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米軍肩代わりの戦争が大きな争点
              総選挙 「まさか」の開戦が現実味    2009年6月19日付

 次期衆院選が迫るなかで自民党・麻生政府が北朝鮮船舶に臨検を行う新法制定を本格化させ、アフリカ・ソマリア沖の「海賊退治」を口実に海賊対処法案制定を急ぎ、戦争国家に向けた暴走に拍車をかけている。安倍元首相などは「集団的自衛権の行使を選挙争点にすべきだ」と叫び、自民党内では「臨検実施法の争点化」の論議も出ている。敵基地先制攻撃力の整備や武器輸出三原則緩和の動きも加速している。自民党政府はアメリカの要求で実行してきた有事法制、米軍再編、住民を動員したテロ訓練実施など戦時国家づくりの実績のうえに、今度は米軍肩代わりの戦争に乗り出そうというのである。総選挙は戦争問題が大きな争点となっている。
 麻生政府はソマリア沖の「海賊退治」で、法の成立も待たずに海上自衛隊の護衛艦や哨戒機P3Cを派遣し、武器の使用、外国船籍の警護など憲法9条を踏みにじる道に踏み出した。審議中の海賊対処法案は、イラク特措法などと違い派兵期間も派兵地域の制限もない。非公開の部隊行動基準(ROE)では海賊船が急接近した場合やつきまとい行為をやれば武器使用も認めている。従来の自衛隊派兵との明らかな違いは、相手が攻撃しなくても武器使用を可能にした点である。防衛省は新基準で自衛隊への訓練を進め、7月にも2次部隊を派遣する方針で交戦突入の危機をつくり出そうとしている。
 北朝鮮によるテポドン打上げや核実験をめぐっては、貿易全面禁止の制裁措置をとり臨検実施の法整備を急いでいる。今国会提出をもくろむ船舶検査法の政府原案は、臨検実施の根拠を「周辺事態」から「国連制裁決議」に変えるのが特徴。日本が攻撃されなくても国連決議で決まれば日本周辺で「臨検」という戦争行為に踏み込むものだ。自民党内では「野党から反対が出れば衆院選の争点にかかげ解散にうって出ればいい」という論まで飛び交っている。
 そして安倍代議士が「集団自衛権の行使をふくむ憲法解釈の変更をマニフェストにいれて選挙に臨むべきだ」と息巻いている。具体的には「米軍艦の防護」「米国に向かうミサイルの迎撃」などを検討。米軍が引き起こす戦争に日本を自動参戦させるものである。
 そのうえに「敵基地攻撃能力の保有」の具体化である。自民党の国防部会や安全保障調査会などの合同部会が決定した「防衛計画大綱」改定に向けた提言には、敵基地攻撃が目的のトマホーク巡航ミサイルの保有を明記した。「集団的自衛権の行使」とともに「敵基地攻撃能力の保有」といって先制攻撃する戦力を整備する。それは米軍の前面にたって自衛隊が肩代わりの戦争に乗り出すことを意味している。
 4月に朝鮮がミサイルを発射した時、誤情報で全国の自治体が大騒ぎする事態となった。しかし集団的自衛権行使と敵地先制攻撃が実行に移された場合、誤情報でも即座に報復攻撃に踏み込み、あっという間に開戦という事態が現実のものとなる。戦争体験者は「まさか」と思っていたら日本が全面戦争に突入していたという経験を痛恨の思いで指摘している。

 日本全土の米軍基地化強行
 これらの戦時国家づくりを国民に聞く耳を持たずに進めてきたのは小泉以来続く自民党政府である。小泉内閣はアメリカがNYテロ事件直後にアフガン侵略に突っ込むと、テロ関連3法を成立させて海上自衛隊による米艦船への無償給油支援を開始。米英軍がイラクに攻め込むと特措法をつくって自衛隊のイラク派遣を強行するなど、自衛隊を戦地に派遣する前例づくりに狂奔した。そのために国内では言論・治安弾圧のための有事法制立法制定を進めた。
 「有事」の際、国全体が米軍指揮下に置かれ、自衛隊、自治体、民間企業、住民が縦系列で総動員できる体制を法制化。そして米軍や自衛隊が強制的に家屋を占拠して基地に使うこと、食料や土地の強制接収、米軍と自衛隊による民間港や空港の優先使用など、具体的に規定した。核攻撃を想定した「国民保護計画」なる住民総動員計画も具体化。港湾にフェンスを張り巡らし、全国各地で「防災」「対テロ」を掲げて、米軍や自衛隊も参加した異様な住民動員訓練を何度も行わせた。
 このもとで本格化させたのが「在日米軍再編」計画だった。その目的は日本に米軍司令部を移転させて自衛隊司令部と一体化させ、日本を丸ごと米軍指揮下に置くことである。
 拠点司令部(UEX)に改編した米陸軍第一軍団司令部をキャンプ座間(神奈川)に移転して陸自中央即応集団司令部を一体化。米軍横田基地(東京)には空自航空総隊司令部を移転させ、自衛隊を米軍の一方面軍にした。あわせて沖縄の空中給油機部隊やF15戦斗機の訓練は全国の6自衛隊基地(鹿屋、新田原、築城、百里、小松、千歳)に移転し全国の自衛隊基地を米軍基地化した。すでに海自司令部と在日米海軍司令部が一体化している横須賀には原子力空母を配備した。その手法も全国の自治体が受け入れを拒否するなか、いうことを聞かない自治体には補助金をカットし兵糧攻めにするファッショ的なものだった。
 そして今後は岩国基地に厚木基地の空母艦載機57機(米兵1600人)を移転させ、愛宕山を削って米軍住宅をつくること、九州・瀬戸内に恒常的な夜間着艦訓練(NLP)施設をつくり、横田基地に日米共同統合運用調整所を設置し「ミサイル防衛拠点」にする計画を進めている。2月に麻生政府はグアム移転協定を締結。総額2兆〜3兆円ともいわれる米軍再編費用の拠出と米軍再編計画をスケジュール通り実行することを約束した。沖縄や岩国に居座る米軍は日本全土への野蛮きわまりない空襲、広島・長崎への原爆投下による大量殺戮で上陸してきた。この米軍に「日本を守ってもらう」とありがたがって日本中の滑走路や港湾を提供し、米兵住宅までつくってやり、永久に居座らせる屈辱に怒りが高まるのは当然である。

 戦争特需渇望する死の商人
 そして近年、朝鮮の核実験やミサイルで大騒ぎし、「朝鮮を制裁する」と煽って拍車をかけたのは、ミサイル防衛(MD)の配備や米軍再編に伴う軍備増強であった。06年10月に北朝鮮核実験問題が起きるとすぐに安倍首相(当時)が制裁を発動。朝鮮からの貿易や入港・入国を禁止する制裁に加え「臨検」実施の法整備に着手した。臨検候補地には佐世保港と下関港を名指し。「米国に向かうミサイルを撃ち落とすことができないか研究しなければならない」と公言しミサイル開発も開始した。さらに07年1月には防衛庁を「防衛省」に昇格させ、自衛隊の「付随的任務」だった「海外活動」を「本来任務」に変えた。自衛隊の海外派兵を本来任務としたのである。
 そして国内外のゲリラ戦に対応する秘密部隊・中央即応集団(約4100人)を発足させ、首都圏の入間基地から自衛隊基地へパトリオット・ミサイルの配備も開始した。こうして「専守防衛」の建前もかなぐり捨て「先制攻撃」体制への転換を進めた。「戦後レジーム(体制)の脱却」とは「戦争レジーム」への回帰であった。
 それは実戦を想定した戦斗機、ミサイル開発、スパイ衛星などの開発を活発化させ「死の商人」と呼ばれる軍需産業を潤わせた。08年度の防衛省施設本部の年間調達実績上位3社を見ると三菱重工・3140億円(地対空誘導弾等)、三菱電機・1556億円(レーダー等)、川崎重工・1530億円(固定翼哨戒機等)となっている。加えてマクドネル・ダグラス(戦斗機F15を製造)、GE(イージス艦のレーダー等)、レイセオン(ミサイルを製造)など米軍需産業も日本の装備に群がる。この「死の商人」は戦火が拡大すればするほどボロもうけができる。自民党国防部会が「武器輸出三原則の見直し」を要求したり、「防衛費・防衛力の縮減方針を撤回し自衛官を維持拡充すべきだ」と主張している。それは血のしたたる戦争特需を渇望する財界の要求を代弁している。

 「国防」叫ぶが国を潰す改革
 「防災」とか「国民保護」といい「国を守る」と叫んできた自民党政治の結果は国民生活の無惨な破壊である。小泉登場以来の「財政改革」とは、国民に使うべき予算を削って、アメリカが要求する公共投資630兆円などを実行することであった。やたら不要な大型事業をやり、その資金はめぐりめぐってアメリカや大企業に流した。大企業の法人税や富裕層の所得税率は引き下げる一方で、定率減税を廃止するなどサラリーマン課税を重くした。医療費や介護保険費などの社会保障や教育費も切り捨てた。
 さらには「規制緩和こそ正義」と叫び、安全性無視で利潤追求に駆り立てた「労働改革」である。タクシー、トラック、バスなどは需給調整規制をなくして殺人的な「競争」に駆り立て、「郵政民営化」で一万五〇〇〇人の郵便局員を削減。通信「自由化」ではNTT労働者10万人削減に着手した。
 03年には派遣労働の適用業種を製造業に拡大。そして世界恐慌に突入するや大リストラをやり、いまや日本の完全失業者数は346万人(09年4月)となっている。イラクに陸上自衛隊を派遣したとき自民党政府は、自衛隊員の手当を1日3万円、戦死の弔慰金を9000万円(最高限度額)と設定し志願者を募ったが、国民を食えなくして戦場に駆り出すのは戦前にもとられた常套手段である。
 「個性重視」「興味と関心」といって進められた教育改革も小泉改革以後拍車がかかった。02年4月の週5日制実施や、子ども、教師、学校評価制度などを導入し教育基本法も改定。それが教師の指導性を否定し、子どもの自由放任・動物化を促進した。このもとで車で突然、大勢のなかに突っ込んだり、ゲーム感覚で人を殺す残忍な殺人者をつくり出すようになった。それは戦時中グラマンに乗ってニタニタ笑いながら日本の婦女子を機銃掃射した米兵を想起させずにはおかない。人の痛みのわからぬ一部のエリートと、大多数の愚民をつくり、社会への批判力のない安上がりな商品、肉弾をつくる教育が意図的にやられているのである。
 市町村合併でも国の補助金を削る「三位一体改革」で兵糧攻めをした。1999年に、3232もあった市町村は2010年三月には1760になる予定で1472もの自治体をつぶす。「構造改革の本丸」と叫んだ郵政民営化も外資がゆうちょ銀行などの株を握り345兆円という資産を奪いとるためでしかなかった。すでに簡易郵便局は全国で400局以上が閉鎖状態。農協も漁協も役場も郵便局もつぶし田舎でまともな生活をさせない。国全体を支える地方をつぶすのは、国をつぶすことであり、こうした自民党政府に「国防」を語る資格などないのは明らかである。
 敗戦から64年目を迎え、日本はアメリカの植民地としてさらに屈辱的な隷属下におかれ、自民党売国政府は米軍の肩代わりで全面戦争を買って出ようとしている。総選挙は日本人民が真の主権者として小泉・安倍・福田・麻生とつづく自民党政府が進める戦争と貧困の売国政治に対し、独立・民主・平和・繁栄を要求する運動を大結集することが最大の焦点である。

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