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金融政策決定会合議事録シリーズ
口上:2008年7月31日に初公開された金融政策決定会合議事録。その内容があまりにも素晴らしいのですが、量が呆れるほど多いので(当たり前ですが)追々ご紹介していきまして、それをこちらのコーナーに(日銀公表文書関連の中にも入れて置きますが)まとめて保存しておこうと思いまして作った新コーナーでございます。とりあえず書いたものを最新のものから順に延々と並べますが、そのうち日付順とかで整理できたらしたいものです。
なお、決定会合議事録は
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
からご覧頂けますが、見れば分かるように恐ろしく重い代物で、正直言ってこの議事録家で読む為に自宅のPC回線を光にしようかと検討中だったりして(記:2008年8月3日)(2010年追記:PC買い替えたついでに光にしたので議事録は家でも読めるのですが、結局印刷する方が律速段階なのでありました^^)
2010/05/06「1998年11月13日の議事録から、企業金融支援措置に反対する中原委員」
2010/03/12「1999年7月16日の議事録から、細かい所を良く話題にしてますなあ」
2010/02/09「1999年8月13日議事録から、金融市場局長の市況説明の細かさに感心」
2010/01/22「速水総裁の発言から(その2)/実は尾身さんは正しかったのでは(ネタ)」
2010/01/14「引き続き速水総裁の発言から(その1)」
2010/01/07「同じくで藤原副総裁の発言を一応引用」
2010/01/06「1999年4月9日の論議から、強い意志を示すことについて&中原委員が植田委員にやりこめられる」
2010/01/05「1999年4月9日の論議から、ゼロ金利による市場の緊張緩和とか量的目標のフィージビリティとか」
2009/08/19「1999年4月9日の論議から、ニーズの無い所の量に関して三木委員と中原委員」
2009/08/11「1999年4月9日の時間軸論議続き、後藤委員と武富委員の指摘から」
2009/08/03「1999年4月9日の会合で時間軸論議が行われていました」
2008/08/18「尾身長官大奮闘(?)のフォロー編」
2008/08/13「円キャリーに関する98年の議論」
2008/08/05「低め誘導時の金利誘導に関する論議」
2008/08/04「積み上と誘導金利に関する論議」
2008/08/01「議事録を最初に見た感想、98年6月25日の金融情勢、98年4月9日尾身経済企画庁長官大暴れ」
2010/05/06
(追記:2010年4月30日の決定会合で「成長戦略サポートの為の銀行向け融資策の検討」という謎の指示が執行部に出た事を受けて引用しました)
○1998年の決定にあたって中原伸之審議委員(当時)が反対しているのだが
さて、昔話ネタになりますが、さっきURLを乗っけたように98年11月に臨時貸出制度の創設を公表したのですが、まあそれを実施しましょうというのを先行して発表した回の決定会合で当時の中原伸之審議委員が反対しているのでして、その理由が中々読み応えがあるので最後に引用しますね。
1998年11月13日の金融政策決定会合議事録(超どうでもいいけど、この辺りの決定会合には谷垣禎一大蔵政務次官が出席してますな)から。
採決前の各委員の意見表明部分(議事録84ページ)より。
『中原委員
私はCPについては賛成であるが、他の二案については十分に検討し、議決した度毎に公表すべきだと考える。まずCPについては、昨年から一年間オペを行ってきておち、非常に実績もある。今回の措置を採れば、民間の方でも先程2兆円と説明していたが、然るべき反応はあるだろうと思う。また、CPオペの積極化は先般の提案の延長線上としても捉えられるので、賛成である。
他の二つについては、方針自体をここで発表しない方が良い。やはり、実施するのか実施しないのかを確りと詰めたうえで、出来たものから発表すべきである。何か予約の発表のようなやり方が果たして良いのかどうかに疑問を持っている。そもそも今回の議案を企業金融の円滑化として直接打ち出すことにも反対する。やはりセントラルバンキングである以上、まず銀行に対し一般的な形でのオペを行い、先程山口副総裁が言われたようにそれが滲み出る格好であるならば結構であるが、セントラルバンキングの立場として筋を通すべきではないか。特に、証書貸し付けを担保化することは十分考えられるが、現段階で行うことになると、例えば企業のリストラ、再編成の動きに対し、それを緩めるようなことになりはしないか。あるいは、世の中からみて日本銀行は最後の信用の砦であるにもかかわらず、何でもありとなってしまうのか、と受け取られる反応も恐れる訳である。現在の段階で行えることはCPオペの積極的な活用であると思っている。』
もうね、「実施するのか実施しないのかを確りと詰めたうえで、出来たものから発表すべきである。何か予約の発表のようなやり方が果たして良いのかどうかに疑問を持っている。」とか「あるいは、世の中からみて日本銀行は最後の信用の砦であるにもかかわらず、何でもありとなってしまうのか、と受け取られる反応も恐れる訳である。」とかイイハナシダナーと申し上げるしか無いですな(^^)。
また、採決後の中原さんの反対理由部分(議事録106ページ)も内容がだいぶ被りますが引用しますね。
『中原委員
反対の理由を申し上げる。基本的な反対理由は中央銀行としての在り方に関係するものである。中央銀行は主要目的に専念し、その他の機能については出来るだけ保守的に機能すべきであると思う。銀行に対する流動性の供給は一つの大きな業務であるが、企業金融は元々民間銀行の領域であり、そうした仲介機能には極力踏み込まない方が良いというのが基本的な理由である。
具体的に申し上げると、第二の貸出制度は昔の制度が復活する印象を世間に与える。最も懸念すべきは、銀行に対する直接貸出が今後拡大されていくのではないかという危険性をはらんでいることである。第三の社債、証書貸付等については、一つはこれが仮に恒久的な制度になるとするならば、十分考える必要があり、時期尚早だということであるが、もっと根本的には適格の社債が限定されてくるということである。これがエスカレートすると、社債を買え、さらには株式を買えといった要求に発展しかねない。また、証書貸付等については、債務者の承諾が必要な訳であり、むしろ方向としては極力印紙代を200円にして手形に切り替え、その手形をオペに活用するのが正しいと考えている。いずれにしても、CPオペのように実績があり、限られた分野で日銀が重要な役割を果たしてきたものを拡大することは意味があると思うが、現時点において貸出制度を臨時に創設したり、社債、証書貸付等を担保としてオペを行うことについては非常に疑問があるし、日銀の中央銀行としてのイメージを傷つける恐れがある。日銀も信用の最後の砦ではなく、何でもありかと、それならばさらにやれということになりかねない点を危惧する。』
「これがエスカレートすると、社債を買え、さらには株式を買えといった要求に発展しかねない。」と言う部分がスバラシス(^^)。
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2010/03/12
○ヒマネタで金融政策決定会合議事録シリーズ:1999年7月16日の議事録から
例によって例の如く冒頭部分の金融市場の状況に関する山下金融市場局長の報告とその感の質疑応答なのですが、今の市場状況と比較してみると隔世の感があるというか何と言うか。まあ面白いと思うのはごく一部のマニアだと思いますけど構わず引用。
・皆が市場調達をするのでオペが札割れになるという現象(^^)
現在は市場調達よりもオペという世界になっておりますが(その要因は財政が大幅資金不足になって全銀ベースが大幅資金超過になってという資金保有構造の大きな変化があるので、別に昔が正しいとか今が正しいとかいう事ではありませんけど)、当時は皆が資金供給オペのタイミングまで引っ張らずに資金を市場調達するのでオペが不人気になるという今では考えられないお話。
1999年7月16日決定会合議事録本文7ページより。誤字脱字がありましたら勘弁。
『中原委員
本行オペの応札は低調になってきたのか。
山下金融市場局長
例えば、短国は6月7日のオペで0.71倍、手形買入が6月4日には完全に空振りになり、6月17日も札割れの状況である。5月、6月とイールドが非常にフラット化し、その中で資金供給が難しくなってきていた。その後金利先高感が生じ、ターム物の特に3か月あるいは6か月物が多少強含んできた時には、次第に応札倍率が上がってきたため、若干楽になった局面も一時的にはあったが、現在は、再び金利先高観が後退し、イールドカーブがフラット化してきているため、応札倍率が下がっておち、再び札割れが起きる可能性のある状況となってきた。
三木委員
オペと先日付で行うと当日物との間にこのような形で差が出るのか。
山下金融市場局長
最近は当日物金利が0.03%で安定しているため、各行とも私共のオペ以前の9時頃には皆取引を大体固めてしまう。従って0.01%や0.02%で資金調達ができるとしても、当日にわざわざ本行のオペに応じる事務処理コストをかけてまで資金を取る必要はない。もう十分だということになる。最近は都銀などでは明日スタートの翌日物についても0.03%で取れるため、次第に前倒しで調達を固めていくようになっている。従って、先日付でオペを打てば、0.01%や0.02%でとれるのであればマーケット・レート(0.03%や0.04%)よりはオペの方が有利だということになる。いずれにせよ明日や明後日の資金であればまだ全て固まっていないため、オペに入ってくる可能性が高まるという意味である。
三木委員
やはり流動性の心配がなくなったことと、金利が安定していることの二つから、こうした結果が出てくるということか。
山下金融市場局長
ご指摘の通りである。1か月以下のところは0.03%、ないし0.04%で完全にフラットになっているため、当日物は余り焦らなくても良い訳である。』
いやあ今とは全く違いますな。環境が違うとオペの打ち方とかも違いますし、市場慣行もまた変化するのでありまして、過去こうだったから今度こうやるとどうなるというのはあまり単純に考えるとエライコッチャになるのでしょうな。
・大阪コール市場涙目
その先で武富審議委員がコール市場の話をしていますが、まあ細かい話で(^^)。上記引用部分の続きで9ページ目からです。
『武富委員
コール市場残高の有坦比率が上昇している中で、大阪市場が厳しいと聞くが、それはコール市場全体の機能に対してダメージングな影響をもたらす状況ではないのか。
山下金融市場局長
基本的には大阪のレピュテーションの問題であり、コール市場の機能自体にマイナスの影響をもたらすものではない。大阪市場の取引規模が縮小しているのは、大阪に本店を置いている都銀等が地元に配慮して取引してきた資金調達・放出の額を減らしてきたことによるものである。現在は通信手段の発達等に伴い東京に全て繋いで取引すれば良い訳であり、大阪市場がなくなったといっても格別問題が起こる訳ではない。短資も大阪に人と建物を手当してコストをかけながら営業しており、東京に集約できればコスト削減が図れるメリットもある。
武富委員
短資会社の経営問題という側面からみて大阪に拠点を置くのは如何なものか。
山下金融市場局長
元々取引が大幅に減少しており、お荷物になっているのは明らかである。それを従来はそれなりに厚いスプレッドでカバーしてきたが、それが適わなくなってきており、各社とも真剣にリストラを考えている。大阪の拠点は将来的には大幅に縮小される状況になってくるとみられ、現にそうしたリストラの動きが出始めている。』
各社とも大阪に拠点はあったと存じますが、これはまた何と言う指摘。大阪に本店があった短資さんがいらっしゃった(まあ基本は東京でしたけど)と思いますが、というか名古屋に本店があった名古屋短資さん(今は合併してセントラル短資ね)もありましたが、決定会合の席でこんな話をされているとは涙目というか何と言うかという所ですが、そう言えばOIBORだのとか昔そんな言葉がありましたなあと感慨深いものがあります。
さっきちょっと各社のHP見たら、さすがに大阪が発祥の地であるだけに上田八木短資が東京本社のほかに大阪本社がある(登録機関が近畿財務局ですし)んですな。で、セントラル短資は山根、名古屋短資の流れもあって大阪と名古屋に支店があって、東京短資は大阪に支店ということで、大阪コール市場そのものはどうなのか存じませんが、大阪拠点はまだ存続していると言う事で誠に結構な事でございます(何が結構なのかというツッコミをしないように)。ちなみにセントラル短資と東京短資は登録機関は関東財務局でございまする。(各社HPより)
だからどうしたと言われると困りますが(^^)
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2010/02/09
○ただひたすら解説を入れずに引用だけする企画(1999年8月13日議事録から)
ネタに困ると議事録シリーズなのですが(汗)、まあどこの議事録でも良いのですけれども、ほうほうこりゃオモロイと思いながら読んだのが1999年8月13日の議事録。
この時期(もうちょっと前から)はオペレーションの技術的な問題とか、市場の流動性の問題(Y2K懸念とかね)が色々と問題になっていたようですが、こういう場面になると武富審議委員がやたら活躍している印象がございまして、まあ武富さんも細かいことご存じですなあと感心しながら見ておったあたくしなのであります。
と前振りをしておいて何ですが、今日は武富さんの話がどうしたこうしたというのではなく(おいおい)、こんな細けぇことまで政策委員会で見ているのですねというのを、会議冒頭の山下金融市場局長の説明から引用致します。まあ市場が安定している無事モードだったらそこまで気にしなくても良いのでしょうけれども、時あたかもゼロ金利政策という非常時モードなのでありますからね。
で、長い(3.5ページ分)ので変にあたくしの講釈を入れずにベタ打ちしたものをそのまま並べます。まあ手抜きとも言うけど(大汗)。で、これは中々細かい話が多くてマニアとしてはオモロイのと、「引き締まる」の反対語が「引き緩む」というのかと初めて知ったです(^^)。冒頭の説明で3ページ目からです。
『1.最近の金融調節に関する報告(資料−1)
山下金融市場局長
前回政策決定会合以降の金融調節については、引き続き1兆円の積み上幅を維持する資金供給を行ってきた。その結果、オーバーナイト・レートは0.03%の実質ゼロ金利水準で極めて安定した推移を辿った。大手都銀等の資金ポジションが貸出の伸び悩み等から好転傾向を持続していることなどを背景に、オーバーナイト資金の要調達額が減少しているため、コール市場の需給は一段と引き緩んでおり、0.02%での出合いも一段と増えてきている。この間、調節面では短期国債の市場規模がFBの公募入札により飛躍的に拡大しており、流動性の高いマーケットに育ってきたため、供給、吸収の両面で短期国債オペを軸に据えた運営を行ってきた。特に資金吸収面では売出手形を使わず、専ら短期国債の売現先を使用してきた結果、売出手形は8月4日の税揚げ日に全額期落ちとなり、96年3月以来久方振りに残高がゼロとなった。この間、短期国債の売現先の残高は8兆1,000億円に達しており、本日のオファーで10兆円を超えることになる。
この1か月間の短期金利動向を振り返り、三つの特徴点を指摘したい。
第一は、短めのターム物を中心にレートが再び弱含み傾向にあることである。ユーロ円出合いレートの推移をみると、例えば1W、1Mは8月に入り0.03%まで低下している。また、CDでは1Mで0.025%、2Wで0.015%など、0.03%ないしそれを下回る水準でかなりの額が発行されている。イールドカーブの変化をみると、前回政策決定会合直前の7月15日と昨日の形状はほとんど変わっていないが、1M以下のところでは僅かにではあるが、先程申し上げた動きを反映してイールドカーブが下方にシフトしている。また、昨年の同時点のイールドカーブと比較すると、昨年は9月の中間期末が意識されて2Mのところがこぶになっているのに対し、本年は2Mの上がり方は極めて小さく、むしろ年度末越えとなる6M以上の跳ね上がりが目立っている。これは本年の場合、9月中間期末の流動性リスクについてほとんど意識されていない一方で、年末越えについては、Y2K問題の存在に加えて、6月10日のGDPショック以降、ゼロ金利政策の解除懸念が台頭してきていることを映じたものと思われる。
このように短期金利は短いターム物を中心に総じて弱含んでいるが、例外はT/Nレートであり、昨日は0.05%まで上昇している。オーバーナイト物とT/Nの出来高とも都銀のオーバーナイト資金調達ニーズの後退を背景に大きく減少してきている。T/Nを含むオーバーナイト資金調達は引き続き徐々に減少する傾向にあるが、特にT/Nの調達額が落ち込んできている。因みにT/Nの出来高をT/Nとオーバーナイトの出来高で除したT/Nの比率が特にここにきて低下傾向にあり、7月の中旬頃までは25%程度あったものが、昨日は10%まで低下してきている。このようにT/Nのウェイトが落ちてきているのは、都銀等では低利の超短期CD調達等が可能となっているため、これにシフトしているからである。つまり都銀等が0.02%〜0.03%で調達していたT/Nの分がCD調達等へのシフト等で落ちたため、信用度の低い高利調達先のウェイトが高まってしまい、その結果としてT/Nの加重平均レートが上昇している訳である。いわば、資金需給が引き緩み、市場規模が縮小した結果として、レートが上昇するという皮肉な姿となっている。
第二の注目点は金先レートが再び緩やかに上昇していることである。これは7月29日に公表された6月の鉱工業生産指数が市場予想を上回る好転を示したことと、その後も景気改善を示す指標が相次いでいることに反応したものである。3月限は7月23日の0.25%をボトムに昨日は0.38%まで上昇している。もっとも、9月限はキャッシュマーケット同様に弱含み基調と続けており、これから推すと金先レートでは0.25%程度の利上げがあり得るとすれば来年度初以降という見方を織り込みつつあるのではないかと思う。
第三はY2K関連の動きであるが、全体としては落ち着いた状況が続いている。まず、ジャパン・プレミアム(6M)は、6月に年末越えになってから大幅に上昇しており、富士銀行で23bp、東京三菱銀行で15bpまで上昇していたが、昨日はそれぞれ19bp、8bpへ低下している。金先レートでみたY2Kプレミアムと円とドルの推移でみると、円は7月中旬以降ほぼ横ばいで推移しており、変化がない。年度末越えCD・CP発行状況をみても、概ね0.1%台後半での調達が散発的にみられており、これもレート水準としては落ち着いた推移となっているが、ここにきてにわかにクローズアップされているのが国債の玉繰り問題である。大手機関投資家がリスク回避の観点から年末越えは貸債レポを停止するとの噂が流れており、国債の玉繰りに対する不安、担保不足、あるいは先物等のショートポジションの決済玉が不足するという不安が高まっている。こうした状況下、昨日は192回債、193回債等がスクイーズされた形になり、貸債レートが大きく跳ね上がるといったややパニック的な現象が生じている。これがY2K問題と直接関係するのかどうかは分からないが、国債市場では玉繰りについて不安感が高まっており、十分注意してみていく必要がある。
最後に短期資金需給の一段の引き緩みに関連した動きを二点報告する。
一つは私共のオペの落札レートの低下である。資金供給オペでは応札倍率が低下し、落札決定レートも0.01%まで低下しており、かなりの工夫をしないと札割れのリスクが大きくなっていると度々報告しているが、資金吸収オペの方は運用難を背景に人気が高くなっている。例えば、短期国債売現先の応札倍率は5倍から9倍と高まっており、連れて落札レートの方も0.03%まで低下してきている。本来であれば資金の取り手である都銀等でさえ、我々の売る短期国債で運用したいという動きが非常に強まっており、同オペにおける都銀落札シェアが高まるなど、金余りの状況が一段と進んでいる。
今一つは準備預金の積みの進捗テンポがかなり遅くなっていることである。都銀の積み進捗率をみると、7月15日以降の今7月期は日割進捗率に比べてかなり遅れた形で積みが進んでいる。これは資金ポジションの好転に伴い放置しておくと準備預金の積みが進み過ぎてしまい、積みの最終局面では超過準備の保有を余儀なくされるリスクがある一方、必要な資金はいつでも0.02〜0.03%で取れるため、都銀各行が意図的に積みの進捗を遅くしている訳である。この結果、今積み期は非準備預金先に対応する預金残高がかなり膨らんできているのが特徴である。これも資金のだぶつきを象徴する動きである。
以上のように短期金融市場ではオーバーナイトを含め短いタームの資金需給が一段と引き緩む情勢にある。一方、年末越えについてはY2K問題やゼロ金利政策解除の思惑からややナーバスな展開になってきている。』
#一応手打ちしたのを読みなおしましたが、誤字脱字があったらゴメンナサイ
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2010/01/22
○虫干しネタですが1999年4月9日会合議事録ネタ
で、会合の最後の方で各委員が今後の金融政策運営に関する意見表明を行っている部分が現在の主要国における金融政策運営にも通じる論点が満載ですねという話をここしばらくやっておりましたが、今日は先日(14日)にご紹介した速水総裁の発言の続きを。
過去の関連駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html
本文76ページから、ということで先日ご紹介した発言の前の部分になります。
『なお、市場関係者の間には現在のゼロ金利政策によって、日銀が何を目指しているのか分かり難いとか、ここ二、三回の会合でもそうした問題意識からご意見を述べられた方々も少なくない。』
ほうほうそうだったんですか。
『この点については、日本銀行の目的はあくまでも日銀法2条に明示された物価の安定であり、物価の安定を通じて健全な経済成長を促していくことにある。現在の金融緩和はデフレ懸念が払拭されるような状況を目指して行っていると申し上げる以外にないのではないか。』
まあそれは良かったのですが、ゼロ金利解除が果たして「デフレ懸念が払拭されるような状況」のタイミングだったかというとそれは怪しかったですが、それはこの翌年のお話。
『確かに、金利と量についての考え方はあると思うが、日々変化する市場に適切な措置を打っていくことが大切であり、私共の出したディレクティブを忠実に守っていれば、現在のところ私共の責任は一応果たしていける。こうした日本銀行の考えはこれまでも対外的に十分明らかにしてきているが、それでもなお日本銀行の狙いが分かり難いということがあるとすれば、一つには、日本銀行が物価の安定について具体的な数値で示していないことを言いたいのかもしれない。』
んでまあ結局時代が後になってみれば量的緩和政策のコミットメントや、中長期的な物価安定の理解というような物が出てきた次第。
『そうした議論の中で暗に問われていることは、仮にデフレ懸念がなお存在しているとすれば、日本銀行はさらに量的緩和でも何でも追加的な措置を打っていくべきではないかということかもしれない。ただ、物価の安定を一つの指標で単純に数値化することは難しい。あるいは、そうすることが適当なのかについては、慎重に考えなければならない側面も少なくない。例えば、仮に消費者物価を0〜2%にするという目標を作ったとしても、このレンジから少しでもはずれれば問題で、逆にこのレンジに入っていれば安心といった機械的な運用は実際問題としては極めて危険である。』
まあさすがに最近はガチガチのターゲット運用をすべきという話では無くなっていますが(BOEなんかターゲット通りに厳格運用して金利を上げ下げしたら大変な事に^^)、まだこういう話もあったんでしょうな。11年前ですからね。
『結局のところ、物価の安定に何らかの数量的な定義を与えようが与えまいが、最終的にはその時々の情勢を踏まえて日本銀行が判断していく訳であり、毎回の決定会合において金融経済情勢の入念な点検と質の高い議論を積み上げ、それらを対外的に明らかにしていくことこそが何といっても最も重要なことではないかと思う。』
で、先日引用した部分の対外的に判りやすいメッセージとは何ぞやという話になるのですが、短期市場やら債券市場みたいに日銀の一挙手一投足を細々チェックした上で通常のオペレーションとかも見ているという人達には速水総裁の言う方法でも話は通じると思われるのですが、結局のところ景気は「気」でもありますので、(特に金融政策についてあーでもないこーでもないと言うのに短期資金取引に関しても怪しそうな)為替市場の中の人達(日米のLIBOR金利差で円高円安とかあれは短期市場の実務者から言わせると都市伝説の一種ですからね^^)やら株式市場やらといった全般的なマーケットとか、より広く一般ピープルという所に向けての説明とゆー事になると、更に政策の「見せ方」に工夫が必要だったという事もあるんでしょうな。
で、その結果として福井の俊ちゃんメソッドやらバーナンキ先生のメソッドなどが発生したという事でもあるのでしょうけれども。
○そう言えば尾身先生は正しかった(のかもしれない)というお話
これだいぶ前にネタにした話ですけれども、ここの下の方のお話ね。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html#gijiroku080801
1998年4月9日の会合で尾身経済企画庁長官が大暴れした事をネタにした訳ですが、これも今になって読むと味わいが深いものがあります(^^)。ということで再掲しますけど。
1998年4月9日の決定会合議事要旨35ページから。
『今度のレポートは大変大事だと思っている。今の分析を全体としてみて、パターン認識的に景気が下に行きそうだということを説明するためにいろいろなことをくっつけているような感じがする。私どもも景気の現状の厳しさについては、日銀とそれほど違わない考え方を持っているが、政策責任官庁としては、この日本の景気を上げなければならないということで、いろいろな手を打っている訳である。そのいろいろな手を打つという状況の下で、明日、月例経済報告を出す。そして、「景気が停滞をしていて、厳しさが増している」という表現でいく。しかし、資料−3の1ページは「マイナス方向に働き始めており」と言っている。つまり景気の循環局面がマイナスの方向であるという表現になっている。』
『我々は、今度の対策で、景気を上に向けようとして、対策を出す訳である。だから、景気の底は3月か4月であるという方向でやっていく。それを片方で、日銀がいわゆるエコノミスト的な分析で、「マイナスの方向に働き始めており」という感じにすると、我々としていろいろな対策をやった時にコンフィデンスが回復しない要因がこのレポートにあるというようになる可能性がある。』
『確かに、数字の動きは全部マイナスであるから、日銀としてはある部分のエコノミスト的な感覚で言えばそういう感じを持つのも分からなくはないが。それは良く分かっているが、このレポートそのものがマイナスの暗示に非常に敏感に反応しているものになっていて、プラスの暗示に反映していない。全部が感性が鈍くなっている状況である。感性が鈍くなっている状況の下において、それをやや強調するような下振れ圧力とか、マイナスの方向に働き始めているとか、そのような方向に行くと、せっかく我々が4月に対策を出した時に、経済の動向が下を向いているというレポートになり、「政府がいろいろなことをやっても気分が悪くなっているのでうまくいきませんよ」というような、我々の景気対策の効果を、ここではっきり申し上げるが、足を引っ張るようなレポートはなるべく避けてもらいたいと思う。(以下割愛、さっきのURL先には後半部分もあります)』
大した対策も用意しないでデフレ宣言を堂々実施した結果、すっかりデフレマインドが人口に膾炙してしまって、マインド調査関連での物価見通しに関する数値が物凄い勢いで悪化してしまうという大変にセクシーな実績を残しておられるお遍路カイワレ大先生および閣僚一同は尾身さんの言葉を百万回味わうべきだと思います。
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2010/01/14
○1999年4月9日の金融政策決定会合議事録ネタリターンズ
過去の関連駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html
今回は速水総裁の発言から。発言は議事録本文75ページからなのですが、まさに先般の「中長期的な物価安定の理解の明確化」に繋がる論点についてとか、財政ファイナンス問題に関してとかの話をしていた部分がありましたので、発言の最後の方を先に引用します。単に時間の都合で今日はちょっとだけ引用ですというのもあるのですが(汗)。
本文77ページからです。
『一方、デフレ懸念があるならば、日本銀行は一段の緩和を行わないのかという論点についても、そもそも一段の金融緩和の余地が残されているのかという本質的な問題に関わってくる。つまり、金利の引き下げ余地がほとんどなくても、何か量的なターゲットを持つようになれば、本当に追加的な金融緩和の余地を作り出すことができるのか、その場合、際限のない財政赤字のマネタイゼーションに繋がるリスクはないのか、といった点である。』
暫定的にとか言っておっぱじめた事が延々と続くのが日本の仕様でもありますので、ここの論点ってやはりなおざりにしない方が良いと思うのであったりします。
『そして、この財政赤字のマネタイゼーションの問題を物価安定の観点から理解しようとすると、目先のデフレ懸念を払拭するためには、将来のインフレリスクをためこんでいくリスクがある。そうしたリスクを内包する政策であっても、次々に行なっていって良いのかという厄介な論点をはらんでいる。』
ふむふむ。
『金融政策は打ち尽くしたというイメージを与えないためにも、量的なターゲットを設けるべきではないかという考え方もあるかもしれない。しかし、私はやれることとやれないこと、あるいはやってはいけないことを整理したうえで、仮に現時点で対外的に分かりやすいメッセージをより明確に伝えるべきであるのであれば、そのメッセージは我々が経済情勢をどう判断しているかに関する詳しい説明とともに、デフレ懸念の払拭に向けて日本銀行としてやるべきことは全て行っている、あるいはほとんど行っていることに重点を置くものであると考えている。そうすることが、わが国全体の経済政策を考えるうえで、地に足のついた議論を促すことに資するのではないか。』
経済情勢をどう判断しているかに関する説明とデフレ懸念の払拭という話のセットというのはまさに「展望レポート」と「中長期的な物価安定の理解」のセットと同じ話でありますな。
で、そこまでは良いのですが、「日本銀行としてやるべきことは全て行っている、あるいはほとんど行っていることに重点を置く」という結果として、「日銀は引き締めバイアス」という認識が世間一般に広がってしまうのもこれまた困ったちゃんな所で、金利市場の人達だけが理解すれば金融政策そのもの問題無いという話かというと、期待に働きかけるとかいう論点を考えるとこれまた不十分じゃないのという気もするのであります。難しい所ではありますけどね。
ところで、この時期っていうのは「デフレ懸念の払拭に向けて」という言い方で金融緩和政策を継続していくという話でしたが、現在はデフレ懸念どころかデフレな訳でございまして(−−;)誠に遺憾の極みであると存じますという所でしょう。
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2010/01/07
○何となくウダウダと金融政策決定会合議事録ネタが続くのだ(今日は軽く)
ということで、引き続き1999年4月9日に実施された金融政策決定会合の議事要旨からのネタを引っ張るのであります。折角タイピングしたので使わないとMOTTAINAI精神ではないかというツッコミに関してはその通りと申し上げておきましょう(^^)。
・藤原副総裁の論点、構造改革をサポートする為には金融緩和を継続とな
藤原副総裁の発言。議事録本文73ページから。
『現状維持という判断のナイーブな趣旨説明としては、結局、財政政策、金融政策ともに最大限やれることはやってきたということだと思う。世の中のコンセンサスであるこれまでの金融システムの再構築路線をさらに確実に進めていきながら、今後は企業・産業を中心としたサプライサイドの構造調整を推し進めていく方向になってきているのではないか。』
結局構造調整って永遠に言われ続けているような気がしますな(寂)
『しかし、構造調整も具体論になるとなかなか大変である。しかも、調整を進める企業自体のリストラが不可避であることを考えると、マクロ的にはプラスの効果よりもマイナスのデフレ効果が先行することを十分に覚悟していく必要がある。従来のように、年度後半に景気が息切れするだろうという見通しの下に、再び同じような考え方の需要拡大策に安易に依存していくのは余りにも教訓を生かさない展望のない話である。』
何かこれまた永遠に・・・
『信用不安というパニッキーな事態が一応遠退きつつある訳であり、臍を固めて構造改革の問題に取り組むことが重要だと思う。勿論、その際に付随して起きる深刻な雇用問題に万全の対応で臨みながら新規事業活動の環境を整備していくべきである。その上で民間部門から新しいビジネスが育っていくのを待つという基本的スタンスが重要である。』
『その間、金融政策は現在の十分な緩和基調を維持し、経済活動の下支えの役割を引き続き果たしていかなければならないし、それにより構造調整を進める企業部門にとっての資金繰り不安を和らげ、且つ資金調達コストの引き下げにも役立っていく。それが調整過程における痛みを中和する作用を果たすことになろうかと思う。金融政策は現時点でそれ以上の役割を担うことは出来ないのではないかと考える。これまで発揮してきた下支えの効果を今後も持続させていく必要があるという意味で、現状維持を主張したい。』
まあ特にコメントはせずに引用だけしてみました(他の人の意見を紹介しているのに藤原さんのを引用しないのも何ですから)が、金融政策の具体的な論点についての話じゃないのでまあ軽く引用だけでありました。後日速水総裁の発言の引用を致したく存じます。
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2010/01/06
○植田委員の指摘(その2):政策スタンスに対する強い決意を示すことに関して
つーことで昨日の続きですが、植田委員の発言順からすると次のネタが先にあるのですが、書き物の都合上昨日の続きと書きつつちょっとだけ発言の中の順序で後にある部分を先に引用します。まあモノが議事録というそのものズバリですので、あまり恣意的に順番変えたり割愛するのは良くないと思ってますがどうもすいません。
ということで、議事録本文72ページの真ん中辺りから。
『その点を申し上げた上で、前回お話した点とかなり重なるが、山口副総裁が言われたことと関係があるため、若干敷衍して私の意見を再度申し上げてみたい。すなわち、コールレートの最近の低下幅と比べると、色々な金融資産の価格、特にターム物金利の低下幅等は非常に大きいが、これをどう解釈するかという問題がある。量的緩和等への期待も織り込まれているのではないかという話があったが、別の角度からもある程度説明できるのではないか。』
その点というのは後で引用しますが、中原委員が指摘した実質金利とマネーの量が対応するという議論に対する反論部分です。
『つまり、金融政策のその他金利への影響はコールレートの水準そのものよりは、現在から将来にかけての金融政策のスタンスについてマーケットがいかなるパーセプションを持つかで決まってくると思う。』
ということで、後に時間軸効果と言われる件についての論点です(^^)。
『今回の場合も25bpからゼロに下がった変化幅が重要だったというよりは、ゼロにすることがもたらす何らかの決意やコミットメントをマーケットが感じ取り、それがオーバーナイト市場以外の市場にも波及したと解釈できる。すなわち、かなりの期間に亘りオーバーナイト金利がゼロの水準を続けるという決意をみせているのではないかというところに反応し、それがターム物等、イールドカーブの長目のところに徐々に波及していったプロセスであると解釈できるのではないか。』
10年以上経った今にしてみればこの結論なんでしょうなと思われる次第で。
『その意味では、量的緩和が目指しているものと同様の効果を、そうした決意をマーケットが感じ取ってくれたことにより作り出しているように思われる。量を出すことが重要というよりは、強いコミットメントを通じて金融緩和の強い姿勢をマーケットに伝えるというところに力点がある。』
バーナンキ議長の実施した各種買取に関しても、個別にどれがどういう風に効いたのかと言う話になると財務省証券買入のように最初に言ってた狙いに関しては全然効いていないけれども、恐らく「強いコミットメントを通じて金融緩和の強い姿勢をマーケットに伝える」という点での効果は思いっきりあったのではないかと見られる次第でありまして、まさにこの辺りの指摘に通じるものがありますな。
『これに関してテクニカルになるが、注意すべき点はオーバーナイト市場に限れば金利の低下余地はなくなっており、変動余地があるとすれば上向きの方向である。従って、他の手段による緩和を除けば、金融政策の将来像について若干でも不確実性が出てくると、金利を上げる方向でマーケットは受け取る。そうした不確実性が増大すれば、オーバーナイトをゼロに据え置いてもターム物金利は上昇を始める可能性があることになる。勿論、景気が良くなる中でそうした状況が起こるのは自然なことであるが、そうでない時に不確実性が出てくることは極力避けたい。』
これはまあ匙加減が難しい話なのですが、その後の量的緩和解除に向けた動きの中で、いわゆる地均しのようなものが始まった時に植田さんはその動きに対しては批判的な発言をしてまして、まあその辺りあたくしも以前にご紹介したのがこの辺りにございましたです。ご参考までに。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugenueda.html#ueda051031
『従って、山口副総裁が言われたように、何らかの形でオーバーナイトゼロの政策に強いコミットメントを持っていることをマーケット等に表明することは私も共感を覚える。我々の経済に対する見方は経済月報に示されるのであり、月報の中でデフレリスクがなくなったとか、持続的経済成長のパスに乗り始めたという見方が示されるまでは続けると表明すれば、非常に強いコミットメントになると思う。あるいは、総裁の記者会見等で表明して頂くという手もある。とにかく三木委員が指摘したような副作用も我々としては認識しつつ、オーバーナイトゼロの政策を当面続けることを追加的に表明してみることは賛成である。』
ただまあ残念なことに、と言うべきなのかどうか知りませんが、金融政策に関する話って金融市場でもよく伝わらない面が多々ございまして、先般の日銀の「中長期的な物価安定の理解の明確化」みたいなもんを出さないと話が始まらないという困ったちゃんの事態もござんすが、まあこれらの「見せ方」に関しては日本だけではなく他の主要国でも悩んでいる所でしょうな。
○植田委員の指摘と中原委員の反論・・・なのですけど・・・・
で、先程飛ばした部分なのですけれども、植田さんと中原さんが論争をしていると言うと美しいのですが・・・・・
議事録本文72ページの頭の辺りから引用。
『中原委員の先程の意見の中で一つ賛成できない点がある。それは名目金利がゼロになった後は実質金利とマネーの量が対応するという議論である。』
中原さんの議論は詳しくは以前ご紹介しましたので最初方のリンク先をご参照くださいませ。
『これは極めて難しい議論をされるのであれば別であるが、普通に考えられる範囲では初歩的な誤りである。』
初歩的な誤りキタコレ(・∀・)
『すなわち、期待インフレ率が上昇し、実質金利が低下し、IS曲線を通じて景気がよくなり、それが貨幣需要を押上げ、マネーサプライを増やしていくルートがあるかもしれない。しかし、いわゆるLM曲線に金融政策が直接働きかける場合は、量と金利の関係は量と名目金利の関係である。別に表現すれば、仮に何らかの理由で期待インフレ率が上がったとすると、名目金利は後藤委員も言われたように、場合によっては上昇する可能性があるし、せいぜい低下しないということである。債券等の名目金利が若干上昇する。』
中原委員はどうもマネーを出して実質金利を下げるというような話をしていたみたいなのですが、期待インフレ率が上昇した場合って当然ながら中長期の名目金利には上昇圧力が掛かる訳でありまして、「期待インフレ率を引き上げながら名目金利も下げる」というような虫の良い話というのは机の上での話では出来るのかも知れませんが、中々難しいんじゃねえのかというのはそれこそ先般実施したFRBの長期財務省証券絶賛大購入でも示されているんじゃねえのかと思われますがどうなのでしょうか。とは言え、期待インフレ率が上昇してくれりゃあ名目の金利が上がっても実は問題無い(実質が上がる訳ではない)のだからそれはそれで政策としては十分にアリエールな話だと思いますけど。
で、前半で引用した部分が続くのですが、この「初歩的な誤り」に中原さんが反論した部分が議事録本文74ページからございます。実はその前に藤原副総裁の発言がありまして、これはこれでまたネタになるのですが、そこは飛ばしまして植田VS中原の議論を引用。
『中原委員
植田委員に反論したい。一つは初歩的な誤りだと言われたが、それはそうかもしれないが、私はこの点についても世界的な金融論の先生と色々ディスカスして申し上げており、もし論争されるのであればその方々を紹介する。
植田委員
それはフェアーな議論ではない。中原委員の意見としてここで述べて頂きたい。
中原委員
納得しているから言っている訳である。
植田委員
そうであれば、私の言ったことに反論してもらいたい。
中原委員
IS曲線の影響など色々あるとは思う。ただ、ここで長々と言っても仕方ないが、私は若干違うということである。今回の緩和が何故効いたかといえば、2月12日がサプライズだったということと、2月25日以降に非常なスピードをもってアグレッシブに引き下げたことである。しかし、それは先ほど言われたように、日銀の意思とは離れてどこかでフェード・アウトしてくる危険性がある。私は現在のスタンスを続けていくと、仮に経済の実態が悪くなればそこで効かなくなると思う。』
・・・・最後は明らかに中原さん話を逸らしてフェードアウト状態になっておりまして、まあ中原さんも変に意地張らなくても良いのにという感じでして、別に政策論として中原さんは実質金利がどうのこうのという点に固執する必要は無い訳で、単に「より緩和効果のある政策手段を実施すべきである」という点での主張をすりゃ良かったのではないかと思うのですが。
ただまあその手段について中原さんはマネタリーベースやベースマネーに関する数値の部分に対する拘りが強かったので、話として噛み合わなかったんでしょうなあと思われる次第。この頃の議論って「短期金利の誘導水準がゼロ制約に引っ掛かってしまった後でより緩和効果を出す政策ツールがあるのかないのか、あるとすればどのような物か」という点で盛り上がっていたと見られます。
後知恵で議論を読めば色々と意地の悪いツッコミもできますけれども、まあそれよりは10年以上前にも現在の主要国での金融政策論議に通じる議論が行われていた事や、その内容を読むことができるという事を素直に喜ぶべきなのでしょうな。
#ということで、続きは次にネタの無い時または近日中に(^^)
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2010/01/05
お題「久々の虫干しネタで1999年4月9日の決定会合議事録です」
昨年の決定会合議事録シリーズなのは年初ネタなし状態だからだというのは仕様です。何せ前回このネタやったのが昨年8月でございましてですな(大汗)。
以前の決定会合議事録ネタはこちらに。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html
で、決定会合議事録は日銀サイトのここにリンクがございます(PDF8Mとか平気であるので、当該議事録の直リンは控える)。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
前回(去年の8月ですいませんが)引用した続きなのですが、この辺りの議論は10年経った現在になって読みますと中々味わいが深いものがあります。というか量的緩和だのマネーのどうのこうのだの、金融市場機能だのという話をまさにこの時もやっていたと思いますと、現在主要国の金融政策でああでもないこうでもないという話をしている議論に通じるものがございます。
○篠塚委員の指摘:ゼロ金利政策による市場の緊張緩和(なのかな?)
上記URLから1999年4月9日の議事録(この回は割とページ数が多く無くて議事録は93ページ立て)を見て頂くとしまして(高速インターネット回線じゃない人はPCが固まるのでご注意)、そちらの69ページから。
なお、こちらの議事録は議事録の紙ベースの物をスキャンしてPDF化した(と思われる)ものですので、引用と申しましてもあたくしが自力でタイプ打ちしたものなので、(一応確認しましたが)誤字脱字などがございましたらご勘弁賜りたく存じます。
では引用開始。
『篠塚委員
私は、これまでGDPのコアを形成している消費、設備投資に資金需要がない時に、資金を大量に供給しても実体経済への効果が不明であるという立場をとってきたが、ここにきて、ゼロ金利に誘導した結果、確かに小康状態にあるとみている。ただ、小康状態にはあるが、かなり不安定な状況であるとも思っている。』
ということで、資金需要が無い時に資金を供給して実体経済に波及するのか(そりゃ無限に出せばどこかで凄い影響が出てきますけれども、それこそ昨日ルワンダ中央銀行総裁日記ネタで紹介した服部正也さんの国会答弁関連じゃないですけど、政策実施において効率というものも考えないとって話でしょうな)という話ですが、公的資金注入とゼロ金利政策の影響について以下のように指摘しています。
『まず第一点は、公的資金7.5兆円が投入された結果についてである。数字で整理して漸く分かったが、3月30日時点で日本銀行から1.2兆円、農中から3.3兆円、外銀等から3兆円と預保に合計で7.5兆円入った。その7.5兆円の公的資金を受け入れた金融機関がどのように動いたのかであるが、3.8兆円とかなり大きい額がコール市場で運用されていた。準備預金や本行オペに流れたところは除くと、その他負債等の返済として投信、地銀等に2.6兆円流れていた。その2.6兆円のうち2兆円がオープン市場に流れ、残りの0.6兆円がまたコール市場に戻るというように、結局7.5兆円の公的資金からコール市場に3.8兆円、負債から0.6兆円と入ってきている。外銀は3兆預保に貸付けたが、外銀はコール市場から1.9兆円取っていた。農中は3.3兆円預保に貸付けたが、その際、コール市場から(空白)兆円取っていた。』(引用者追記:個別行の非公開係数のため、空白で公表されたものと思われます)
と、数字の話が多くて何ですが、公的資金注入と言いましてもじゃあ実際問題としてその間のキャッシュフローベースでの動きはどうだったのかという話でありますな。
『これまで日銀とインターバンクとの間で資金が往復していたところに、預保が入って資金が回るようになった、というイメージが出てきた。問題は、日銀がゼロ金利政策を採った結果、こうした事態が発生したことである。仮に、ゼロ金利でなければ、農中も外銀もこれ程大量には出せなかったであろう。私共は日本銀行が預保の必要資金の半分以上を受け持たなくてはならないと思い、非常にパニックになった時期があった。現在小康状態にあるにしても、預保の借入れ期限が来た時にはどうなるのかという問題が残る。外銀がいつまでもこうした資金運用を繰り返して行くのかどうか非常に不安定な材料である。現時点だけをとれば、これもゼロ金利によってもたらされたということができるが、非常に先行きが不安である。』
篠塚さんはご存じのように(って最近の人は知らんか)ゼロ金利政策に常に否定的な立場をとっていた少数派(というか1名だけでしたが)でしたので、こういう説明になっていますが、この説明をゼロ金利政策の効果としてみた場合、預金保険機構による銀行への資本増強(この時の資本増強って同年3月に行われた大手行への7.5兆円投入ってやつですね)とゼロ金利政策による流動性供与の拡大によってインターバンク市場のストレスを軽減したという議論になると思われる訳でして、後になって言われている「量的緩和によって金融市場の流動性問題を軽減した」という論点や、それこそFRBによる信用緩和政策が「中央銀行が市場の代替となって機能する事によって市場機能毀損による経済への悪影響を防ぐ」という動きとなっている事にも通じていく指摘なんじゃないかと思います。
『昨年9月と今回とで二回の金融緩和措置を実施してきたが、9月の金融緩和と今回のゼロ金利を比べて、銀行収益にどのようなインパクトがあったかを分析してみた。資金調達利回りから運用利回りを引き算してどうなったかという単純なアプローチをしてみると、9月の場合の利鞘は+0.02%と僅かであるが鞘があった。しかし今回の2月22日の週から3月23日までの期間の計算では、調達利回りと運用利回りの差はほとんどゼロであった。従って、両方(9月と2月)合わせれば若干の利鞘はあるが、特に今回のゼロ金利誘導により、銀行収益へのインパクトはかなり厳しい状況になっている。そうした状況の下で公的資金が注入され、来年3月までに貸出残高を総額6.7兆円にする方針である。各銀行は慎重に審査をしながら、融資を伸ばしていかざるを得ない。低金利水準の下での難しさがあり、やはりゼロ金利というのは非常事態であると認識した。』
例によって結論が篠塚さん仕様なのですが、そこを気にしないで読みますと、不良債権処理をするのだから銀行収益へのインパクトがどうなのよという論点。最近はこういう論点に関しては意識的なのか無意識なのかは別として微妙に避ける傾向がありますが、銀行の財務リストラを行う状況下において、銀行収益が何らかの形で出る(米国のようにイールドカーブがスティープして国債の長短スプレッドでも期間収益が出るというのが美しいのだが)かどうかというのは実はバランスシート調整途上の中では重要な話でもあるかと。
『三番目はやはりゼロ金利の結果、ベースマネーは緩やかに上昇してきたし、マネーサプライも徐々に増えてきている。このマネーサプライの緩やかな上昇と名目GDPとのギャップがどういうところに流れていくかについては分からない。ゴルフ会員権や店頭株の上昇に表れたという意味では、あるいは二次バブルのような状況になっているのかもしれない。いずれにしても、ゼロ金利によって実体経済にどのような影響が出てきているのかが非常に不明である。以上、現在は小康状態にあるが、非常に不安定な状況にあると思っている。』
で、2000年初頭にかけてIT関連株式を中心にバブルが絶賛大発生して大崩壊したのはご案内の通りかと存じます。そのITバブル景気にうっかり煽られてゼロ金利解除をしたのはあっちゃーという感じですが(-_-メ)。
ということで、後になって読みますと中々重要な論点がいくつも指摘されているのですなあと思われるのでありました。また、現在の米国や英国、欧州なども実質的には低金利政策でもゼロ金利にベタベタに張り付ける政策をしていないという(というか英国なんぞは0.5%から下げても効果が少ないとか言ってるくらいですし)のも、実は味わいがあるのかも知れません。
○植田委員の指摘(その1):量か金利かという論点
その1と書いている位ですからその2があるのですが、その2は(どうせ今日もネタが無いでしょうから)明日に続くでござるの巻、とネタを引っ張る伏線でどうもすいません。
#というような姑息な事をしていると今日の市場で大ネタが出たりするフラグなのですが
議事録本文71ページから。
『植田委員
私は現状維持ということだけ申し上げようと思っていた。しかし、再び量か金利かという議論が出ており、私はこの点に関しては十分申し上げた積りだったが、やや議論が混乱しているため、再度意見を申し上げてみたい。』
というのは具体的には中原委員の議論(さっき上の方でリンク入れておいた昨年8月に書いた駄文をご参照くだされ)に関する所です。
『まず第一に、量的緩和といっても色々あるが、前回も申し上げたように、日本銀行は日々の金融調節のインストゥルメントとして朝方の積み上、積み下により量を取り敢えずみている。それを用いて日々のターゲットであるコールレートをヒットしようとしている。ただ、その第一段階での量としてのインストゥルメントを量的目標とは呼ばない。』
さよですな。
『その上で、間にコールレートがあり、その先に量的緩和という場合は量に関する中間目標を設定するということだと思う。勿論、間にあるコールレートを飛ばして中間目標であるマネタリーベースやベースマネーをヒットしようとする方法もあり得る。コールの先にある量についての何等かの新目標を持つのが良いのかどうか、が通常の量的緩和論の議論の対象ではないか。』
これまたそうですな。
『その点については色々議論してきたが、私個人はそうした目標を掲げることにある種の魅力は感じつつも、様々な理由から難しいため取り敢えず提案していないし、本席での平均的な議論としては設定は難しいということだったと思う。私なりの理由としては、目標をどのように設定するのかという基準が難しいことと、設定した場合にヒットできるかどうかにも若干難しい問題があるということである。』
その後当座預金残高ターゲットという誰が考え付いたのか存じませんが(企画局の中の誰かじゃないのとは思いますが)極めて画期的なコントローラブルな「目標」が開発されて2001年3月に量的緩和政策と言われるものが実施されましたが、この量的緩和政策って実際問題としては植田委員がここで指摘し、中原委員がこの会合だけでない折に触れて提案していた「マネタリーベースやベースマネーをヒットしようとする方法」とはちょっと(どころではなく)話が違うのでは無いかと思うのであります。
#つまり、中原委員が「私の言っていた量的緩和政策が実施された」と鬼の首を取ったように著書で書いていましたが、それは看板は量的緩和政策だけども中原さんが主張してたマネタリーベースあるいはベースマネーの目標とは別もんだったんじゃないのかねという観が思いっきりあるのですけど、まあそれは蛇足
で、この続きもオモロイのですが、時間と量とあたくしのタイピング能力(さすがにこのタイピングは予め行ってますけど見直しが結構手間だったりするのと、引用大会をするとあっという間にタイピングのストックが無くなるので^^)の問題から続きは明日または後日ということで。
#以上超虫干しネタでございました、明日も続く(つもり)
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2009/08/19
お題「量的緩和に関する各種論点:1999年4月9日会合から」
諸般の事情により今日も虫干しネタです。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
先日来引用しています1999年4月9日の決定会合における議論の続きです。ゼロ金利政策のようなもの(まずは0.15%に下げてその後出来るだけ低下させるという誘導目標ね)を2月に実施し、3月の期末越えでも0.03%〜0.05%で推移していた頃で、まだまだ都銀などは超過準備を積まないような運営をしていたという時代でした。
ちなみに、この時の議事録の最初の方では金融市場情勢について山下金融市場局長の説明および質疑があったのですが、超過準備に関する所で、引き続き都銀には超過準備を積まないようにしているという話をしていて、本文10ページから11ページで、3月積み期に都銀2行が超過準備で着地してしまったので、「ブタ積みしてどうもすいません」と担当部長が謝りに来たという話が紹介されていて、おお懐かしい話じゃと思いましたですよ。
ということで、積み上1兆円くらいでの運営の結果そんなレートが形成されてましたという状況だったということを念頭に置きつつ、今日は三木審議委員と中原審議委員の意見をまたまた全文引用しつつ、当時今の非伝統的政策に関して色々と整理されつつある論点が議論されていたことを見ていきたいと思います。
○三木委員の論点から:出すのは良いけど資金需要があるのか
三木委員が企業金融の現状について指摘しています。
『企業向けの貸出マーケットにおいては、正常な企業活動に必要な資金は十分に出回っている状況にある。むしろ企業の設備資金や運転資金需要が細っているために、銀行側がいくら企業の前に資金を積んでも借り入れにつながらないという状況になっているのではないか。また、そうした銀行の融資スタンスの前傾化を受けて、企業の流動性リスクに対する疑念が大幅に後退しており、4月に入ってから多くの企業が手許流動性を取り崩しつつある。』
なるほどなるほど。
『この間、銀行間の資金マーケットをみると、必要な資金は十分に取れる状況が続いており、余資がマーケットに滞留する中で、予想外の資金放出圧力から技術的にも短期金利のコントロールが難しくなる場面が散見されるような状態である。』
という状況ですよとなってます。で、この指摘っていうのは10年後の今になって考えてみると重要な論点でありまして、先日ご紹介した同じ席での武富審議委員の指摘にも通じるのですが、資金需要の無い所にマネーを出すという行為をしても、結局使う人がいないのであれば短期金融市場の中で金がババ抜きのように回るだけであって、究極的にはブタ積みが積みあがるだけとなるという話ですねという事に繋がる指摘だと思います。
つまり、昨日ご紹介した白川総裁の非伝統的政策に関する論点整理(悪態もおまけについてましたが)にもございましたが、量そのものが定性的には意味があったのは確かですけれども、それが定量的な効果を出していたのかが微妙ではございませんですかという話になる訳でありまして、当時量的緩和がどうしたこうしたという論議を行う中で、量の定量的効果に関する指摘がこのように行われていたという事なんでしょうね。
『こうした点を考えると、本行の現在の金融政策は当面十分に目的を達していると評価し得る。短期金融市場の市場機能を損なわないように、資金の流れに注意深く目配りする配慮は怠れないが、漸く経済にみえ始めたコンフィデンスの回復の動きを確かなものにするとともに、構造調整問題に積極的に取組もうとする実体経済に対して、引き続き資金を潤沢に供給し、オーバーナイト金利をゼロ近傍に据え置くことが望ましい。今回は現状維持である。』
ということで。
○三木委員の論点から:財政と金融について&政策の手段について
で、その続き。
『若干付け加えると、前回も申し上げたように、現在の日本は金利収入が経済活動から消えかけている世界で唯一の国になっている。これは正常な経済の安定成長を考えた場合には、企業にとっても、個人にとっても誠に異常な事態である。その点を明確に認識しておかなければならない。』
そういやこのときは日本だけがこんな有様でしたね(涙)。
『本行のゼロ金利近傍への誘導と潤沢な流動性の供給は、日本経済がデフレの悪循環に陥ることを回避するために行っているのであり、企業の構造調整リストラ、銀行貸出の増加、設備投資へと繋がっていく期待を込めた、財政政策をサポートする金融政策である。』
ということで、その辺は「低金利政策で財政サポート」というのは当時は普通に話をしてたんですね。まだ財政マネタイズがどうのこうのとかはあまり言われてなかったのでしょうか。
『この金融政策の置かれているポジションと、政策の効果を十分に引き出すことを考えると、金融政策へのさらなる過度の期待は日本経済再生にとってもマイナスの副作用が非常に大きいと思う。』
当時の論点がどうなっていたのかとかさすがに記憶が怪しい(というかこの頃短期金融市場から遠い所にいたので正直よく判らん)ので何ですけれども、何か意見の流れを見ていると「闇雲にマネーの量を拡大させる政策をして効くのか」という話をしているのか「財政マネタイズ政策をするのはマズイんじゃないか」という話をしているのか、それとも他の話をしているのか良くわかりませんが、まあこういう指摘をしているということでそのまま引用してみました。
『後藤委員が言われるように、量的緩和という言葉が一人歩きしているという感じが非常に強い。この問題について具体的なアイデアがある訳ではないが、政策の目的は何かということと、政策目的を達成する金融調節の手段の問題とは峻別して議論をしておく必要がある。本会合での議論でもこの点を明確に分けて考えていかないと、量的緩和論の一人歩きはいつまで経っても直らない懸念がある。』
後藤審議委員の論点は先日武富審議委員の論点とともにご紹介したのでそっちをご覧頂きたいのですが、コントローラビリティーとフィージビリティーの件と、インフレ期待を醸成するのはいいけどそれって長期金利が上昇して金利ルートでの悪影響の方が先にでてこねえか?という話ですな。
○中原委員の論点から:名目金利がゼロになった後の量は・・・・・
次の発言者は中原伸之審議委員です。
『私は現状維持には反対であり、後程別途の提案をする、委員方と私の一つの大きな違いは、前途に対する見方が非常に異なることである。私は先行きをシビアに考えており、一段と金融政策で手を打たなければ益々失速するということをまず申し上げておく。』
という景気認識だったんですな。ほほう。
『また、先ほどの山口副総裁の指摘もそうであるが、名目金利がゼロになっていない段階までは名目金利と量は確かに裏表の関係がある訳であり、なかなか区別し難いところがある。ただ、2月の積み期では4兆1500億円、今月は昨日までで約7兆円の過剰準備があった訳であり、量的な緩和が裏腹の裏の関係であるにしても効果が出ている。私はそれでは不十分だと言っている訳である。』
実はここだけを読むと中原さんが何を言っているのかというのが10年後の今読むとイミフな所が思いっきりあるのですが、どうも前後の発言を読みながら中原さんがどういう認識をしていたのかという事を想像すると、金利を下げて当面の低金利が継続するという市場の認識が広がって金利が低下していく動きに対して、中原審議委員的には超過準備の「量」が「定量的に」効果を現しているという認識を持っていたのではないかと思われます。
10年後の後知恵で考えると、超過準備が4兆だろうが7兆だろうが、その金が短期金融市場の中で留まっているだけであったら定量的な効果ってそんなに変わらない(なお、突っ込まれるのやだからこの辺で申し上げますが、「じゃあバーナンキの背理法」とか言われるのですが、それは財政の話が絡んでくるので話が違ってきますよね、あくまでも財政中立の命題で定量的な効果がどうのこうのという話をしているので念のため)ように思える(「ように思える」と書いたのは、本当の所が今でも良く判らないからですな)わけでして、ここでの中原審議委員の主張も何か微妙な気がするのですけど、当時はそういう事を世界初に実施しましたという状態ですから、手探りで色々な意見が出るのは当然だと思います。
『仮に、本当に名目金利がゼロになれば、そこで裏腹の関係は切れ、今度は実質金利と量が裏腹の関係になる。現時点はそこまで到達していないため、山口副総裁と私の違いは裏腹でも構わない。』
中原審議委員的にはマネーの量を出す事によって実質金利の引き下げを行うという話をしたのかなあという気がしますが、また後日紹介しますが、ここの部分に植田審議委員が壮烈なツッコミをしてお互い湯気ポッポー状態になったのではないかと思われる部分があるのですけど、まあそこは後日お楽しみに。
『しかしその先、私が申し上げていたようなマネタリーベースの伸び率が10%ということになれば、全く違った世界である。2月の超過準備が1000億円とすれば、3月は恐らく約3000億円という感じであろうが、まだそれよりも上のオーダーの話をしている訳であり、それは全く別の世界の話である。量的緩和とは、名目金利がゼロになった後の話だと理解している。』
名目金利がゼロになった後では超過準備の機会費用がゼロ近傍に低下するから量を出しやすくなるということで、「量的緩和は名目ゼロの後の話」というのは誠にその通りであります。量が定量的にどうなのという話はまあ兎も角と致しまして。
『さらに、武富委員がマネー需要の有無を言われたが、それは大量に資金をつけた時に貸出先があるかどうかという話であり、幾つかのルートが考えられる以上、それがなくても緩和をする必要があるというのが私の意見である。マネー需要がないとしてもやらなければならない状態であると申し上げている積りである、ターゲットをどうするとか、コントローラビリティ、フィージビリティについては、一応それなりの研究を済ませており、量的緩和は十分に可能だと信じている。』
まあ確かに後日30兆円というのを実施したので、中原審議委員の言うように量的緩和は可能だったのですけれども、マネー需要が無い中で30兆円出した時の効果としてどうだったのかというのはまた別問題でしたわなという所で。
ただ、中原審議委員が出していた提案によるディレクティブでは、マネタリーベースの前年比増加率をターゲットにしていたのでありまして、それってコントローラビリティーやフィージビリティ的にどうなのよというのは今読んで疑問が物凄い勢いで起こる所であります。研究してるなら具体的にどういうオペレーションをするのかとかの研究結果を説明している部分を見たかったなあとは思います。もしかしたら他の所にあるのかもしれませんが・・・・
○中原委員の論点:じゃなくて指摘というか苦言です
『ここで是非申し上げておきたいことは、色々なマスコミに日銀幹部という名前で色々な意見が出てくる。例えば、ブリッジニュースの4月2日号に「日銀のある幹部は、量は十分出して、下手なターゲットは作らない」とある。こういうことを言われたければ、政策委員会で堂々と言ってもらいたい。マスコミを使って言うのであれば、名前を出して言ってもらいたい。本当に透明性、あるいは独立性、アカウンタビリティーというのであれば、政策委員会に出てきて議論すべきである。こうしたところで勝手な意見を流さないでもらいたい。執行部の方も宜しくその辺をお願いしたい。』
これは全く仰るとおり。まあ旧法時代の残滓って所で、最近この手の匿名幹部氏による発言みたいなのって出てこなくなりましたよね。
続きはそのうちやるでしょう。今日も虫干しネタで夏休み中のような話でどうもすいませんでした。
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2009/08/11
お題「量と金利に関する論点:1999年4月9日会合から」
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
に一覧がありますが、その中の1999年4月9日議事録を。
先日(8月3日)の駄文で時間軸の概念に関する山口副総裁の発言をちょっと引用しました。当面の金融政策に関する各委員の意見表明部分でして、本文62ページからなのですけれども、山口副総裁に続いて発言をした後藤審議委員および武富審議委員(肩書きは当然ながら全部当時のね)の意見を引用するでござるの巻。
で、まあ一部切り取りというのも何ですので、頑張って全部引用してみますです、なお一応タイポは確認した積りですけれども、転記間違いがございましたらご勘弁頂くという事で、議事録の本ちゃんを当たっていただきとう存じます。なお、適当に改行を入れます(本文は一段落がとても長い)のでよろしゅうに。
また、2月に事実上のゼロ金利政策を実施して1か月強経過し、色々と見えてきた物がある中での議論となっているので、本当の意味で手探りっていう感じを受けまして、まあ10年後にのうのうと後知恵でああだこうだ言うのは簡単ですけれども、それよりも現在の欧米の金融政策に関する論点にも通じる考察を手探りで行っていたという事に対して敬意を表するべきものであると考えます。
○後藤審議委員の意見から:(1)量と金利の関係、ターゲットの実現可能性
『私も現状の思い切った緩和スタンスを継続する下で、これまでの緩和が呼び起こしつつあるいろいろな変化を見定めていくことで宜しいのではないかと思う。』
現状維持に賛成ということです。
『中原委員と山口副総裁の間でご議論があったことにも関連して若干申し上げさせて頂く。量的拡大とか量的緩和という言葉が両義的に使われ、やや混乱しているのではないかという気がする。金利と量は同時決定であり、金利をターゲットにすれば量はマーケットの需給均衡点として決定されるし、量をターゲットにすれば金利は市場で事後的に決定される。』
『これまで金利をターゲットにして金利を引き下げてきた訳だが、これまでの利下げの誘導も各種のオペ手段を駆使して積み上供給を行ない、また為決時点の余剰資金を放置するといった量的な拡大により利下げを図ってきた。その意味で、金利をターゲットとしつつ、量的な拡大により金利の引き下げを誘導してきた訳である。狭い意味の量的緩和とは、そうした金利と量の関係を一応前提にしながらも、金融政策の操作ターゲットをどうするかという議論において、量をそのターゲットにする立場を量的緩和の立場と呼んでいるのだろうと思う。』
名目ゼロ制約に引っ掛かって物理的な低下余地が無くなるまでは後藤さんの指摘の通りかと存じます。で、その次にターゲットをどう置くべきかという話になります。
『確かにターゲットとしてどちらを採るかについては、先験的にどちらが良いか悪いかはなかなか断定し難いところがある。その時点の経済状況が例えば期待インフレ率が非常に振れ易いような状況であれば、名目金利のターゲットをみているだけでは、場合により間違うリスクを抱えることになる。反面資金需要が実体経済とは離れてシステム不安や2000年問題等により振れ易い状況であれば、量的なターゲットの下で量を拘束的に固定してしまうと、他の要素、例えば金利が乱高下するリスクを伴う。』
『その時々の状況判断が選択の条件になるだろうし、量の目標の算定値がフィージブルであるのかどうか、また拘束的な目標としてのコントローラビリティが十分にあるのかどうかを踏まえて、検討されるべきである。』
これは重要な論点でして、量の目標を作るにしてもその数値が日銀の日々の金融調節でコントロールが可能なもので、目標数値として現実的なものであるかどうかという観点が抜けると、通常の金融調節で何をやりゃ良いのよという話になり、結果として市場に影響するとすれば金利が不安定になっちゃいますよという事になるんでしょうな。
じゃあ「金利目標を設定しながら量の目標を」という意見もあるのでしょうけれども、この場合は両方の目標を同時に満たせなくなるケースでどちらを優先するのかという議論が生じる訳でして、まあそんな細けぇこたあいいんだよ!とか言われそうですけれども、政策実務面で立ち往生するような施策を出されましても政策運営担当者も困りますし、市場の方はもっと困りますのでありまして、政策運営の細部設計っていうのはとっても重要な話だと思うのですよね。
○後藤審議委員の意見から:(2)実質金利の話、期待形成の話
『さらに申し上げると、量的ターゲット論が特に実質ゼロ金利の状態が達成された後でリザーブの供給を増やすことにより、デフレ的な状況の下で期待インフレ率を高める実質金利の引き下げ策として提唱されている面もある。』
ということで実質金利の話。
『これは色々な期待形成に関わるため、植田委員もご意見があると思うが、一つのポイントは実質金利を引き下げ、かつマイルドなインフレに止めるというコントロールが巧く出来るかということである。』
『第二に本当にインフレ期待が生じるとすれば、長期の名目金利がそれを織り込んで上昇する可能性はないのだろうか。仮にそれを織り込んで長期の名目金利が上昇すれば、実質金利の引き下げにならない可能性がある。』
この辺の論点に関しては(今日は引用しませんというかできませんが)この後に植田審議委員や中原審議委員の意見表明部分でも更に論じられています。
で、この点をどうにかする為に長期国債買入っていう話もあるのでしょうけれども、実際問題として「民間クレジット環境の改善の為」と称して事実上は市場に対して「長期金利引き下げの為」と解釈できるような長期国債買入を行った昨今のFRBが結局長期金利を下げられませんでしたという状況もこれありという事で、短期と言うか政策金利という部分での実質金利引き下げというのは(政策金利はコントローラブルだから)議論として有りであっても、中期以降の金利という話になると実質金利がどうこうという話をするとこれがまた難しいパズルのようになるので、論点として持って来るとこういう話になるのではないかと。
で、第三のポイントは10年後の今読みますと「????」という感じなのですれども、当時の状況ってこうだったんですねという事で歴史的な背景が透けて見えるのではないでしょうか。
『第三に政策的にインフレ期待を醸成するということは、ここ3年余りの長きに亘って継続・強化してきた低金利政策に対する社会的な批判を激化させることになりはしないかということである。』
・・・・・・!!
『仮にそうした政策を採った場合にどうなるかはなかなか予測し難いが、名目金利ゼロでも必ずしも貸出が伸びていない状況下で実質金利を引き下げても、−金融機関のリスクテイク姿勢が藤原副総裁の言われたように進んでいけばともかく-流動性が証券投資に向かってしまい、投資や消費を刺激するよりも、円安を通じて経常黒字の増加や資本の流出という結果に終ることになりはしないかが気になる。』
・・・・・・!!
『全てに確定的な答えを持っている訳ではないが、そうした問題を検討してからでなければ、実質金利ゼロの下で期待インフレ率を高めるための量的ターゲット論に踏み切るのは難しいのではないか。』
○武富審議委員の意見から:(1)量を人工的に出せるのか
『私も結論は金融政策は現状の極めて大胆な緩和姿勢を継続するということである。』
ということで現状維持賛成。
『翌日物の金利が実質ゼロになった下で、これまで明らかになったこと、あるいは分からないことが明らかになったことを少し申し述べたい。』
『中央銀行はシステムに対してリザーブを人工的に注入出来るのか、あるいはコントロールが自由自在なのかといえば、そこにマネー需要さえあればかなりのことは出来る。しかし、マネー需要がそもそもない場合は、それはやはり出来ない。』
ここで「でも結局当座預金残高目標が出来たじゃないか」とツッコムのは多分各委員の発言の真意からするとズレたツッコミだと思うのですよ。つまり、福井総裁時代に当座預金残高目標30兆円とかやりましたけれども、この時ってその積み上がった当座預金残高って金融市場的にはブタ積みが積み上がったでござるの巻でありまして、勿論時間軸だとかそういう効果はあったと思われますけれども、量そのものに定量的な効果があったのかというと(ゼロ金利にして超過準備を出すという定性的な部分での効果は当然あったのですけれども)微妙な話だと思う(まあそこは議論が分かれるところで、あくまでも当時の市場現場労務者のあたくしがそう思うというだけの話です、為念)次第でして、ここで武富さんが言っている話と30兆円の話はちょっと意味合いが異なると思います。
『仮に、マネー需要があるならば、極端な言い方をすれば金利水準がゼロでも0.5%でも同じ量は出ていくとみている。0.5%の時点では調節が色々難しく、足の長いものを出して、最後は0.5%に収めるために回収するといった調節を要したのは、市場に個別金融機関の信用リスク問題がある大変異常な事態が発生していたからである。これがある程度正常化してくる中では余り複雑な調節をしないで済む訳であり、そこにマネー需要さえあれば現在供給しているのと同じ程度の量も本来出せたはずだと思う。』
ちょっと話は違いますけれども、このくだりを読んでいたら、FRBの資産買入が金融市場正常化と共に自然減になっている姿とダブって参りました。
○武富審議委員の意見から:(2)期待形成の話
『マネーサプライ目標の議論やインフレ目標の議論は結局その中に期待形成という非常に分かり難いものが入っており、これについては議論しても恐らく始まらないと思う。むしろ問題はこちらサイドが金融調節で出来ること、出来ないことを明確にわきまえた上で、市場や世の中に良い意味の錯覚-金融の量と実体経済なりインフレとの間に安定した関係があるという錯覚-があるとすれば、それをどう巧く活用するかということだと思う。』
『その観点からは、ゼロ金利に見合うリザーブの残高は、ある程度マネー需要がある時には程々伸びるところに着目し、それを今少し見えるようにしていくことは量に対する期待にもある程度応え得ると思う。つまり、仮に量から出発し、期待形成というブラックボックスを通じて実体経済に何か波及するルートがあるとすれば、それも遠望して使っていくのが良い。』
ということで、実務的に出来る事を使って期待形成をどう行っていくのかということを考えていかなければいかんのじゃないかという意見だと思います。
で、この先は武富さんの市場に対する現状認識と見通しの話ですが、折角ですので引用させて頂きます。ということで、後藤さんと武富さんの意見を今日は引用したでござるの巻です。
『現在は市場の良い流れが続いており、大変結構であるが、撹乱要因があるとすれば、内外の資本移動がどのようになるかであり、その点を多少用心してみておくべきである。例えば、国内に入ってくる外国資本が対象として株式市場に向うと、当然円高の方向で為替市場にも響く訳であり、現在の微妙な市場全体の均衡がどこから向きを変えるかが心配である。さらに、企業収益の実体と株価形成の整合性、あるいは非整合性が出発点になるかもしれないし、当面一部の金融機関の破綻が起きた場合に個人資金の動きがどうなるか気掛かりである。この面ではまだ枠組みが出来たとはいえ、安心していられる問題ではなく、現状の枠内でいかにスピーディーに運用管理していくかが小康を得ている広い意味の市場の均衡を維持していく上で極めて重要である。』
ほほー。
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2009/08/03
○1999年4月9日の金融政策決定会合議事録
1999年前半の金融政策決定会合議事録が公開されていました。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
でね、まあ普通は2月12日の会合での利下げの話を見るのですが、あたくしは何故か「量的ターゲットVS時間軸」の議論があった4月9日の会合議事録を先に熟読するでござるの巻。
こちらの議事録はワープロソフトで作成した議事録の冊子をスキャナーか何かで読んでいるという代物ですので、引用となると手打ちをしないといけない(それ用の装置とかもあるのでしょうけれど持ってません)ので、準備しておりません(週末は読み物で忙しかったので、と言い訳)ので本日はちょっと引用できないのですけれども・・・・・・
えーっとですね、議事録本文の60ページから75ページのあたりに、量的ターゲットを出す話と、それよりもゼロ金利の時間軸政策(という用語は当時ありませんでしたけれども)を実施した方が良いのではという議論がございまして、興味深く読む事ができました。
議事録63ページにある山口泰副総裁(当時)の発言から一部引用します。
『ただ、このオーバーナイトレート・ゼロという政策をいつまで続けるべきかについては、あるいは今少し明確にした方が良いのではないかとも感じている。この点、総裁の様々なご発言の中でかなり明確な方針が表明されてきているし、ターム物金利の低下振りなどをみると、マーケットの中での理解も徐々に浸透している。しかし、現在の政策は経済の自律回復がみえ、且つ物価の下落圧力が減衰し始める局面までは維持する必要があると個人的には思っており、そのことを今少し鮮明にする方が良いのではないかという趣旨である。』
『換言すると、現在のオーバーナイトレート・ゼロ金利政策がある程度長期化するのを覚悟するということであるが、その点を鮮明にすることにより、結果的には金利の全期間にわたる低位安定を促し、政策効果を極大にしていくことになると思われ、その方がこの期間が比較的短くて済むことに繋がるかもしれない。』
ということで、まともに「時間軸政策でイールドカーブ全体を低位安定させる」という話をしていますね。他の審議委員もこのあたりの議論で色々と良い論点が出ているので、この15ページの部分はお読みになりますと吉かと存じます。
#そのうちテキスト起こしする積りではございます
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2008/08/18
○ネタも無いので決定会合議事録、尾身長官大奮闘(?)の後始末
正直今日のはヒマネタです。98年5月19日の決定会合の冒頭で、前々回の決定会合で大奮闘しちゃった尾身経済企画庁長官の発言をどのように扱うかで経済企画庁からの出席者が収拾に走るの巻。
塩谷経済企画庁調整局長:『議事要旨7ページの、経済企画庁長官の発言について、ちょっと申し上げたい。第二パラグラフの「なお、以上の執行部説明を受け、経済企画庁長官より・・・」と書いてある部分であるが、本人に確認をしたところ、これは特に公開を前提とせずに率直に見解を披瀝したもので、本人は公にするつもりはないということなので、削除して頂いた方が良いのではないかということであった。従って、ここがもし削除されると、その次のパラグラフの「この件については、ある委員から」という発言についても、長官の発言が無くなると意味が不明になるので、あるいは削除して頂いた方が良い気もするが、これはある委員の発言であるので、私として申し上げることではないと思う。』
『この際、議事要旨のまとめ方について一言申し上げておきたいと思う。両方の記述を読むと、あたかも経済企画庁長官が日銀の説明の仕方にクレームをつけて、日銀の説明責任をないがしろにしたかのごとき印象を世の中に与えるのではないかということを心配致しており、長官の意図は、毛頭そういうことではなかったと聞いている。しかも、三番目のパラグラフに書いてあるように、透明性の精神ということが書いてある。この透明性の精神はそのとおりである。これをもしおっしゃって頂けるのなら、もう少し客観的に記述するようにしていただいたらどうだろうかと思う。』
長いのでここで一服。削除された部分の表現がどうなのかは判らないのですが、以前ご紹介した議事録に記載されたいた尾身長官の発言はありゃまあどう見ても「政府が景気対策打つ中で日銀が暗い見通しを出すと足を引っ張るだろうがヴォケ」と言ってるようにしか読めませんでしたけれども、まー新法施行されたばっかりでしたんで、発言した方も慣れてないってのは判りますけどね。
で、なお塩谷局長は頑張るの巻。発言の続きです。
『私は長官の発言の際には、同席していなかったが、このある委員のご発言の際には、同席していたように思うが、その私の記憶では、このような言い方はされなかったと思う。まず、あの時のご発言は、今回の会合では2人の大臣が出席して、意見を述べてくれたことは大変意義のあることであるというように申されたと思う。そして、政府と日銀との関係は、政策の方向において整合性を確保する必要があるということは当然であるということも言われたと思う。そのうえで、経済企画庁長官が景気対策の足を引っ張ることはよして欲しいというように言われたが、その気持ちは良く分かるけれども、日銀は景気対策の足を引っ張るつもりはまったくないように言われたと思う。そのうえで、日銀が公表する文章については、日銀としてのアカウンタビリティを増すという観点から、言うべき事ははっきり言うべきであるというように言われた訳である。』
・・・・・いやもう何かご苦労様でございますとしか申し上げようが。なお続く。
『その点から言うと、金融経済月報の地価についての言及については、長官の心配されているような表現にはなっていないと思うので、このままで宜しいのではないかという趣旨を発言されたかと思うが、それを一般論に置き換えて、しかも長官の体積後に、長官が、日銀の説明責任を含めて、透明性の精神を踏みにじったかのごとき発言をしたように対比をして書かれて、しかもある委員と匿名で天下に公表しようというのはいかがだろうかと思う。したがって、両方の発言を議事要旨から削除、このままの表現では非常に誤解を与えると思うので、削除して頂いた方が良いのではないかと思うが、もしそれが透明性の精神に反するということであるならば、ある委員を実名にしていただいて、しかももっと正確な記述に変えて頂きたいというように思う。最初であるので、議事要旨のまとめ方について、一言ご意見を申し上げた。』
で、まあこの後話が行われたのですが、要はその後に塩谷局長が言及したように『このままの形で公表されると、いかにも尾身経済企画庁長官が、日銀の透明性の精神とか、説明責任について圧力をかけた、変えさせたというように世の中の人は受け取るのを心配している。』というのが経済企画庁の意見で、結局の所は今回は例外で削除となりました。
皆さんが発言しているのを並べるとエライ量になるので中原審議委員の発言から。
中原委員:『色々な議論はできると思うが、私は結論的には今回に限り削った方が良いと思う。但し、これは前例としない、あくまで例外である。理由は幾つかあるが、一つは尾身長官を私は長年良く知っているが、彼とは直接は話さないが、彼から間接的に話を聞いたところでは、やはりオンレコかオフレコか最初は良く分からなかったという話が一つあった。もう一つは、私も尾身長官がえらい勢いで言っていたので良く覚えており、反論しようと思ったが、悪いかなと思って黙っていた。本当はその場で反論すれば良かった。しかし、反論したのは、先程塩谷経済企画庁調整局長が指摘されたように、後であった。そういうことで、反論したらもう少し論争になったかもしれないが、ちょっと間を置いてしまった。私もあの時あれあれという感じがして、午後になってこういう反論が出たのだが、勿論全く妥当な反論だが、ちょっと結び付かないところもある。私はここでは一回限りの例外的な判断をして情状酌量をしたらどうかと思う。』
・・・・まあ何となく尾身長官が発言した時点での光景が目に浮かんで参りますけれども、新法施行直後で慣れてなかったという事でしょうが、逆に言えば新法施行前はこーゆーのが普通だったんでしょうかねとも思わせるここのやりとりなのでありました。
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2008/08/13
○決定会合議事録ネタ:古くて新しい議論ですな(98年5月19日より)
相場がアレなもんで98年5月19日の決定会合議事録を読んでおりましたら10年前からこのネタですかというのを査収。以下98年5月19日の金融政策決定会合議事録からで、本文30ページ以降の議論になります。米国株式市場に関す論議の流れからこの話が(発言の長いところは適当に段落分けしておりますので、前に発言者の名前がない場合は直前の続きと思ってください)。
三木委員:『前にお話があったかと思うが、日本の今の低金利とか流動性の供給が、アメリカの株高とか債券市場のバブルにつながっているのではないかという議論、それについて、現実の日本から米国への資金の流出の動きを踏まえて、日銀としてはどう考えているのか。』
永島理事:『単純な結論から申し上げると、まず日本の資金が直接アメリカの株に行っているかどうかという点については、87年のバブル期には、アメリカから見た非居住者の株の買いと、日本からの米国株の買いがほぼマッチしているというか、要するにかなりの程度日本の投資家がアメリカの株買いに向かったという事実がある。ところが今回は、97年中の動きで見ると、アメリカの非居住者からの株買いのうち日本からの買いは5分の1位である。そういう意味では、直接的な株買いは非常に少ない。ただ、昨日の新聞に出ていたが、日本は経常収支の黒字があるので、当然のことながらその裏として資本が出ている訳である、80年代後半の資本の出方というのは、アメリカの不動産を買収したという直接投資、それから直接債券とか株を買う、こういう形で出ていた訳であるが、今回はバブルの後始末とかジャパン・プレミアムとかがあり、基本的には債務の返済という形でお金が出ていっている。』
『この債務の返済で出ていったお金が回り巡ってアメリカの株に回っているということはあるかも知れないし、これがいわゆる円キャリー・トレード論の背景にある訳だが、一旦出ていったその後がどうなっているかという実態については、よく分からない。ただ、当然のことながら経常黒字があり、その裏で債務返済の形で日本からお金が出ている訳であるから、直接日本のお金がアメリカの株買いに回っている、あるいは米国債券の買いに回っている、アメリカの不動産の買いに回っているということは、前回と違ってほとんどないにせよ、お金が出ていっていること自体は間違いがない。』
山口副総裁:『その議論は、三木委員の提起されたようなアメリカの株だけではなく、例えば東南アジアのバブルに対しても日本の低金利がかなり影響を持ったのではないかという議論として一般化できるが、ヨーロッパ勢の言い分と、アメリカ勢の言い分というのは実はかなり違ってきている。私の印象では、もし間違っていたら永島理事に訂正頂きたいが、日本の低金利が例えばアジアのバブルにかなり影響したのではないかという言い分が、ヨーロッパ勢からはかなり聞かれる。これは、勘ぐって考えると、アジアの債務処理に当たって邦銀にも相応の負担を求めたいという魂胆が見え隠れしているという感じである。ところが、アメリカの株をバブルと言うのかどうかはともかく、それと日本の低金利の関係ということについては、私はFRBの人にも繰り返しそういう問いを投げかけてきているが、肯定的な答えを得たことは一度もない。彼等はアメリカ国内の要因で大体説明できるということを一貫して言ってきている。』
中村大蔵政務次官:『補足させて頂くと、まさに山口副総裁が言われるように、どういうものか、ヨーロッパのしかも中央銀行筋でも、日本の低金利がアメリカないし自国の株も上がっているが、それを招いているのではないかという、そういう議論がある。ただ、アメリカについては、むしろどちらかといえば逆の議論であり、アメリカの財務省筋等は、むしろ日本は国債を買って量的緩和をすべきであるというような議論を国際会議でやる位であり、まったく逆である。ここは奇妙であるが、見方が欧米で少し違う。』
三木委員:『今の債務の返済というのは、こちらが持っている債務か。』
永島理事:『そうです。色々な段階の債務があるが、企業段階の債務としては、アメリカで色々投資をやった訳であるが、巧く行かなくて、向こうで大変な借入金を抱えたものを、結局バブルの総決算でこちらからお金を送って返済するとか、銀行段階ではご承知のようにジャパン・プレミアムが付いて取れなくなってしまったので、最初は海外で自分が持っている預け金で両建てになっているものを落とし、それもできなくなったので、結局本店から円投を行って返したということである。』
で、ちょっと途中を飛ばしまして・・・・・
速水議長:『ビック・バンの影響もあるかも知れない。』
永島理事:『ビック・バンの影響は、一番出るのはやはり個人の投信の買いとかそのようなところに出てくる訳であるが、これはまだ千億円の単位に止まっている。兆円の単位ではなくて、まだ千億円程度のものが始まったところということである。ただ、長い目でみればじりじり、じりじり出てくるので、これからはそういう要因も資金の流出要因として、無視できなくなってくるように思う。』
で、この議論が終了してますが、ビックバンとか無茶苦茶懐かしいわと思うのですが(あたくしが社会人デビューした時は大口以外の預金金利は規制金利でしたが、笑)、低金利がバブルをどうしたこうしたという話ってこの頃から延々とやってたんですねという感じです。背景状況が今とは違う部分が沢山ありますが、何か議論されてることって昔も今も同じような所っていうのは沢山あるんですねと思います。
ということで、欧米の中央銀行は今般公表された議事録半年分をを1万回くらい熟読すると金融システム問題に関して重要なインプリケーションが得られる宝の山なのではないかと思料されるところでございまする。
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2008/08/05
○議事要旨ネタ:低め誘導時代の金利操作に関する議論
昨日の続きで、98年4月9日の議論から。
議事録の9ページ以降から。
篠塚委員:『昨日の日経金融の記事だと思うが、オーバーナイト・レートが0.35%から0.42%に上がったことについて、日銀は0.40%〜0.50%の幅に誘導しようとする意図が見てとれると書かれていたようだ。それについてじゃ、どのように考えているのか。』
山下金融市場局長:『ご指摘の点は、まさにここでご議論頂くことであり、私どもとしては頂いているディレクティブということで、オーバーナイト・レートについて公定歩合をやや下回るように調節してきている、実績としても、ここ数か月は0.43%前後のところで調節している。その点を捉えてそういう意見が外部にもあることは承知しているが、これについては本席でご議論頂きたいと思う。』
で、この時間帯は基本的質問コーナーなのですが、各委員から見解が出ているのがあたくし的には興味深く感じましたが、多分興味深く感じるのは当時から超足元の金利を触ったり興味津々だったマニアさん位しか感じませんかそうですか。マニアでどうもすいませんm(__)m
武富委員:『その場合、これは仮定の話だが、レンジが示唆されると市場参加者のうちビット側が、低いところ(下限)にあわせてビットしてくることにならないか。自分の資金事情とかマネー・ポジションの度合いを反映して、素直にビットしてきて市場が自然な形で形成されればいいのだが、一種の下限が示されると、それに左右されて却って市場が歪むということはあり得るのか。観念的な質問で恐縮だが。』
山下局長:『要するにレンジの決め方であると思う。例えば、1日の取引だけを考えても、ご承知のとおり朝方は出合いを付けるために慎重に出てきてやや高めになるが、交換尻を過ぎてからは、急激に金利が下がるという展開になる。もし”mandate”を頂くとすれば、レンジについては日々の上下限といったことではなく、一定期間の平均という形で頂かないと”mandate”を守れなくなってしまう。平均ということであれば、それぞれの出合いにおいてはそれは意識するにしても、日々の需給の変化等による振れはならされるので、レンジ自体が制約的になることはないのではないかと思う。まだ、着任したばかりでマーケットの感覚が十分身についていない部分もあるが、直感的にはそう思っている。』
山口副総裁:『レンジを決めて、そのレンジからびた一文コールレートを飛び出さないようにすると決めた場合には、武富委員がおっしゃるように、状況によっては、何とか上を突き破ってみせようとか、あるいは下値をもっと出してみようとか、ということである種の攻撃がかけられる可能性があると思う。それを何が何でも守るということを日本銀行の調節の方針とした場合には、我々は非常に硬直的な資金の供給なり吸収なりを強いられるのではないか。』
中原委員:『その場合、どちらかに張り付く危険性が非常に高い。』
後藤委員:『この問題は、恐らく午後の金融調節のところで議論になると思うが、ちょっとアンビバレントなところがある。透明性という観点からすれば、公定歩合をやや下回るというのは、余りにも漠然としているので、ある程度レンジを示したほうが透明性が高まるという議論がある。ただ、同時に、金融調節というのは一種のカード・プレイみたいなところがあって、要するにマーケットと駆け引きをする訳だから、余りに硬直的にそこにこだわると、逆に市場から発信される情報を制約するということにもなりかねない。結局、「透明性」と「市場との対話」をどこで兼ね合わせるかという問題になってくる。』
植田委員:『学会でもコールレートではないが、例えば為替レートについてターゲット・ゾーンがあっても、ゾーンを公表しないほうが却って為替は安定化するという議論もある。』
武富委員:『私も為替のことを念頭において先程の質問をしたのだが。』
その後の各審議委員議論の中(概ね87ページ目あたりから)で金利誘導数値を出すのかという話も入っているのですが、そっちを引用するとキリがないのでそっちは割愛で勘弁。
規制金利とか指値オペみたいな時代から市場での金利形成になってからそんなに年数が経っていないせいもあって、「市場機能」とか「市場との対話」という議論が昨今の同じお題とはだいぶその内容が違っているのが見て取れると思います。というかここ数年のインターバンクレートガチガチの市場しかご存じない若い衆からしたら上記の議論ってポカーンだと思いますが。
また、この時期(10年前)は(昨日ご紹介した議論の部分でもそうですが)金融調節の中でディレクティブで金利を明示するのかどうかという部分も論議になっていたというのも興味深い所です。引用してませんが午後の議論で、ここ数か月のオーバーナイト・レート水準が0.4%台前半に収まっている(その前は0.4%台後半でした)ことについて各委員が納得し、ファインチューニングとして評価していたのですねというのは議事録公開できっちりと判った点ですね。市場ではさっきの篠塚委員の発言にあるように、この頃は何となく0.4%台前半なのでしょうか状態だったと思われますが。
ただ、10年経って後知恵で思い直しますと、このファインチューニングってのも良し悪しで、ファインチューニングの範囲内ならば再びコールレートの誘導水準が0.4%台後半になる(0.5%を平均的に超えることはないというディレクティブがあるのでそれ以上は上がらないが)可能性はありありですので、足もとのコールレートは下がるにしても、ターム物金利やら中長期の金利形成に対する期待の誘導がしにくい面があるというのが結果としては言えたのかもしれません。
この時の議論(86ページ目以降ね)の中で、委員会では最終的に0.4%台で誘導って話になった(0.3%台までの低下を容認するかという意見の流れで利下げの話もありましたが全員一致で現状のディレクティブ維持)ものの、それに関して議事要旨での公表や、ディレクティブの中で内々に示すという事は行われなかった(100ページ目以降)という流れになっておりました。
#マニア向けの話ですいません
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2008/08/04
○また金融政策決定会合議事録:積み上の議論
この頃の金融政策決定会合におけるディレクティブは「無担保コール翌日物加重平均金利を公定歩合をやや下回るように調節」だった(当時はそれを「低め誘導」と言ってましたが)のですが、このディレクティブによって調節をしてて金利水準が動いていたのねということを思い出しましたのがこの間の議事録を読んだあたくしの感想。
4月9日の決定会合議事録の5ページ目から山下金融市場局長の説明部分を引用。
『前回会合以降の金融調節を、年度末31日までと新年度に入った4月1日以降の2つの局面に分けてみることとしたい。(年度末までは大幅な積み上を作った話割愛)その後、新年度入り後は、季節的な資金余剰期に入ったこともあって、需給がかなり引き緩んできたので、ターム物金利等の落ち着き具合をチェックしながら朝方の積み上幅を徐々に圧縮し、オーバーナイト・レートの過度の低下を牽制する調節を行ってきた。』
『新年度入り後の調節において特に留意してきたポイントは次の2点である。第1の留意点は、オーバーナイト・レートの過度の低下を回避するということである。4月の大幅な資金余剰期に入ったこともあり、これまでのように朝方にかなり大幅な積み上を作るような緩めの調節を続けていると、オーバーナイト・レートは自然に大きく低下するようになっている。現に、4月3日、6日と積み上幅を7千億円にまで圧縮したにもかかわらず、オーバーナイト・レートは0.35%まで低下した。仮に7日以降もオーバーナイト・レート0.35%という水準で調節を行った場合には、15日までの今積み期間中の月間平均レートは0.4%を下回る水準まで低下してしまうことになる。また、2日に公表された短観で景気情勢の悪化が改めて確認されたこと、あるいは国会答弁等で日銀首脳の景気に関する厳しい認識を表明されたことから、オーバーナイト・レートが2日連続0.3%台を付けたことを眺め、マーケットの一部
では「金利低め誘導実施か」といった観測が台頭してきていることも、私ども調節担当としては意識をせざるを得ないところである。(第2の留意点はターム物金利の話などですが割愛)』
で、この後金利誘導をどうするのってお話が続くのですけれども、その中で後藤審議委員が『4か月半振りでリザーブ・ニュートラルに戻して、その割にターム物金利がそれほど跳ねなかったのは多いに慶賀すべきことだと思う。』と発言してまして、最近の市場しかご存じないとナンノコッチャだと思うんですけど、かつての状況を知る者としては懐かしいですね。
で、例によってあたくしが読んだのが全然まだまだ全部を網羅しておりませんので、他の議論となりますと6月25日の会合になるのですけれども、この時は長銀問題でインターバンクにプレッシャーが掛かっていた時期なのですけど、中原審議委員がレートを下げる為にどうするかという質問を山下金融市場局長にしているやり取りがやはりなるほどねえという感じで。5ページ目から。
中原委員:『現在の状態でオーバーナイト・レートを、前回私が申し上げた0.4%まで下げるとしたら、どの程度の追加供給が必要となるのか。』
山下局長:『現在の状況であれば、おそらく2、3兆円の追加供給により、積み上幅を大きく増やし、しかもある程度そうしたアナウンスをしていかないと、なかなか難しいと思う。つまり、マーケットは日本銀行の誘導目標は0.4%から0.5%の間にあり、0.5%を超えると抑え込んでくると考えている。従って、0.5%に近づいてくると資金供給を大量に増やしてくると受け止めており、0.48%〜0.47%のレートであれば、ある程度大量の資金供給をしても、それを日本銀行がさらに抑え込もうとしているとは考えていないと思う。』
中原委員:『クルーグマンが言っているように、大量の資金供給が必要という考え方があるが、その際、一遍にやるか、少しずつ下げてみて市場の反応を見るというやり方があると思う。今の状態では、少し下げるにも2〜3兆円増やさなければならない感じなのか。』
山下局長:『今の状況で例えば3兆円出すとマーケットは驚くと思う。それは日本銀行の意図は何かということになる。一時的に少し過熱感が出てきたのを冷やすということなのか、それともレートの誘導値を下げてきたのかを明確にしないとなかなか的確に調節できない。』
以下続くのですけれども、この時期は明確なアナウンスをしないで金利水準を何となく下げて行った(低め誘導開始当初はオーバーナイト・レートは0.50%近い0.4%台後半だったのですが、短期市場にプレッシャーが掛かっていたこの前後には0.4%台前半が中心になっていましたが、この間ノーアナウンスで調節で意図を出すという形だったんですよ)ので、積み上がどうのこうのとか非常に重要視してやっていたんですねという所です。
まあ後から見ると0.5%を下回る云々というよりはレンジかポイントをアナウンスした方が誘導はやりやすかったと思いますが、この当時も市場機能の問題とか、本当にアナウンスするのが効くのかという議論があったんですけれども、その話に関してはまた明日。
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2008/08/01
お題「そこら辺の小説より断然面白いです」
金融政策決定会合議事録が公表されましたので個人的な感想などを。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
こちらに決定会合議事録へのリンクがございますが、ご覧になれば判るようにファイルサイズが鬼のように重く(スキャナーで読んだPDFになっていますな)、150ページを超えるような回もありということでもうエライコッチャでございます。
○でも一度読み出したら止まりませんな
今回公表されたのは98年前半なのですが、97年後半に三洋、山一、北拓の経営破綻で一部の大手銀行まで信用不安だとか言う話になったという動きがあり、98年前半はアジアではインドネシアでスハルト政権が退陣に追い込まれたとか、長銀の経営問題で大揺れだったとかという時代。当時あたくしはクレジット物などの対顧ディーラーやって日々ヒーコラ言ってました(個人的には97年後半に相場様にボコボコにされて泣きそうだったせいで98年度入りしてからはだいぶ耐性が出来てたんですけど)時代ですので、もう読んでて涙が出るほど懐かしいです。
で、とりあえず新しい分(98年6月)から読んで行ったのですが、6月25日(これは50ページしかないのでお勧め)と12日を読んで(ただし25日は熟読したけど12日は全部熟読できてません)、あと話題になってた所をチョロチョロと読んだだけですけど。
あたくしなんぞのような年寄りと致しますと、当時まさに現場にいたという事もあり、昔のアルバムや日記を読むような気分で超感慨深く読んでしまうのですけれども、ふと冷静になると、10年前に弾の飛び交う現場でヒーコラ(えー10年経ってもまだ現場労務者ですがorz)言ってたとか言うと歳が思いっきりバレますわな。というか「当時は学生さんでしたよ」どころか当時義務教育中だった人とかそこら辺にいる訳で(苦笑)。
ということで、まあ今回はあたくしが読んでほうほうと思ったあたりを少々。読むのに気が遠くなるほど時間が掛かるのでまあ追々ご紹介したいと思います。
○6月25日の会合は山下金融市場局長の説明が臨場感あります
・・・と申しましても、その臨場感って多分当時現場にいたから記憶がよみがえって来たとかいうクチだと思うんですけどね。本文3ページからスタートするんですが。
『お手許の資料の1、3ページをご覧頂きたい。前回6月12日会合以降の短期金融市場の動きをみると、長銀の経営悪化問題が取り沙汰される中で、ターム物金利が金融システム不安再燃への警戒感から徐々に強含む傾向が目立っている。例えば、ユーロ円TIBOR1か月ものをご覧頂くと、12日の0.55%から次第に上昇してきて、昨日の0.59%まで4bpの上昇となっている。この間、極めて落ち着いた推移を辿ってきたジャパン・プレミアムも今週に入って次第に上昇の気配を示している。』
『こうした状況の下での金融調節運営を振り返ってみると、積み最終日となる15日には長銀株を始めとする銀行株価の下落を背景に地銀等が慎重な資金放出姿勢を示したことから、レートが0.50%を窺う気配を示した。このため、朝方の追加オペ分も含め所要額に対して4千億円多い資金を供給したが、結局オーバーナイト加重平均レートは0.48%まで上昇した。この結果、5月の積み期間中の平均レートは0.44%での着地となった。』
『積み明け後の16日以降は、一部で資金を取り急ぐ動きが見られたため、朝方のオペで連日7〜8千億円の積み上幅を造成した。最終時点でもそれを残す調整を行った結果、レートは徐々に低下し、特に18日には協調介入実施に伴う円相場の反発と銀行株価の持ち直しもあり、オーバーナイト加重平均レートは0.41%まで低下した。しかし19日の午後、政府筋が長銀の自主再建は困難と発言したとの報道が流れたことを受けて、出し手が一斉にオファーを引いたため、取り遅れた一部外銀が0.6%を上回る水準まで取り上がり、マーケットの地合いは再び悪化した。』
『そこで22、23の両日は朝方1兆円の大幅な積み上幅を造成した。23日にはさらに2千億円の追加オペを行い、レートの上昇を牽制する調節を行ったが、加重平均レートは0.48%まで上昇した。昨日はレートが寄り付きから0.5%を超えて出合う展開となったので、やや過熱感が出てきた市場心理を落ち着かせるためには、早めに思い切ったシグナルを出す必要があると判断し、朝方の積み上幅を1兆5千億円に拡大した。さらに最終でもこれをそのまま残す調整を行い、準備預金の積みを一気に進捗させたところ、オーバーナイト・レートは午後に入り急低下し、結局1日の加重平均レートとしては0.45%まで低下している。こうした昨日午後の動きを受けて、市場がどの程度落ち着きを回復するかが注目される。』
『マーケットは信用不安の再燃懸念からかなり不安定な地合いとなってきているうえ、当面4月(原文ママ、7月だと思いますが)初めにかけてボーナスの支給や税揚げ等から資金需給が不足方向に振れるため、引き続き潤沢な資金供給により市場の安定確保に全力を挙げていきたいと考えている。』
確かこの決定会合の翌日に住友信託銀行と長銀の合併報道が出たんですよね。結局幻に終わったのですけれども・・・・というか文書手打ちすると疲れますがな(笑)。
○金利誘導の方法も手探りだったのでしょうか
で、この後中原審議委員が山下局長と「どうすれば翌日物を0.4%まで下げられるか」という論議をしていて中々興味深いものを感じました。この前の会合の流れとかも読んだのですが、当時は「低め誘導」の枠組みの中で調節によってコールを0.4%近傍に誘導して緩和効果を出そうという流れだったんですね。
まあ後知恵にも程がありますが、今にして思えばそれなら明示的に金利ターゲットを0.4%とアナウンスしてくれれば市場はそれに沿って金利形成するので、逆にそんな積み上が必要なかったのかも知れませんけれども、当時は今と考えも違っている部分があったということですな。言われてみりゃあたくしにも思い当たる部分があります。
で、この回の議論じゃなかったと思うのですが、一時緩和策の一つとして準備預金率の操作を行って、金融機関の準備資金需要を緩和させるという議論があったんですよね(物凄い勢いで斜め読みした議事録の中にあったので、どこにあったか忘れた)。計算したら金利下げた方が効果高いということで結局お蔵入りになったようなのですが、当時は色々な手段を使って金融緩和の方策を練っていたというのが良く判るところでありました。
○尾身経済企画庁長官(当時)大暴れの図
まあこのあたり散々報道されているのですが98年4月9日の尾身経済企画庁長官の発言は何とも(35ページ目以降)。
『今度のレポートは大変大事だと思っている。今の分析を全体としてみて、パターン認識的に景気が下に行きそうだということを説明するためにいろいろなことをくっつけているような感じがする。私どもも景気の現状の厳しさについては、日銀とそれほど違わない考え方を持っているが、政策責任官庁としては、この日本の景気を上げなければならないということで、いろいろな手を打っている訳である。そのいろいろな手を打つという状況の下で、明日、月例経済報告を出す。そして、「景気が停滞をしていて、厳しさが増している」という表現でいく。しかし、資料−3の1ページは「マイナス方向に働き始めており」と言っている。つまり景気の循環局面がマイナスの方向であるという表現になっている。』
『我々は、今度の対策で、景気を上に向けようとして、対策を出す訳である。だから、景気の底は3月か4月であるという方向でやっていく。それを片方で、日銀がいわゆるエコノミスト的な分析で、「マイナスの方向に働き始めており」という感じにすると、我々としていろいろな対策をやった時にコンフィデンスが回復しない要因がこのレポートにあるというようになる可能性がある。』
『確かに、数字の動きは全部マイナスであるから、日銀としてはある部分のエコノミスト的な感覚で言えばそういう感じを持つのも分からなくはないが。それは良く分かっているが、このレポートそのものがマイナスの暗示に非常に敏感に反応しているものになっていて、プラスの暗示に反映していない。全部が感性が鈍くなっている状況である。感性が鈍くなっている状況の下において、それをやや強調するような下振れ圧力とか、マイナスの方向に働き始めているとか、そのような方向に行くと、せっかく我々が4月に対策を出した時に、経済の動向が下を向いているというレポートになり、「政府がいろいろなことをやっても気分が悪くなっているのでうまくいきませんよ」というような、我々の景気対策の効果を、ここではっきり申し上げるが、足を引っ張るようなレポートはなるべく避けてもらいたいと思う。』
『それと同時に、例えば地価についても、商業地等については上がっているところもあるというのが最近発表された時の新聞の記事である。それをここではそのようなことを何も書かない。地価の問題は一番大事である。何故大事かというと住宅建設にも関係があるし、マーケットでは外国が今商業地等を買いに来ている訳でもある。私は1月にグリーンスパンFRB議長にも聞かれたが、「地価が下げ止まったか」というのが彼の第1の質問であった。地価が下げ止まったかということについての判断が、また下がり始めたという判断であると、買う人も買わない。地価の統計を見ると、必ずしもそう断定できないような部分も私はあると思う。』
『例えば、計表10の商業地の地価の公示価格の上から2つ目の欄で、地価の下落幅が、商業地は、1月は−7.5%になっている。少なくともずっと前を見ていくと、1月といえども対前年比で見れば下落幅が小さくなっている。それから東京の中心部の商業地については、外人が買い向かってきているので、地価が上がっているところもあるというような記事がある。そういうところも取り上げてもらい、傾向として、図表31の図で10月と1月を比べて少し下がっていることは分かるが、全体としては上向きのラインになっている。1回下がっただけでそれが傾向として下振れしているとか、下に向かうかということは簡単に決められない訳であるから、もっとその辺のことも考えながら慎重な表現にしてもらいたいと思う。そのような表現が微妙にあることによって、我々が4月にやる対策の効果が減殺されてるのは困る。意見として申し上げておく。』
『それから、私の認識としても、地価が下げ止まり感があると思っている。金融システムがあれだけパニック的な状態、1月15日位までパニック的な状態であった訳であるから、その状態のしたでもこのような数字になっている訳であるから、少し落ち着いてくればそのような実態ではないのではないかと思っている。やはり委員会のメンバーの方々がある程度日本経済に自信を持ってもらわないと、悪い暗示に感受性が強くなっていて、良い暗示に感受性が弱くなるような状態で、我々は勝負を賭けて、内閣の命運を賭けて政策をやる訳であるから、そこは是非ご理解を頂きたいと思う。』
・・・・・すいません、発言全部引用しないとフェアじゃないかなと思って手打ちしたら死にました。
えーっと、後知恵で尾身さんプギャーというのは簡単なのですが、最後の所にもあるように、まあそういう勢いで景気を何とかしようと頑張っている状態だったという点で気持ちは何となく理解できないわけではないですわな。同意はしないけど。
他の部分でもチョロチョロとあるのですけど、当時の景気悪化に関して日銀が悪いのオンパレードだったりしますけど、こーゆーやり取りを見ていますと、どうも政府の楽観というよりは希望的観測による判断のほうに大いなる問題があったんじゃないのでしょうかと思うのであります。
後知恵だから何とでも言えますというのは申し訳ないのですが、この98年がまだまだ終わりの始まりだった事を思いますと、負けが込んで来て希望的観測入るって大東亜戦争末期入りって感じなんですかというところで。
もう一つ思ったんですけどね、不動産価格って確かに先に暴落したのですけれども、不良債権問題ってここから今度は資産デフレからデフレ不況に波及した訳でして、そう考えると今の米国の問題にもインプリケーションがあるんじゃないのと思ってみたりして。
○ところでこれ出版してくれませんかなんて思うのですが
正直申し上げて、これをPCモニターで読むの疲れますし、紙に出すのは紙代とトナー代が気になる(しかも時間が泣きそうにかかる)次第。
モノが議事録をスキャナーで読んだという感じで、建て付け的に何となく美しくないというのは分かるのですが、この際ヤケクソでこのPDFを製本したようなもんでも良いので出版してくれると買う人が・・・・・・
・・・・・冷静に考えたら精々200人くらいしか居なさそうな気がしてきましたので今の発言はあくまでも独り言という事でお願いします(汗)。
あと、議事録本文読みも面白いのですが、参考資料がまた実に良い内容でして、毎日の交換尻と最終の積み上が幾らあってオペがどう打たれたかとか、もうマニアにはたまりませんです。
#ふ〜疲れた
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