環境問題が発生すると、とにかく人間のしわざであると主張されることが多い。メディアもよく、温室効果と呼ばれる現象の結果としての地球温暖化を話題にする。1998年、地球表面の平均温度は、1961年から1990年までの平均値より0.58℃高くなり、1998年は少なくとも1860年以降においては最も暖かい年になった。もし、このまま地球の温度が継続的に上昇してゆくとすれば、大変な問題が生じてくる。北極や南極の氷冠が溶け出して海面が上昇し、海抜の低い沿岸地域が海面下に沈んでしまう事態が考えられる。地球全体の気象状況もまた変化し、異常気象も増え、より厳しい気候になってきているようだ。
しかし、そもそもそれらの原因は何なのだろうか。現在の地球温暖化は当分続くのか、それともいずれは終わる、単なるゆらぎの一部に過ぎないのだろうか。そしてこの変化は、人間のせいなのだろうか。地球温暖化の裏には、どのようなメカニズムが働いているのだろうか。 地球温暖化というのはそれ自体、非常に複雑な問題であり、どの科学者に聞いてもみな意見が違う。とりあえず、地球温暖化に関するメディアの報道をよりよく理解するために少し知識を得ておく必要があるだろう。
まず、温室効果とはどうして起こるのかといえば、太陽光と地球大気中の特定のガスとの間に相互作用が働くためである。こうした特定のガス、いわゆる温室効果ガスは、地球を包み込むブランケットのように、太陽光によって地球に与えられた熱を保持する働きを持つ。温室効果ガスの存在により、太陽の熱効率が上がるわけだ。
太陽からの可視光線と紫外線は、大気中の全てのガスを抵抗無く通過してきて、地球表面を温める。これは、窓を閉めていても太陽光が窓ガラスを通過してきて、部屋が暖まるのとよく似ている。太陽光によって地球表面に生じた熱は、赤外線となり、地球から宇宙に向けて放射される。こうした赤外線放射には、雲によってもう一度地球に向けてはね返されたりして再び地球表面を温めるものも一部存在するが、残りは、外宇宙に逃げてしまう。結果として、地球は太陽から与えられた熱を全て自分のものにしているわけではなく、いくらか宇宙に逃がしているわけだ。温室効果ガスとは、地球から逃げようとするこうした赤外線をいくらか吸収し、地球にとどめる働きをもつガスである。
なお、大気中の全てのガスが温室効果ガスであるというわけではない。例えば、地球大気の大部分を占める酸素や窒素の分子は赤外線を吸収することができないので、温室効果ガスではない。また、一口に温室効果ガスと言っても、その種類に従って吸収する赤外線のスペクトル領域は異なっているという。
温室効果の存在自体を疑っている科学者はほとんどいない。地球の平均気温は現在15℃だが、もしも大気中に温室効果ガスが存在しなかったとすれば、氷点下18℃のはずだとされている。地球の両隣の惑星、火星と金星の状況を見れば、温室効果の重要性がよく分かる。火星にはほとんど大気が無いために非常に寒い。それは、外宇宙に放射されてしまう赤外線を保持するものが存在しないためである。対照的に、金星の大気は温室効果ガスである二酸化炭素を多く含むため、大量の熱が保持される。結果として、金星の温度は鉛さえ溶けてしまう500度以上に達するという。このように温度条件が過酷なので、火星も金星も、我々が知るような生命を育むことができなかったのだろう。
さて、地球における温室効果というのは、果たして問題として扱うべきものなのだろうか。問題だとしても、それは人間の責任なのだろうか。人間による工業や農業などの活動の結果として、増加している温室効果ガスがあるのは確かだ。だから、人間のせいで地球の温度が上昇しているのだと考えてしまうのも無理はない。
しかし気温を上下させるのは温室効果ガスだけではない。雲も、気温に大きく影響を与える。例えば、冬の晴れた夜には放射冷却現象が起こり、曇った夜よりもずっと寒くなるのはご存知だろう。雲の中の水蒸気は温室効果を持ち、地球から放射された赤外線エネルギーを吸収して地球に返してくれるために、曇った夜の気温は比較的下がらないのだ。雲の無い砂漠は夜になると非常に寒くなるが、これは乾燥した空気が赤外線放射を吸収せず、熱が赤外線として外宇宙へと失われてしまうのを押さえられないためである。
温室効果を数学的にシミュレートして研究しようとする場合に、雲の影響を考慮に入れると、非常に複雑な計算が必要になってしまう。日中において、雲は地球を暖めようとする太陽光をさえぎるので、結果として地球が太陽から得るエネルギーは減少することになる。また、火山の噴火や、硫黄の多い泥炭を燃やす発電所から出る硫酸に汚染された雲は、通常の雲よりも太陽光をさえぎる効果が高い。例えば1815年にインドネシアのタンボラ火山が大噴火した後、火山灰と硫酸の影響で太陽光がさえぎられたおかげで、世界中の気温が下がった。例えば、オハイオ州周辺ではこの年、7月半ばにも関わらず、気温が氷点下になったことがあるという。タンボラ火山の噴火はすさまじく、その規模は1980年5月にワシントン州で噴火したセントヘレンズ火山の50倍だったそうだ。