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我慢ならない思い各界で充満
下関で聞く消費税増税
           生活破綻させる気狂い沙汰   2012年4月6日付
 
 民主党野田政府が消費税の税率を現状の5%から2014年4月に8%へ移行させ、2015年10月から10%に引き上げることを閣議決定し、大衆課税の強化に奔走している。このなかで、一方の国民生活はリーマンショック以後とりわけ経済活動の停滞が著しく進行し、金融投機のツケである食料品や燃油といった物価の高騰、大企業の海外移転に伴う首切りや失業、貧困化が全国のどの街や村でも深刻な状態になっている。下関市内でも「このご時世に大増税するなど気狂い沙汰。みなの生活が破綻してしまう」「無駄な大型公共事業をやめたり、政治家や官僚が腹を切ってからでなければ納得がいかない」「増税どころではない」といった声が溢れている。市内各界の実情や思いを紹介したい。
 
 厳しさ増す中小企業を直撃

 自営業で建設関連の仕事に携わっている婦人は、信用情報に掲載される破産企業の債権者一覧に、最近は頻繁に社会保険事務所が記述されるようになったことに、以前から疑問を抱いていた。知り合いから「社会保険や厚生年金の滞納分だ」と教えられて合点がいったと同時に、どこも同じ苦しさを味わっているのだという思いを強くした。払いたくても手持ちの資金がなければ払えないのだ。
 社会保険料、厚生年金、法人市民税、所得税、消費税など負担が目白押しで、「まるで税金を払うために働いているような状態」と表現した。消費税は年間5000万円以上の売上げがあると予定納税で年2回に分割して払うことができるが、5000万円以下なら簡易課税が適用され、前年度の売上げに応じて決算申告と同時に1回でまとめて支払わなければならない。「多い時には100万円を超す。決算の2カ月後までには払わなければならないし、どうやってお金をかき集めようかと苦心する。ほんとうは消費税分の資金は手を付けずに確保しておかなければならないけど、そんな余裕はない。10%になって、その分を前年実績に基づいてまとめて払えといわれてもムリ。中小企業はみんなつぶれますよ」と語気を強めた。
 納得がいかないのは、下関でも目の前では200億円をかけた新庁舎関連事業や、750億円を突っ込んで使い道のない沖合人工島、150億円を投じる駅前にぎわいプロジェクトや「広成建設(JR西日本)が通常の3倍の価格で受注している」と業界で話題になっているJR駅舎の巨額改築など、不要不急の事業に湯水の如く税金が注ぎ込まれ、自分たちの苦労が吸い上げられていくことだ。「国にカネがないというのなら、全国でムダな箱物事業をすべてやめさせるべきだ。みながどんな思いで納めたお金と思っているのだろうか。目の前で乱暴な散財をされながら増税といわれてもだれも納得しない。下関でこの状態だから、国や県、全国に目を広げたら相当な使い込みがやられているはず」と語っていた。
 別の中小企業の関係者は、何年か前に税理士から「もうからなくてもいいから、とにかくつぶれないことに専念すべき」と指摘されたことの意味が、最近ようやくわかり始めたという。マンションや住宅メーカーから分割発注された仕事を受注すると、資材は既にデベロッパー側がまとめて調達しており、以前のように稼げる仕事ではなくなった。「手間賃くらいしか入ってこない」という。
 「メーカーは大量にまとめて調達するから、定価の4割引きとかわれわれが敵うわけない金額で資材をそろえてくる。利幅の少ない仕事ばかりになっていくと、私たちのような中小企業は従業員を少なくして身軽にしなければやっていけない。しかし規模を縮小したら今度は公共工事など人数のかかる仕事が請け負えなくなる」とジレンマを感じていた。
 この数年は経営状態が厳しく、景気が良かった時期に貯めていた1000万円をこえる個人資産を吐き出しながら経営にあたってきた。実際には赤字だが、黒字決算でなければ公共工事に入れなかったり、行政からの経営審査で点数が落とされて入札に不利になるため、棚卸資産を触ることによって売上原価を調整し、「黒字」にしていることも明かした。「二年間はこのやり方で大丈夫だと税理士にいわれた。税務署も下関の中小企業の多くが赤字なのはわかっているが、税金が入らないよりは黒字決算で少しでも税収が入った方がよいと黙認しているようだ」といった。
 また、そうした厳しい実情を語った上で、「大企業は輸出戻り税といって消費税が上がれば上がるほど還付金を受けとれる。こういう仕組みについて大手マスメディアがまったく触れない。もっと大きな問題としてとりあげて欲しい。消費が落ち込んだり、税金を納める企業がいなくなれば逆効果になるほかないと思う」と語っていた。
 市内の中小企業では4分の3が実質的に赤字経営に陥っていると税理士たちは指摘している。本当は赤字であっても、前述の企業のように「黒字決算」にしている企業も少なくない。税理士の男性は、「この国の企業のうち99%が中小企業。そのうち75%が実質的に赤字といわれている。赤字決算であれば所得税のように支払いを免れる税金もあるが、消費税の場合は赤字であろうと関係なく、納めなければ年率14%以上もの延滞金が求められる。それでも払えずに滞納者が多いのも事実だ。これが10%になった場合、下関市内でもどれだけの企業がつぶれていくか想像がつかない。大不況下で増税をするリスクについて政府がどう考えているのか不思議でならない。企業だけでなく税金を納める側が破綻したら元も子もないのに」と指摘していた。

 致命傷になる零細商店 商品値上げも難しく

 市内でタバコ店を営んでいる婦人は、「15年前くらいまではタバコでやっていけたが、これ以上増税で値段が上がると正直いって厳しい」と実情を語る。仕入れは1週間単位で、月曜日に商品を仕入れて、木曜日にJT(日本たばこ産業)に代金を支払う仕組みだという。
 店側の利益や消費税などの関係を聞いてみると、最近のある週は国産タバコを460箱(定価18万500円)仕入れた価格が16万1547円だった。定価との差額、すなわちもうけは1万8953円で、そこから税金分として7693円分を除くと、店側の利益は1万1260円。外国産タバコは8万6099円分(定価9万6200円)仕入れて、税金として4100円を支払い、利益は6000円少少。1週間店を開いて得た利益は合わせて1万7000円だった。日給に換算すると2500円に満たない。
 「消費税の金額は年間の仕入額に対して日本たばこが通知してくる。3月にまとめて支払うようになっている。うちは主人がサラリーマンだからまだやってこれた。そうでない店はきついはずだ」といった。タスポ導入でコンビニへと客足が流れ、セブンイレブンなどが過去最高利益を叩き出す一方で、これまでよりも街角のタバコ店の売上げが落ちていることも語られている。
 彦島で軽食・喫茶店を営んでいる60代の婦人は、開店から17年間にわたって軽食の値上げは一切せずに経営してきた。飲食店にとって値上げは致命傷にもなりかねず、安易にすると客が逃げることから、物価高騰の波もすべてかぶってきた。コーヒー豆は17年前の価格から1`あたり1300円も値上がりしているという。「年金を崩しながら生計をもたせているが、もう目の前を食べていくことで精一杯」と思いをぶつけていた。
 惣菜屋を営んでいる50代の婦人は、最近は高齢者の財布のヒモが固くなっていることを肌身に感じている。100〜200円のパック商品を躊躇しつつ吟味しながら選んでいくのだといった。「あんな年寄りからも巻き上げていく。若い子も子どもを抱えていたら食費はかかるだろうし、せめて食料品については課税しないとか区別することができないのか。みんなの生活が狂ってしまう。基本的に小売店は店側が消費税分をかぶるしかない仕組みもあって、値上げに転嫁しづらい」といった。
 そして、「年金から引かれ物が多く、年配の老人たちは本当に慎ましい生活をしている。国に財源がないというけれど、カネがないならそれに見合った生活をするのが常識なはず。政治家や官僚の給料はそのままで、AIJのように天下り機関が山ほどありながら、庶民にだけ税金を負担させるのはどうか。国会議員の報酬を半額にするとか、するべきことをしてから話を持ってきなさい、といいたい。人にばかり“税金を納めなさい”“滞納したら差し押さえます”というが、自分たちはなにをしているのか」と語った。

 年金少ない老人からも 家賃払えぬ状態の上

 不動産業を営んでいる男性は80代の老人たちが月月3万数千円の年金しか受けとっておらず、家賃すら払えない状況に心を痛めている。出ていけというわけにもいかず、生活保護を受けられるように話したり、できることをするしかないのだといった。「そんな年寄りでも僅かのお金を少しずつ貯めている。“金を貯めてどうするのか”と聞くと“老後が心配”と返ってくる。80歳過ぎて老後といったら残り少ししかないのに、それでも心配させている世の中とはなんなのだろう」と問題を投げかけていた。
 そして、「昔から為政者は国民を年貢奴隷くらいにしか思っていない。江戸時代からなにも変わっていないと思う。借金財政といって国債を発行しているが銀行が買いとっているだけで、国民の金融資産を使い果たしている。人のカネは国のものと思っているからだ。不況で良い話を耳にしないが、世の中は一回行き着くところまで行き着いて破綻して、そこから次の時代に移っていくしかないのではないか」と心境を語っていた。
 自営業で長年建設に携わる仕事をしてきた60代の婦人は、「簡単に10%というが冗談じゃない」といった。江島市長の時代から市外発注が繰り返されて受注量は激減。父親の仕事を手伝っていた息子が交通事故で視力が低下し、仕事ができなくなったことを明かしていた。蓄えもなくなって、今では自身の年金と息子の障害者年金をあわせた10万円の収入が支えだ。
 「収入が限られているので、入院した友だちのお見舞いに行くのも、亡くなった友だちの葬儀に行くのもちゅうちょしてしまう。最近、病気にかかって通院しなければならなくなったときに、困り果てて年金証書を担保に信用金庫からお金を借りた。そのとき信用金庫に来ていた年配の方が“若い頃からせっせと働いて年金もかけてきたのに、ようやくもらえた年金が2カ月に1度の7万円余りでは、食べていけるわけないじゃないか”と話されていた。みんな同じと思った」といった。
 そして「今が生活できないのに、そのうえ消費税を10%に上げるという政治家は、いったいどこの世界でものをいっているのか。小さい頃から裕福な生活をしてきて、食うや食わずのひもじい思いを経験したことがないので、人の苦しみもわからないし、思いやりの心もないのだろう。テレビで東北の被災地を見ていても思うが、日本では国が国民の生活を守るというのがなくなっていると思う」と思いを語った。
 野菜をはじめとした食料や燃油、各種税金や介護保険料など軒並み値上げラッシュがあいついでいるなかで、我慢ならない思いが充満しきっている。

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