか」と声を上げる事態になった。日航や全日空が飛行ルートを変更したり、海運会社が運休予定を公表する動きとなった。
 こうしたなか沖縄県教育委員会は、ロケット発射後は児童生徒を建物内に避難させるよう各校に通達。西表島がある竹富町は町内の全21小中学校に発射予告期間は遠足や体育授業など校外の活動をしないように指示し、住民の行動が規制された。沖縄県庁や那覇市など7市町村の役所には計約20人の自衛隊員が24時間体制で常駐・監視する異常事態となった。沖縄県民にとって現実的な脅威は朝鮮のロケットより米軍の方である。
 全国の自治体にも国はJアラートの作動確認試験をしたがトラブルが続いた。第1回の試験では福岡県が消防庁からの試験実施連絡を見落とし、県内60市町村に事前連絡をせず、福岡市など多くの自治体が不参加となった。北九州市のように参加はしたが、国のデータが受信できない自治体も多数出た。5日後の再試験も、やっぱり受信できない自治体はなくならない。12日には栃木県が「ミサイルが発射された」と約2600人に「誤報」を流す羽目になった。九州の自治体でも「本当にミサイルが撃ち込まれれば、瞬時に逃げられるわけでもないし、各自治体の担当者がミサイルを撃ち落とせるわけでもない」との声が上がった。
 そして新聞、テレビなどマスメディアが総動員態勢で連日「高まる緊張!」「世襲祝賀のための発射」と大騒ぎ。NHKやラジオ番組も「落下物がある可能性は極めて低く、普段通りの生活を」などといいながら執拗に「ミサイル発射」のニュースを繰り返した。

 発射されると機能不全 警報も鳴らせず

 ところがこれだけの騒ぎをやって、実際にミサイルが発射されると、09年のミサイル騒動と同様になにも対応できなかった。朝鮮側の発表した衛星発射時間は13日の午前7時38分で、韓国国防省は8時に「発射」を正式発表した。
 だが野田政府が全国に流した第一報は発射から約25分後(8時3分)で政府緊急情報メール「エムネット」で、「発射を確認していない」という内容だった。それはミサイルが順調なら日本上空をはるか前に通過しフィリピン沖に落下したあとの時間。田中防衛相が「飛翔体が発射された」と正式に会見したのは約40分後の8時23分。「迎撃」はおろか状況把握すらできない状態だった。
 ロケット発射情報は、米軍の偵察機、警戒衛星、イージス艦などの情報に頼って判断することになっており、日本が独自に情報を収集して独自に判断して迎撃をするのではない。発射情報の流れは、米軍の早期警戒衛星→北米航空宇宙防衛司令部(コロラド州)→米太平洋軍(ハワイ)→在日米軍司令部→防衛省・自衛隊→首相官邸となっており、アメリカの指示で日本が戦争に突入させられる体制になっている。
 今回北朝鮮が発射したのはテポドン2(射程距離6000`で米本土には届かない)といわれ、日本を通らずフィリピン沖に向けられたものだった。もし日本を狙うのであれば旧来からの「ノドン」(射程距離1300`)で十分射程に収まり性能も保障されている。したがってこの大陸間弾道弾は米朝間の問題である。日本が大騒ぎして攻撃体制をとるのは、日本が米本土防衛の盾になる行為にほかならない。
 もし北朝鮮が大陸間弾道弾を開発し、日本本土とともにアメリカ本土を射程距離に収めたとしても戦力が圧倒的に不利なのは明白だ。北朝鮮が一発でも日本やアメリカにミサイルを撃ち込めば、即座に報復のミサイルで蜂の巣にされる関係だからである。北朝鮮は在日、在韓米軍、グアムへ配備された米軍部隊などの核ミサイル包囲網に置かれている。したがって北朝鮮が核ミサイルを開発しても、自分から攻撃するなら自滅しかない。それはアメリカ側が核攻撃したら報復する、報復されたくなかったら核攻撃をするなという防御的な意味しか持ちえない。
 今回出動したミサイル防衛(MD)システムはアメリカに押しつけられ、03年に70億j(約7000億円)もかけて配備したシステム。それは敵側の発射した弾頭をミサイルで撃ち落とすものだが「報復攻撃の阻止」は一方的な攻撃を可能にするもので、実際は攻撃的な意図に貫かれている。
 今回の動向でも、アメリカの軍事衛星でいつ空中で爆発したとか、20個に分解したとか、逐一監視。偵察衛星で何をしているか常にのぞいている関係でいつでも先制攻撃できる態勢となっている。

 米国の為対中戦争の盾 狂気の売国奴政治

 このミサイル騒動とあわせて日米政府は「核兵器を搭載できる長距離弾道ミサイル」の打上げだと叫び、「発射失敗」が発表された後も「脅威はミサイルに限らない。北朝鮮には他の手段もある」(米国防省リトル報道官)と主張し監視活動を強化している。アメリカの意図は他国に核は持たせないがアメリカだけは持つという核独占である。ちなみにプルトニウムなどの保有量から算出された核弾頭可能な数は、現在アメリカが4万7738発、日本が5612発、北朝鮮が3・75発である。広島、長崎への原爆投下もアメリカしか原爆を持たず、報復の心配がないもとで実行された。核独占が核兵器使用の危険性を強めるのである。
 野田政府が演じた大騒動は、アメリカ本土防衛の盾となって、北朝鮮、さらにはその背後に控える中国への攻撃を保障するための大演習を、自衛隊、警察、自治体、メディアなどを総動員して実施し、先島諸島に自衛隊を本格展開する前例をつくったことになる。それは米軍が安全な後方に引き下がるため日本国民の税金でグアムなどへの移転費を出してやり、アメリカ本土を守るための兵器をせっせと買い込んで日本の国土に配備し、自衛隊を代理戦争の前面に立たせ、日本がアメリカを狙うミサイルの標的になることを買って出る、あまりに馬鹿げた姿となっている。
 このなかで在日米軍再編が進行。沖縄だけでなく岩国基地では厚木基地からの空母艦載機部隊移転、在沖海兵隊移転計画と並行して原子力空母も接岸できる巨大軍港化、愛宕山への米軍住宅建設計画が動いている。朝鮮半島に近い下関でも、人工島整備とそれに連結する巨大道路群が整備され山口県全体、広島や九州と結んだ軍事都市作りの姿があらわれている。
 日本はかつての戦争で、朝鮮、中国への侵略を拡大し、中国人民の抗日戦争によってうち負かされた。中国侵略の行き詰まりから南進策すなわち米英仏蘭の植民地奪取の方向へ進み、これらの列強との戦争に突入。アメリカは日本の対米参戦を日本占領の大チャンスとして飛び上がって喜んだ。
 そして「ジャップはサルか虫けらであり、殺せば殺すほど貢献する」など叫び、残酷な皆殺し作戦を実行した。
 アメリカは南方の戦線で餓死に追い込み、沖縄戦や全国の大空襲をやり、最後は広島、長崎に原爆を投下し、320万人が無惨に殺された。アメリカは日本を単独占領し、売国的な独占資本を目下の同盟者にして、植民地的な隷属下においてきた。
 戦後67年たった現在、福島原発事故の収拾のめどもないまま原発再稼働に走ったり、東日本大震災をグローバル資本のビジネスチャンスにしたり、TPPで全面自由化して日本の富を差し出すとともに対中国包囲網に加担したり、アメリカの支配の下で日本社会はさんざんに破壊されようとしている。その日本支配の根幹が軍事支配であり、アメリカのために対中国戦争の盾になり、原水爆戦争の火の海に日本をたたき込むというのが、今度のミサイル対応の騒動である。野田民主党政府の狂気の売国奴政治である。

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