樹木医の独り言07

しもやけ


 今シーズンは暖冬だと言われています。
確かに日中の温度は、3月並ですが朝夕の冷え込みはそんなに例年と
変わるようには思えません。

 マツの葉についた霜が朝日を浴びて輝く中、マツの剪定は手の感覚が
なくなってしまいます。はーはー吐息で指先を温めながら剪定を行います。
私は、基本的にマツの剪定をするときの手袋は軍手の親指と人差し指、中指の先を
切り取ったものを使います。
葉の状態、樹脂の出方などの情報を直接自分の肌からのものとして集めたいからです。
ついでに書くと軍手は、綿100%のものが優しくフィットするので好んで使います。

 足は、地下足袋を使用します。
木の登るとき軽いし、足の裏の感覚を大切にできるからです。
そして何よりハゼを止めると、さあ、仕事だ!と気持ちが引き締まります。
しかし、地下足袋は足が冷えます。
私は、5本指の靴下を履きますが綿100%のものの上に混毛のものをもう一枚
重ねて履いています。
5本指の靴下は、それぞれの指が独自に機能してくれているような感じが楽しいです。
けれども早朝は足の指の感覚がなくなってしまいます。

 そのような日が数日続くと知らないうちに足音もたてずやってくるのです。
しもやけが。
私、今現在、右足中指と薬指、左足薬指が見事に赤くふっくら腫れています。
現代はしもやけを経験したことのない人も多くいらっしゃるのではないかと思います。
私は、血圧が低めのせいなのか、毎年きっちり彼らの洗礼を受けています。
 しもやけの怖いところは痒いのです。
暖かいところに入ると足がむずむずしてきます。
なぜ怖いのか?
車の運転をしているとむずむずしてくるのです。
そうなると、とにかく痒い。
足を車の壁にぶつけてみたり赤信号で足で足を蹴飛ばしてみたり。
携帯電話などより数段注意力を奪われます。
しもやけになった人は運転するべからず。という法律がなくてよかった。
もっとも、それらを認識した上で安全運転を心がけていますのでご心配なく。

 医学が発達した現代、治療すればいいじゃないか。と思われるでしょう。
いろいろやってみました。薬剤、マッサージ・・・。
私にとってはどれも効果を得ることはできませんでした。
しかし、方法がないわけではありません。
1週間ほど寒いところに身を置かないでいると治ります。
残念ながら仕事柄そういうわけにはいきません。
サクラが咲く頃まで耐えるしかないようです。
しかし、その頃にはしもやけと入れ替わりで花粉症が・・・。
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樹木医 古城富士夫

サクラガサイタ

 開花予想が間違っていても、彼らは今年もきれいに咲き誇ってくれました。
8分咲きもきれいですが、風に花びらが舞うサクラもとても美しいですね。
引力や風との共同作業だからそのように感じるのでしょうか。

 天候にも恵まれ多くの方がお花見を楽しまれたことと思います。
その素敵なお花見、サクラが勝手に咲いてくれているわけではありません。
多くの人間の協力とある程度の経費がかかってこそ、美しい花を咲かせてくれているのです。

 サクラの木には、他の樹木に比べると毛虫がつきやすい傾向があります。
当然そのままにしておけば、葉っぱは食べられ放題、そうなると美しい花を咲かせることは
困難です。
もっともそれ以前に近所の方から駆除の依頼があって農薬の散布を行う、ということになるでしょう。
当然それには経費が伴います。
 サクラの名所といわれるところで自治体の意識が高いところでは、剪定や、土壌改良、施肥
などの管理も行われています。
ちゃんとした管理ができていれば、サクラの寿命も延びるからです。

 サクラは、花の時期は多くの人の関心を集めますがそれ以外の時に関心を寄せる人は
樹木医以外にはあまりいないでしょう。
しかし、桜並木の近所にお住まいの方は、秋にはサクラの葉が次々とおうちに舞い込んで
お掃除が大変です。
そういった方々の協力もあってこそ、美しいお花見が楽しめるわけです。
桜並木は、街路樹である場合も多く街路樹としての役割も果たしてくれているわけです。
街路樹としての役割は、以前も書きましたが、
緑陰、防音、防塵、車の進入阻止、空気の浄化、美しい景観など、直接は感じられないけれども
どれも私たちの生活にとってなくてはならないものです。

 サクラの花を楽しむ時には、花の咲いていない360日の部分に少しでも
思いを馳せてやればサクラもきっと喜ぶに違いないでしょう。

 サクラ以外の街路樹も落葉を毛嫌いするあまり、本来果たしてくれている
役割に気がつかず、邪魔者のように扱われているお話も多く耳にします。
落葉樹に限らず樹木が落葉するのが当たり前。
その落葉に対してどのように対応していくか、と考えるのが本筋で
落葉がなくなればいいのに、と考えるのは自分勝手でムシのいい話です。
 身の回りが便利になればなるほど、物事を受け入れるということが
どんどん下手になっているようです。

 彼らの存在意義を理解し共に生きているという意識を持つことができれば
サクラの花もよりいっそう美しく見えることでしょう。
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シダレアカマツ

 シダレアカマツというアカマツの品種があります。
アカマツの枝垂れる性質を持ったものです。
 おそらくアカマツの枝垂れる性質を持ったものを選んで接ぎ木によって
増やしたものだと思います。
ということは、現在あるシダレアカマツの元の木は1本だったのでしょうか?
私は、そうではないと考えます。
なぜなら幹肌の色、樹皮の剥がれ具合で個体差が見られるからです。
鮮やかな朱色の幹肌をしたものと、少しくすんだ朱色のものがあるからです。
樹皮も簡単にぽろぽろと剥がれ落ちるものと剥がれにくいものとがあります。
もちろん庭園で鑑賞するのには、幹肌の朱色が美しく、樹皮が簡単に剥がれ落ちる個体が
向いています。
 同じような環境下で数多くあるアカマツの中で数本そのような個体があったのかも
しれませんし、全く別の場所で同時期に確認されたものなのかもしれません。
現在では、植木の産地と呼ばれるところではどこでも栽培してます。
そのうち一般的になるかもしれません。
ただ今のところはある程度の太さで樹形の美しいものは同程度の大きさのクロマツに対して
かなり高価になります。
当園にも在庫がありますが、年に1,2本売れる程度です。

 この種の欠点といえば接ぎ木でないと増殖できないということです。
しかも台木は、アカマツではなくてクロマツなのです。
接いだ部分がいかにもというふうに感じさせます。上手に接ぐ技術も要求されます。
アカマツに接げないものか、取り木ができないものか、実生ではどうだ
私もいろいろ挑戦してみましたが、結局うまくいきませんでした。
これは同じくアカマツの品種であるタギョウショウにもいえることです。
 それともうひとつ、葉が長いことです。
庭園で鑑賞する場合、人間の目の近くに植える場合は、葉が短いものの方が美しく感じられます。
遠くにある場合は、葉が長くてもそんなにも感じないのですが、最近遠くに植えるというような
広いお庭は、そう多くはありません。
だから葉が短くなるような剪定を施さなければなりません。
そのような技術を持った職人は、どこにでもいるというものではありません。

 そのような利点、欠点を持った可能性の大きな品種です。
メジャーな品種になることはできるのでしょうか?10年後が楽しみです。

 現在のシダレアカマツの状況をある植木屋さんは、「植木屋のおもちゃ」と言われました。
植木屋のおもちゃから愛好者のおもちゃに成長することを願っています。
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