感情と理屈のすれ違い

No.207 『感情と理屈のすれ違い』

ある共働き夫婦の夕食時での会話です。
妻は、勤め先のある同僚が仕事をよくサボるので、いつも自分が尻ぬぐいをさせられているという不満を夫に話しました。
夫は、「役割分担をきっちり決めて、よけいな仕事まで抱え込まないようにしたほうがよい」「改善されない場合は、上司に相談したほうがよい」などと冷静にアドバイスをしました。

妻は、口をとがらせて黙り込んでしまいました。ただ自分の大変さを判ってほしかっただけなのに、「君のやり方が間違っている」と言われたような気がして、かえって不満を募らせてしまったのです。
夫は、相談を受けたから、同じ勤め人としてアドバイスをしただけなのに、何が気に入らないんだと、これまたふてくされてしまいました。

このような男女の気持ちの行き違いは、よくあることです。
一般的な傾向としてですが、女性は、他人と感情を共有することを重要視します。対して男性は、筋道立ててものごとを考えようとします。
男性は、まず話すことを頭の中で整理してから話しますが、女性は、話しながら考える傾向にあるようです。

女性に話し好きな人が多いのも、このせいです。
女性は、他人とおしゃべりをし、共感してもらえることで満足します。同じ話題を共有し、一体感をえることに意味があるのです。
男性には、建設的でないただのおしゃべりは、無駄にしか思えません。男性にとって会話とは、何らかの進展がなければ意味がないのです。

男性は、悩みを抱えたり、落ち込んだりしたとき、黙ってじっくり解決方法を考えようとするものです。そういうときに、女性が善意のつもりで、あれこれ関係のない話をして気を紛らわせてあげようとしても、男性には逆にうっとうしく感じられるでしょう。
一時的に気を紛らわせても、根本的な解決にはならないというわけです。
男性の考え方と女性の考え方、どちらも正しく、どちらも同じくらい重要です。互いに認め合う努力をしなければなりません。

男性は、人間は理論通りに動くコンピュータのようなものではないということを理解すべきでしょう。
問題が発生したとき、その原因を解明することは、二度と同じ問題を起こさないためには重要です。
しかし、通りを歩いていて、血を流して倒れている人を見つけたときに、その人を介抱しようともせず、あれこれ原因を追及しようとする人がいたら、その人はあまりに非情です。
車にはねられたのか、誰かに殴られたのか、つまずいて転んだのか、そんなことを詮索するよりも、人間としてまずすべきことは、「大丈夫ですか」と声をかけ、救急車を呼んであげることです。
(↓ つづく)

女性は、対症療法ばかりでは問題の解決にはならないということを理解すべきでしょう。
不満を誰かに聞いてもらえば、そのときは気分はすっきりします。しかし、根本的に問題を解決しなければ、いつまでも同じことの繰り返しです。
頻繁な偏頭痛に悩まされているとき、そのたびに頭痛薬で痛みを止めていても、病気は治りません。
頭痛薬でごまかしているうちに、病状はどんどん悪化しているかもしれないのです。きちんと病院で精密検査を受けて、原因を明らかにし、治療をするべきなのです。

人は、幸せを求めて生きています。「なぜ幸せになりたいのか」を理屈で説明しろと言われても、なかなか難しいものです。
理屈であれこれ説明するよりも、「それが楽しいから」ということだけで充分ではないでしょうか。人は理屈のために生きているのではないのです。
快いことを求め、なるべく苦痛を避けようとするのは、人間の当然の心理です。
人間の行動は、感情にはじまり感情に終わるといってもよいでしょう。「そうしたいから」という欲望で行動を起こし、「うれしい」という結果をえて満足します。

自分の感情は大切にすべきですが、感情ばかりにとらわれて身動きがとれなくなってしまってもいけません。
「悔しい」「怖い」「悲しい」などという感情がおさまらないときは、自分の置かれた状況をそのような形容詞で表すのではなく、「こういう事実があった」「こういう点が間違っている」「自分はこうすべきである」と、事実を理屈で考えることによって、解決の道筋が見えてくるようになります。

感情と理屈は、車の両輪のようなもので、どちらが欠けてもいけません。
感情ばかりにとらわれていては前には進めないし、理屈ばかりこねくり回していては心の貧しい人間となってしまいます。
他人に対して腹が立っても、冷静に相手の言い分を聞いてみる。
自分が理屈では正しいと思っても、相手の気持ちに共感する余裕をもつ。
互いが感情と理屈のバランスをたもつよう努力すれば、人間関係はうまくいくのではないでしょうか。

(文・たかたまさひろ)
No.206 『禁止されたとき、意志が試される』 No.208 『劣等感をどう克服するか』
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