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5月前に補償金巡る再攻勢
祝島を巡る情勢どう見るか
            祝島の漁業権が生命線証明   2010年4月7日付

 中国電力がすすめる上関原発建設計画で、祝島の漁業補償金問題をめぐる攻防戦が激化している。5月に5億4000万円の供託金没収が迫るなかで、昨年から二井県政と県漁協が登場して「受け取れ」「配分しなければ3億5000万円の税金がかかる」と水面下で恫喝を加えたが、島民は断固受け取りを拒否してきた。すると、商業マスメディアが「国税の指導」と応援団になって諦めを煽り、中電は幹部職員が上陸を試みるパフォーマンス。裁判所は阻止行動にたいして1日500万円を支払えと命令するなど、権力・金力を振り回して、いっせいに祝島に攻勢を仕掛けている。この情勢をどう見るか考えてみた。
 「補償金を受け取れ」の執拗な攻勢は、まさに祝島が受け取らなかったら祝島の漁業権はなくならず、原発は終わりになることをますます証明するものとなっている。一昨年末、最高裁が「管理委員会の契約に祝島も拘束される」と意味不明の判決を出すと、二井県政は「祝島の漁業権はなくなった」と騒ぎ、二井知事が埋め立て許可を出し、中電は補償金の残り半金を七漁協に支払い、各漁協は昨年夏には配分してしまった。
 ところが昨年2月、「反対しても原発はできる」というあきらめムードをあおって開いた祝島の漁協総会で二票差で補償金を受け取らないことを決議した。そして田ノ浦の工事は全国の業者ができると信じて集まっていたが、ストップし、夏過ぎには引き上げていった。
 祝島の漁業権がなくなっているのなら放っておけばよいのだ。ところがそれはできない。祝島が補償金を受け取らず、漁業権放棄の議決をしなければ、最高裁であろうと県であろうと、祝島の漁業権を放棄させることはできないのだ。二井県政農林水産部は、一方で「最高裁の判決に準ずる」と祝島の漁業権がなくなったかのようにいいながら、実際には漁業権が生きていることを知っているから補償金を受け取らせることに一生懸命であることを証明している。
 五月は、供託金の国からの没収の期限であり、県漁協が受け取った半金の税務申告の期限となる。このタイムリミットとなる五月に向けて、中電と国、県は再度攻勢をエスカレートさせている。
 祝島の島民らに海面埋め立て工事の妨害行為を禁ずるとした仮処分決定をめぐって、山口地裁岩国支部(大島雅弘裁判官)が3月31日付で、島民らの異議申し立てを却下。同時に中電が島民らの阻止行動にたいして損害金支払いを求めた「間接強制」の申し立てを認める決定を下した。
 1月18日に同地裁が下していた仮処分の内容は、「公有水面埋め立て免許によって中電が公有水面埋め立て権を取得し、同海域で妨害排除・予防請求権をもっている」とし、「漁業補償契約で埋め立て海域で共同漁業権が行使できなくなったのに伴って許可・自由漁業もできなくなったというべきで、免許が不当との主張も採用できない」と島民に阻止行動の禁止を命じたものだった。
 これにたいして、島民側が2月1日付で異議を申し立てていた。その際、中電は「間接強制」を追加で申し立てていた。今回の決定ではこちらも認め、仮処分決定に違反して工事を妨害したなら、1日につき500万円を中電に支払うよう島民に制裁を課すとした。デタラメな判決にたいして、祝島の島民たちは広島高裁に抗告する意志を示している。
 今回の裁判所の決定の根拠は、二井県政が出した「公有水面埋め立て許可」だった。ところが問題になっているのは、祝島は補償金を受け取っておらず、漁業権放棄ができる唯一の機関である漁協総会で3分の2の議決を取っておらず、祝島の旧107漁業権は生きているからである。その海区は中電が漁業権を買収した四代、上関の地先単独漁業権海区に隣接しており、この海域を埋め立てするには、影響を受ける祝島の同意を不可欠とする。したがって二井知事の埋め立て許可が条件を満たしておらず無効であり、工事を強行する方が違法であり、工事に反対する方が合法という関係である。
 妨害行為をすれば1日に月500万円の制裁というが、それは脅しであり、実際は、違法な工事強行に対応させられる祝島側が迷惑を被る関係となる。
 祝島は埋め立て免許取消を求めた裁判も係争中であるが、補償金を受け取らないから埋め立て工事の合法性が確保できず、慌てたのが中電、二井県政である。本当は「祝島の漁業権は消滅した」といえないことを知っているくせに、「契約に拘束される」などという最高裁判決を盾に、勝手に漁業権放棄している事にして、後からダマして辻褄を合わせようとして、「補償金を受け取れ」と恫喝してパンクしてきたのがこの間の経緯である。
 要するに漁業補償金を祝島が受け取らずにはねつけるなら、5月の供託金没収をもって漁業補償交渉は振り出しに戻る。
 中電は地裁判決が出た数日後、祝島の権利がある海上部ではなく陸上部で資材搬入パフォーマンスをして、抗議する島民らに「これは妨害ですか?」などと挑発して見せた。
 もう一つの動きは中国電力そのものであり、3月に入ると、28年の方針を転換して初めて祝島に上陸を試みるパフォーマンスをした。「原子力部門のエース」といわれる岩畔所長が足を運び、山下社長までが「私も祝島に行って直接お願いしたい」と発言。二井県政や県漁協、地元推進派など代理人を使った工作がことごとく失敗し、直接交渉の意志表示となった。そして業界では「岩畔が五月までに祝島を落として、工事が動き始める」「上陸しなくても電話攻勢など手はある。中電のやり手が本腰を入れて祝島崩しに動く」などの話が飛び交いはじめた。
 祝島に直接の足がかりが乏しく、調子のいいことしかいわない間接情報を真に受けて情勢判断を誤ってきた中電だが、今度は直接の工作をやるという意志表示となった。
 中電は、やるとなると住民それぞれの親子関係、親類、勤め先、友人その他の諸関係を調べ上げて、それらをも通じてウソや脅しや買収の工作をやってきた。裁判所や国税、二井県政や県漁協によるウソと脅しに加えて、結局のところは金しか手がないのが中電である。
 結局は直接交渉による補償金釣り上げが想定される。現状一人当たり約1600万円程度の10億8000万円ではダメとして、四代地区と同等の一人5000万〜6000万円にアップしたら総額35億〜40億円。プラスアルファで四代地区では漁業者以外の住民に一人200万円をばらまいているので、祝島でも一人500万〜600万円など、カネしか手がない。10億円ほどでケチって、いままで使った数百億円をパーにするのなら、50億〜60億円ほど使ってもかまわぬという計算が予想される。中電にとってはどうせ電気料金なのだ。
 こうした恫喝や必死の懐柔を繰り返すことは、ますます祝島が承認しなければ原発ができない関係が全県・全国に暴露される。
 このなかで、祝島の漁民が受け取り拒否をしている補償金を握りしめているのが県漁協だ。三月末決算でどのように処理するのかが注目されている。この間、県漁協理事会でも俎上にのぼったものの、「結論は出なかった」と語られている。
 この問題は全県の漁協関係者たちのなかで大注目になっているが、いっさい事情説明がなく、本店幹部職員だけがコソコソとやっている。「四月末に届く決算書を見てみないと、本店が何をしているのかわからない」「県漁協が受け取っているから税金がかかるのだ。返金すれば済むことだ」「漁業補償は祝島の漁師個人に支払われるものであって、漁協が受け取って税金を請求される代物ではない。仮に県漁協が5億4000万円を勝手に受け取ったなら、たいへんな社会問題になる」と話題になっている。
 「国税の指導」というが、県漁協が勝手に受け取って法人の所得扱いにしているから納税問題が起きているのである。供託するなり中電に返却すれば税金などかからない。これを「(祝島が)受け取っても受け取らなくても税金がかかる」などとペテンにかけてきて、ウソがばれた。
 当事者である祝島支店の組合員47人からは「祝島は受け取りを認めない。県漁協が中電に返還するよう決議を求める」と署名捺印した連判状が提出されている。議決に匹敵する意志を無視して県漁協が勝手に補償金を受け取り、勝手に法人税を納め、祝島に税金を負担させるとなると、組合長以下理事たちが訴えられて責任追及に発展しうる、と漁協関係者のなかでは語られている。3月末決算、5月確定申告まで期間が迫っているなかで、あくまで暴走するのか、全県漁民の鋭い視線が注がれている。
 上関原発建設という全県漁民の死活のかかった問題で、県漁協が全県の組合員の何の承認もなく瀬戸内海漁場ぶっつぶしで動き、中電の手下になって漁業破壊に加担している。それは自民党林派がやった信漁連問題、その代償として受け入れさせられた上関の漁業権問題、岩国基地の埋め立て、下関の人工島、宇部の産廃処分の埋め立てなどの漁業破壊、さらに信漁連の欠損金の責任転嫁としてやった一県一漁協合併問題など、積もり積もった怒りが爆発する趨勢となっている。祝島漁民と連帯した全県漁民の斗争が待ったなしになっている。
 上関原発をすすめる中電側は、国、県、裁判所、国税などの権力機関を使ったウソと脅し、さらに金しか武器はない。
 しかし、海と山があってつくられてきた祝島と上関の歴史である。島の数千年の歴史を守り、さらに数千年先の将来を保障するのも海と山の存在である。そういう歴史が10億円ないしは、50億円、100億円ほどの金と引き替えにできるかということになる。
 それ以上に、全瀬戸内海の漁業を壊滅させることが、一部のものの100億円あまりの補償金で引き替えにできるかどうかという問題としてあらわれている。
 さらに上関原発の推進とともに、目と鼻の先の岩国で極東最大の米軍基地拡張、空母艦載機部隊の移転を推進し、この地域をアメリカの盾とし、したがって岩国基地とともに上関原発を核戦争の標的にして、国土を壊滅させて良いかどうかという問題としてあらわれている。
 このようななかで、祝島のたたかいはまさに瀬戸内海漁業を守り、日本の国土を廃虚から守る、真の国益をかけたものとなっている。祝島のたたかいに連帯して、全県漁民のたたかい、岩国基地撤去のたたかい、被爆地広島のたたかい、全県、全国の共同のたたかいを結びつけることが求められている。
 上関原発28年のとどめを刺す局面となっている。

 

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