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梅光学院騒動の真相に迫る
なぜ14人の教師は辞めたか
                  理事長解任署名の背景       2016年3月18日付

 今年に入ってから、下関市にある開学100周年を迎えた梅光学院で中・高校の教師14人、大学の教員8人が辞めることが明らかになって以後、生徒たちが「先生を辞めさせないでほしい」と署名活動を始め、3月5日には保護者、教職員有志、卒業生らが300人の集会を持って「梅光の未来を考える会」を設立。現経営方針の転換と理事長の解任を求める署名運動を展開してきた。署名は卒業生を通じて全国区で広がり締切の14日までに1万5361筆が集まった。16日には代表者らがそれを携えて梅光学院を訪れた。ただ、関係者以外の市民の耳に届いてくるのは「とにかく梅光が大変なことになっている」ということ以外には具体性が乏しく、さまざまな噂や憶測ばかりが飛び交い、いったいなにが起こっているのかわからない状態が続いてきた。本紙はこの間の経過について関係者に取材し、流言飛語ではなく何が真実なのかを問うてみた。
 
 下関で100年の歴史誇る私立 「改革」で学校崩壊の本末転倒

 「梅光の未来を考える会」がおこなっている署名は、「梅光学院は、伝統あるミッション・スクールとして、下関を拠点に、質の高い教育を行い、地元の文化の一翼を担ってきた。しかし“改革”の名のもとでの専横的な学校運営により、教育環境は破壊されつつあり、資金の使途に数々の疑念があるばかりでなく、コンプライアンス違反の疑いも浮かび上がっている…梅光学院の未来のために、私たちは、本間理事長の退任と、現行運営方針の転換を強く要求する」としている。
 生徒たちのなかでは「共学化に反対した先生が辞めさせられるのだ」と話題になっているものの、どの教師が解雇されるのかわからない状況が続いている。そのなかでアンケートをとって校長に提出して説明を求めたり、署名活動をしてきたが、学校が子どもたちに真摯に向き合った形跡は乏しい。先日開かれた高校の生徒総会で「10億円を株に運用している」ことが話題に上るなど、学校に対する子どもたちの不信感も強いものがあるようだ。
 梅光学院でいったい何が起きているのか? どうしてそれほどの教員が大量に辞めていくのか? 何と何が矛盾して、その結果、学校の宝であるべき子どもたちの教育環境はどうなるのか? である。

 希望退職募集が発端 異常な人格否定研修会

 問題の発端は、昨年10月下旬、「財政難」を理由に40歳以上の中・高校の教師11人を対象に希望退職の募集がおこなわれたことだった。
 第1回目の募集で、すでに嫌気がさしていた英語教師らの多くが辞表を提出したとされる。その要因として関係する人人が指摘しているのが、2014年度から只木徹氏(統轄本部長、大学事務長、中高校副校長)が主導する英語教育改革と矛盾が生じていたことだ。その英語教育改革とは、文科省が進める「授業をすべて英語で」を徹底するものだったという。基礎になる文法を教えないので、学力の低い生徒になるとついていけず置き去りになる状況も出ていたようだ。公立高校の受験を希望する中学3年、大学受験を控えた高校3年生には対応できない状況も生まれた。子どもたちが喜ばないことを、いいなりになってやらなければならないことに嫌気がさしたのだという。
 だが辞表を提出した教師は11人に及ばず、数年前から中・高校にかかわってきたブレインアカデミーというコンサルタント会社が前面に登場した。全国で50以上の私学の人事制度の構築・導入などにかかわった実績を売りにするコンサルだが、その実態は、最近問題になっているリストラビジネスを手がける人材派遣会社の私学バージョンのようにも見える。
 まずブレインアカデミーによる「再就職斡旋の説明会」が開かれた。当初は希望者のみだったが、直前になって「全員参加」となり退職を希望していない教師も含めて参加することになった。そして11月14、15日の2日間、まだ辞表を提出していない教師を集め、1日5時間、計10時間にわたって「キャリア再開発」と銘打った研修会が開かれた。学院によると「この研修を受けたのは十数人」。講師はブレインアカデミー特別専任講師の肩書きを持つ西條浩氏だった。
 1日目、「人の目を見て話聞けよ!」と罵倒し、顔を上げると「その目はなんだ!」という場面があったり、「こういう発言をすることからして、あなたはこういう人だ」と嫌みな人格評価をするなど、特定の教師に狙いを定めた個人攻撃と人格否定がやられたことに教師たちは戸惑った。普通の人なら腹が立つ内容だが、事前に「会の趣旨に反することをいったり、講師に反対意見をいう人は退出してもらう」「どうしても辛くなったら退場してよいが、なんらかの処分がある」と釘を刺され、教師たちは我慢するほかない状態に置かれていた。
 続く2日目は、参加者の能力を全面的に否定することに力が注がれたという。年末までの「必達5項目」が掲げられ、「今から頑張って90点、100点になる人がこのなかにいるか? せいぜい60点か65点にしかならない」「このなかで努力して学院が希望する点数になる人はいない」「これがあなたたちの中途半端な成果だ」といった調子で教師の能力を否定。そのうえで、「当事者意識」「自責」といった言葉を強調し、「学校の経営状態がこうなったのはあなたたちの責任」「当事者意識を持って学校改革をしていかないといけない。でも能力がないからよそに行ったらどうか」と、「人生の棚卸し」などの言葉を使ってくり返し巻き返し精神的に追い詰めていった状況を、当事者である教師は明かしている。経営陣の「経営責任」をいつの間にか教師たちにすり替えていく手法だったようだ。
 そして最後に研修の成果を発表するプレゼンがおこなわれ、一人ずつ「今後どれだけ貢献できるか」を発表させられたが、西條氏はそれを聞いて「あなたたちのなかで、私がこの人と一緒に働きたい、この人の力を借りたいという人は一人もいない」といい、続いて中野学院長が、「(この研修は)先生を辞めるまで終わらない。あまり無理をなさらず、他の道も探した方がいい」といった内容をのべたという。初めから「辞表を出すように」と囲い込んでいく研修会だったのか、参加した教師たちにとっては脳みそ破壊をやるブレインバスターがいきなりあらわれ、耐えがたい研修会となった。
 その後、2度目の希望退職の募集がおこなわれた。1回目の条件では退職金について「本俸8カ月加算」だったが、2度目は「6カ月加算」に削減されていた。それでも辞表を提出しなかった教師には、第2段階のブレインアカデミーによる「個別カウンセリング」(1人90分)が待ち受けていた。密室でのカウンセリングの後、第3段階は「面接」で中野学院長、只木統轄本部長、樋口学長、只木氏の秘書・辻野氏の4人に囲まれて、「あなたは来年度はいらない」「来年度の学院の構想には入っていない」と戦力外通告がされていったという。3度にわたる圧力で11人の教師が辞表を提出。今年度末で退職する予定の教師は中・高校全体で14〜15人に上っている。
 梅光の教師たちの年収は300万〜400万円、長く勤めた人で500万円台と、教師としては決して高給ではない。それに対してブレインアカデミーはたった1人を2日間・10時間の研修に派遣しただけで300万円を得た。時給にして30万円である。さらに驚かせたのは学院の顧問弁護士が渦中で口を滑らせ「1人辞めさせるごとに成功報酬100万円を手にしていた」という話が広まったことだった。11人分の成功報酬を得たとすると1100万円、計1400万円になる計算だ。ただ、この真偽について只木氏に問うたところ「まったくのデマだ」とのべていた。

 教員の大量解雇 来年の授業体制組めず

 これほどの大量解雇でもっとも心配されるのは、来年度からの子どもたちの教育がどうなるかだ。
 中・高校では正規の教師の半数が退職し、大学でも来年度の授業予定も組んでいた准教授が、2月24日になって「総合的な判断」という理由で突然雇い止めの通告を受けており、中・高・大学すべてで来年度の授業体制がいまだに組めていないと指摘されている。ある教員はこうした状況について「入学者が増えたというが、レストランで客が増えたのに料理を出さないようなもの。反教育だ」と語っていた。「改革」した末に教師が逃散するように辞めていき、おかげで学校が崩壊するというのでは本末転倒というほかないが、職安に梅光学院の教師募集の求人が幾つも出ていたのを見て、学外でも懸念する声は高まっていた。

 4年前からの改革 「文学は儲からない」

 今回の問題は突然起こったものではなく、4年ほど前から大学を手始めにやられてきた「学校改革」の一環で、それが表面化したものだと関係者は指摘する。背景には、政府・文科省が進める人文系廃止や、少子化のなかで財政難に陥っている地方の私立大学が、生き残りをかけて熾烈な競争をくり広げていることなど、根深い問題が横たわっている。梅光学院も十数年前から定員割れに頭を悩ませてきた。
 梅光学院の「学校改革」は、2011年10月、現・統轄本部長である只木徹氏(名城大学で非常勤講師をしていた)が梅光学院にやって来て、その翌年の2012年春から始まった。非常勤講師として着任した同氏は、まず事務局を廃止して統轄本部を新設。本部長に就任して人事と金を動かす権限を掌握した。1年たった2013年、ガバナンス(統治・支配)強化のために、只木氏が本間政雄氏(元文科省官僚、大学マネジメント研究会会長)を呼び寄せ、現在の本間理事長、只木統轄本部長(大学事務長)、樋口紀子学長、中野新治学院長(中・高校長)の体制ができあがった。
 「学生数を確保する」こと、「人件費比率の削減」が改革の内容で、真っ先に事務職員の給与切り下げがおこなわれた。意見をいう職員には降格人事や左遷など、容赦のない仕打ちがおこなわれたという。このなかで心を病んだり、学院のやり方に納得できず、半数ともいわれる事務職員が学院を去り、半分が非正規職員になっているようだ。
 2014年からは大学教員の給与切り下げと人員削減が始まった。執行部が「金にならない」とターゲットにしたのは文学だといわれる。梅光学院大学は歴史的に日本文学の研究で知られてきたが、2012年に13人いた日本文学科の専任教員を四人まで削減。残りは非常勤講師でまかなう状態になった。1人1人呼び出して「今年辞めたら退職金を○○円出すが、来年になったら半額になる」という手法だった。
 ある教員は、「梅光は文学や語学に力を入れていたのに、文学はもうからないという。かろうじて日本文学は守っているが、英文学や英語学などはなくし、薄っぺらな学問にしようとしている」と危惧していた。辞めた教員を非常勤で補うなど有期雇用に変え、いつ辞めさせても法律上問題のない手法で削減は進んでいる。
 大学教育にかかわった経験のある人物は、「子ども未来学科を設置したとき、子どもの未来を考えられる人材や研究をどのようにしていくか、喧々諤々(がくがく)論議しながら建設してきた過程がある。それが保育士の資格をとれればいいというものに変わってしまった」という。もともと「保育士を育てる教師の育成」を追求していたはずが、保育士資格をとらせるだけに変わった。教授会の発言権を奪って学長に権限を集中させ、理事会で反対意見をいう理事をやめさせるなど、「守旧派」と見なした人人を学外に追いやるなかで「改革」は次から次へと進んでいったという。
 その結果、高校への生徒募集や宣伝広告の強化、給付型奨学金(1億円ほど)の強化、2013年度からは学費を20%減額するなどして学生数は増加した。「地方小規模大学のV字回復」と、教育情報サイトでとりあげられるほどだ。ベトナムなど東南アジアからの留学生の確保にも力を入れたようだ。学生数を基準にする文科省にとっては、今回のような騒動が起ころうと「優秀な大学」である。しかし、「4年前は赤字が1億2000万円といっていたが、この4年で2億ずつ増え、今累積が8億円といわれている」とも指摘されている。そうしたなかで、学院のなかでも「赤字部門」、すなわち経営者の視点から見たときに不採算部門に映るであろう中・高校にも改革の手が伸び始めていった。

 生徒や同窓生の疑問 不透明なカネの使い道

 地方の私立大学が生き残りをかけて懸命になるのは無理もない。大学として存立するために何を為すべきかはどこの大学でも抱えている重要課題だ。しかし関係者の多くが怒っているのは、これらの「改革」が進むと同時に、不透明な金の使い道、執行部にまつわる黒い噂ばかりが拡大し、説明を求めても明らかにされないことだ。
 例えば生徒たちが問題にしているのは2015年度から導入されたタブレットだ。中・高校の全校生徒と教師全員に、およそ300台ものタブレットが一人ずつ配られた。ある生徒は「学習の記録や授業に使えといわれるが、重たすぎて家に放置している生徒もいる」と話す。学校で充電してはいけないので、毎日持ち帰らなければいけないからだ。「礼拝のときに先生がタブレットを活用しなさいというが、先生さえ使えていないのに意味がないと話になる」という。男子を増やすため、サッカー部をつくってレノファと提携を結んだことも話題になっており、「そんなお金があるなら、なぜ先生たちを首にするのか」と子どもたちは疑問にしている。
 さらにこの間、昨年7月から学院が所有している現金資産のうち10億円の運用を始め、昨今の株価下落で目減りしていることも心配されている。また、「4人の執行部が法人カードを持って好きなように使っており、学内の人間はその支出先を知ることができない」「毎月100万円を使い切っているというのは本当か?」「統轄本部長が報酬を1000万円から1300万円に上げてくれといっているのは本当か」等等、金銭にまつわる疑問も多い。さらに宗教上懸念されている問題として、戦後日本キリスト教団とつながりをもってきた梅光学院のなかに、オンヌリ教会(韓国)のチャペルをつくるという噂など、さまざまなものが飛び交っている。
 あと、教員たちや学院に関係する人人に取材するなかで共通して出されていた懸念は、一連の改革や解雇が中・高校をなくすための布石ではないかというものだった。2013、14年頃に、中・高校の生徒数が減っているにもかかわらず、1年契約の常勤講師を退職者数以上に採用しており、「教師が多すぎるのではないか」と疑問視されてきたが、それらが「正規の教師をリストラするための準備、もっといえば中・高校をいつでもつぶせる体制に向かっている」と真顔で心配しているのである。曲がりなりにも中心市街地の丘の上の一等地に位置するのが中・高校で、広大な用地は高値で取引されることは疑いない。「校舎を新しくしたばかりで、まさかそれはないだろう…」という意見と同時に、そうした将来を本気で心配している人人も少なくない。

 統轄本部長に聞く 中学・高校の存続は?

 これらの疑問や噂が目下、同窓生やその周囲を巻き込んで流言飛語のように拡大している。放置することは学院にとっても不名誉で、真相を明らかにすることによってしか打ち消すことなどできない。学院に取材を申し入れたところ、只木氏と小谷財務部長が対応した。まず第一に、教員不足でカリキュラムが組めないのではないかという疑問については、「雇い直しは(教科によっては)ぎりぎりのものもあるが、授業はきちんとできるようにしていく」という説明だった。
 株式運用については、担当の小谷財務部長が回答し「投資信託、株、債権、リートなど組み合わせたファンドラップでやっている。当然ながら規定があるし、理事会でも承認を得て長期の運用でやっている。決して投機的なことをしているとか、ギャンブル的な話はない」と強い口調でのべていた。昨年七月の運用開始からの目減り分について質問したところ、「株式が下がったパーセンテージの半分くらい」とのべていた。
 毎月100万円の限度額ともいわれている法人カードについて只木氏は「会社だったら当然持つ物だ。監事や公認会計士がみんな見る。絶対に証拠が残るから、むしろ明朗会計だと評議員の企業主もいっている」とのべていた。
 そしてもっとも心配されている中・高校の廃止については「過去10年を見て、普通の会計士が見ればつぶすのが正しい選択だという。今は再建しようという意志でやっている」とのべていた。「今」は再建するつもりであるが、今ではないいつかにその意志がどうなるのかはわからなかった。「今は」を強調していたのが印象的だった。
 また、オンヌリ教会について尋ねると、「奇想天外な発想ですね! そういう話があるんですか!」と驚いた表情をして、「キリスト教の学校だから個人的にはチャペルを建てたいが、今は計画はない」とのべた。

 子供たちの未来の為 真相示し教育的解決を

 この間の梅光学院を巡る騒動は、単なる労使問題で片付けることのできない問題を含んでいる。それは同じように財政難にあえぐ地方大学、とくに私学の姿を映し出すものでもある。しかし聞こえてくるのは、大人たちのどろどろした金の話だったり、支配と被支配のそれこそ専横的といわれる学院運営の実態だったりで、文科省官僚出身だった理事長のもとでくり広げられてきた改革の結末は、何ともしれない印象を放っている。それでいったい、学院に通っている子どもたちはどうなるのかがもっとも心配されている。
 少なくとも、梅光学院は誰かがカネを稼ぐための道具ではなく、子どもたちを教育するために理念を掲げ、100年の歴史を紡いできたはずだ。その梅光学院が乗っ取られる、別物のオンヌリ学院か本間学院にされてしまうという懸念が、同窓生を行動に駆り立てている最大の要因のようだ。
 現在、署名運動は広がりを見せており、学校の行く末を巡る論議が活発化している。お金にまつわる疑問にせよ、正面から真相を明らかにすることによってしか解決の道はない。教師の解雇についても、そのように学校を支えてきた人材を次から次へと追い込んでいく運営にどのような未来が待ち受けているのかである。
 「改革」して大学なり学校が崩壊したというのでは、あまりにも惨い結末といわなければならない。現経営方針を転換させたのちにどのような学校にして、子どもたちをどう育てていくのか、大学であればどのような理念によって人材育成の分野で社会的な役割を果たしていくのか論議を深めていくことが待たれている。建設的な力をつなげていくことしか梅光学院の未来はなく、阻害物があるならば取り除き、どう進んでいくのかが問われている。

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