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TPP阻止 真の国益に立つ行動広がる
               日本の生産支える使命       2011年3月9日付

  アメリカの要求に従って菅政府が押し進めるTPP(環太平洋経済連携協定)参加に対して、これを阻止する行動が全国で大きなうねりとなって広がっている。医師、看護師、薬剤師が参加する医療団体、船員や内航海運、港湾関係者の労組や組織、農林漁業・畜産業の諸団体は、国民の生命を預かる医療、国内物流、国民の食料生産を担っており、国をつぶさぬためにはゆるがせにできない問題として行動を起こしている。大手メディアは一切TPPの本質を隠して報じないなかで、知識人や研究者も発言を開始している。
 日本医師会や歯科医師会、薬剤師会、看護協会、病院協会、栄養士会、介護福祉士会、救急救命士協会、理学療法士協会など全国41団体で構成する国民医療推進協議会が2月16日、第6回総会を開き、TPP参加を阻止し日本の医療を守るための国民運動を起こすことを決定した。総会決議では「医療に市場原理が導入され、営利産業化されれば、わが国の優れた公的医療保険制度は崩壊し、二度ととり戻すことができなくなる。そのため、国民皆保険制度のもと、いつでもどこでもだれもが公平に受けることができる医療をこれからも断固守り続けていく」と決定。その声を政府に届けるため3月中旬までに都道府県単位で集会をもって決議し、全国各地から決議文をもって政府に要請行動をすると決めている。
 また総会で日本医師会は「危機にさらされる日本の医療、医療における規制制度改革とTPPの問題点」と題する文書を出し、アメリカが年次改革要望書で日本の医療に市場原理導入を求めて破壊してきた経緯を指摘。外国人看護師を受け入れるための基本方針(今年6月に策定)や病院の外資参入に道を開く規制改革方針(今年3月までに決定)、混合診療全面解禁や総合特区(営利企業の特別養護老人ホーム設置)の動きが進行しており、外資や企業が日本の医療に参入すれば「日本の医療を崩壊させる」と指摘した。
 「医師不足解消」を口実にした外国人医師受け入れについても、「公的医療保険の診療報酬では外国人医師に高額給与を支払えないので、病院は高額の自由診療を目指す」「公的医療保険で医療をおこなう病院がへっていく」「外国人医師にならって日本人医師も高額給与を希望する。だめなら海外へ流出する」とし、医師不足のさらなる深刻化を促す、とした。「医療ツーリズム(外国人富裕層の患者受け入れ)」の促進も、高い自由価格を支払う患者だけ優先的に治療するようになり公的医療保険にたよる日本人が医療から締め出されると明らかにしている。
 また日本の医療は公的医療保険であるため医療法人の利益は地域医療をよくする再投資に回されるが、医療の株式会社参入が実行されれば、再投資だけでなく株主配当など利益追求が優先されるのは必至。コスト削減優先で安全性が切り捨てられ、不採算となれば簡単に病院経営から撤退し、もうかる患者しかていねいにみないなど、地域医療が瓦解していくことも明らかにしている。同医師会は「日本人の生命を外国をふくむ産業に差し出して良いのか。全力をあげて国民皆保険を守る」と宣言し動き出している。
 日本薬剤師会は2月21日から、全国薬害被害者団体連絡協議会とともに一般用医薬品のインターネット販売規制緩和反対の署名活動を開始した。登録販売者の育成に携わる日本医薬品登録販売者協会も協力して動くことを表明した。
 この一般医薬品のネット販売は、TPPにむけた政府の行政刷新会議の中間とりまとめで盛り込まれたもので、現在は認められていないリスクの高い分類品目までネット販売可能にするものだ。健康を損なおうが副作用が出ようが売れればいいというもので、薬剤師会は「無秩序、かつ、無責任なインターネット販売が横行する現状を無視して、生命関連商品である医薬品のインターネット販売の規制を緩和することは極めて危険」と署名活動を広げている。

 カボタージュを守れと行動 港湾民営化阻止も

 日本内航海運組合総連合会(内航総連)や船員で組織する全日本海員組合(全日海、三万人)はTPP参加にむけた先取りである「カボタージュ制度(国内海上輸送を自国籍船や自国籍船員に限る制度)見直し」にたいし「内航を崩壊させるな」と行動に決起している。内航総連は内航船建造・修理にかかわる日本中小型造船工業会、日本舶用工業会にも連携を呼びかけた。内航総連は「カボタージュ制度を廃止するとわが国の沿岸輸送がコストの安い外国船に席巻され、外航海運と同様に日本籍船は極端に減少し、日本人船員も雲散霧消する。多くの内航海運事業者は撤退をよぎなくされ、内航船を建造してきた中小造船所も壊滅的打撃を受け、地域の経済や雇用に多大な影響を及ぼす。この結果、内航海運業、日本人船員、中小造船業、舶用工業などとの海事基盤配置の成立は困難となり、長年培ってきた海技の伝承も不可能となって海洋国家日本は危うくなる」と声を上げている。
 全日海も昨年の大会で、内航のカボタージュ規制緩和に反対する立場を確認。先月25日に国土交通相に申し入れ行動をおこない「カボタージュ規制の緩和は官労資とも賛成しておらず、世界的に緩和の方向にはない。経済的なコストだけでの議論は危険であり、国内海運産業を崩壊させることになる」と表明した。
 全日本港湾労働組合(全港湾)はTPPの先取りとして進行する港湾民営化を導入する港湾法改正阻止の行動を開始している。先月の第32回中央委員会でも「港湾法改正反対」を決議。そこでは「国有財産である港湾が投機の対象になり、港湾を知らない投資家が港湾経営権を握ることになり港湾運営に大混乱をもたらす」とのべ、「国際競争力優先政策を反省し、規制緩和の負の部分を改定することが港湾の持続的発展につながる」と表明し、ストも辞さない構えをとっている。
 その他、食品産業の労働者で組織するフード連合(10万人)は、今年1月の第九回中央委員会で「TPPにたいする特別決議」をあげ、「食料自給率の大幅な低下は必至であり、食の安全・安心がそこなわれる」「食品関連産業の危機にたいして積極的な行動を展開していく」とした。
 農水省職員で組織する全農林(2万人)も先月の中央委員会で「TPPに参加した場合、食料の多くが外国産にいれかわり、国内農業生産は四兆円をこえる生産額の減少をまねき、自給率は14%程度にまで低下するなど衝撃的な数値がしめされている。農業以外でも、看護師の受入など労働をふくめた人の移動が日本の社会構造にあたえる影響も甚大。“参加は不可能”との結論が得られるよう運動を強化する」と確認している。

 農山漁村の維持こそが国益  農協や漁協が連携

 そして国の食料生産を担う農林水産業団体がさまざまな団体との連携を広げ行動している。千葉県で二日に開かれたTPP参加阻止県民集会には第一次産業関係者約2000人が結集し、「農山漁村を守り地域経済を支える観点から、例外なき自由化を強いるTPP交渉に参加することは断じて認められない」と拳を突き上げた。各地の集会は農協だけでなく、漁協、森林組合、畜産業者、建設業者、自治体などとも連携し、国民の食、地域、生命を守る重大問題として行動意欲が増している。
 全国農協青年組織協議会(JA全青協)が2月に開いたJA全国青年大会には約1400人が参加。この大会宣言は「われわれは国民の豊かな食と地域社会を守っていくという使命を改めて自覚し、新たな日本農業の礎を築く組織としてリーダーシップを発揮していかなければならない」「いまこそ活動の原点を再確認し誇り高き青年の情熱と協働の力を持って、課題の解決にとりくみ、豊かな食と環境の共有を将来にわたって実現する当事者として全力をあげて行動していく」とした。TPP参加阻止の特別決議は「わが国は瑞穂の国である。国土の隅隅まで美しい農山漁村が広がり、豊かな実りを与えてくれる。農山漁村を将来にわたり維持していくことは農業者だけではなく、全国民の利益となることを訴えていく」とのべている。
 四日に持たれたJA全中(全国農業協同組合中央会)の通常総会の決議も「TPP交渉は関税以外にも金融、保険、医療、政府調達など24分野が交渉対象となっていることからTPPは国民生活にかかわる重要な仕組みや基準を根本的に変えることにつながる」とし「国民の食と暮らしと命を守る人人と強力に連帯し運動を展開していく」と強調している。
 中央畜産会も先月22日、畜産関連・消費者団体をあげてTPP参加反対の運動をする「日本の畜産ネットワーク」を設立。全国肉牛事業協同組合、日本養豚事業協同組合、日本獣医師会、全国酪農協会など22団体が呼びかけ、TPP反対の100万人署名をとりくむ方向となっている。
 また全国の漁協が加盟するJF全漁連は1月、TPPにむけて進む沿岸漁業権廃止を狙う動きにたいし、内容見直しを求める要請活動を開始した。記者会見では「海面漁業や養殖業の漁業権に売り買いのできるITQ制度(譲渡可能漁獲割当)を導入する提案は、現在の小規模な漁業者を退出させ、資金力のある企業等に置き換えることを目的にしている。それによって公有物である水産資源が特定の企業に買い占められ、寡占化し、漁村社会が崩壊する重大問題」「日本の水産業の目標は、漁業従事者が誇りをもって生活できる漁業・漁村をつくることであり、それは国民食料の安全確保、国土の均衡ある発展と保全など、海洋国家日本に相応しい豊かな国民生活の実現につながるもの」と指摘している。

 知識人も社会的役割発揮へ  TPPの本質暴き

 知識人の発言や行動も活性化している。
 慶応義塾大学教授の金子勝氏は「TPPは米国企業が日本市場に入れないことを不公正とする“公正な貿易”の強制であり自由貿易ではない」と指摘。同氏は「TPP問題の本質は農業の輸入、関税撤廃だけではなく、24分野(金融、労働、サービス、知的財産権など)での規制緩和を求められ、米国ルールに従う点にある」「“アメリカンスタンダード”のもとでありとあらゆる規制緩和を押しつけられるのは必至だ」と警鐘をならす。
 森島賢・立正大学名誉教授は「TPPは日本を失業社会にする労働問題でもある」と指摘。TPPが「農産物貿易の自由化だけを目的にしている」わけではなく「労働者の国境を越えた移動の自由化」が目的であり、介護労働者の外国人受け入れを突破口にいずれ、中国人労働者が大量に日本に来て、農村も都市部も失業者だらけになり「先人たちが培ってきた失業率の低い、安定した安全な日本社会」を根底から覆すと警鐘を鳴らしている。
 秋田県立大学では生物資料科学部で農業政策を専門的に研究する4人の教官(長濱健一郎教授)、研究者が昨年11月、TPPの県内への影響を調べる研究会を設立。農業だけでなく、医療や労働など県民生活に広く打撃を与える問題として県内各地でおこなわれる学習会に出向き、TPPの危険性を訴えるなど、社会的役割を発揮しはじめている。
 TPPは小泉改革を上回る新自由主義の徹底であり、日本社会全体をアメリカが食いつぶし解体させる亡国計画にほかならない。それは個別産業の利害を超え、また単に農漁業だけにとどまらず、日本社会の全分野に及んでいる。こうしたなかで日本の独立と真の国益を守り、根源の敵に向けたたたかいの機運が高揚し、人人の立ち上がりを促している。こうした全国・全産業の運動を一つに束ねるなら、日本を変える巨大な力に発展するきざしを示している。

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