2003年の夏、ヨーロッパは記録的な猛暑に襲われていますが、それはアルプスの高山にまで及んでいます。通常であれば凍ったままであるはずの氷までもが融けだし、景観を変えてしまっているのです。
永久凍土層の研究者たちは、アルプスで現在起こっている永久凍土層の崩壊は地球温暖化に伴って世界中に広がり、じきに地球上の永久凍土層の四分の一が失われてしまうのではないかと予想しています。
アルプスは、標高2500m以上では地面のほとんどが一年じゅう氷でおおわれています。表層の厚させいぜい5メートル程度が夏になると融け、冬になると再び凍る、ということを繰り返しています。標高3000mを越えると、夏でも気温が摂氏0℃を越えることはほとんどありません。しかしここ数週間というもの、標高4600mの地点でさえ絶え間なく氷が融けつづけているのです。
登山者にとっても危険な状況となっています。普段は氷で固定されているはずのひびや割れ目が不安定になっているためです。例えば7月15日には、マッターホルンで岩盤の滑落により下山できなくなった100人近くがヘリコプターで救出されました。この夏、アルプスでは少なくとも50人の登山者が岩盤の滑落で命を落としています。
永久凍土層が融けだしているのはアルプスに限ったことではありません。北ヨーロッパやロシアでも、永久凍土層の融解によって、道路や橋、オイルやガスのパイプラインなどの建造や保全に問題が生じています。
調査によれば、スペインのシエラネバダ山脈から北極海のスピッツベルゲン諸島に至る広い地域で、ヨーロッパ山岳地帯の永久凍土層の温度は過去60〜80年のうちに0.5〜2.0℃上昇しているということです。
また、永久凍土層が融けだすことが大気中の二酸化炭素量増加につながる恐れもあります。永久凍土層に閉じ込められていた有機物が、バクテリアに分解されて二酸化炭素となるためです。二酸化炭素は温室効果ガスであり、温室効果が進むことでさらに永久凍土層の融解が促進されるという悪循環に陥ることが危惧されています。