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下関新博物館計画廃案
独裁政治動かした市民の力
                「市場原理」市政マヒさせる     2005年9月29日付

 下関市の江島市政がすすめてきたPFI事業で101億円を投入する新博物館計画が、白紙撤回を求める2万1200人の署名など市民の世論と運動で、廃案へと追いこまれた。市民のあいだでは、力を合わせて市政を動かしたことに、大喜びして確信を深めるものとなっている。江島市政は安倍事務所丸抱えの独裁型市政で、君主型小泉政治の先走りをして、「市民に聞く耳はない」姿勢で、地域の経済の疲弊、歴史や文化の破壊と、露骨な大型利権事業をすすめてきた。いわばアメリカ型「市場原理」「自由主義」のモデル市政をやってきた。しかし、ほんとうに力を持っているのは市民であり、市民がバラバラな声を束ね行動に移るなら、市政を動かすことを証明した。これは下関全市民のなかで明るい話題となるだけでなく、全国的に注目されはげます内容となっている。

  「やればできる」と確信に
 新博物館計画が廃案に追いこまれた26日、最終本会議を傍聴した「新博物館の白紙撤回を求める会」のメンバーは、報告のため長府地区や竹崎周辺、唐戸へむかった。住民だけでなく自治会や商店街をあげて、署名運動に力を入れた地域である。辻に立った署名運動世話人の兵頭典将氏(下関市民の会)が、感動さめやらぬ思いで宣伝カーのマイクを握ると、店から出てき  長府地区のスーパー前での署名(8月末、下関)
たり立ち止まって聞く人人の姿があった。
 「最終本会議で廃案になった。市民のみなさんの2万1200人をこえる署名と地元住民の力が、市議会を動かした。ゴミ袋値下げにつづく市民の勝利だ」と訴えると、拍手が起こった。つづけて「2年まえには江島市長は、10万、20万の署名でも聞かないといいきっていた。それが先の市長選では、票差わずかで信任といえない結果となった。新博物館計画は市民の力で追いつめ、市政を変える力となった。し尿処理施設の疑惑をはじめ、あるかぽーと開発、新市庁舎、JR駅舎の改築など、巨額な税金をかけて大型公共事業をしようとしているが、市民が声を上げつづけていかなければいけない」と訴えた。
 長府商店街では聞いていた60代の男性が、「よくやったですね。ここまで勝つとは思わなかった」「これからもしっかりがんばってほしい」とかけ寄ってきて激励した。唐戸交差点では客待ちをするタクシー運転手たちから、共感の拍手が起こった。グリンモールでも店から出てきて聞く人たちや、手をたたく人が何人もおり、市内12カ所でやられた報告活動では、市内各地の市民が一体となった運動の性質を象徴するものだった。
 商店街やスーパー前で署名をおこなってきた主婦は、「パート先でも“やったね。やればできるね”と、みんなが喜んでいた。近所の薬屋も知りあいの大工も、総合病院で集めた看護師も、みんながよかったといっていた。以前みたいなあきらめムードではなく、やればできるということで、下関が明るくなってきたようだ。あたりまえのことが、あたりまえにとおるようになってきた。市民がバカにされていたが、もうそうはいかない」と、市民の力に確信を強めていた。
 下関駅前で客待ちをしていたタクシー労働者たちは、働いても自身と家族が食べていけない実態と重ね、「ゴミ袋値下げ署名を10万集めても、江島市長はやらないという、これまでがひどすぎた。大きな建設現場はよそから来た建設業者ばかりだ。若者は深夜労働をしなければ生活できないから、代行タクシーの運転手がふえて客の奪いあいになる」「3月の市長選では2400票くらいの僅差で、江島市長は信任されたといえない内容だったが、あれは市民の批判票だ。そのあと学校の食器をやりかえたり、ゴミ袋も値下げすることになった。なんだかんだいっても市民に力がある。がんばらなければいけない」と論議していた。

  市民つなげた署名  各界の怒り結集
 各地の商店街でもあいつぐ大型店進出やあるかぽーと開発など、現実の課題とあわせて白紙撤回署名がとりくまれた。唐戸商店街の店先で署名を集めた50代店主は、「議会が異議なしで否決するということは、小浜議長がいることだし考えられないことだった。市民が署名をつうじて、自分たちの力で変えられるのだと気づきはじめたことが、大きな成果だと思う。あるかぽーと開発やし尿処理施設でも、市民に聞く耳をもたなかったが、そんな政治がつづくわけがない」と語気を強めた。長府商店街の店主は、「ゴミ袋値下げの署名から、新博物館の白紙撤回署名までつながった。いままではあきらめだったが、短期間であれだけの署名が集まったことで、みんな同じ思いだということがわかった。おかしいことがあれば、いつでもリコールをやれる自信がついた」と語った。シーモールでも「市民が力を合わせれば、はね返すことができる」(飲食店主)と、展望が語られた。
 ダンピング競争で食べていけない建設業界は、労働者や下請ぐるみで署名に協力するなど、市政にたいする怒りが大きくなっていることを示した。ある会社では市議会否決の報道が、事務員や作業員のなかで大話題となった。ある建設業者は、「PFI事業になると、地元業者はまったく排除されて、入られるのはゼネコンや大手だけになってしまう。設計から資金調達までしなければならないが、そのようなことはとてもできない。いま土木工事では、工事中に水道管を壊したり、電線を切ったりという事故があいついでいる。調査する時間を省いてダンピング競争の赤字を埋めようとするから、あのような事故が何度でも起こる」と心配する。
 中堅の業者は、「ゼネコンは予定価格に近い落札で、江島市長のまわりは利権話が絶えない。ゼネコンは共同企業体を組んでいるのに、地元業者を工事現場にすら入れない。材料は手袋の一つまでよそから持ってくるから、地元経済にはなんのメリットもない」と、PFI事業をやめさせる必要を語った。
 幡生地区で戸別訪問してきた主婦は、「市議会が動かざるをえなかったのは、つぎの選挙が怖いと思わせたからだ。委員会では退席したり、賛成発言をくり返してきた議員もいるはずなのに、意見すら出せなかった。市民の力が押しているということだ。おかしいことはおかしいと、市民がいいつづけることがたいせつだ。地縁血縁や利権だけの政治家から、市民のためにやるものを出さないといけない」と、市民要求を束ねることのたいせつさをのべる。
 市民の運動を支えてきた自治会の関係者は、「車のエンジンにたとえたら、たいへんだったのは始動のゴミ袋値下げ運動で、加速をはじめた市長選や新博物館の問題は、比較的スムーズにいった。長府の自治会も上から抑えつけられながらも踏んばった。市民のなかに政治には任せられないという思いは広がっている。一商店街や一業界だけがやられているのではない。みんなひどい目にあわされているのだから、市民みんなで力を合わせるべきだ。そうすれば恐れるものはないはずだ」と意欲を燃やしている。
 新博物館の白紙撤回は、各界各層の市政にたいするさまざまな怒りを結集し、江島市長とイエスマン市議会を追いこんでいった。ゴミ袋値下げ運動、市長選の運動をつうじて、強まった市民の力を基礎にして発展したものだった。婦人たちをはじめ市民が、リコールも覚悟した一歩も引き下がらない運動をして、全市を対象に地元長府とも連携し2万1200人分の署名が集約された。こうして署名開始から3カ月足らずで市議会で廃案にされるまでにいたった。

  全国に展望あたえる 独裁政治もマヒ
 こうしたなかで、4期10年半の江島市政を追いつめたことの意味の大きさが語られている。それはいまの小泉政府のやり口を市政の場で先行して実行してきたものであり、全国を激励するものだからである。
 江島市長は1995年に初当選したが、人人の想像をはるかにこえる新型人間であった。江島氏は30代の若さであったが、選挙準備では市民党を標榜して連合と組み、新進党や社会党(当時)の推せんを得て自民批判者を結集した。ところが、裏では安倍事務所にかかえられており、反自民の票に自民票をプラスさせて、当選を確実にする作戦を実行した。市民と公約した「沖合人工島を見直す」「官僚政治の打破」などのキャッチフレーズは、あっさりホゴにした。
 これは世間の常識では詐欺であるが、江島氏にあっては「ボクの選挙テクニックの勝利」であり、ダマされたものは株投資の失敗と同じようなもので「自己責任」といった調子であった。選挙は票をとるゲームであり、政治信条とか人情などはクソ食らえで「稼ぐが勝ち」というホリエモン流を10年も早く実行していたのである。
 小泉首相は「ジュンちゃん」などといわれていい気になってきたが、江島氏などはそれよりうんと早くから「キヨシちゃん」といって、「女性票は自分のもの」と豪語していたのも、先行してきた。
 そして関係者をゾッとさせたことは、裏切りに怒った初当選の応援業者を徹底的に入札排除したことであった。小泉首相も郵政造反組への病的な仕打ちが話題になったが、江島氏などはうんと早くその手のことは実行してきた。
 その後の選挙は安倍事務所に丸抱えで、自民党勢力だけではなく、公明党も安倍派、連合も安倍派で、対抗勢力はみなつぶされるシカケができてきた。下関では反安倍を応援した業者は、公共事業からは徹底的に排除され、倒産に追いこむことが平気でやられてきた。警察も安倍事務所のポチ犬となって、下関はテンで無警察状態と市民からみなされてきた。
 こうして選挙の心配がないからやりたい放題で、異常なほど高い指定ゴミ袋、県内で一番高い介護保険料、教育費は地方交付税がピンハネされ、市大では学生の授業料、入学料まで市財政の穴埋めに使われた。また小泉首相の地元・横須賀市につづく全国二番目の電子入札、市場特区の導入、外資誘致で名のりをあげるなど、小泉構造改革を全国に先がけて実行に移すことを自慢としてきた。
 これは江島氏が、アメリカの小学校を出た「アメリカ市民」意識であり、アメリカの市場原理主義、新自由主義をいち早く実行して出世しようというものであった。地元の中小企業などはつぶれるのがあたりまえという調子で、さんざんに地元経済を疲弊させ、妻子が養えない労働者が続出することとなった。
 その一方で、奥山工場やリサイクルプラザ、し尿処理場など、数十億〜百億円以上の大型公共事業は、安倍事務所をバックに法外な利権あさりがされた。大手メーカーやゼネコンも度肝をぬかれるリベート要求で、公正取引委員会が入るという事態も招くこととなった。地元業者には電子入札で採算割れのダンピング入札だが、大手は官製談合で、「自由競争」の叫びは、完全な二重基準・ダブルスタンダードであることがだれの目にも明らかとなった。
 ゴミ袋値下げ署名につづく新博物館廃案までの市民の運動は、江島市長や安倍事務所が地元経済を衰退させるだけの存在で、地元発展の重大な阻害物にしかなっていないことをあからさまにした。
 この江島市政を立ち往生させた下関市民の世論と運動は、いわば世界的なグローバル化反対の内容を持っている。アメリカの裏庭といわれる中南米では、早くからこのグローバル化・市場原理主義がやられ、そのさんざんな破壊のなかから反米斗争が力強いものになっている。「清潔な次期総理」とよそではやしたてられる安倍氏と、アメリカ・ハーバード大留学の林芳正氏のバックによる江島市政のもとで、アメリカ型グローバル市政が全国より早く実行され、よそより早く立ち往生したわけである。
 いくらアメリカにおぼえがよく、小泉政府の先を行くといったって、市民が力を合わせたら逆らうことはできないのである。江島市長が計画する、公取も入ったし尿処理施設、あるかぽーとの大型店誘致、新市庁舎などの汚れた大型利権事業をやめさせ、地元が食っていける政治、下関の教育や文化や歴史をたいせつにする政治の実行など、市民をさらに一つに結びつけ運動を広く強いものにして、市民主導で市政を動かしていこうという意欲はいちだんと強まっている。

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