人間の恋愛の過程においては、心と身体がそれぞれ次第に近づき結びついてゆくわけだ。しかし往々にして、身体の結びつきのほうが先走ってしまいがちらしいな。なかなかにバランスの難しいもののようだ。
実例を観察してみたいものだが、あいにくと今は身近に適当なサンプルがいない。ロックオンが生きていてくれれば……。
となると、見込みのありそうなのは……アザディスタンの皇女、マリナ・イスマイールか。刹那・F・セイエイが彼女に寄せる想いは並々ならぬものとみた。あいつの不遇な人生に、少しは喜びがもたらされてもいいだろう。
よし、機会をみて、あの二人が出会えるように誘導してみるか。何か興味深いことが起こるかもしれない。
ミレイナ、尋常でないハイテンションだな、どうした? えっ、アレルヤと一緒に救出したあの姫さんが、刹那とラブラブ?
……落ち着け、それはない。さっき俺もモニターで見た、一緒に何か話しているところはな。でもあれは、恋人同士とかいう雰囲気じゃねえ。
何というか、においがない、と言うか。恋愛慣れしていないやつら特有の青臭さすら感じさせないんだよ、あいつら。あんな無味無臭なのは違う……あれが恋だとしたら、おとぎ話の中にしかないようなやつだ。あまりに純粋で透明すぎて、大人になると見えなくなってしまうって類のな。ま、恋に恋するオトメにはまぶしく見えるのかもしれないが。
……どうしても本人たちに確認する? やめとけやめとけ、玉砕するのがオチだぞ、おやっさんにも言われたろ?
あの二人は、自分たちが恋人同士であることをきっぱりと否定した。
せっかく心を砕いて再会させてみたというのに、狭い艦内でしばらく一緒にいたというのに、世間でいわゆるところの進展は何もなかったらしい。しかも皇女は一人で故国に戻りたいと言い出すし、刹那は言われるままに送ってゆくという。
よく分からん……心がすでに引き離すこともできないほど固く結びついてしまっているのは確かなのだが。おそらくは互いのためなら命すら投げ出せるほどなのだろうに。それほどまでに想い合っているのなら、「なるべく長い間一緒にいたい、できるだけ近くに寄り添っていたい、触れ合っていたい」と願うのが人間として自然ではないのか?
そういえば、「離れていても心はひとつ」と言うな。逆に、心がひとつだから離れていても不都合はないという理屈だろうか。
うーん、なあ刹那、本当に一緒にいなくていいのか? このまま別れてしまっていいのか? とりあえず冗談めかして言ってみるか、なんならそのまま帰ってこなくてもいいと。
いきなり子供たちに包囲された。あのガンダムパイロットの兄さんとマリナ姫が話しているところに割り込んだことを責められているようだ。俺が仲間の情報を伝えたために、彼は重傷の体をおして出て行ってしまった、てっきりそれが問題かと思ったんだが……なんだと、せっかくラブラブだったのに? 彼と姫が?
いや待て待て、いくら俺だって、他人の恋路を邪魔するほど野暮じゃない。しかしあの二人の雰囲気はどう見てもラブラブとは程遠かったぞ。どちらかといえば、気心の知れた同僚とか、仲のいい親戚とか、そんな類の……。
なあ、一緒にいる親しい男女が必ずしも恋人同士とは限らないんだぞ? ……なんて子供に話したって分からないか。そうだ、いつも一緒にいるクラウスとシーリン、彼らもラブラブだと思うかい?
……えっ、あの二人は目的のために協力し合っているだけでラブラブじゃない? その辺はちゃんと感じ取ってるのか、弱ったな。
分かった分かった、俺が悪かった、後でマリナ姫にも謝っておくから、とりあえず離してくれないか?
ダブルオーライザーとはぐれてしまった。トレミー2はダメージが大きい、これはピンチだ。
刹那は必ず戻ってくる……僕は、信じている。信じているんだが。
まさか今になって、あいつがマリナ・イスマイールのところに行ってそのまま戻ってこないなんてことは?
せ、刹那、僕が悪乗りしすぎた、あれは冗談だ、帰ってきてくれ早く!
刹那とマリナの関係を気にかけているのがティエリア・ミレイナ・子供たちだけで、大人のキャラクターたちが何も言及していないことにふと気づき……ああそうか、あの二人は子供にはラブラブカップルに、大人には単なる親しい男女に見えるのだなと思ったのでした。フェルトあたりがどう思っているのか知りたいところですが。
本人たちも、少なくとも観念的には大人の考え方をしているため、自分たちは恋人同士ではないと断言するのでしょう。
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