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営利一本槍で日本の医療破壊
医療改革本格化した1年
             産科、小児科、救急、外科も   2007年12月17日付

 開業医、勤務医のなかで今年1年を振り返り、「アメリカ型市場原理による医療破壊があからさまとなった。来年は医療界と国民が健康と生命を守る運動を起こすとき」「アメリカいいなりの自民党について行けば、医療はしめ殺される。今年は医師の自民党離れが顕著になった。来年はさらに進む」との論議が起こっている。産科医不足による妊婦、胎児の悲劇があいつぎ、小児科救急の未整備、外科医、麻酔科医の不足による手術待ちの長期化、療養型病院からの高齢患者の追い出しと、貧困の増大で保険証をとりあげられ手遅れで死に追いこまれるなど、医療をめぐる社会問題が全国的に噴き出している。
 産科医不足の悲劇は、今年1段とあからさまなものとなった。福島県についで奈良県で2年連続して妊婦や胎児が死亡する悲劇が起きた。東京で昨年11月、切迫早産で新生児集中治療室(NICU)のある病院を探したが、「満床」などで都内10数カ所の病院で受け入れを断られ、3時間以上かけて探した末、神奈川県川崎市の病院に搬送された。だが5日後に死産した。この悲劇は今年になって社会問題化した。
 大都市でも夜中に出産できる病院を探し回らなければならなくなって久しい。全国22の離島にある中核病院のうち、8病院に産科がなく島外の本土側で出産しなければならず、経済的、精神的負担は重い。
 山口県では、防府市に分娩を扱う開業医がなくなり、本来、産科救急を専門とする県立総合医療センターに分娩が集中。さらに宇部興産病院が産科医不足で分娩を中止、1部が県立総合医療センターに流れ、パンク寸前。萩、長門の県北部は、産科救急を山口市の日赤山口病院が担っている。まさに危機寸前の実情にある。
 2006年4月、衆院厚生労働委員会の参考人質疑で、横浜市立大学附属市民総合医療センター・母子医療センター産科主任の奥田美加医師は、産科医不足による周産期医療の危機をリアルに報告したのち、「次世代の産科医が増えなければ限界」と訴えた。
 だが、政府・厚生労働省も「産科救急の診療報酬を増やす」と金のサジかげんでどうにかなると考えており、基本は「医療費削減」でさらに医師不足に拍車をかけようとしている。
 政府・厚生労働省がうち出した小児救急医療圏の整備も全国的にいまだに未整備である。整備された都道府県でも広域化と小児科医の高齢化が進むなかで、危機的状況に陥っている。
 山口県医務保険課によると、県下では人口10万当りの小児科医数は11・3人で、全国平均の11・5人を下回っており中国5県で最低である。
 全国病院団体協議会が今年8〜9月におこなった調査で、2004年以降、医師不足から診療科を休止した病院が16%にのぼった。このうち、産婦人科休止が16%、小児科休止が15%と突出している。
 いまや日本は医療の面からも子どもを安心して産み、育てることができない国となっている。

 高齢者医療切捨て 病院追い出され難民化
 今年、とくに高齢者医療の切り捨てが社会問題となった。
 小泉―安倍と強行してきた医療制度改革関連法の実施で、全国38万床あった療養型病床の6割=23万床の廃止を、2011年までに実施するとし、先行して療養型病床の診療報酬を3ランクに分け、医療区分1の診療報酬をこれまでの3分の2に引き下げた。このため、全国の療養病床をもつ医療機関で病床廃止や転換が先行、追い出された高齢患者の多くが難民化している。
 老夫婦で一方が療養病床に入院、一方も病身であり、病院から退院を迫られて途方にくれる悲劇は全国に広がっている。子どもが入れる施設を探して走り回るがどの施設も待機者が100人近くで、にっちもさっちも行かない事態となっている。
 さらに高齢者の医療費負担も雪だるま式に倍増した。70歳以上の高齢者の医療費負担は1割であったが、来年4月から2割負担となる。このうち「現役なみ所得」という高齢者は8月から2割負担、10月から3割負担となった。
 政府・厚生労働省は政令で「現役なみ」の年収基準を引き下げ、単身世帯で383万円以上、2人世帯で520万円以上と、約100万円も引き下げた。一方、政府の増税策で、6月に住民税の老年者控除廃止、公的年金等控除縮小を実施、課税所得を増やしたこととあいまって、「現役なみ」の高齢者を大幅に増やした。
 下関市在住・高齢者N氏は、肺気腫と高血圧症で年1回ぐらい入院し、内科診療所に通院している。肺気腫の発作が起こるため自宅酸素治療は不可欠である。
 N氏は、若いころから税金をとられたのちの給与から掛けてきた簡易保険が満期となり、100万円が戻ってきた。ところがこれが「所得」ということで税金も倍増、医療費も「現役なみ」ということで8月から2割、10月から3割負担となった。酸素治療に必要な酸素ボンベだけでも、1割の8110円から、3割の2万4330円となり、その他の医療費と合わせて1・5カ月分の年金が吹っとんでいる。
 このうえ、妻が認知症となったが、自分が病身でも動けるということで介護保険でヘルパーの家事支援を利用することもできず途方にくれている。
 さらに75歳以上の高齢者は、来年4月から後期高齢者医療制度の対象となる。この制度は、子ども世帯の扶養家族となっている高齢者も含め、75歳以上の全員を強制的に加入させる。
 運営は都道府県別で保険料も国保料よりも高く、医療費負担は1割であるが定額制医療で、包括による医療の制限を前提にしている。75歳以上の医療を現行の医療保険制度から切り離し、独立した制度にすることで、低医療に押しとどめようとしている。

 格差社会背景に「無保険者」は35万世帯
 アメリカが要求する規制緩和・構造改革を、いいなりに進めた結果、富める搾取・収奪する階級と、汗して働く貧しい階級との階級格差は空前に広がっている。働いている者の3人に1人がパート、アルバイト、派遣・請負・契約などの低賃金・使い捨ての非正規雇用である。
 若年層では、働いている2人に1人が非正規雇用、ネットカフェや友人宅を渡り歩く無宿者も激増している。正社員でも自立できる賃金はなく、ワーキングプアは広がり続けている。
 この貧困と失業の増大を要因に、高い保険料が払えず、健康保険証をとりあげられた「無保険者」が2005年6月で、35万世帯を突破している。これは、小泉政府が2001年、高い保険料が払えない世帯から保険証をとりあげることを義務化した改悪前の3・5倍強である。
 非正規雇用で生活する人人で糖尿病などの慢性病をかかえ、短期保険証の更新もできず、医者にかかれず手遅れで死に追いこまれるケースが、全国各地で頻発している。医師のあいだでは「直接手を下さないだけで、政府の悪政による殺人だ」と語られている。
 一般庶民の所得が減る一方のなかで、「高額療養費制度」改悪による負担限度額の引き上げも、がん治療などで大きな問題となっている。がん手術を受けた患者は、入院・手術の医療費負担は、8万100プラス医療費の1%を窓口で負担することができた。
 ところが、その後の外来で抗がん剤投与が月2回、3割負担で24万3920円、負担限度額との差額が払い戻されるのは3カ月後となる。このため、「とても負担できない」と、がん再発の危険を覚悟で抗がん剤投与を断念するケースも出ている。

 医師から強い批判 市場原理で医療できぬ
 下関市内の内科勤務医A氏は、「市場原理による医療破壊が今年ほどあからさまになったことはない。アメリカ型市場原理は人間無視で、もうかればよいというものだ。第2次大戦で金と物量にものをいわせ、広島、長崎への原爆投下、沖縄戦から日本全国空襲と、無差別大量殺りくと大規模破壊をやった。そして占領し、投資してボロもうけしていく。いまのイラクや、アフガニスタンでも同じだ。ここに市場原理主義の典型がある」と力説する。
 続けて、「健康診断をして思うが、20代の若者はすばらしい可能性に満ちている。日本の若者も、アメリカの若者も市場原理主義の肉弾にされてたまるか。利潤効率しかない市場原理主義には人間性が入る余地は針の穴ほどもない。人間の生命、人間の成長を目的とする医療や教育は、絶対に市場原理とあい入れない」と語る。
 そして、「いまや、みんな市場原理改革が日本の医療をだめにしたと思っている。来年は、医療界と国民が一緒になって日本の国民のための医療をとり戻すときだと思う」と強調した。
 下関市旧市北部の開業医B氏は、「参院選で日本医師会員の半数が自民党離れしたといわれている。アメリカいいなりの自民党について行けば、医療はしめ殺される」とまえおきして、つぎのように説明した。
 福田政府の規制改革会議が「混合診療全面解禁」をうち出し、アメリカと財界の新市場づくりをやろうとしている。これは、国民皆保険を使って最新の医療技術、新薬を売りこんでボロもうけするもので、アメリカの保険会社や医療大手が要求しているもの。働いても働いても貧乏な人人が掛けている医療保険で、なんでアメリカ保険会社や医療大手をもうけさせ、1部金のあるものだけが最新の高度医療を享受するのを助けなければならないか。
 最後に、「この1事を見ても自民党政府ではだめだ。いま全国的に深刻化している医師不足の問題も、日本医師会長が強調しているように“医療費抑制”に根本原因がある。日本の医療費はOECD加盟30カ国のなかで21位ときわめて少ない。アメリカいいなりに金を使うことをやめて、国民の医療のために、まともに金を使わせなければならない。来年は、医師の自民党離れはもっと進むことは確実。とにかく、現状を変えなければならない」と、熱っぽく語った。

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