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安倍改憲政治との全面対決
参院選結果巡る記者座談会
              戦争阻止の斗争機運は充満    2016年7月13日付

 自民党・公明党野党共闘を中心にくり広げられた参院選挙は、無所属を一人とり込んで「改憲勢力3分の2超」という結果に終わった。数字の上では衆議院も参議院も国会での改憲発議が可能になり、衆議院の任期満了を迎える18年末までの2年余りをかけて安倍政府が動かし始めようとしている。選挙は相変わらずの低投票率となり、およそ半数の有権者が棄権した下で、自民・公明が組織票を固めて議席を獲得した。これに対して民進党を中心とした既存の野党の寄せ集めでは対抗勢力になり得ず、全国民を発動するような力を発揮することはできなかった。参院選挙の結果をどう見るのか、大衆運動の進撃方向と展望はどこにあるのか、記者座談会を持って論議した。
 
 「自民大勝」の乏しい実感 与党対野党の択一選挙に幻滅 切望される第三勢力登場

 司会 まず、選挙結果を受けての反応から見てみたい。
  結果を報道した本紙「基盤の乏しい“改憲3分の2超” 正面からの論議避けた自民」を見た焼き鳥屋の大将が、「この通りだ。勝った勝ったというが基盤が乏しい。半分の人が行かないなかで組織票で勝っているだけだ」と話していた。そのなかで沖縄や東北など、安倍政府との矛盾が鮮明になった選挙区では自民党候補が落とされていることに注目していた。「改憲もいわず誤魔化しながらやるような政治は続きはしない。今に終わりがくる。戦争だけはさせてはならないという思いは世間一般にも強いし、世論は必ず動き出すと思う」と話していた。
 B 「予想通りの感じになった」と役所でも話題になった。これは自民党が強いというよりも、民進党とか野党側がだらしがなく「ぬるい」からだと指摘する人も多かった。山口県でももう少し纐纈厚(野党共闘)が得票を伸ばすかと思ったが、そう甘くはなかった。全体として「どうしてこんなに安倍自民党が圧勝していくのか?」という印象だ。自民党が熱烈に支持されたというよりも、対抗する勢力があまりにも弱いというのがもう一つの実感のようだ。自民党の支持基盤は乏しく強い印象などないのに、選挙では勝っていく。「大勝」に実感がなくピンとこないという意見も多い。
  選挙を通じて世論が激突したという印象がない。山口県を見ても候補者や陣営の存在感がまるでなかった。巷でも話題に上ることがなかった。どこで選挙がやられているのだろうかと思うほど静かで、投票を組織していく側からの働きかけがない。一言でいえば「選挙の体をなしていない」と誰もが思っていた。市議選や市長選と比べてもそれは顕著だった。「アベノミクス」といわれても実感がないし、積極的に自民党を応援しようという人の姿もない。もっぱら裏通りで企業などの組織票が固められて、あとは公明党が熱心に走り回って宗教票を固めていた。この選挙全般の構造がそうだが、選挙に行かない人人を掘り起こすのではなく、「寝た子を起こすな」が始めから終わりまで貫かれていた。
  山口選挙区の江島が正直に体現していた。自民党支持の企業には招かれて出向くが、街中で一般の有権者に訴えている姿をほとんど見なかった。「嫌われすぎて石を投げつけられるかもしれないから怖がっているのだ」と話題になっていたが、一般の有権者からの得票は期待しておらず、組織票を徹底的に固めるという戦略がありありだった。このなかで、民進党応援のはずの労働組合の連合が選挙区は事実上放棄していた。自治労は比例の所属候補応援だけをとりくんでいた。鉄鋼労連も比例の独自候補のみ。三菱や神戸製鋼、県内でも宇部興産、日立などの労働組合はみな江島を応援している始末だった。こうして、上から動かせる企業絡み、労組絡み、宗教絡みの組織票をガッチリ固めて江島の40万票になった。
  これに対して野党共闘がどうだったかというと、山口県では纐纈厚が結果として18万票を獲得した。陣営は日共関係者が「我が党の候補」のような顔をして占拠し、広がりが乏しかったのが特徴だった。しかし、「野党共闘」というだけでよくとった方だ。中小企業の婦人と話になったが、自民・公明の40万票近い組織票に対抗する場合、それ以上に組織していく力が求められる。風だけに頼っていたのでは望めないし、批判票を丹念に拾っていく選挙戦術が必要ではないかと。市議選でも2000票を集めるのに半年前とか1年前から支援者たちが熱心に政策を訴えて、友人、知人に支持を広げながら地道に動き始める。たかだか1カ月くらい前に手を上げてそこから運動しても限界性がある。本気で勝とうと思うなら何をすべきかという問題だ。
  山口県の選挙区ではいつもそうで、「保守王国」の対抗馬は直前になってあてがわれ、民主党もやる気がない。そんな姿勢を見透かされている。組織母体が何もない対抗馬なわけだ。しかし纐纈陣営は把握していないのに、18万の人間はみんな勝手に投票している。纐纈の演説会に参加した婦人が「演説内容はわかりやすくてよかったのに、選挙期間だけではみんなに浸透しない。本気で腰を据えて政策を訴えたり、運動する母体をつくっていかないと批判票頼みでは勝ち目はない」と指摘していた。その通りだと思う。選挙は甘くない。これは全国的にも共通する問題だ。選挙のときだけあらわれて、雲をつかむような真似をしていても人人の力を結集することなどできない。
  自民党や公明党の組織選挙は具体的だ。どこにどれだけの票があるかキッチリと抑えている。これに対抗するなら、徹底的に組織していく努力をしなければ芽はない。「野党共闘がぬるい」といわれるのは選挙模様にも歴然とあらわれていた。自公以下の寄せ集めというだけでは、5割の有権者は展望を感じなかったし、動かすことはできなかった。これは「有権者がつまらない」のではなく、政党がつまらないのだ。民進党にしても改憲勢力を内部に抱え込んだ状態で、野党の側も争点を正面から訴えなかった。それで嫌われ者の日共集団がしゃしゃり出て「殺し殺されない国にしましょう」とか「丁寧な説明は何もしていません」をオウム返しのようにくり返していた。あれでは有権者の心をつかむことなどできない。「同じ穴のムジナが何か叫んでいる」程度で白けさす効果となった。

 自民の得票率18・9% 民意反映しない構図

  選挙構図そのものが面白みにかけ、引き続き五割の有権者が棄権しているわけだが、実質的には野党崩壊の下での自民一強体制だ。政党支持率として反映されるのが比例票だが、5~6割とかの有権者が自民党を熱烈に支持しているわけではない。今回も自民党の獲得票は2000万票そこらで、全有権者のなかに占める支持率としては18・9%なのが実態だ。公明党の比例票が占める割合は7・1%だが、これら5人に1人程度の支持によって国会の3分の2を得る構造だ。自民「大勝」の実感がないのはそのためだ。選挙制度によって一党一人勝ちができるようになっている。
 E 自民党もすっかり低投票率依存が染みついてしまって、みずからの努力によって支持を拡大するとか、人人を説得するとか、政策を正面から訴えて有権者を引きつけるというものがない。欺瞞する力がなく、自信がないものだから、いかに有権者がしらけてそっぽを向くか、そのなかで組織票で切り抜けるかばかりを考えている。コソ泥みたいな選挙戦術だ。小泉の時代にはまだ郵政選挙など、人人をだまくらかして扇動していたが、安倍晋三になってからこの手の、テストでズルすることばかり考えているようなやり方が目立つようになった。政治の王道なら、改憲を正面から掲げて「信を問う」といって選挙に打って出るのが古くからの常識だが、選挙期間中は一度も改憲を演説でのべることなく、選挙が終わってから「(自民党改憲草案を)実現していくのは党総裁としての責務」「(改憲は)選挙公約にも書いてある」などといい始めた。詐欺みたいなやり方を本人は恥ずかしいと思っていない。歴代の自民党総裁たちが墓場のなかでビックリしているかもしれないが嘘と詭弁で切り抜けていく政治が平然とやられるようになった。
  争点隠しをやったのは疑いないが、世論を恐れているからこんなことをやる。「千万人といえども我行かん」とはほど遠く、根底にあるのはビビリ体質だ。息を吐くように嘘をつく体質ともつながっている。しかしこれでは政治は保たない。改憲するにも最終的には国民投票で問わなければならないし、自民党改憲草案を世間がどう見なすか審判を受けなければならない。むしろいまからが本番だ。権力を振り回すだけではどうにもならない。
 B 今回の選挙はメディアの加担ぶりも相変わらずひどかった。意図的にしらけさせようとしていた。何度も1面トップで「改憲勢力3分の2うかがう」「与党圧勝か」などと書き立てていた。どうせ選挙に行っても無駄なのかと幻滅させ、「寝た子を起こさない」戦略を支援した。『産経』と『読売』だけというのではなく、『朝日』も『毎日』も含めて司令塔でもいるのかと思わせるほど同じ論調だった。中心争点は改憲であることをジャーナリズムとして力を込めてとり上げるのではなく、「アベノミクスか改憲か」とか経済的利害の側に関心をそらしたり、終いには東京知事選の話題に関心をそらしてメディアジャックしてしまった。そして選挙が終わるといっせいに「改憲」を持ち出している。
  選挙期間も含めて改憲の中身すらまともに議論になっていない。しかし「信任を得た」といって改憲発議に向かおうとしている。東南アジアなどにも頻繁に出かける年配の企業経営者が「投票に行った人人のなかで、自公が3分の2をとったら改憲に行くと理解した人がどれだけいただろうか」と話していた。バングラデシュの邦人殺害ともかかわって、憲法九条を変えることに危機感を持っていた。「日本が70年戦争をやらずにきたのは、平和憲法あってのことだ。戦後、選挙となると平和憲法に基づいて論議になっていたが、今の自民党はそういうことについてわかっていない。もし安倍晋三が調子にのって改憲を強行するなら、私たちの世代が国民的規模の運動をやる覚悟はある」と話していた。自民党関係者であっても思い入れが強いし、戦争の道につながることをやってはならないというのが大半だ。
  今回の選挙では、沖縄選挙区で現職閣僚の島尻が落選し、沖縄からは衆議院も参議院も自民党議員が一人もいなくなった。オール沖縄の強力な力を引き続き日米政府に突きつけている。あのように民意を突きつけたいという声は本土側の有権者の中でも強い。選挙構造も含め民意が届かないことへの怒りがある。
  東北地方でもTPPの裏切りや震災対応、原発問題など安倍政府との矛盾が鮮明だった選挙区で自民は敗北した。福島でも現職大臣が落選した。野党共闘の側が原発政策について口を濁してひんしゅくを買っていたが、それでも自民党をたたき落とす力が上回った。そうした選挙区では投票率が上がっている。面白くない選挙すなわち結果がわかりきった選挙につきあう気はしないが、勝てるぞとなったらドッと動くのも特徴だ。東北の反乱だけでなく、一人区で自民党が敗北した選挙区が幾つもあった。野党の寄せ集めというだけでは力もなく限界があるが大衆的に追い詰めていく力を強めれば打ち負かしていけることを示した。
  基本的に追い詰められているから改憲を正々堂々と出すことができないわけだ。しかし一方で、責任を持って日本社会を引っ張っていくような政党がいない。それで日共集団とか社民とか日頃から何をしているのかわからないような者が乗っかっていく。「纐纈をよろしく! 比例区は共産党を!」「憲法を守りましょう」と親切ごかしの物欲しさを丸出しにして叫ぶから嫌われる。真実性がないのを有権者は一発で見抜く。これらがはしゃいでいるのは結局のところ「比例は共産党に!」だけではないかと。民進党にしても、そもそも野田が自民党に大政奉還してから安倍の暴走が始まったわけで、原発再稼働も増税も道筋をつけた張本人はオマエたちではないかと世間は見なしている。それで消費税増税は賛成です、改憲は「安倍政府の改憲には反対」だが、自分たちの手による改憲は賛成という調子だ。アメリカの傀儡政治を僕たちがやるのは良いが、安倍がやるのはけしからん! という程度のものだ。

 国民投票で激突は必至 これからが本番

  各種政党がみな対米従属構造のもとで飼い慣らされて、親米派に成り下がっている。日本社会をどうするのか、TPP、原発再稼働、集団的自衛権の行使、金融政策や諸々の新自由主義政策も含めて、諸悪の根源である日米安保、対米従属構造を打ち破るためにどうするのか、資本主義が腐朽衰退する世界にあって日本社会はどのような道を歩むことが展望につながるのか、正面からハッキリともの申す政党がいない。「ぬるい」といわれるのにもつながっている。そのなかで野党か与党かと二択で迫られても、どっちもボロじゃないか…と有権者は冷める。
  落選したとはいえ、東京選挙区で無所属新人の三宅洋平が旋風を起こしたのが注目を浴びた。熱意なども含めて人人に本気で訴えていく姿勢、真実性が他とは違っていた。集団的自衛権の行使や改憲、原発問題についても根本にある日米関係を正直に暴露していたし、話題になったのはその新鮮さだった。選挙は甘くないという現実も得票からは浮き彫りになったが、山本太郎が100円ハゲをつくりながら天下御免で権力にぶつかっていくような姿も含めて、広く共感を呼んでいるのも事実だ。身体を張っているのがわかるからだ。一敗二敗くらいでへこたれずに打たれて強くなるしかない。スペインで反グローバリズムを掲げて躍進しているポデモスでも、党首のパブロ・イグレシアスは37歳だ。こうした世界的な潮流とも呼応しながら、新しい動きが起き始めたことは注目すべき点だ。勝った負けたで一喜一憂していても始まらない。
 C 第三勢力の台頭が待ったなしの情勢になっている。真に大衆世論の受け皿となり得る勢力が出てきたら面白いことになる。原発再稼働反対や安保法制反対の国会前にしても、自然発生的に大衆運動が熱を帯びて直接行動になっていくが、野党をはじめとした各種政党は後から乗っかってくるだけで、導いていく側ではない。ついて行く側だ。それ自体がだらしがない。大衆のなかに流れている機運を捉えきれないし、自然発生の運動に便乗するだけになっている。従って選挙でも批判世論への乗っかりを試みたが、相手にされなかった。このだらしがない野党のおかげで安倍一強体制が成り立っている関係だ。それで強がっているように見えて実は弱いことを自覚しているから、争点隠しのようなことをくり返している。
 A 安倍晋三は正々堂々と「米軍の代わりになって自衛隊が地球の裏側まで行くのだ」「自衛隊が大企業の海外権益を武力で守るのだ」と訴えなければならない。離れが燃えたとか不良に襲われた麻生君を安倍晋三が守るのが集団的自衛権なのだとかの例え話ではなく、改憲についても具体的に訴えなければならない。安倍政府との対決は今からが本番だ。
 いよいよ改憲発議まできて、最終的には国民投票で激突する。「仕方がない…」であきらめるわけにはいかない。戦争に投げ込んでいく者に対して全力で国民世論を束ねて立ち向かっていく斗争が迫られている。
 C 選挙で思うような結果にならないとすぐに「有権者がバカなのだ…」となりがちな勢力がいる。そうやって五割の有権者を動かせなかった課題や問題点を誤魔化しているからボロのままなのだ。自分の利害の側からしか物事を捉えきれないからそうなる。戦争に大賛成というような世論はない。日本を戦争の方向に向かわせたらいけない、子どもや孫がやられてたまるか、という思いは鬱積している。日本の進路をめぐって政治意識は鋭いものがある。しかし組織されておらず、自然発生的な段階にとどまっている。あるいは信頼できる受け皿がなく行き場を失っている。この十数年来、峠三吉の詩をベースにした原爆展運動が全国に広がってきたが、あの深い支持や共感、質の運動を組織していくことが重要だ。
 B 大衆運動を基本にして世論と運動を広げながら政治家を縛ることと同時に、真に大衆的世論を代弁する第三勢力をつくりだしていく方向にしか展望はない。そのような力を持った勢力が全国的につながって大衆と切り結び、深い信頼関係を築いていくなら、対米従属の鎖に縛られて蹂躙されるような道ではなく、日本社会をよりよい方向に導いていくことはできる。人民に奉仕する思想に徹して、徹頭徹尾人民のために尽くす政治勢力こそが求められている。
  ブルジョア選挙は敵に有利なようにできている。選挙制度も含めてそうなっている。「3分の2超」だからといってジタバタする必要などまったくない。一瞬の連続こそすなわち永遠で、その生命に死がおとずれるまで終わりなどない。戦争体制で弾圧が強まれば、同時に人民の反抗も強烈になる。過剰生産恐慌の矛盾を基本にして、資本主義は世界的に行き詰まりを見せている。その打開策は第一次大戦や第二次大戦がそうであったように戦争しかない。このなかで「死なないためのたたかい」が現実に迫られている。国民投票の全面対決に向けて、一層奮起することが重要だ。

 

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