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円安・株高の陰で急落する国債
「アベノミクス」の正体
             日本食潰す金融投機資本に貢ぐ   2013年5月17日付

 安倍政府が発足して以後、「アベノミクス」と呼ばれる異次元の金融緩和や公共投資を中心とする政策が台頭し、急激な円安と株高の局面があらわれている。昨年11月に民主党・野田政府が解散を表明した時点で8600円台だった日経平均株価は、半年たった今年5月中旬には1万5000円台まで急騰し、為替相場は1j=79円台だったものが102円台まで円安になるなど、世界的に見ても例がないほど大きな変動が起こっている。海外投資家が時価総額のうち七割を占めている株式市場が熱狂し、さらに円安でトヨタをはじめとした輸出企業が過去最高益を上げるなど、金融緩和と為替マジックで金融資本や一部大企業がバブルに浸っている。ところが一方で、燃油や穀物を中心に日本国内では生活必需品の価格が急騰し始めるなど、国民生活に深刻な影響が広がっている。「アベノミクス」でいったいなにが起きているのか、どうなっていくのかが重大な関心を集めている。
 
 バブルに群がる海外投資家

 この間、日経平均株価はリーマン・ショック以前と同レベルの価格まで急騰してきた。それほど好景気なわけでもなく、むしろ怒濤の首切りや製造業の海外移転を経て失業や貧困が全国的な範囲で広がり、生活実感としては悪化しているにもかかわらず、「日本株、年初から45%の上昇率」「1万5000円台回復」が叫ばれている。今後はさらに1万6000円台、1万7000円台まで上昇するとエコノミストたちが煽っている。
 しかし株式市場もよく見てみると、東証一部の約6割にあたる1000近くの銘柄が値下がりしている。株価が急騰している4割のなかでは円安効果の恩恵を受けた自動車産業や、ソニー、パナソニック、三菱電機といった企業が年初から倍近い株価をつけている。逆に株価が急落している企業としては不動産関係や、国内小売りのヤマダ電機、イオン、東芝などの企業群だ。
 東証の株式時価総額は昨年10月末には261兆円まで落ち込んでいたのが、今年4月末の段階では411兆円にまで膨れあがっている。わずか半年で150兆円がなだれ込んでいる。この半年の推移を見てみると、11月に14兆円増加し、12月には26兆円増加、1月に29兆円、2月に13兆円、3月に23兆円、4月には46兆円とすさまじい勢いで資金が流入しているのがわかる。
 このなかで投機の中心的なプレイヤーとして振る舞っているのが海外のヘッジファンドや投資家といわれ、時価総額の大半は国内資金ではなくこうした海外資金であることが明らかになっている。サブプライム危機で行き場を失った膨大な余剰資金がヨーロッパを食い物にし、ギリシャ、スペインなど南欧諸国の国家破綻でボロもうけした後しばらくは中国や新興諸国のバブルに巣くっていたが、それも一段落ついて今度は「アベノミクス」バブルに大集結していることを反映している。
 世界3大投資家の一人であるジョージ・ソロスがわずか3カ月で970億円を稼いで「黒田はガッツがある」「緩やかに死に向かっていた日本市場の目が覚めた」などと褒めちぎり、「しかし円が雪崩のように下落する恐れがある」などと発言する状況ができている。こうした抜け目ない守銭奴は、日本経済が低迷しているといわれた時期に底値で株式を買い取るなど仕込みを終え、現在のように素人が「株がもうかる」と思い始めるような段階には見切りをつけて売り抜けている。カモにされるのはいつも決まって素人で、証券会社にそそのかされた年寄りや、中流世帯が巻き込まれて泣きを見ている。

 国債手放す国内の銀行 売りが売り呼ぶ展開

 今のところ、青天井で株価が上昇している。ところが最近になって、今度は株式市場よりもはるかに巨大な市場である日本国債の先物取引市場で急落がはじまり、金融機関が震撼する出来事が進行し始めた。あまりに激しく値下がりすることから、10日には取引停止を告げるサーキットブレーカーが発動。連休を挟んだ13日にも再び発動する事態となり、1週間で計5回もサーキットブレーカーが発動する事態となった。長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りはグングン上昇し始め、1週間前まで0・5%台を推移していたものが15日には0・92%にまで上がる(国債価格が下落)など、異常な数値を叩き出した。
 主には地方銀行など国債運用で資金を投入してきた国内銀行が、保有してきた国債を手放しはじめたのが原因といわれている。金利上昇、すなわち国債価格が暴落すれば、不景気で運用先もなく国債ばかり抱えてきた銀行群にとっては損益が拡大しかねず、一種の混乱に似た状況のなかで「売りが売りを呼ぶ展開」となりいっそう国債急落、金利上昇に拍車がかかった。
 慌てた日銀は15日午後、金融機関に2兆円ほど資金供給することを発表し、それでかつがつ金利上昇に歯止めをかけた。それでも同日に0・92%まで上がっていた長期金利は0・85%にとどまった程度で、いつ急上昇が再発するとも限らない状況に見舞われている。
 安倍政府が日銀人事に介入し、リフレ派といわれる面面が登用された後は、世界で稀に見る量的緩和をぶち上げ、新規発行する国債の七割を日銀が市場から買いとり、「国債の利回りを低い水準に安定させる」といっていた。ところが実際には金利は急上昇しやすくなり、日銀が政策を打ち出した後に、一旦は0・3%台まで低下していた長期金利が0・9%にまで跳ね上がる結果となった。金融緩和でジャブジャブと円を刷り散らかす分、円安になって通貨の価値は下落する。「円安万歳!」「株高万歳!」と大騒ぎしていたところで、財政破綻にもつながりかねない長期金利の上昇が始まった。
 地銀のなかでは国内最大といわれる横浜銀行の頭取が「長めの国債はみな売った」と発言して物議を醸していたが、暴落を察知した金融機関の多くが蜘蛛の子散らして逃げ始めている。地方銀行だけでなく、保険会社も五大銀行も保有してきた国債を手放す動きを見せている。運用先がなく国債投資でしのいできたが、「金利上昇」「国債暴落」を懸念した動きになっている。長期金利が0・9%というのは歴史的に見れば低い水準であるにもかかわらず大騒ぎになる。それほどまで国債暴落、長期金利の上昇という局面に恐れおののいている状況をあらわした。
 国債を国が発行し、国の信用において借金をする。それを債券として市場で売買する。財政破綻などの心配やリスクがなければ低金利で取引されるが、ギリシャやスペインのように国家財政が危険と見なされれば買い手がつかなくなるため、10%というような高金利に跳ね上がっていく。それほどの利回りをつけなければ買ってもらえないからで、「長期金利の上昇」は財政破綻の前兆として、経済の専門家などは警鐘を鳴らしてきた。
 仮に日本国債の長期金利がギリシャのように10〜38%まで上昇したとすると、約1000兆円の国家債務に対して利払いだけで100〜380兆円必要になることを意味する。今年度予算(税収43兆円、新規国債発行額43兆円)が92兆円で、そのうち国債費すなわち借金返済にあてる金額は22兆2400億円であるが、借金返済だけで国家財政がパンクすることになりかねない。単純計算しただけでも1%の上昇で10兆円の利払いが増えるのだから、五%になれば五〇兆円。いくら消費税を増税したところで歳入は間に合わず、それだけでも国家破綻しかねない要因になる。

 加熱する米国債の購入 日銀の金融緩和で

 国債市場は株式市場よりも規模が大きく、世界的には株式市場の3倍にもなるとされている。この間の円安で輸出企業は潤ったといわれているものの、円安そのものが国債暴落で、1j=80円の段階で例えば1万円の日本国債の価値がドルベースで換算すると125jだったのが、いまや1j=100円超えなので、その価値は100jと大幅に下落することになった。
 こんな日本国債を持っているよりは、ドル建ての米国債を購入した方が儲かるという判断が働いて、日銀が金融緩和すればするほど米国債買いが加熱して、海の向こうに資金が流れ出していくことになっている。円建ての日本国債を売り払って円を調達し、その円を売り払ってドルを買って米国債を購入するのが流れになり、あるいは国債を売り払った資金で株式市場に投機する動きとなった。ひとたび日本国債が暴落の局面を迎えると、まさに「売りが売りを呼んで」長期金利が急上昇し、国債が暴落する関係を暴露した。しまいには国債の引き受け手は日銀だけにもなりかねないという、笑えない事態が進行している。
 安倍政府、日銀による異次元の金融緩和は、米国債購入という形で吸い上げられ、あるいは国際金融資本の博打の源泉として食い物にされる仕組みになっている。リーマン・ショック後に、米国ではFRBが気狂いじみた量的緩和を実行し、銀行群の損失処理にあたり、ヨーロッパではECBが負けず劣らずの量的緩和をやり、市場に資金を供給してきた。そうしたマネーに寄生し、バブルを渡り歩いてきたのがヘッジファンドで、熱狂した後に売り浴びせることは、過去に日本市場でも経験済みだ。
 仮に日本が国家破綻すると、ギリシャ破綻に際してCDS(保険証券)でボロ儲けしたのとは比較にならないほどの“うま味”が詰まっているといわれ、彼らにとっては35兆円(ギリシャ)の国家債務よりも1000兆円の国家債務が破裂した方がもうけになる関係にほかならない。日本政府の1000兆円の債務、つまり日本国債を引き受けているのは大部分(九割)が国内銀行や保険会社で、国民の預金が注ぎ込まれている。これらが紙屑になると国民がコツコツ貯めてきた金融資産は焦げ付くことになる。
 ギリシャでは五割毀損という変則的な解決法が採用されたが、日本国内では戦後に預金封鎖、デノミを体験した前例があり、国家が借金をチャラにする究極の手法となっている。資産防衛といって金やプラチナを買う富裕層が増え、金価格は1W=1400jまで急騰しているのも、通貨の信用が失われていること、今後さらに本格的に世界恐慌に突入していく局面を迎えていることを反映している。

 円安でも拠点を戻さず 海外移転の大企業

 日本国内ではこの数年、大企業が円高を理由に海外移転を繰り返してきた。ところが円安になったからといって日本に拠点を戻すわけでもなく、多国籍企業のようになって出ていく。内部留保を散散貯め上げたうえで、そうした過剰な資本は国民生活の水準を引き上げるためには用いられず、より利潤の得られる後進諸国への資本輸出や進出へと向けられている。ベトナム、ミャンマーといった進出先のインフラ整備までODAで日本政府に肩代わりさせるのだから、国民の面倒は見ずにもっぱら寄生するだけの存在というほかない。
 その株式を保有しているのが米国をはじめとした海外の超富裕層や、錬金術に長けた金融資本で、人為的な円安、株高政策にせよ、TPPにせよ、日本の富を米国富裕層の個人資産に移し替えてくれる「アベノミクス」だからこそ大歓迎している。
 グローバリゼーションのもとで、かつてなく世界を股に掛けた投機が横行し、産業集約が進んでいる。金が溢れて投資先に困るほど、生産は社会化して富は増大している。ところがその金は一%にも満たない超富裕層が握りしめて離さないことから、九九%がますます貧困に追いやられ、モノが売れずに経済活動は停滞。金融が破綻すれば損失を国家に転嫁するというデタラメがまかり通っている。
 ヘッジファンドが食い荒らしている日本市場の姿と、その資金をせっせと提供している「アベノミクス」の存在が暴露されている。


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