トップページへ戻る

営利優先の予想された事故
JR宝塚線脱線事故
            民営化JRの殺人経営   2005年4月28日付

 JR西日本の電車が大事故を起こした。安全と思っていた乗客が、なにが起こったか理解できないまま瞬時に91人も死亡し、456人が負傷する大惨事となった。惨事となった原因はスピード超過、運転士の未熟か過労、軽量化した車体自体の強度不足などさまざまに伝えられている。しかし、もっとも大きな問題は、JRが大事故を起こすことを一定の関係者のなかで予想されていたことである。もっとも切実に語っているのはJRの労働者や家族である。「人減らしと効率化で安全など無視している」「睡眠時間はほとんどない。このままでは何度も起こる」と憤りをこめて指摘している。JRは「国鉄民営化」という「規制緩和・自由化」の先がけで、大「合理化」をすすめてきた。その結末は事故のひん発である。これ以上の「効率化」「営利優先」をやったら事故をやるということがわかっていて、それを改めずにつづけるのは殺人行為である。最近では列車にかぎらず、航空機事故、船舶事故、工場の爆発事故があいついでいる。市場原理、自由競争、すなわち金もうけ一本やりが幅をきかせて、労働が限度をこえた殺人労働となり、まことに物騒な世の中になっている。
 
 背後に限度こす過密労働
 25日午前9時過ぎ、乗客580人を乗せて兵庫県宝塚市から大阪市内へむかっていたJR西日本の快速電車が脱線し、線路脇の九階建てマンションに激突した。5両が脱線し、先頭車両はマンション一階の駐車場にめりこみ、2両目はその上に乗りあげた。車両は「く」の字に折れ曲がり原型をとどめない無惨なものであった。
 宝塚線は、大阪への通勤、通学客を輸送する主要幹線のひとつ。「民営化」後、とくに重視して輸送力アップをはかってきた「ドル箱」区間である。宝塚・大阪間を阪急電車より七分速い最速23分で走らせ、朝夕のラッシュ時は3〜4分間隔で運行。スピードも後続列車との関係もギリギリの超過密ダイヤが組まれていた。
 事故を起こした電車は現場手前の駅で停車位置を過ぎて止まるトラブルを起こし、運転士(23歳)は1分半の遅れをとりもどそうとしていたといわれる。そのダイヤは運転士の行動にかかわらず1分半の時間すら簡単にはとりもどせないほど過密な設定だった。事故まえの2週間は1秒単位の遅延調査もおこなわれている。
 事故車両も「民営化」以後開発された「207系」という衝撃に弱いステンレス製であったことが被害を広げた。車体は従来、重くて頑丈な鋼鉄製だったが、塗装が不要で軽量化と高速化ができるコスト削減を優先。つぶれやすいステンレスやアルミ製が03年度までに計480両製造され、JR西日本では阪神間の主力車両となった経緯がある。
 他方で走行中の電車に自動的にブレーキをかける「自動列車停止装置(ATS)」などの保安装置は古いタイプのままで更新されていなかった。宝塚線のATSは旧国鉄時代の装置をJR西日本が独自に改良したもっとも古いタイプで運転士が赤信号を見落としたり、車止めに衝突しそうになったときしか自動的にブレーキはかからず、カーブでの速度超過は防げないものしか配備されていなかった。

 「いつでも起きる可能性」指摘するJR運転士
 こうしたなかでJR運転士やその家族のなかでは「運転士個人や保線担当者個人の問題ではない」と共通して指摘している。
 「人が亡くなっていてとてもいいにくいが、人減らしが原因」と切り出したJR九州労働者の夫人は「主人はいつもダイヤの一秒、停車位置の数センチが狂うと処罰されると話す。以前3人でしていた仕事を1人でするからきついといっている」と語った。別の夫人も「勤務先が遠いので朝六時ごろに出て、帰るのが夜11時ごろ。言葉をかわす間もない。主人は“ものは金で買えるが命は金で買えない”と口癖のようにいっている」といった。「いつ主人が事故にあうか心配」というJR西日本労働者の夫人も「乗客の安全を第一に考えてほしい。主人も乗客も安心して電車に乗れるようにしたい」と強調していた。
 JRではとくに「国鉄民営化」後、「コスト最優先、効率第一」をかかげ、乗客や運転士の安全を無視する度外れた人員削減などが大手をふって横行した。不採算区間はワンマン化。もうかる区間は昼間は超過密ダイヤとし、夜中は貨物便を走らせ、保線作業の時間を極限まで削った。
 そうしたなかで深夜に保線労働者が感電死したり特急にはねられて死亡する事故も起きた。快速列車が緊急停止した普通列車に追突し七七人負傷する事故も起きた。トンネルのコンクリートや列車部品落下事故、過労運転による停車駅通過ミスも多発した。
 1昨年7月には約130`の落石をはねたJR長崎線脱線事故も起きた。JR九州の運転士は「1時間に走る電車の本数がふえ、落石があっても速度を落とせない過密ダイヤが原因」と指摘したが、まともな改善策はとられなかった。
   
 全産業が同じ状態 「規制緩和」が根
 こうした営利優先、乗客の安全も無視した過密ダイヤ、過密勤務はバスやタクシー、航空労働者なども共通している。製造現場でも「いつ爆発や死亡事故が起きてもおかしくない」というのは全労働者共通の実感である。
 99年に起きた東海村臨界事故、03年のブリヂストン栃木工場で起きた大火災なども「どこで起きてもおかしくない問題」とさまざまな職場で論議された。当時ブリヂストン労働者は「タイヤ製造工場は空気中にコークスのかすがいっぱい飛んでいて引火しやすいのにまともな安全装置も完備されていなかった」と指摘した。いつも「安全だ」と危険であることも知らせず危険作業を強要することが特徴だった。
 ライン作業の新日鉄八幡でも、集団作業でたがいに気を配りあって仕事をするのではなく、長いラインを1人で受け持たされ、ライン間の連絡も無線でなければ届かない状態となった。1昨年は、老朽施設の床が落ちて転落死、溶鋼に巻きこまれて焼死、落下したクレーンの下敷きになって死亡などの事故が続発した。最近は熟練者がへり、短期雇用の労働者がふえたため、さらに危険性が増したといわれている。
 トラック運転手も参入規制の緩和で運賃切り下げに拍車がかかった。ただでさえ高速に乗らずにスピードを出し、過積載をし、睡眠時間を削る運転手は多いが、90`制限のリミッターもつけられ、さらに睡眠時間を削る。納入先も人員削減で「ご自由にお使いください」とリフトだけでリフトマンをおかない工場がふえた。数年まえに首都圏でひん発したような大事故はめだたないが、夜中に寝ずに運転して朝は自分で荷物をおろし、自分で積みこんでまた夜中走るという殺人労働は継続している。
 この「効率」競争、安全無視、まともな労働のじゅうりんは、アメリカの市場開放要求、規制緩和要求を小泉政府が推進するなかで進行した。それは外資の参入を自由化し、ひとにぎりの独占資本集団が、金もうけ一本やりで、製品の社会的有用性とか、運送では安全運行とか、社会的責任などクソ食らえというものであった。それは同時に、それらの業務に従事して社会の役に立つという労働の目的を破壊するものであり、労働者の誇りをじゅうりんするものであった。
 戦後世界を構成してきた米ソ2極構造が崩壊する1990年代に入ってアメリカが「自由・民主・人権」を叫んで、ソ連・東欧の社会主義国を転覆し、湾岸戦争をひき起こした。そして「社会主義の終えん」「資本主義の永遠の勝利」を叫んで登場したのが、「社会のため」につくられた規制を「自分のもうけのため」に平気で破壊する横暴なアメリカのふるまいであった。
 それはアメリカ資本が「自由化」をかかげ、年金や健保、介護保険など社会保障的なもの、農漁業、医療、福祉、教育など公共的なものを、もうけの具にし、各国の市場を力ずくで奪うものだった。そのなかで日本の労働者はおびただしい倒産と失業、「合理化」にさらされ、自殺者が数年連続して3万人をこす事態となった。

 規制する力は労働者の団結
 このようなアメリカのグローバル戦略、小泉政府の構造改革による資本の反社会的な横暴、殺人労働を規制できるのは、社会的生産を担う労働者の団結の回復である。それは企業をこえ、全産業的、全国的、さらに同じ攻撃を受けている世界の労働者との団結の力である。
 これを破壊しているのが、労働組合を牛耳って資本の労働者支配の道具としている腐敗した労働官僚である。この抑圧を突き破って、労働者の運動を立てなおすことが切望されており、それはかならず爆発点を迎えることは疑いない。

トップページへ戻る