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預金は山口銀行のものか?
引き出し頼むと警察に通報
                 犯罪者扱いの本末転倒      2015年11月13日付

 山口銀行にお金を預けていた預金者が、口座解約その他の入り用でみずから引き出しに行ったところ、オレオレ詐欺にひっかかったのではないかとさんざん疑われ、あげくのはてに警察を呼ばれて、まるで犯罪人のように事情聴取を受けるということが頻繁に起こり、当事者たちを憤慨させている。銀行に預けていた自分の金を、本人が自由に引き出すことができないのである。1回の引き出し限度額が設定され、まとまったお金を引き出そうとすると窓口で疑いの眼差しを向けられ、山口銀行の資産を減らそうとする悪い奴のような扱いで通報されるのだからたまらない。山口銀行が預かっている預金は預金者のものなのか? それとも山口銀行のものなのか? すべての預金者にとって他人事では済まない出来事が起こっている。
 
 「預金者保護」のはずが……  統制強まり解約もできぬ実態

 下関市に住むAさん(50代)は、山銀に口座をつくって30年以上利用してきた。最近になって複数あった金融機関の預金を整理しようと思い、山銀の口座を解約することにした。9日、預金していた180万円を引き出そうと山銀唐戸支店に行った。窓口で「本人確認が必要」といわれたので免許証を出したが、「180万円は高額なので一度には引き出せない」といわれた。「では、いくらまでなら引き出せるのか?」と聞くと、「50、60万円ぐらいなら」という。Aさんは仕方なくその日は60万円を引き出し、翌日の仕事の休み時間に追加で60万円を引き出し、3日目の休み時間に最後の60万円を引き出そうとした。
 すると3日目、窓口の女性の上司があらわれ、「これほどの額の金をこれだけの短期間で引き出すのは異常だ。何に使うのか?」と聞くので、Aさんが「プライバシーにかかわることをあれこれ詮索されたくない」と断ると、「最近はオレオレ詐欺の被害が増えているので」という。Aさんが「オレオレ詐欺の被害が増えているのは知っているしそれをなくすために協力は惜しまない。しかし今日は、本人が来て、本人の口座から金を引き出して自分のために使いたいといっているのに、なぜオレオレ詐欺なのか?」と問うと、「本人だといった人で犯罪につながった例が最近もある」といって聞かない。そして「どうしても下ろしたいというのなら、警察を呼ぶから、警察の前で釈明してほしい」というのでAさんは驚き、「ずっと山銀を利用してきたのに、なぜ犯罪人のような扱いを受けないといけないのか。話にならない!」といって席を蹴って帰った。
 しかし帰ってからもどうも腑に落ちない。なぜ、自分のカネを山口銀行が「僕のカネ」といわんばかりの態度で拘束するのか。そして警察に通報されなければならないのか。仮に警察に通報されるのであれば、いったい何がいけないのか聞いてみようと思った。さらに預金者を警察に突き出す銀行というのが本当にあるのか見てみようと思った。
 翌日、Aさんは再び山銀唐戸支店を訪れ、「口座を解約したい。どうしても警察を呼ぶというのなら呼んでくれ」と伝えた。Aさんが「警察を呼ぶというのは唐戸支店長の方針なのか?」と聞くと、昨日の上司が「いいえ、本店の頭取(福田浩一)命令です」という。そしてしばらくすると、パトカーで巡回している地域第1課の2人の制服警官が本当にやってきた。さらに下関署刑事課の雑賀刑事はじめ4人の刑事がやってきて警察手帳を見せ、1階のフロアーの隅で他の客や銀行員が注目するなか、Aさんは6人の警官にとり囲まれることになった。「自分の預金を下ろしに来ただけなのに、どうしてこんな目にあわないといけないのか」「もう二度と山銀には金を預けるまい」と心の中で思いながら、昨日から腑に落ちなかった疑問について是非ぶつけてみようと思った。預金者を悪者にする銀行にも驚いたが、警察が真顔で6人もやってきたのだから、これはいったい何が起きるのかその目で確かめなければと思った。

 人の財産覗き見る警察

 刑事の説明を聞いてわかったことは、「最近山口県、下関市では振り込め詐欺が多い。毎日のように事件が起こっている」というので、100万〜200万円以上の高額出金があった場合、高齢者であろうが30代であろうが、山銀から警察に通報が行き、警察が事情を聞くシステムになっていること、それは1日に何件もある場合があり、「月にしても30件は下らないのではないか」(市内全域ではさらに多いと想像される)という。
 そして、警察が来たといって恐怖を感じたり、「自分の金を下ろしに来ただけだ」といって怒り出す人が非常に多いということだった。
 とくに高齢者の場合、「高額出金は車を買うため」と説明しても、警察は「高齢者は節約をするのが普通で、あまり新車を買わない」と見なしてそれだけでは信用せず、ディーラーはどこか、車種は何かなど根掘り葉掘り聞き出すし、不審な点があれば後日、家族に聞き込みも入れる。「銀行を解約し郵便局に預金する」と考えている高齢者がいたとして、銀行の窓口で「郵便局に」とはいえないので目的を口ごもると、郵便局に預金するまで警察がついていく場合もあるという。山口銀行の資産が目減りするのを防ぐために警察がその度に出動しているのかと驚かせたが、「オレオレ詐欺」を防ぐために「警察からお願いしている面もあるんですよ」と何度もくり返していた。
 Aさんが一連の顛末を社会に公表する旨を伝えるとたちまち態度が変わり、残りの60万円を持ってきて解約手続きは無事に終わった。
 ちなみに同じ下関市内の西中国信用金庫に同じ場合の対応を聞いてみると、「200万円までの現金の引き渡しなら、通帳と印鑑を窓口に持って来られればOK。200万円以上になると、それに加えて免許証などで本人確認をさせてもらうことが法律で決められている。高齢者の場合に限り、オレオレ詐欺の心配があるので、いくつかの質問をさせてもらって本人の意志の確認をする場合がある。警察からも“声かけをしっかりしてください”といわれるので。それでもお客様から“自分の金なのに…”と怒られることがある」とのべていた。警察への通報などめったにないし、ましてや高齢者以外ではありえないという対応であった。客が預金を引き出そうとすると警察に通報して引き出すことを躊躇させるような対応はどの銀行もやっていることではなく、「預金者のカネは僕たちのもの」と見なす体質が山口銀行の場合、とくに強いことを伺わせている。引き出し限度額も西中国信用金庫と山口銀行では、60万円と200万円で3倍以上もの開きがある。
 なお、法律では2013年4月1日から施行された犯罪収益移転防止法により、200万円をこえる取引については厳格な顧客管理をおこなうことを義務付けている。西中国信用金庫の対応が全国の金融機関と比べても標準的なもののようだ。山口銀行がなぜ「限度額60万円」ルールを適用しているのかはわかっていない。法解釈が違うのか、山口銀行ルールというべき独特の設定があるようなのだ。そして、すぐに警察に通報することも、今回の件でよくわかったのだった。
 預金者でありながら警察にまで突き出され、他の客の前でさらし者にされて、「山口銀行には二度と預けるもんか!」「山口銀行のお金ではなく、私の預金だ」と思ったAさんであった。また実感したことは、預金者の所有物という感覚が乏しく、「僕たちのお金」と思っているのではないか? という疑問であった。「僕たちのお金」を引き出しにくる預金者は悪い預金者なので警察に通報する。ーーこの躊躇のない思考回路にも驚かされたのだった。
 日頃から数百万円程度の預金者など侮蔑しきっている世界観が、警察に突き出しても構わぬという態度に表れていることを強く感じた。支店長クラスが頭を下げる億単位の預金者なら、果たして警察に通報するだろうか? と。

 国の借金に使い果たされ

 自分の貯金した財産を自由に引き出すことができない。それを聞くと、高齢者なら戦後直後の預金封鎖を思い出す人も多い。かつての戦争で、政府は国家財政を湯水のように軍事予算に注ぎ込み、三菱などの財閥を肥え太らせた。そして戦争に負けると昭和21年2月17日、政府は突如として預金封鎖を発表し、すべての銀行を封鎖して預金の引き出しをできなくさせるとともに、新円への切り替えを実施。新円を各世帯にわずかずつ配っただけで、旧紙幣での預金はすべてチャラにしてしまった。それは戦争で膨大に積み上がった政府の借金を帳消しにするためだった。
 現在、政府の借金は日本のGDPの2倍を上回る1000兆円をこえ、かつての戦時国家さながらの財政状況に直面している。そのうえ安倍政府は異次元の金融緩和によってさらに借金財政の道へとのめり込んでいる。2008年のリーマン・ショックの後、各国は金融緩和すなわち市場へのマネー投入によって目先の危機を乗りこえ、国家に負債を肩代わりさせることによって延命をはかってきた。実体経済への投資先が乏しいなかでマネーだけが水ぶくれのように市場に溢れ、さらなる大破綻を招き寄せている。紙幣に信用がなくなり、金持ちは現物資産の獲得に走って金や絵画、ダイヤモンドなどの価格が跳ねあがり、国家破綻になった場合、貧乏人だけが預金を失って逃げ遅れるという事態が現実味を帯びている。預金封鎖も過去のことではすまされない情勢になってきたといえる。
 そのなかで、国民が金融機関に預けていると思っている「自分のお金」であるが、金融機関は「国民の金融資産」といわれるその預金で国債を買いあさり、1000兆円をこえる国の借金は実は国民の預金によって担保されているというか、使い果たしているのである。そして「日本国債は国内で消化されているので外国よりは安全」などといっている。一方では金融破綻に脅えて預金の国家統制を強め、安倍政府が導入するマイナンバー制度では、個人の職歴や所得、預貯金など国民一人一人の個人情報を結びつけ、警察や公安機関がそれを利用することも認めた。
 「オレオレ詐欺」のとりしまりを名目にして金融資産の移動に制限をかけ、終いには預金者を警察に突き出すまでになった。預金者のカネは「銀行のもの」という以上に、「国民の金融資産は為政者のもの」と見なして、海外に行ってはODAを得意気になってばらまいたり、デタラメな借金財政で使い果たし、一方では原資となる預金について、預金者による引き出しを制限する事態となっている。
 預金はいったい誰のものか? を考えさせている。



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