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独立と世直しのテーマに大共感
『動けば雷電の如く』広島公演
             約750人が詰めかけ大盛況に   2008年12月1日付

 広島市中区の青少年センターで11月29日、劇団はぐるま座による『動けば雷電の如く―高杉晋作と明治維新革命』が昼夜2回にわたって上演され、約750人の観客が詰めかける大盛況となった。高杉晋作をはじめ奇兵隊に参加した農民、町民らを世直しと独立を成し遂げた原動力として生き生きと描き出した舞台は、荒廃しきった現代社会の変革を願う広島市民の思いと響き合い、平和と独立を求める世論に大きな活力をも与えるものとなった。
 広島公演は、8年間にわたって市内で「原爆と峠三吉の詩」原爆展をおこなってきた「原爆展を成功させる広島の会」(重力敬三会長)、広島市老人クラブ連合会、広島市PTA連合会、広島市子ども会連合会などが後援団体となり実行委員には被爆者、傷痍軍人、老人クラブ会長、自治会長、医師、文化人、会社員、自営業者など45人が参加し、幅広い市民のなかで取り組まれた。
 マツダ派遣社員の大量首切りをはじめ、倒産や失業によって働くものが食べていけない市内の状況や、市場原理などといって「国のため、みんなのため」という考えがビジネス、金儲けに取って変えられ荒廃しきった現代社会を自分たちの手で変えたいと願う市民各階層の要求と結びあいながら、自分の利益ではなく、世のため、人のために命がけでたたかって新時代を切り開いた高杉晋作や奇兵隊士たちの生き様は「現代を生きる糧」として激しい共感を集めた。観客数から見ても、はぐるま座の広島公演では過去最高規模となった。
 公演当日には、広島市内をはじめ廿日市市、呉市、安芸高田市などから、年配者から現役世代、親子連れ、大学生、小・中・高生など幅広い層が詰めかけた。開演前のあいさつには、原爆展を成功させる広島の会の高橋匡氏、同じく宇田浩規氏が昼夜に分けて登壇。
 被爆者である高橋氏は、高杉晋作の「外国の侵略から何としても守ろうという憂国の情熱と、身分や地位財産など問題ではなく、町民であれ、農民であれ、隊士すべて同格だという奇兵隊創立の志」「それに賛同した人人の強い絆により次次と難局を越えていく行動力、決断力は表現できないほどの新鮮さだ」とのべ、「経済大国といわれるまでになった我が国だが、60年の間に徹底した占領政策により精神構造まで壊され、謙譲、忍耐、思いやりなど本来日本人の美徳」とされてきたものが失われ、「とくに、アメリカ一辺倒の政府指導者の言動は独立国としての誇りを見いだせず、日本の将来は憂うべき状態だ」と強調した。さらに、全国民が不平等な「安保」条約の破棄を求めて行動したころのように「世直しを求めて立ち上がる高杉晋作のような若者」が登場することへの期待をのべた。
 現役労働者の宇田氏は、広島市内でおこなわれた原爆パネル展に参加し、アメリカの原爆投下や日本占領の目的を知り、「はじめて日本民族の危機を感じた」とのべ、「労働者が生きていけないほどの低賃金で働かされていること」や、「アメリカが日本の富を吸い尽くそうとしている状況」など幕末当時と酷似した現代において「明治維新について学び、エネルギーをくみ取り、今後に生かしていきたい」と呼びかけた。
 舞台の幕が開くと客席は水を打ったように集中して見入った。
 とくに、禁門の変以後、長州藩が「朝敵」の烙印を押され、俗論派から命を狙われた高杉が下関で挙兵するために萩を脱出する場面では家族を犠牲にしかねないという葛藤を乗り越えて「国のため、民族のため」と決意を固める高杉の姿に客席から拍手がわき起こった。さらに、70余人で功山寺で挙兵する張りつめた思いを隊士たちが吟ずる場面、激しい四境戦争に勝利したのち「明治政府が成立するや、新官僚になった下級武士は奇兵隊および民百姓を裏切ることになる。にもかかわらず、明治維新を成し遂げた力こそ、日本民族の誇るべき歴史でなくて、なんでありましょう」と解説が呼びかける場面など、随所で客席から拍手やかけ声が上がった。

 感想交流会 現代を重ねて深い感動
 終演後、ロビーでおこなわれた感想交流会には、約50人の市民が集まり、熱気さめやらぬ思いが語り合われた。
 広島の会の男性被爆者は、「外国列強もはねつける高杉晋作の毅然たる態度と、身上をなげうって高杉に協力した豪商・白石正一郎のはっきりと日本の将来を見据えた対談場面には非常に感心した。そして、百姓も商売人も一丸となって倒幕のために戦う姿は、86歳の私も熱くさせるものだった。今の閉塞した日本をどうにかしなくてはいけないが、この劇でわれわれの進むべき道に力を得たと思う」と高ぶる思いを語った。
 家族で観劇した40代の母親は「この先の見えない時代に、何のために生きるのか、たった1つの命を何のために使うのか、子どもの教育にも解答を得た劇だった。自分のためではなく、純粋に社会の変革のために命をかけるという志の高い生き方に触れることができたことがうれしい。高杉たちの生き方を拠り所にして家族みんなが生きていけることは本当に幸せだと思う。特に、隊士を支える農家の母親たちの言葉は私たちの心の底流にあるものだった」と感謝をこめて語った。
 観劇は2回目になる女子大学院生は、「生きるお手本のような劇だ。これを他の人にどう伝えていくかが次の課題だと思う。“俺に命を預けてくれ”という高杉の言葉は、自分のためではなく世のため、人のためという大きな目標を持って生きた人だからこそいえる言葉だし、口先だけでなく実際に行動したことでみんながついていったのだと思う。自分の生き方を考える機会を与えてくれたこの劇との出会いに感謝したい」と感慨深くのべた。
 「広島の会」に所属する40代の男性は、「希望の持てない社会を民衆自身が立ち上がることで変えていったことは、現代を生きる私たちにとって大きな前例だと思う。私たちも一人でも多くの仲間と団結していこうと思っているが、この劇を見て行動に立ち上がる動きが日本各地から起きてくることを楽しみにしている」と期待と決意をのべた。
 40代の婦人も、「現代と重ねて涙が出てきた。一人一人が高杉のようにならないといけないし、過去のことではなく今の問題として、どうすればこの世を変えていけるのか考えていきたい」と感極まった様子で語った。
 市内の高校演劇部の生徒たちも多数参加し、「一致団結して力を合わせていく姿や、一人一人が自分の力で歴史を変えていこうという生き方に感動した」(男子高生)、「学校では明治維新は歴史の最後で少ししか触れないが、この時期にこそ現代に足りない大事な部分が詰まっていると思う。こういう歴史こそ教えるべきだと思った」(女子高生)、「演劇をしながら伝えることは難しいと思っていたが、演じる人の熱意が十分に伝わってきた。こういう劇こそ大事にしていって欲しい」(女子高生)など新鮮な感動が語り合われた。
 劇団はぐるま座からは、下関からはじまった山口県内公演をへて、全国公演の突破口となった広島公演が大成功したことへの感謝とともに、寄せられた意見や激励を力に変え、来年から全国で上演を展開する決意が語られた。

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