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米本土防衛の盾となる屈辱
北朝鮮テポドン問題
              米側の核包囲が根本問題    2009年4月8日付

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のテポドン発射問題を巡り、麻生自民党政府は「迎撃する!」と叫んであちこちにミサイルを配置するとともに、全国の自治体に総動員の厳戒態勢をとらせて、大騒動を繰り広げた。結局何もできずに見送る事態となった。北朝鮮は人工衛星であると主張し、国際的にも手続きを踏んだうえでの打ち上げだった。この事態は何を物語っているのか。ひじょうにはっきりしたことは、ミサイルとしては日本ではなくアメリカ本土を標的にするものであるのに、日本がアメリカ本土防衛の盾となって戦時体制をとるという姿である。集団自衛権を実行しているのである。
 日本とアメリカは現在、弾道ミサイル計画に関連する全ての活動停止を求めた国連安全保障理事会決議に違反するとして、北朝鮮の船舶などの貨物検査徹底など制裁を強化する新たな決議の採択を主張している。しかし中国やロシアなど他国は冷ややかな対応で、日本だけがアメリカの意のままに踊らされ、大騒ぎする姿が際だっている。
 この間の北朝鮮の「ミサイル発射、迎撃騒動」では、日本中で大騒ぎが演じられた。
 先月27日に政府の安全保障会議で「弾道ミサイルの迎撃」を決定、浜田防衛相による「破壊措置命令」が発令された。それにもとづいて海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を使用し、大気圏外の宇宙空間で迎撃するとしてイージス艦「こんごう」「ちょうかい」の2隻が日本海に、「きりしま」は太平洋に展開した。
 更にそれで撃ち漏らした場合に航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3(PAC3)を発射し十数`の高さで迎撃するとして、首都圏や岐阜、浜松など6カ所の空自基地に配備されているPAC3の1部を岩手県や秋田県に移動。陸上自衛隊岩手駐屯地(岩手県)、同岩手演習場(同)、同秋田駐屯地(秋田県)、同新屋演習場(同)、空自加茂分屯基地(同)、陸自朝霞駐屯地(東京都など)、同習志野演習場(千葉県)、空自習志野分屯基地(同)、同市ヶ谷基地(東京都)の9カ所に展開した。
 このPAC3は警護や先導の車両までを加えると、1部隊25台の車両と80人の人員から成り立っている。そんな大部隊が、浜松から東北まで陸路を600`も延延と大移動した。周辺の住民にとっては、迷惑千万な事態となった。先月30日の夜には、PAC3の発射機を積んだ大型トラック(全長16b、幅3b、重さ30d)1台が道を間違えて秋田県の県立野球場敷地内に進入しナイター用照明の土台に接触した挙げ句、挟まって動けないという事態が発生した。レッカー車では引っ張り出せず、部品を外したりトレーラー部分を切り離すなど真夜中に大格斗を繰り広げた末、ようやく3時間半後に抜け出した。配備予定の新屋演習場は2`先だった。

 全国の自治体も大動員
 全国の自治体にも大動員がかけられ、大わらわとなった。ミサイルが上空を通過するとされた岩手県では危機管理連絡会議が招集され、24時間体制での対応に追われた。秋田市(秋田県)では実施までは至らなかったものの、消防車など200台体制で「発射情報があった場合は外に出ないように」と広報することも検討された。八峰町(同)では公民館を避難所として使える体制も整えられた。
 またミサイルの発射情報は、首相官邸から緊急情報ネットワークシステム「Em―Net」(エムネット)を通じて全国の自治体に伝達された。これまでエムネットには加入しておらず、今回慌てて新たに加入した自治体も多数あった。3日には全国一斉で抜き打ちの情報伝達訓練もおこなわれた。挙げ句の果ては2回も「誤報」を流されるハメに。防災無線で住民に知らせていた市町村もあり、疲労困憊と同時に「いい加減にしろ」と声が上がった。
 更に新聞、テレビなどマスメディアも総動員態勢で連日取り上げた。山口県内では、中国新聞が即座に「北朝鮮ミサイル発射/日本、迎撃せず」とする号外を発行。米軍基地を抱える岩国市ではコンビニに大量に持ち込まれるなど「基地の町」を特に重視している節も見受けられた。NHKもテレビ、ラジオ同一の放送で「落下物がある可能性は極めて低く、普段通りの生活を」などといいながら執拗に「ミサイル発射」のニュースを繰り返した。
 ところが2度の誤報騒ぎをやり、実際にミサイルが飛んだときには何もできなかった。はっきりしたことは、ミサイル発射情報は、米軍の偵察機、衛星、イージス艦などの情報に頼って判断することになっており、日本が独自に情報を収集して独自に判断して迎撃をするのではなかった。アメリカの指示で日本が戦争に突入するようになっているのである。
 このように全国的規模で繰り広げられた、まるで本当の戦時下を思わせる大騒ぎ。「これだけヒステリックに騒ぐ必要があるのだろうか?」というのが共通の疑問として語られている。国民世論は、“笛吹けど踊らず”が特徴となった。それは、拉致問題とあわせて前回のミサイル騒動で、自民党若手が「先制攻撃せよ」とか、「核武装せよ」と騒いだときと比べたらまるで冷めていた。日本社会全体がアメリカの植民地的な隷属にあることへの強い怒りがあり、みんながだまされなくなっているのである。

 集団自衛権実行する姿
 今回北朝鮮が発射したのはテポドン2(射程距離6000`で米本土には届かない)を改良したもので、射程は1万`にのびアメリカ本土を射程圏内に収めたとされる。ミサイルの先は日本を通り越してアメリカに向けられたものであった。日本を狙うのであれば旧来からの「ノドン」で射程に収まり、かつ性能も保障されている。したがって今回の問題は、米朝問題であり、日本が飛び上がって騒ぐ必要などない問題である。
 問題は、どうしてアメリカと朝鮮の争いなのに、日本が大騒ぎするのかという異常さである。アメリカの本土防衛のために日本が盾になるという行動にほかならない。同盟国であるアメリカが攻撃されたら自動的に参戦するという集団自衛権の実行にほかならない。
 そして基本的な問題は、北朝鮮が大陸間弾道弾を開発して、日本本土とともにアメリカ本土を射程距離に収めたとしても、戦力比は圧倒的に不利である。仮に北朝鮮が1発でも日本やアメリカにミサイルを撃ち込もうものなら、即座に報復のミサイルで蜂の巣にされる関係にある。在日、在韓米軍をはじめ、第7艦隊からも、北朝鮮は核ミサイル包囲網のなかにある。
 したがって北朝鮮が核ミサイルを開発したとしても、自分から攻撃することは自滅することしか意味しない。その客観的に見た効果は、アメリカ側が核攻撃したら、報復するというものであり、報復されたくなかったら核攻撃をするなという防御的な意味しか持ち得ない。
 今回出動したミサイル防衛(MD)システムは、03年に70億j(約7000億円)かけてアメリカに押しつけられて配備したシステムである。それは敵側の弾頭をミサイルで撃ち落とすというもの。それは報復攻撃を阻止して、報復なしの一方的な攻撃を可能にするというものである。したがって、それは一見防御的だが、実際はきわめて攻撃的な性質を持っている。
 今回の動向でも、アメリカの衛星などにより、ミサイルの性能から発射台に据えられたこと、「燃料注入が前回は車で往復していたものが、今回はパイプが据え付けられたために時間が短縮され3日程度で完了する」ことまで逐一詳細に報告されていた。ミサイルの周囲の温度から燃料の有無なども分かるとされている。偵察衛星で何をしているかいつものぞき込まれている関係であり、イザというときにはいつでも攻撃できる態勢にある。
 更には発射後も「周回軌道に乗るためのスピードに達していなかった」「電波の反応がない」「軌道上には何も乗っていない」などと事の顛末は全てが筒抜けで、北朝鮮は丸裸同然の状態となっている。だからアメリカ政府の側は今度のミサイルは何も脅威はないといっていた。

 核兵器の使用企む米国
 このミサイル騒動とあわせてアメリカのオバマは「核兵器の廃絶」を声高に叫んだ。しかしその本意は「一方的な軍備撤廃はしない。核兵器が存在する限りわれわれは強い核抑止力を維持する」というもので、イランや北朝鮮は核兵器を持ってはいけない、アメリカだけは最後まで持つというもので「核拡散防止」「核軍縮」などといって80年代に使い古した核独占の野望である。広島、長崎への原爆投下はアメリカしか原爆を持たず、報復の心配がないもとでやったものであった。核独占こそ核兵器使用の危険性を強めるのが現実なのだ。報復力をなくすというMDシステムの考え方も、核独占、一方的攻撃権の意図を持っている。
 麻生政府の今度の大騒動は、アメリカ本土防衛の盾となって、北朝鮮への攻撃を保障するための大演習を、自衛隊、警察、自治体、メディアなどを総動員して実施したことになる。アメリカ本土を守るための兵器を日本人の血税で導入し、日本がアメリカを狙ったミサイルの標的になるというあまりに馬鹿げた姿である。
 麻生自民党政府は今度の騒動を通じて、ますます国際的な笑いものになった。国内の専門家も「正当な手続きを踏んでおり国際法上何ら問題はない」と発言しているが、韓国の軍事当局者や中国の外交筋なども「日本が盛んに迎撃というが実際にはやらないだろう」「万が一人工衛星といっているものを撃ち落としたら日本は国際社会で孤立する」と冷ややかだった。
 そして米軍再編により極東最大の軍事基地化が急がれる岩国を中心に、日本全土をアメリカの核戦争の出撃拠点とし、そしてその報復の受け皿、つまりアメリカ本土防衛の盾にしようという準備が進められている。岩国基地では厚木基地からの空母艦載機部隊59機の移転と並行して、原子力空母も接岸できる巨大軍港化の姿もあらわれている。
 日本は、かつての戦争でアメリカから広島、長崎に原爆を投下され、全国の大空襲、沖縄戦や南方の戦線で、320万人が無惨に殺された。アメリカは日本を単独占領し、売国的な独占資本を目下の同盟者にして、植民地的な隷属下においてきた。全国に米軍基地が置かれ軍事支配を根幹にして、政治、経済、教育や文化、メディアまでアメリカの支配下に置かれ、日本社会はさんざんに破壊されてきた。
 アメリカの本土防衛のために日本を原水爆戦争の火の海に投げ込むという、アメリカとそれに隷属する自民党売国政府が現在すすめる事態は、日本民族にとってこの上ない屈辱である。

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