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第5回 マトリョーシカ 絵付け指導法

書名:  マトリョーシカ 絵付け指導法
  Матрешка. Методика преподавания росписи матрешки.
著者: ニコライ・アレクサヒン (モスクワ教育大学助教授) 
Николай Алексахин
出版社: 国民教育 Народное образование
出版年: 1998
ページ数: 96 с.
マトリョーシカ絵付け指導法

紹介者: 渡辺裕美

ロシア雑貨店パルク店主

本書は、芸術家でありモスクワ教育大学助教授である著者が、保育園、小学校中学年までの美術教師、児童芸術学校、サークル指導者用に子どもたちにマトリョーシカ絵付けを教える際の指導書となっています。

子どもたちはシステム化された手順の中で、自分の手で描く楽しさを知り、基本的な色彩学や、お祭りを組織し展示発表会を開く方法を学び、ロシアの民芸品であるマトリョーシカの誕生と発展の歴史を学びます。

またマトリョーシカ絵付けに興味を持っている人たちにとっては、初歩からマトリョーシカについて学ぶ良いハウツー本となるでしょう。

目次
Введение はじめに
Организация и содержание работы кружка グループ分けと作業内容 
Учебно-тематический план  授業のテーマプラン 
Учебно-материальное обеспечение  教材の確保
Методические рекомендации по проведению занятий  実際の授業について教え方の紹介 
Основные исторические сведения о происхождении матрешки  マトリョーシカ誕生に関する基本的な歴史総括 
Ознакомление образцами матрешек  各種マトリョーシカの紹介 
Копирование матрешек  マトリョーシカの模写 
Основы законов композиции. Графические элементы орнамента  構図の基本的ルール デザイン要素の図表 
Основные законы цветоведения  色使いの基本的ルール 
Монокомпозиции 単色構成
Родственная цветовая гармония 同系色の調和
Родственно-контрастная цветовая гармония 同系と対照色の調和
Контрастная цветовая гармония 対照色の調和
Бумажные композиции 紙で作るマトリョーシカ
Организация выставок マトリョーシカ展の開催
Праздник "Матрешка" マトリョーシカまつり
Заключение おしまいに
Рекомендуемая литература 参考図書

目次が示す通り、マトリョーシカ製作を通してロシアの伝統文化に触れ、ロシアならではの色彩やデザインを学んでいきます。特にカラー挿絵を多用して地方によるデザインの特徴や色使いの違いを説明し、「ここまで授業を進めると、子どもたちはこういう質問をしてくるでしょう」という場合の回答法も細かく示します。

また、約60パターンのマトリョーシカの挿絵と約23ページを割いて色とデザインのパターンを紹介しており、小さい本ながらデザイン書としても見ごたえある一冊となっています。授業内容を見ると実技に多くの時間をとり、実際の製作に入る前に十分にデザインと色使いの基礎を自分のものにさせる意図が見て取れます。

そして、最終目標として、展示会という形で自分の作品を発表し、「マトリョーシカまつり」という発表会を開くことでマトリョーシカについての歴史や文化を楽しみながら最終確認することができるようになっています。

授業テーマ 宿題 合計時間
(時間)
教科
(時間)
実習
(時間)
Основные исторические сведения о происхождении матрешки
マトリョーシカ誕生に関する基本的な歴史総括
  2 2  
博物館、展示会訪問(見本を見せることを目的とする)   2 2  
セルギエフ・ポサード産マトリョーシカの模写
2 4 1 3
セミョーノフ産の模写
1 2 0.5 1.5
ポルホフ・マイダン産の模写
1 2 0.5 1.5
以下選択
1 2 0.5 1.5
  • トヴェリ産
  • バシキール共和国ウファ産
  • マリ・エル共和国イオシュカル-オラ産
       
マトリョーシカの衣装に描かれる基本的構図とデザイン要素の習得
3 6 1.5 4.5
  • 筆使いの練習 点と線(直線、曲線、細・太線、他)
  • 簡単な幾何学模様の作成(縞、格子など)
  • 簡単な生地デザインの模写
       
マトリョーシカや起き上がりこぼしのスケッチ 1 2 0.5 1.5

自分で考えたマトリョーシカの構図にデザインと色を付ける

14 28 7 21
  • 単色で
  • 同系色を使って
  • 同系色と対照色を使って
  • 対照色を使って
       
紙で作る簡単な立体マトリョーシカ人形または彫り物の作成 4 8 2 6
完成した作品の発表会を開く
1 2 0.5 1.5
展示会の検討 1 2 2  
マトリョーシカまつりの準備        
  • 衣装のスケッチ
2 4 1 3
  • 衣装製作
2 4 1 3
  • マトリョーシカまつり開催
1 2 0.5 1.5
合計時間   72 22.5 49.5

実はロシア人が他国の人へのお土産として、あるいはロシア人へのプレゼントとしてマトリョーシカを贈るということは聞いたことがありません。数百年の歴史を持つホフロマ塗りやグジェリ陶器やいろいろな木の民芸品に比べるとマトリョーシカは100年ほどの歴史しか持たず、そもそも誕生の歴史がロシアの生活の中から発生したものではなく、お土産物として開発されたものであるために、ロシア人にとっては「我が国の歴史や文化を表すもの」とは考え辛いのかもしれません。

しかし、この本を読むとマトリョーシカのデザインや色使いの中にはれっきとしたロシアならではの文化が溶け込んでいることが分かります。また、原料の木材は白樺や菩提樹を使用し、豊富な森林資源を有するロシアならではの民芸品と言えるのではないでしょうか。 また、小さな子どもたちにとって、美術の授業の時間を使って楽しく身近に自分の国の文化を学べる機会を作ってあげることは、とても有意義なことと感じました。

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