環境生物学という概念

ネイチャー2002年11月7日号 「Mussel model calls for cash to combat invading species」より

 生物が、いてほしくない場所に繁殖して、工業などに悪影響を及ぼすことはよくあります。しかし、こうした問題はつい後回しにして、本当に困った状況になって仕方なく手を打つ、という場合が多いのではないでしょうか。
 現在、生態学と経済学を同時にモデル化し、早めに対策を取るのが良いか、後回しにした方が良いかを研究する試みがなされています。

 インディアナ州、ノートルダム大学の研究グループでは、イガイという貝の一種、(zebra mussel、カワホトトギスガイ)をテストケースとして取り上げています。イガイがアメリカの工業に与える損害は、年に1億ドルに上るといわれています。例えば湖岸の発電所などでは、パイプ内にイガイが繁殖して詰まってしまうという被害がよく発生します。
 研究グループでは、イガイが広がる速度とその経済的影響(例えば、イガイが新しい池に侵入しないように防ぐための費用など)を評価しました。その結果、大きな発電所のある一つの池でイガイを退治するために、年に32万4千ドルまでなら費やす価値があるという計算結果が得られました。
 米国内務省の魚類野生生物局が湖沼の外来生物を抑制するために費やしている金額は、総額82万5千ドルに過ぎません。つまり、こうした外来生物、有害生物対策にはもっと費用をつぎ込んでも良いのではないか、と研究グループは提唱しています。

 この「環境生物学(Environmental economics)」というのはまだ比較的新しい分野ですが、このような評価基準が確立されれば、政策方針を決定する上で生物対策費用の目安となるのではないかと考えられています。このような調査はこれまで行われてきませんでしたが、アメリカ国内で、外来生物による被害額はおよそ1370万ドルに及ぶといわれています。

 これまでに例の無い研究ということもあり、このイガイによる試算が広く採用されることになるかどうかは分かりません。しかし少なくともイガイに関しては、問題が無視できない状況であることを表す結果が出ています。5年という期間に限れば、イガイに対して何もしないほうが安上がりです。しかし25年という長期でみると、あらかじめ予防策をとったほうが経済的なのは明らかです。



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