カオス理論

カオス理論とは何か?
ようするに、
「あまりに複雑になっちゃうと、未来を予測できません」
ということだ。

たとえば、「明日の天気」とか
「ヒラヒラと落ちる木の葉の動き」とかの自然現象について、
カオス理論では、「複雑だから絶対に未来を予測できません」と述べている。

普通は「ええ〜?そんなことないでしょ」と思うかもしれない。

「どんな自然現象でも、結局は、
 単純で機械的な物理法則からできているんだから、
 どんなに複雑になっても、
 『がんばれば』ちゃんと未来を予測できるんじゃないの?」

と考えるのが人情だ。

でも、カオス理論は、「がんばっても無理!」と言う。

まずは、複雑なシステム(複雑系)について理解しよう。
単純な機械をたくさん組み合わせて、どんどん複雑にしていくと、
一体どうなるのか?
そのシステムは、
「初期値をちょっと変えただけで、まったく違った結果を生み出す」
という性質を持つようになる。(初期値鋭敏性)

たとえば、ここに、「完璧な天気予報システム」があったとする。
風の動きから、気圧、温度など、天気に関係するあらゆる現象を
完璧に計算するコンピュータがあったとする。
その計算式は、本当に完璧なもので、
自然の物理現象を完全に再現したコンピュータなのだから、
このコンピュータで計算した天気予報は100%当たるに決まっている。

でもだ。
どんなに完全に物理現象を再現したコンピュータでも、
原理的には計算するためには
必ず最初に初期値を入れてやらないとならない。
たとえば、「ある時刻の東京の気温が30 ℃である」などだ。
そういう初期状態を決めてやらないと、何も計算できない。

そこで、実際に気温を測って、初期値として入れてみる。
30℃とか。
そうしたら、コンピュータは完璧な計算をして、
「1週間後の東京は晴れ」だという結果になった。
じゃあ、今度は、ちょっとだけ、初期値を変えてみる。
30.000000001℃とか。
そんな微妙な違いなんて、どうでもいいと思うかもしれない。
でも、それで計算すると、
今度は「1週間後の東京は雨」という結果になってしまうのだ。

ちょっとでも、初期値を変えると、まったく違った結果が出てしまう。
それが初期値鋭敏性だ!
よく、たとえ話として、
「リオデジャネイロで蝶が羽ばたくと、数週間後にテキサスで竜巻が起こる」
などと言われるが、まさに蝶の羽ばたきぐらいの条件の違いで、
まったく違った結果がでるのだ。

じゃあ、「初期値を完璧にしてやれば、正確な予測ができるのでしょう」
と言われると、
まったくそのとおりなのだが、その前に
「人間の観測は必ず誤差を含み、決して正確にはできない」
という事情が出てくる。

そう、人間は、完璧な観測ができないのだ。
人間は、「目の前の棒が何メートルなのか」すら言うことができない。
だって、棒を拡大して、どんどん正確に測っていっても、
「2.030432083840293820482038420830(以下まだまだ続く)......メートル」
と無限に観測が続くことになり、どんなにがんばって測ろうとも、原理的に
「オッケー!完璧に測りました!」という終わりはないのだ。

その「完璧に測れない、ほんのちょっとした誤差」によって、
1週間後の東京が「晴れ」になったり、「雨」になったりと……
そのシステム(複雑系)の結果が変わってしまうのだ。

だから、
「どんな完璧な天気予報システムを持っていても、
 やっぱり未来は予測できません」
という結論になるのである。

「人間は、たとえ物理現象を完全に解明したとしても、
 初期値を完全に観測できないので、決して未来を予測できません」

このカオス理論の結論は、

「今、研究している現象について、どんどん法則性を解明していけば、
 いつかは、この現象を完全に予測できるようになるはずだ」

と思っていた、当時の科学者たちに大きな衝撃を与えた。
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