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「圧勝」とはほど遠い支持率17%
現実反映せぬ小選挙区トリック
               政治基盤崩壊する自民党    2014年12月17日付

 解散総選挙が終わるや、早速、安倍首相が集団的自衛権行使の問題で「信任を得た」とか、改憲に向けて「努力する」などと主張し始めている。選挙は、商業メディアによる「自民300議席越えか」「自民単独で320議席もあり得る」といった扇動報道とは裏腹に、自民党は改選前よりも議席を減らした。比例区において獲得した得票数も全有権者のうち僅か17%だった。小選挙区制度の恩恵で国会のイスは3分の2近くを総なめにしたが世論を動員できるような力がなく、その政治基盤はますます細っていることを浮き彫りにした。投票率は戦後最低の52・66%を記録し、半数の有権者にとって選択肢がなかったことをあらわした。選挙結果と進撃方向について、記者座談会をもって分析した。
 
 低投票率仕組んだメディア

  「増税の先送りに対する信任を問う」「アベノミクスの評価が争点」などといっていた安倍晋三が、選挙が終わると早速改憲を口にしたり、暴走を始めている。選挙後の受け止めはどんなものになっているだろうか。
  今回の選挙はメディアの扇動があからさまだったから、期間中はしらけている人も多かった。終わってみて、あの「自民圧勝」報道は何だったのか? と各所で話題になっている。自民党は議席を減らしているし、300議席どころか291議席だった。毎日新聞などは「320議席もあり得る」と1面トップで扱っていたが、この世論調査報道というのがいかにいい加減なものかを改めて実感させている。「終盤にかけて情勢は変化する可能性がある」といつも逃げの文句を用意しながら、投票してもムダだという雰囲気だけを煽っていった。低投票率にして、組織票を持っている自公が勝利するためにメディアが加担した。大本営発表の嫌らしさに怒っている人が多い。
 C 選挙後も引き続き「自民圧勝」とメディアがやるものだから、結果について詳しく見ていない人人は「えっ? 自民党は議席を減らしたのか」と驚いている。何をどう見たらよいのだろうかと戸惑いも語られていた。山口4区では安倍晋三が前回選挙の11万8000票から1万8000票減らして、あわや10万を切るところまでガタ減りした。これは下関の人間にとっては衝撃的な数字で、みんなが驚いていると同時に相当に批判世論が強いことを確信させるものになった。
  前回比でいっきに15%も得票を減らした。当確が八時過ぎには出ていたが、自民党だけでなく連合、公明など協力者をフル動員しながらマイナス1万8000票だった。投票率は伸びていないし、むしろ減った。これは浮動票が逃げていったのではなく、安倍の支持基盤が崩れていることを示している。農家と話すと、「今回は安倍さんには入れなかった。地方創生といっているが、TPPにせよ、農政にせよ、生産者のことはまったく見ていないからだ。こんな政治を続けさせるわけにはいかない」と話していた。これまで安倍に入れていた人が離れている。とくに農村部はその傾向が顕著だった。自民党関係者が農村の知人宅を回っても、「今回は相手にされない…」とぼやいていた。
 高齢者も安倍晋太郎の代から支えてきた人人が、集団的自衛権や特定秘密保護法、改憲など戦争体制を強めることに危惧を抱いていたし、「今回ばかりはすんなり自民党に入れるわけにはいかない」と語る人が少なくなかった。そういう状況を反映していると思う。前回選挙では下関市内だけで10万票をこえていた安倍票が、今回は8万4700票だった。長門でも2200票減らした。
  そんななかで、労働組合の連合は今回も安倍応援で動いていた。三菱は組合員が700人いるが、いつも安倍の選挙をやる。現役世代だけでなくOBまで含めて水面下で動く。神戸製鋼も同じだ。民主党の傘下にいるはずの連合が自民党の選挙をやり、県議の加藤はサボタージュで自民党に協力した。対抗馬としては「日共」と公示直前に出馬を決断した医者のおばちゃんで、とても選挙といえる代物ではなかった。そのなかで、みんながどう投票行動をとるか頭を抱えていた。
 選挙後、ある中小企業で何人かの従業員と話になったが、「これは選挙といえるのか?」とみなが口口に語っていた。「自民圧勝」というが、山口4区だけ見ても選挙が体をなしていない。とくに野党がまったく対抗力がないことを問題にしていた。投票率が下がったことについても、「4区みたいな選挙だったら行きたくなくなるのもムリはない」と話していた。
  現役の首相が大幅に得票を減らした。この意味合いは大きいし、下関の民意を反映したものとして確信が強まっている。古賀敬章と争ったときが9万7000票で過去最低だったが、今回の結果はそれに次ぐものだ。選挙の度に減り方は激しいものになっている。山口県内の他の選挙区でも、自民党候補はそれぞれ1万票近く減らしている。そして有権者の半数が棄権したのも共通の現象だった。
 G どこへ行っても「沖縄はすごかったな!」と喜ばれているのも特徴だ。4つの選挙区すべてで自民党を叩きつぶした。「いまからはあんな選挙をしないといけない」と語られている。聞く耳のない傲慢な政治に対して、候補者どうこうではなく、有権者自身が立ち上がって争点を鮮明にしてたたかう姿へ共感がある。「自民圧勝」ばかり報道される面白くない選挙で、唯一みんなが注目してきた。知事選に次ぐ勝利で、自民党を徹底的に壊滅に追い込んでいる沖縄県民のパワーにみんなが激励されている。
 
 78選挙区で大接戦 野党一本化なら逆転 票割った「日共」

 A
 選挙結果は何を示しているかだ。各地で接戦にもなっていた。北海道など農業地帯では自民が議席を失ったところもあった。「自民圧勝」ではなくその中身について見ないといけない。
  農林水産大臣の西川公也が栃木で落選した。農林水産副大臣も岡山で落選している。前回選挙の公約を破ってTPPをゴリ押ししてきたのもあって、灸を据えている。鹿児島や佐賀でも自民党は議席を失った。あと次世代の党というか旧世代といった方がよいのかもしれないが、石原慎太郎率いる右翼集団が壊滅だった。朝鮮人侮蔑のヘイトスピーチをしてはばからなかった西村眞悟も落選した。元航空幕僚長で安倍ブレーンだった田母神も公明や生活の党にも敗れて最下位だった。「日本の美徳」「家族とは」などと説いてきたが、選挙期間中はみずからの不倫を巡って奥さんから起こされていた裁判に敗訴して、「信義則上、許されない」と判決を受けていたのがニュースになっていた。次世代は20議席からいっきに2議席へと凋落した。
  もっとも特徴的だったのが沖縄で、島嶼部を覗いてほぼ全市町村で自民党以外の候補の得票が勝った。オール沖縄で候補者を一本化し、安倍政治を明確に拒否した。日米「安保」、基地撤去という争点が鮮明になっていたから、よそとは違う様相になった。自民党候補は期間中も「自民党です」といえず、最後まで冷たい視線にさらされていたようだ。郷土をミサイル攻撃の標的にさらすな! という世論は抑えることなどできず、安倍政治の使い走り議員たちを許さなかった。辺野古埋立承認から1年がたって、仲井真も退場させられ、裏切った国会議員も1人残らず振るい落とされた。沖縄では「いい正月が迎えられる」と語り合われているという。
  選挙区では、自民党の主立った面面の選挙区は対抗馬が「日共」のみのところが多かった。野党がまともに対抗馬を立てなかったのも特徴だ。遊説で走り回っていた小泉進次郎がそうだし、石破茂、茂木敏充、額賀福志郎、福田元首相の後継者が立候補した群馬4区、新藤義孝、浜田靖一、山口俊一、田村憲久、西村康稔、二階俊博、加藤勝信、鳩山邦夫、麻生太郎、野田毅、園田博之(次世代)、江藤拓など大臣クラスは「日共」相手の不戦勝だった。安倍晋三の山口4区でも2日前になっておばちゃんが出馬したから「日共」との一騎打ちは回避したが、票の持って行き場に困っている有権者は多かった。野党が脳天気でまったく解散に備えていなかったのもあるが、選挙が体をなしていない。
  ただ、選挙区ごとの特徴を見てみると、オール沖縄方式なら自民党が落選していた選挙区が多くあった。今回の選挙は、「日共」集団が勝つつもりなどないのに全選挙区に候補者を擁立した。解散発表前から「全選挙区擁立」で方針を打ち出すなど、前のめりだった。それで選挙区で獲得したのは沖縄の一議席のみだった。他の選挙区ではむしろ1〜2万票の批判票を割って、自民党を喜ばせていた。
 295すべての選挙結果を見てみたら、「日共」集団の票割りがなく、沖縄方式で野党一本化で挑んでいたなら、自民党は78議席失っていた。票割り、乱立が相当に自民党を助けた。291議席ではなく、選挙構図如何によっては213議席になってもおかしくなかった。「日共」集団が8議席から21議席に伸びたのは、「他に入れる政党がない」という状況のなかで、最後に向かった先が「日本共産党」の看板を掲げる政党だったということ、そのような情勢にあることを反映した。同時に、選挙において自民党補完勢力のような役割も果たした。勝つつもりなどないのに、自民党の議席確保に貢献したというのは小選挙区の結果からいえることだ。
 E 小選挙区制度はそもそも2大政党制を想定した選挙制度で、野党が乱立すれば負けるのはわかりきっている。この選挙制度のインチキも問題にしないといけない。政党の支持率をあらわすのは自公協力の選挙区における得票ではなくて、比例区の得票数だ。自民党の今回の得票は1766万票で、全有権者1億396万人のうち17%に過ぎない。ところが295の選挙区では野党乱立により222議席を得て、比例の68議席も加え、さらに選挙後に自民党公認扱いした1人も加えて291議席を得た。17%の支持率しかない政党が国会の議席を独占した。
 ちなみに、2009年の政権交代選挙で自民党が惨敗した時の比例票は1881万票だった。惨敗した選挙よりも得票を減らした政党が大勝するという、おかしな事がやられている。選挙区の得票数は候補者数にも左右されるが、2009年の自民党の得票は2730万票だった。それで64議席しか得られなかったのが、今回はそれよりも少ない2546万票で222議席を得た。小選挙区のトリックでこんなことが起きる。
  国民の支持によって国会の議席数が決まるわけではないのだ。「1票の格差」云々がいわれているが、「インチキ」の一言に尽きると思う。あと、民主党が大幅に得票を減らしたうえで「自民圧勝」がもたらされているのも特徴で、前回選挙では選挙区、比例ともにいっきに2000万票近くが逃げて大敗北となった。さんざん期待させておいて、いざ与党になったら自民党と同じ事をやり始めた。消費税も原発再稼働もTPPもみな自民党と同じ事をやって、その結果、叩きのめされた。民主党は代表の海江田万里が落選して、消費税増税やTPPを進めていた菅直人も選挙区では落選した。人人を騙した者に対しては、引き続き厳しい視線が注がれていることを示している。今回の選挙で若干議席数は伸ばしたが、比例票を見ても2000万票は戻っていない。
 G 維新の党も得票の減り幅が大きい。
 
 矛盾ない国会の姿 対米従属との斗争が急務 大衆運動に展望

  安倍政府の登場は、そもそも野田民主党政府が道筋を引いたものだ。惨敗がわかっていながら解散総選挙に打って出て、意図的に自民党に大政奉還した。民主党崩壊の自爆選挙を民主党の党首が実施するのだから、よほどの力が背後で働いたと見ておかしくない。そして異次元の金融緩和、集団的自衛権の行使容認、特定秘密保護法、TPP、原発輸出や再稼働、消費税増税などみな暴走して安倍が突っ走ってきた。財界や米国など背後勢力がそのようにさせたわけだ。
 異次元の金融緩和やアベノミクスといっても、要するに外資やファンドが食い物にしただけで、国民生活には何も回ってこない。日銀と銀行の間を資金が行き来するだけで、銀行を通じて米国債買いに回されたり、円キャリー・トレードでみなニューヨークに流れ出していった。安倍政府を通じて、金融博打の原資を提供させた。TPPも米国の市場として日本列島を差し出すものだ。日中関係の衝突といっても、野田政府の時期に尖閣国有化を打ち出し、以後の緊張関係を安倍がもっと悪化させてきた。これも米中の覇権争奪で日本が盾になっているだけだ。対米従属のもとで、政治は誰が与党になっても同じ事をする。この政治支配構造とどうたたかうかが重要な問題だ。
  改憲も民主党は基本的に賛成で、原発再稼働、消費税増税、TPPももともと自分たちが賛成してきたものだ。国会はオール翼賛化して野党がいない状態になった。自民党、民主党、その他の議席数だけ見ていても何の意味もない。
  政治は国民を動員できなければ政治とはいえない。世論を動員して、熱狂でも何でも作り出して支持を得なければ、宙に浮いた物にしかならない。今回の選挙は小泉フィーバーのような熱狂も作ることはできなかった。「熱狂なき選挙」と小泉進次郎が発言していたが、戦後最低の投票率がそのことをよく物語っている。むしろ、低投票率狙いのメディア誘導を意識的に仕掛けていた。それ自体が支配の弱体化を示している。国民の半分が「選択肢なし」と見なしてそっぽを向いたのは、それとして現実を反映している。まともな野党がおらず、選挙が選挙でないのだ。
 国会は国民からますます遊離して支持基盤を失っている。狭い国会の中だけで多数派を握ったと思って、安倍が調子付いている関係だ。選挙を見ても、与党と野党の関係しか見えていないのが安倍晋三だ。政治が国民との力関係で動いているとは思っていない。実際の支持基盤は脆弱だ。
  選挙後、アメリカは結果に大喜びしている。「集団的自衛権の行使や日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定に向けて、その政治基盤が強まり推進力になる。歓迎する」などと政府高官が発言している。誰のための何のための選挙だったのかだ。
  安倍周辺は八月頃から総選挙の時期を伺っていたことが取り沙汰され、そのために極秘の世論調査をくり返していたようだ。最終的には10月末の調査で今回の選挙結果よりもさらに大勝できると数値が出たことから、解散に踏み切ったのだと暴露されていた。選挙特報番組で10月の調査について問われた安倍が返答に窮していた。
 B その選挙は、過半数すなわち現有議席を大幅に下回っても勝ちだといって、議席減を覚悟で自民党は挑んできた。党利党略なら議席が減るような選挙はしないが、それでも選挙をやらなければならなかった。その中心は日米「安保」だ。集団的自衛権の行使容認にあらわれているような憲法改定、一連の戦時法制、TPP、原発再稼働など、信任を得ずに突っ走ってきたものを、選挙で過半数を得ることによって「信任を得た」という格好に持っていくことが最大の眼目だった。そして選挙が終わるや「信任を得た」といっている。今後四年はもっと突っ走るということだ。年明けには原発再稼働が迫っている。集団的自衛権の行使を具体化する安保関連法案の審議も先送りしているだけで、選挙後に動かす日程だ。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の最終報告も春の統一地方選後に出して改定する予定だ。
  世界は激動して、シリアやウクライナなど米国は早く自衛隊を使いたくて仕方がないし、待ち構えている。だから辺野古も岩国も米軍基地は力ずくで整備している。現状では野党がつまらない。しかし政治は与党と野党の政党だけで動いているのではない。基本は国民との関係で動いている。野党に期待するだけなら「自民圧勝」に失望しておしまいだが、現実の矛盾関係はそれでは済まない。国民大衆が主人公になって政治を動かすことが決定的に重要だ。沖縄のように、大衆斗争で力を強めて政治を揺り動かす、そのような世論と運動を全国的に結集していくことが迫られている。
 国会についても、いまや17%ないしは公明も含めた24%を越える力を結集すればひっくり返せるのが現実で、難攻不落というような代物ではない。マスコミが頻繁に発表する高支持率も嘘ばかりで、選挙で示された安倍政府の支持率は17%なのだ。17%を「圧勝」と思っているなら大間違いで、それで傲慢に暴走するなら国民世論との矛盾は一層深まる。アベノミクスもいまや失敗は明らかでこうした政策の責任を直接問われることにもなる。逃げることはできない。


 

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