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赤字は誰の責任か?
道の駅ソレーネ周南
            臭い物に蓋では解決ならず    2016年9月9日付
 
 2014年に周南市戸田にオープンした道の駅「ソレーネ周南」が2015年度の決算で2200万円もの赤字を出したことが物議を醸している。鳴り物入りでオープンした当初はメディアにもとりあげられ、出荷形態などが素晴らしいと持ち上げられていた。初年度は2000万円の利益を上げ、さらに建物はグッドデザイン賞を受賞するなど、木村市長にとって自慢の道の駅だったが、その内実は決して順風満帆ではなかったようだ。地方創生が叫ばれるなかで、各地で道の駅を起点にした農漁業振興のとりくみが盛んになっている。地域住民にとって過疎化を食い止める起爆剤として、起死回生の願いがこもったものでもある。しかし一方で、駅長等の実績を肩書きにして全国を渡り歩くまちづくりブローカーが暗躍したり、各地で販売されている物産が道の駅を専門にした同メーカー製造のもので、金太郎飴のように同じ商品を販売していたり、さまざまな問題も内包している。ソレーネ周南はわずか2年でなぜこれほどの大赤字を抱えたのか、どのような問題点を解決すれば打開できるのか、関係者を取材した。

 駅長主人公が行き着いた結末

 周南市の道の駅は島津前市長が立案し、それに対して現職の木村市長が「ハコモノ反対」「道の駅建設反対」を訴えて当選した。しかし、当選してからは公約を覆し、周南市が13億円、国が6億円を出して合計19億円で建設した。計画段階から売り場面積が狭いことや倉庫がないことなどが関係者のなかで指摘されていたが、市は「有名な設計者だからこの設計でやるしかない」と押し切って建設を進めた。その結果、テナントにパン屋やレストランを入れようとしても導線が悪いなどの理由で見送りとなった経緯がある。
 道の駅運営のために指定管理者として「一般社団法人周南ツーリズム協議会」が指定され、西徳山三地区活性化連絡協議会、新南陽商工会議所、周南農業協同組合、山口県漁業協同組合、徳山商工会議所、鹿野町商工会、熊毛商工会、周南観光コンベンション協会、須金ぶどう梨生産組合、都濃商工会、徳山花き生産組合の11団体が社員となって10万円ずつ出資して設立された。
 駅長は周南市が全国公募で募集し、江本伸二氏を開業準備段階から採用して任命した。江本氏は、鳥取県北栄町のまちづくりや奈良県黒滝村の道の駅にかかわった人物として知られていた。
 生産者が自分で出荷し、残った商品は自分で引き取りに来なければならない道の駅が多いのに対して、ソレーネ周南では買い物をする場所のない中山間地域に道の駅の商品を運んで移動販売をしたり、集荷に回ったり工夫がされてきた。それは面積が広く、中山間地域の多い周南市では、高齢のために出荷できない生産者にとっても便利で、出荷者や地域の人人からは喜ばれていた。
 道の駅の経営は自治体の関与や運営形態によって違いもあるものの、一般的に設置から2~3年は初期投資等の回収に頭を悩ませ、いっきに黒字経営に持っていくのは困難を伴うといわれている。人気を博すようなものになれば長期展望にもつながり、その逆であれば廃れるのも早い。消費者をどう引きつけるか、リピーターとして取り込んでいくかが最大の鍵を握っているという。
 ソレーネ周南の場合、1年目の売上は順調で、来場者83万人、売上は約6億900万円、約2000万円もの黒字となった。2年目も理事会のたびに「とても順調です」という報告だけがされ、理事たちはみなそれを信じてきた。しかし、それが一転して大赤字を出す結果となった。報告されていた決算の信憑性が崩れ、実は赤字だったというのである。
 理事会の役員たちは、3月に決算をして、銀行の監査も5月までの税務署への確定申告もすべて終わらせた状態で、7月10日の理事会で初めて2200万円の赤字が出たことを知らされた。それまでは前年並みの利益が出ていると信じて疑わなかった理事がほとんどだった。
 代表理事の男性は「2月の時点でも“来場者も収益も前年並みの利益を上げています”という報告がされていた。本当に寝耳に水だった。オープン当初から駅長が“3年は現場に任せてほしい”(口出ししないで欲しい)といっていたし、彼は道の駅のプロだと思っていたから任せきっていた。地域代表として少しでも地域の活性化のためになるのであればと思って代表を務めてきたが、まさかこんなことになるとは思わなかった…」と話した。

 不可解な山口銀行監査

 その後2200万円の赤字は、経費を二重に掲載していた部分があったという理由で約700万円の減額修正となることがソレーネ周南から市に報告された。理事会の役員たちはその事実も新聞報道ではじめて知ることとなった。理事会とは名ばかりで、責任をとらされるときには叩かれるが、それ以外については蚊帳の外であることをあらわしていた。
 2200万円の赤字を責められていたと思ったら、今度は「やっぱり700万円少なかった」と新聞報道によって知らされ、当事者でありながら実態がどうなっているのかわからないまま、数字は動いていくのだった。
 なぜ700万円もの狂いが生じたのか真相をたどってみると、山口銀行を介して仕入れ業者などに振り込む金額は毎月ほぼ約700万円程度だったはずが、ある月だけ突然2倍の1400万円に跳ね上がっていたからだった。税理士をつけ、さらに銀行監査(山口銀行)を受けているにもかかわらず、このミスが見逃されてきた。誰も気付かなければ700万円は損失になるところだった。
 ソレーネ周南の1年目の監査は山口銀行と西京銀行の代表2人がおこなっていた。しかし、2015年度の監査はなぜか山口銀行徳山支店の徳永徹支店長(山口銀行常務)1人であった。この約700万円もの修正が発覚したのは8月で、徳永氏は6月末の人事異動ですでに山口銀行を退職していた。
 あわや700万円もの架空の損質を被るところで、下手すれば山口銀行の「ミス」によって700万円を詐取されたと責められても仕方がない問題であるが、「ミスだった」で事なきを得ている。
 なお、監査としては失格であるが、徳永氏はその後、山口銀行グループ会社のやまぎんカード社長に就任し、クレジットカードや信用保証、金銭の貸し付けなど他人の「信用」には目を光らせているようだ。

 駅長は突如として退職

 1500万円もの赤字を抱えた理由として江本駅長が明らかにしているのは、「地元の出荷者が増えたため、市外から仕入れていた商品を減らし、売り場を確保したため手数料が減った」というものだった。手数料は市内の農産物は15%、水産物や加工品、工芸品は20%、市外の出荷者はこれに5%の上乗せとなっている。また、冷蔵庫や倉庫を買ったり、日よけのテント、ベンチを買ったことも赤字の理由として上げられているが、備品を購入するさいに理事会で検討されたことは一度もなく、すべて駅長が独断で業者を選定し購入し、理事会にはいつも事後報告だったという。理事会役員は「赤字の原因などを問うても、説明がころころ変わるから何が真実なのかがわからない」と話す。
 ある役員は「江本駅長を信じ切って、すべて任せていた私たち理事会の責任もある。立ち上げのときから一生懸命にかかわってきていたし、見た目も真面目そうで1年目には2000万円の黒字を出したこともあって、数字を確認することもなくすっかり信用していた。しかし普通は6億円も売上があって、30%前後の利益率があれば赤字にはならない」と話した。なぜ1500万円の赤字が出たのか解明にはいたっておらず、合点がいかないことだらけなのである。
 関係者を驚かせたのは、赤字問題をどう解決するかみなで話しあっていた8月22日の理事会で、突如として江本駅長が「私は7月末で退職しました」といい、さらに駅長はやめても理事に名前は残しておきたいと発言したことだった。テレビ東京の「ガイアの夜明け」でも凄腕の道の駅駅長としてとりあげられており、グッドデザイン賞を受賞した道の駅の駅長ともなれば次の就職先には事欠かない。「ソレーネ周南の駅長」という肩書きで、各地で講演などもおこなっていた。その肩書きをステップにして、「私は次の道の駅へーー 」というのでは「余りにもあんまりではないか」と。
 ソレーネ周南の決裁権は基本的に同氏が握っていたというのが大半の関係者が指摘するところだ。理事が知らないことも多岐にわたっていることは、赤字発覚後の顛末を見るだけでも歴然としている。業者との取引、人事などすべての決裁をほぼ駅長1人でおこなってきたため、「取引に透明性を持たせる意味でも決裁権を他に移すべきではないか」と理事会でも提案があったが、断固として拒否されたという。そして最終的に「赤字が出たらさようなら」をやっているため、混乱がもたらされている。
 背任行為はなかったのか否かも含めて、ソレーネ周南にまつわる金銭の流れを徹底的に解明し、1500万円の謎をはっきりさせなければ解決にはならない。なぜ赤字になったのか原因を明確にしなければ、また同じ失敗をくり返すことにもなりかねない。手数料や集荷体制に問題があるのか、決裁権を握る駅長と理事会の関係はどうあらねばならないのか、虚偽報告をされた場合にどうしろというのか、全体としての問題点をあぶり出すことによってしか解決はないのに、責任者はびた一文責任をとることなく再就職に向かい、残された理事会なり周南市の関係者が1500万円を巡って七転八倒しなければならないというのでは話にならない。

 市や市議会の責任は…

 現在、指定管理者であるツーリズム協議会の理事会のなかでは、新南陽商工会議所が中心となって新たに事務局を立ち上げ、契約している取引業者などすべて見直していくことが決定しているという。還付金の返済、消費税や仕入れ業者、従業員に対する支払いのためにも、西京銀行から2000万円を借り入れることが決まっているようだ。
 全体として解決の方向に進んでいるようにも見えるが、駅長の責任問題を追及すると刑事事件にもなりかねず、そうなると市にも任命責任が問われることになり、なるべく責任の所在を曖昧にして丸く収めようとする力も働いている。周南市が19億円もの税金を使って建設した道の駅で、その責任において引っ張ってきた駅長に運営を委ねて、毎年1400万円もの指定管理料も払っている。その結果、大赤字を出したことについて、原因究明を避け、曖昧模糊とした状況を誤魔化していくなら、納税者に対する冒涜行為にほかならない。こうした事態について見て見ぬふりをする議会も責任が問われる。仮に背任行為があったとすれば、その責任を理事会が負ういわれなどない。逆に駅長にとっては今後の名誉にかけて全力で疑問を払拭する義務がある。「さようなら」の逃散では何も解決しないのである。生産者のため、地域のために貢献する道の駅にするためにも、行政や関与している主立った団体の責任において、灰色の状態に白黒をつけることが求められている。
 なお、今回のソレーネ赤字問題について、理事たちですら知らないこと、理事しか知り得ないことを地元地方紙が連日にわたって報道し、矛先をもっぱら「理事会の責任」に向けていることが不思議がられている。理事会の責任がないわけではないが、駅長の責任も問われなければ客観的に見て不自然である。現段階では誰の責任で1500万円の赤字になったのか、詳細な分析も含めて誰もわかっていないのが現状といえる。山口銀行のいい加減な監査も含めて、信じられないような金銭の流れがあったことは一部しか明らかになっていない。このなかで指定管理者の立場を追い落とすことばかりに力が割かれると、正常化への道筋が描けないばかりか、赤字にかこつけて地方紙が異業種転換でもはかろうとしているのか? なんならソレーネ周南の利権にありつきたい願望でもあるのか? と思われてしまい、おかしな憶測を招くものとなっている。
 道の駅ビジネスを巡ってソレーネ周南で何が起きていたのか、綺麗事では済まないドス黒い世界も含めて、失敗の膿を出し切ることが求められている。
 道の駅の主人公は駅長や指定管理者ではなく、生産者でなければならないことは疑いない。


 

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