遺伝子組換え作物を食べるより飢えた方がまし?

ネイチャー2002年8月8日号
「Africa hungry for conventional food as biotech row drags on」より

 旱魃(かんばつ)に襲われた南アフリカで飢饉に苦しむ人々を、援助組織が救おうと努力しています。しかし、遺伝子組換え作物(GM作物)の許容性に対する議論が障害となっています。遺伝子組換え作物の安全性についての考え方がヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国の間で食い違っていることが食糧援助を難しくしているのです。
 ヨーロッパの一部の援助組織が、遺伝子組換え作物の安全性について、アフリカに根拠の無い懸念を植え付けているという話が聞かれます。一方で、アメリカがアフリカの食糧危機につけこんで、アフリカ諸国に遺伝子組換え作物を受け入れさせようとしているのだと主張する者もいるのです。

 南アフリカ諸国では、これから何ヶ月にもわたり、何十万もの人々が飢饉に陥ることが予想されています。
 そんな中、かつて遺伝子組換え作物の受け入れを拒否していたジンバブエが、とうとうアメリカ合衆国から送られてくる遺伝子組換えトウモロコシの受け入れ許可を決定しました。但し、ジンバブエ国内で栽培することができないように、あらかじめ粉に挽いた状態で、という条件付きでの認可です。
 ザンビアは、アメリカで栽培された遺伝子組換えトウモロコシの受け入れに関して、まだアメリカと交渉を続けている段階です。
 モザンビークとナミビアの政府は、遺伝子組換えでないトウモロコシのみを受け入れたいとする見解を示しています。
 一方、マラウイ、レソト、スワジランドは遺伝子組換えの問題よりも、無料の援助としてアメリカから贈られる食糧を受け入れることを選びました。

 食糧援助として遺伝子組換え作物を受け入れることに関して、アフリカ諸国が心配していることは、アフリカの人々が食べる際の安全性に関することだけではありません。
 食糧援助として持ち込まれた遺伝子組換え作物が、アフリカでタネとして用いられて栽培され、食物サイクルの中に組み込まれてしまった場合、将来自国の農業が発展しても、できた作物をヨーロッパに輸出することができなくなるのではないかという懸念が生じているのです。
 ヨーロッパの食品メーカーは概して、遺伝子組換え技術に対する消費者の嫌悪感を考え、遺伝子組換え作物を使用しようとしません。しかも、加工食品における表示規則の強化が予定通り実施されることになれば、事態はますます厳しくなることが予測されます。

 アメリカ合衆国側は、アフリカ諸国が遺伝子組換えでない作物を要求してきたとしても、それに応じることは不可能だと言明しています。なぜなら、有機栽培作物の市場は別として、アメリカの農家は通常、遺伝子組換え作物とそうでない作物を分別してはいないからです。
 ヨーロッパの団体が、ザンビア政府に対し、アメリカからの援助を断るように働きかけているという話もあります。しかしアメリカの遺伝子組換え作物を拒否したところで、「安全な」作物が十分な量確保できる保証があるわけでもないらしく、全く無責任なやり方だと非難する声もあがっています。

 アフリカの官僚は、遺伝子組換え作物に関して、欧米諸国などの議論に振り回されるしかなく、まだ安全性などについて不明な点が多いことを懸念している状況です。できることなら安全性が確認されるまでは受け入れを拒否したいと願うのも、至極もっともなことではあります。
 結局、遺伝子組換え作物に関する議論というのは、食糧に余裕のある欧米諸国だからこそやっていられるものであるのかもしれません。今まさに食糧難に瀕している人々のことを念頭から外し、またはそれにつけこもうとしている身勝手な議論だと呆れられても無理はないことでしょう。



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