ナメクジさん、コーヒーをどうぞ

ネイチャー2002年6月27日号 「Caffeine as a repellent for slugs and snails」より

 植物を食い荒らすナメクジやカタツムリの退治用に市販されている薬は、メタアルデヒド、メチオカルブなどという名の化学物質を含むものがほとんどですが、これが野菜などの表面に残ってしまうのは望ましくありません。
 コーヒーなどに含まれるカフェインは、FDA(米国食品医薬品局)によって安全性が確認された物質ですが、これがナメクジやカタツムリを退治し、寄せ付けないようにするのに使える可能性が出てきました。天然物であるカフェインがメタアルデヒドなどの代わりになるのなら、環境に優しく、野菜などにも安心して使える農薬になります。

 ハワイでは、外部から持ち込まれたカエルが植物を食い荒らす被害が生じていて、その対策としてカフェインを散布することが検討されていました。しかしそのテストを行っていた際に、1%か2%のカフェイン溶液をかけられると大型のナメクジが死んでしまうことが見出されたのです。  これはナメクジ退治に使えるかもしれないと、鉢植えの土にナメクジを埋めて、2%カフェイン溶液をかけておいたところ、48時間後には全てのナメクジが土から這い出し、その92%が死んでしまいました。
 さらに白菜の葉をカフェイン溶液に浸してそのまま乾燥させたものをナメクジと一緒に置いておいたところ、カフェイン無しの白菜に比べて、食べられる量が減少しました(2%カフェイン溶液を使用した場合で39%の減少)。カフェイン有りの葉とカフェイン無しの葉を並べておいたところ、ナメクジはカフェイン無しの方を選んで食べることが分かりました。この効果は、カフェイン濃度がたったの0.01%でも現れました。なお、カップ一杯のインスタントコーヒーのカフェイン濃度は0.05%程度で、レギュラーコーヒーだともう少し多くなるそうです。

 小型のカタツムリにカフェイン溶液をかけて影響を調べたところ、0.01%カフェイン溶液をかけられたカタツムリの心拍数は上がりましたが、0.1%以上の濃度だと逆に心拍数が下がりました。その後、濃度の高いカフェイン溶液をかけられたカタツムリの心拍は弱く不規則になり、0.5%以上の濃度では、96時間後までに全て死んでしまいました。
 鉢植えなどにつくカタツムリの数を減らす働きは、通常用いられている0.195%メタアルデヒド溶液よりも2%カフェイン溶液の方が優れていることが分かりました。

 カフェインを農薬として使用するアイディアは以前からあったのですが、それは昆虫を対象としたものであり、ナメクジなどの軟体動物に対する効果は注目されていませんでした。
 なぜナメクジやカタツムリがカフェインに弱いのかはまだはっきり分かっていませんが、どうやら神経系に影響を与えているらしいと考えられています。土の上にナメクジを置いて1%か2%のカフェイン溶液をスプレーすると、身をよじらせてのたうち回って死ぬそうです。スプレーされてすぐ、土の中に逃げ込むことができた場合だけは生き残ることもあるとのことです。

 ナメクジやカタツムリなどの軟体動物は、ミミズなど他の生物よりもカフェインによる毒性の影響を受けやすいのではないかと考えられています。
 カフェイン溶液の散布により、葉が黄色くなるなどの影響を受ける植物もありますが、この問題は農業用のポリマーにカフェインを配合することで解決できると考えられています。ポリマーの使用は、スプレーされた水とカフェインの保持性を高める働きも期待できます。



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