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安倍VS林から大乱立に展開
下関市長選巡る記者座談会
                浮動票分散させ組織票に力    2016年12月26日付
 
 来年3月の下関市長選を巡って、安倍・林代理市政を担ってきた毛並みの異なるグループの駆け引きが激しさを増している。現職(林派)打倒を掲げて「僕らの時代」を望む安倍派が3度目のポスト争奪に挑み、さらに若手に持って行かれると「次期市長」や「将来の市長」の夢を摘み取られ面白くない勢力が派閥の垣根をこえて現職と手を握ったり、第3、第4勢力が出馬を表明し始めたり、きわめて複雑な様相を見せている。いったい何が起こっているのか、この選挙の争点は何か、記者座談会を持って論議した。
 
 市民なめ切った選挙テク 再々チャレンジに挑む安倍派

  まず前哨戦の模様から見てみたい。
  6月に現職の中尾が出馬表明してから後出しジャンケンで選挙構図が固まり始めている。安倍事務所秘書出身の前田晋太郎が市議を辞職して11月に出馬表明し、最近になって元市議の松村正剛も風力発電反対を掲げて出馬表明した。さらに市議の香川昌則も「香川市政を実現する会」を立ち上げて1口5000円の会費を集めている。当初は周囲に反対ばかりされていたが、後援会体制も整ったとかで出馬表明は時間待ちのようだ。安倍派林派の一騎打ちかと思われたが、両者が正面からの実力勝負で互いに得票をさらけ出すのではなく、乱立で複雑に得票が分散していく選挙になりそうだ。
  それぞれの陣営が事務所開きをしたり、精力的に動いている。このなかで自民党県連や下関支部は前田の推薦を決めた。ここ数回の市長選はシコリを残さないために自主投票が続いたが、今回は自民党が前面に出てきて前田応援をやるつもりだ。前田のチラシが各戸に配布され、中央とのパイプすなわち首相との近さを強くアピールしている。推薦を巡っては県連や支部の会合で林派の塩満(県議会副議長)が反発して退席したり一悶着あったようだが、友田(安倍派県議)が押し切ったといわれている。中尾はふるい落とされた。自民党県議のうち、友田、平岡(元安倍事務所秘書)、高瀬、西本は前田応援で動いているという。
  一方で、市議会最大会派の志誠会は中尾応援で動いている。中尾に3期やらせたうえで禅譲によって次期市長を狙っていると評判になっていたのが関谷だった。その意向もあって「自主投票」にするよう自民党下関支部に申し入れたが蹴られた。中尾も当初は自民党下関支部に推薦願いを出していたが書類の不備で突き返され、その後取り下げていた。ただ、志誠会のなかも複雑のようで、13人のうち豊田町と豊浦町選出の3人は「自主投票」申し入れには加わらなかったという。そして、派内から香川が立候補しようとしている。前田のような若手に市長ポストを持って行かれると面白くない古手たちが反発している。感情的には複雑だ。それで「アイツは議会で寝てばっかりじゃないか!」「雑巾がけが足りない!」等等と文句を言っている。
  自民党推薦が前田に出たとはいえ、これも一枚岩ではない。東京都知事選のように造反議員を除名処分したりするのか、今後の展開が注目されている。いずれにしても、自民党内や安倍派・林派内で利害が一致せず、まとまりのない状態が市長選乱立につながっている。それを「赤勝て、白勝て!」で見物している人も多い。誰が当選しても安倍&林代理市政は変わらないという冷めた見方が支配的で、その枠内で市長ポストと利権を誰がとるか争っているからだ。多くの有権者は、何が始まったんだろう? と思って見ている。
  こうなったら他の自薦候補も出馬して、総勢5~6人の大乱立選挙を展開したらどうかという声もある。誰が票割り候補かわからないくらいの徹底的な票割り選挙にしてしまい、組織票を得た者が悠悠と勝利していくという新種の選挙テクニックにも見える。これほど出馬したら票が割れるのはあたりまえだ。その結果、誰にとって有利に割れていくのかという関心や話題も尽きないが、批判票や浮動票も含めて複数の選択肢に分散することで、組織応援のある候補が絶対的に有利になる。そういう選挙構図だ。
  支持者もそれぞれに被っている。中尾と松村正剛といっても本人たちは市議会時代からの盟友だ。8年前の中尾擁立でも松村は中心的な位置にいた。その後の議会でも市長与党と見なされてきた。今回は風力反対を掲げているが、いったいどうしたんだ? と戸惑いの目で見られている。それを「日共」市議団や社民党が「僕たちの統一候補」と触れ回っているのも印象的だ。あと、香川が唐突に「風力反対」を唱え始めているのも特徴だ。10万人署名の実力を見せつけている安岡沖洋上風力が争点化されたときに、とらえどころのない浮動票がどこに流れていくのかは選挙の行方を大きく左右する。この力の分散化にも乱立が影響する。選挙に出馬するのは自由で、出たい者がみな出てきて自由に争えば良い。しかし、市議選とは訳が違う。今回の乱立は、まとまりのない街・下関の産物かもしれないが、同時に当選ラインを低くする力が働いている。基本的には中尾市政の評判が散散ななかで、安倍派がポスト奪還を願望してこのような不思議な選挙になっている。
  企業関係では、特に一騎打ちだと取引先から「おたくはどっちなのか?」とあちこちから踏み絵を迫られて困ってしまう。仮に敗北候補にのめり込んでいたら、選挙後に企業生命が脅かされるほどの報復を受けるからだ。江島(元市長、現在参議院議員)が戦犯リストを作成して指名入札から徹底排除したのが最たるものだ。勝ち馬を見抜いて無難に対応しておきたいという心境が強い。それで「誰が勝つの?」という意識が先行しがちだが、蓋を開けてみないとわからない。それこそ「3日前の安倍事務所」もあり得るし、告示以後の数日で一気に流れが変わって、みなに梯子を外されていった亀田(元市長、現市議)のような事例もある。時に人間不信になるのではないかと思うようなてのひら返しを見せつける。
  そして勝ち馬にみなが寄っていって、当選後の万歳のなかに「この陣営だった?」と思われるような企業までが割り込んで、一緒に万歳している光景もある。選挙で踏み絵を迫られるのはたまらないし面倒臭いものだ。「中尾、前田、松村、香川の誰を支持するかで社運が決まってたまるものか」とある企業で話題になった。勝ち馬企業が役所からやけに仕事をもらうというのは中尾市政でも露骨なものだった。そんなことばかりくり返している。

 存在感増す公明・学会

  乱立で見えにくいが、自民党は友田を筆頭に安倍派は面子をかけて前田を担ぎ上げている印象だ。大学卒業後は安倍事務所の秘書として過ごしてきたし、前回落選した西本以上に「安倍派代表」「安倍事務所の本命」の色合いは濃い。誰が見ても安倍代理なわけだ。これで敗北したら自民党県連や下関支部も格好がつかない。一番みっともないのは安倍事務所で、現役首相の顔に泥を塗る関係だろう。推薦ごり押しは、これまで以上に踏み込んだものになった。
  前田は市議になってからも、安倍事務所の筆頭秘書が後見人ということで奥田世代とかの先輩議員たちが遠慮してきた関係だ。その特別扱いを経て市長選に立候補したものだから、8年前に担がれて落選した香川が心象穏やかでないのもわかる。関谷その他の感情も生身の人間としてあり得る。代替わりも意識して若手を登用しているのかもしれないが、一方で晋太郎時代から支持者としてやってきた世代とのギャップもあり、自民党1本化といっても至難の業だ。あまり強引なことばかりすると、将来的な代議士の代替わりや国政選挙において歪みが一気に爆発しかねない。今回の選挙がその端緒を開くなら、おおいに揉めて、矛盾を極点まで激化させた方が次の展開が早い。
  林派も塩満を筆頭に中尾当選を目指してムキになっている。サンデンなども現場に「中尾を応援せよ」と指示が出ている。合同ガスなど一連の選挙企業がフル回転してどれだけの得票を叩き出すか注目される。
  乱立で当選ラインが下がると、誰がキャスティングボードを握るのかだ。組織票といっても抽象的ではない。自民党推薦などあてにならないが、一方で公明党の1万8000票は高嶺の花になってくる。浮動票を押しのけるほどの存在感を持っている。
  しかし、投票率が爆発的に上昇するような選挙になれば、こうした組織票有利な展開は根底から覆されてしまう。もっとも力を持っているのは浮動票で、選挙に行かない人人が動くことだ。民主主義を唱える以上は、有権者の70~80%が投票するような選挙でなければ話にならない。最近は低投票率が常態化しているが50%を切るような選挙はやり直しした方がいい。そのうちの二十数%程度の得票でふんぞり返っているような者は政治家失格だ。有権者が政治に幻滅している状況にあぐらをかいて、何が政治家といえるのだろうか。そのような怠け者は淘汰されていくような政治風土でなければならない。国政についてもそうだが、「どこもあてにならない…」という政治不信をもっけの幸いにして自民党が勝ったような顔をしている。こうした状況を打ち破って、民意を押し出していくことが課題だ。

 各候補の態度を迫ろう

  現状では「誰がなっても同じ…」というのが有権者が冷めている最大の要因だろう。市議や県議、各種の政治勢力が様様な思惑で蠢いている一方で、全体の空気はそこまで盛り上がっていない。郷土の衰退に危機感は強いものの、各陣営の政策が何も見えてこないのが関係している。
  陣営同士が互いに誹謗中傷を開始して、女問題とか金銭問題とか下品極まりない話が飛び交い始めるのが下関の選挙だ。どこからそのような悪知恵が思い浮かぶのかと思うほど、足を引っ張ることにかけては天下一品の人人もいる。紳士面をしてえげつない。それで「下関を元気にする!」とか抽象的なことをのべて、当選後にやることといえば誰が市長になっても基本計画を丸写しするだけなわけだ。「中央とのパイプ」というが、これまでもそうやって持ち込まれた事業を粛粛と捌くだけだったから今日のような停滞がある。
  大不況に直面して失業と貧困の脅威は身近なものだ。下関の経済情勢は衰退の一途をたどって課題は山積している。このなかで現状打開を求める世論はうっ積しているにもかかわらず、選挙となると受け皿が乏しい。このなかで市民運動はどう進んでいくかが重要だ。連合、公明、社民、「日共」に至るまで総翼賛化して、安倍支配の植民地みたいな状況になっている。一見すると番頭争いの自由を行使して争っているように見えるが、安倍&林代理市政の下では日頃から何の矛盾もなく戯れてきた連中だ。それらが乱立して分散型選挙に持ち込み、いったい誰を有利にしようとしているのか、選挙の展開を見ていたらおのずとわかることだ。
  中小企業は老舗が次次に倒れたり、自主廃業も目立っている。若者に職がないために高校生たちは卒業を機に県外に出て行く。一度出て行ったら帰ってこない。農村部には働き手がいない。水産都市といいながら、漁港市場の主力である以東底引きも減船が続いて残りわずか。産業振興の課題は待ったなしだ。しかし箱物や開発に明け暮れて、下関の金が働く者のところには回らず、銀行を中心に空中でクルクル回ってパンクしている。これが「アベノミクス」だ。それで産業と雇用がなくなって、山銀も下関では商売にならないから、100万人都市の指定金融機関になりたいという願望とセットで北九州や広島に出て行っている。国政もそうだが、市民生活の必要性から行政施策が機能しないというのが特徴になっている。
  中尾8年でも相当に疲弊してしまった。江島と中尾を合計すると失われた20年になる。これをどう立て直すのかが市民の最大関心になっている。少子高齢化が全国ダントツで進行したが、子どもが増えて活気がある町にどうするか。若い親たちの働く場を下関でどうつくるか。農林水産業や製造業など、現金収入になる地場産業をどう守って振興していくのか。地元商業をどう守るか。箱物利権をやめて、市民の必要な事業に目を向けた地元業者への発注をどう増やすか。医療も介護も高負担を緩和し、老人が安心できるようにどうするか。旧豊浦郡の合併後の切り捨てをやめて、急激な過疎化にどう対応するのか。住民生活を脅かしている安岡沖洋上風力計画にどのような態度をとるのか。山ほど課題がある。これらを選挙を切り抜ける方便で済ませてはならない。
  誰が市長になるかもあるが、誰がなっても同じなら、どのような力で市民の願いを実現させていくかを考えないといけない。当選したら例外なく安倍&林代理市政の番頭役におさまって、せっせと相互に良い顔をしながら「2期目も3期目も私にやらせてください」をやり始める。今回のようにヒートアップするのは稀だが、最終的には何もなかったような顔をして利害調整していくのも毎度のことだ。江島がダメなら中尾と期待して失望した人たちも多いが、人物依存ではこの街の政治構造はどうにもならない。誰か立派なリーダーが出てきて、まともな政治を実行してくれないかなと思っても、立派で素晴らしいと思う者が出てこないからみんながため息をついている。それで市長選に出てくる4人の顔を並べられて期待せよといわれても困る。
  国、県の支配、安倍&林代理、山口銀行代理の独特な政治支配の構造があるなかで、不断に市民世論と運動の力を発揮して、実行させるというのでなければならない。今のところ組織票優位の展開で、選挙そのものは見たことがないくらいの低調さだ。しかし、次の代理人が誰であれ、閉塞した状況を打開するのは市民運動の力が決定的だ。安岡沖洋上風力の問題なども関心が高いが、一つ一つの問題について各陣営や候補者はどのように向きあっているのか、あるいは何も考えておらずに空っぽなのかも含めて、態度を迫っていくことが重要だ。最終的にキャスティングボードを握っているのは有権者なのだから、この組織票優位のなめきった空気を一掃することが先だ。

 

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