ツキノワグマを知ろう

 農林業被害を防ぐには、まず被害を起こしている動物について知ることが最も重要であると、東中国クマ集会では考えています。相手を知れば、対策を立てられるでしょうし、有効な防除策もそこから生まれると思います。クマについての情報は、この10年ほどで、各地の研究者や研究グループの活動によって大幅に増えています。ここでは、クマ、特に本州に生息するツキノワグマについての、一般的な知識をご紹介します。


○体重

  ♂=50kg〜100kg
  ♀=40kg〜80kg
○体長(鼻先から尾の先までの直線
  1.1〜1.3メートルぐらい
○体高(足先から肩高)
  50〜60cm
○爪  
樹皮を剥いだりする強力な爪を持っています。
また、手・足の裏は柔らかな肉球があります。


○月の輪模様
 ツキノワグマの名前の由来となっているように、ツキノワグマには胸のところに白い三日月模様を持っていますが、少なからず三日月模様のない個体もおり、「みなぐろ」と呼ばれたりします。

実物大ツキノワグマパネルと成人男性(身長170cm)との比較

○ツキノワグマが住みやすい環境は、落葉広葉樹林です。
 落葉広葉樹林は、クマにとっての重要な食べ物を1年を通じて供給するだけの実りをもたらしてくれます。ヤマブドウ、キイチゴ、ミズナラ等、秋には冬眠に備えて堅果類であるドングリの実を大量に食べます。

○中国山地のツキノワグマの行動
 行動域はその生息環境の質によって多少変動します。東中国山地のツキノワグマの場合の行動圏は約40〜50平方キロですが、中には70平方キロといった大きい行動域を持つものもいます。



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オス 冬眠
行動範囲が広がる(活動期)
交尾期 脂肪蓄積
冬眠
メス 冬眠
妊娠・出産・授乳
行動圏が広がる(活動期)
交尾期 脂肪蓄積
冬眠
○クマの春,夏,秋,冬
 冬眠明けはメスよりオスの方が早く、3月下旬から4月上旬に冬眠穴から出てきます。一方メスの場合、とりわけ冬眠中に出産した母グマは、小グマが十分に動けるようになってから冬眠穴から出てくるためにオスより半月ほど遅くなります。いずれも、冬眠中に消耗した体力を交尾期までに回復させるため、春から初夏は植物や昆虫などの採食に時間を費やします。ツキノワグマは基本的に単独生活を送っているため、6月から7月の交尾期にはオスがメスを求めて活発に動き回ります。秋は冬眠に備えてドングリなどの堅果類やヤマブドウやマタタビといった果実を大量に食べ、体脂肪を蓄えた後、4〜5月間の冬眠に入ります。

○クマは植物食に偏った雑食性。
 クマは肉食類に分類されているため肉食のイメージが強い動物ですが、機会的に肉が利用できるとき意外はあまり食べません(最近では防鹿網にかかり死亡したシカを食べるなどの報告があります)。動物質としてよく利用するのが、アリやハチなどの昆虫類です。どんな季節でもその時期にたくさんあるもの、春なら山菜に代表される草本類、夏ならイチゴ類の液果類、秋にはドングリなどの堅果類というようにむしろ植物食が中心です。その証拠にクマ類の歯は肉を引き裂くための「裂肉歯」があまり発達していません。ところが、シカなどの草食動物で発達している物をすりつぶすために用いられる平たい「大臼歯」(奥歯)が他の食肉類よりも発達しています。このことからクマは進化の過程で肉食から植物食へ適応してきたことがわかります。
○季節的に変動する食べ物
 山の実りがツキノワグマの食べ物であり、季節によって食べるものが変わってきます。

 春:タケノコ、せり科、ブナの新芽
 夏:キイチゴ、ヤマグワ、サクラ、サルナシ、などの液果類。アリやハチなどの昆虫類。サワガニ。
 秋:ドングリ、クルミなどの堅果類、魚類。

○クマの変わった繁殖生理
 クマは、「着床遅延」という変わった繁殖生理を持っています。着床遅延とは、受精卵がすぐには着床せず、交尾期とは異なった時期に着床することを言います。クマの場合11月頃までに脂肪を蓄えられたかどうかで着床、つまり妊娠できるるかどうかが決まると言われています。
 出産は1月頃で、1〜3頭のとても小さな子供(300g〜400g)を出産し、冬眠明けまでに子の体重は10倍ほどになります。
 メスグマは冬眠中に妊娠、出産、授乳のすべてを行うため、冬眠中に多くのエネルギーが必要になります。冬眠前までに自分が生き残れるエネルギー量と、妊娠から哺育までのエネルギーを蓄えることが出来たメスだけが妊娠できるような仕組みが進化したのだと考えられています。しかし、クマの繁殖生理についてはわからないことが多く残されています。
○冬眠

 クマの仲間は冬眠をします(ホッキョクグマは例外。ただし、妊娠したホッキョクグマのメスは冬眠をします。)。冬眠とは、体温を下げ、代謝を外気温とおなじくらい(4℃)まで落とし、一種の仮死状態になってエネルギーの消耗を防ぐことを言います。しかし、クマの場合は体温が通常の体温(37℃)から3℃ほど下がるだけで、眠りについています。体温が高いため、ちょっとした邪魔が入ればさめることがあります。コウモリやシマリスなど周期的に目覚める種では、冬眠中に蓄えていた食物を食べたり水を飲んだり、排泄などを行いますが、クマは冬眠中に水や食物をとらないうえ、排泄・排尿を一切しません。メスは冬眠中に妊娠から哺育までを行い、オスは冬眠中から精子形成など繁殖の準備を行うので、生理的にはある意味活性状態にるといえます。そのような違いからクマの場合は、冬眠とは呼ばず、冬ごもりと呼ばれたりします。なぜこのような冬ごもりを行うことが出来るのかは、まだわかっていません。
 
 
クマの冬眠穴

○クマは臆病
   クマは本来、人間がそばによることを嫌います。そのため、人間がクマの生息地に入る場合は、ラジオ・クマ除け鈴などを身に付けて音を立て、人間の存在をクマに知らせることが事故を避ける上で重要です。
 クマの事故で最も怖いのは「鉢合わせ」です。クマは臆病ですが、人間と突然鉢合わせになりその距離が短ければクマは防御として相手を襲うことになります。動物にはそれぞれの種で、これ以上距離がつまれば攻撃行動に移るという限界距離があります。クマもその距離内にいきなり人間が入っていることに気付き、人間も同様にそのときに気付いたとしたらクマも人間もパニックに陥り、クマは攻撃行動をとらざるおえません。そんな時に不幸な事故は起こります。クマは、人間を殺せるだけの殺傷能力を持った猛獣です。できる限り、クマと出会わないように気を付けるためにも、クマのことを知ることがたいせつです。
 ただ、昨今人を怖がらないクマが出てきているとの話もあります。これは、人間と野生動物との付き合い方が昔と大分違ってきたことが原因ではないかと考えられています。今一度、野生動物との付き合い方を見直す時期にきているのではないでしょうか。
 
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