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米軍が山口県を軍事拠点化
オスプレイ飛行で地ならし
            岩国を本拠、下関が最前線   2012年9月26日付

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 米海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイ一二機が岩国基地に配備され、二一日から基地周辺だけでなく、周防大島町や下関の市街地上空など、山口県民の頭上を断りもなく飛び回り始めた。「人口密集地域を避け、可能な限り海上を飛行する」という日米合意など飾り物にすぎないことが早くも暴露され、制空権も主権もアメリカのものと見なし、だれの許可もなくわがもの顔で飛び回る横暴さを見せつけている。近年は米軍再編問題とかかわって「沖縄の基地負担軽減」が騒がれてきたが、そのかたわらで着着と進められてきたのが岩国基地の大増強だった。普天間ヘリ部隊の移転や厚木基地からの空母艦載機の移転がとり沙汰され、海兵隊の一大出撃拠点として整備されてきた。全国でもとりわけ山口県に軍事的な動きが集中してあらわれ、戦争と平和の問題が抜き差しならないものになっている。
 岩国基地では、米軍普天間基地の空中給油機移転に続いて、厚木基地の空母艦載機移転が進められ、それに伴って愛宕山への米軍住宅建設が進行してきた。二〇年以上も前から「滑走路の沖合移設(騒音軽減)」といって住民をだまして一・五倍もの大拡張をやり、「夢の住宅団地」を標榜していた愛宕山も確信犯的に米軍住宅へと変貌。表向きの青写真とは裏腹に、緻密で計画的な都市改造と軍事拠点化が練り上げられ、まるで潜水艦が緊急浮上するように、二〇〇〇年代に入ってからその全貌が正体をあらわし始めた。海兵隊移転とオスプレイ配備が加われば米軍機約一三〇機と軍人約一万五〇〇〇人を擁する極東最大の出撃拠点へと様変わりする。
 オスプレイは二〇一四年までに二四機を普天間基地に配備する計画になっている。ところが沖縄が反発しているのを理由に受け入れのメドはたっていない。これは山口県でも同じで、だれも配備について認めた覚えなどない。しかし大型貨物船で運び込んだ後は「安全」宣言して勝手に飛び回り始め、思いっきり三〇万都市の市街地上空を横切ったりしている。周防大島町では運動会をしている子どもたちの上を飛んでいった。
 沖縄か、岩国か、安全か、欠陥機かという問題は二の次で、日本中の山岳地帯や市街地を練習場に見立てて飛び回り、朝鮮半島有事や中国を相手にした軍事的緊張が高まれば、いっきに出撃していくのが米軍の狙いである。そのときどきの都合で沖縄の基地にも飛んでいけば、岩国にも飛んでくる。安全であろうがなかろうが、米軍の目的のために強行配備するという姿勢を貫いている。
 暫定的な配備というより常駐が十分想定されている岩国基地であるが、戦斗機のホーネットや空中給油機部隊、オスプレイ、普天間ヘリ部隊、空母艦載機が集中配備されることが現実味を帯びている。数十年にわたって岩国で実行されてきたのは、そのための滑走路巨大化と基地増強、都市改造だった。人口が増えるわけでもないのに大規模に山を切り出していた愛宕山開発も、はじめから米軍住宅にするつもりだったと見なければ説明がつかない。市内で進められている巨大な道路建設も、みな米軍基地に向かって伸び、市民が気付いたときには「米軍の街」がすっかりできあがっていた、というのが実感となっている。
 オスプレイは従来の輸送ヘリと比べると、時速が二倍の五二〇`b。航続距離は五倍の三九〇〇`b。輸送できる兵員の数も二四人と二倍になり、輸送できる貨物の量も四倍の九・一dと飛躍的に活動の場や能力がアップする。広大な滑走路を必要とせず、空母の上であれ、どこからでも離陸することができ、どこにでも着陸でき、早く遠くに移動できること、大量の軍人や貨物を運ぶ能力を売りにしている。
 岩国から飛び立った場合、中国全土が航続距離範囲のなかに入り、朝鮮半島は行動半径のなかに入る。米軍にとっては沖縄以上に好都合な配置となる。そして岩国配備を見越していたかのように、佐世保基地(長崎県佐世保市)には四月に、オスプレイ一二機を搭載できる最新鋭の甲板付き強襲揚陸艦・ボノム・リシャール(四万五〇〇〇d)が配備されている。戦斗が始まれば、佐世保からお迎えの強襲揚陸艦が山口県方面に向かい、オスプレイや人員を積み込んで出撃することになる。

市民欺き都
市改造進行
軍事要衝と化す下関

 このなかで岩国とあわせて軍事的要衝になるのが下関である。運び込む際にはわざわざ関門海峡を通過し、訓練初日には下関空襲で焼き払った性根を丸出しにして下関市の市街地を飛び、下関市沖のR134(訓練空域)で訓練するなど、全国に先駆けて意識的に地ならしがやられている。朝鮮半島有事を考えた場合、瀬戸内海の奥に位置する岩国が本拠地なら、さらに一五〇`bほど手前に位置する下関はサブ基地というか、最前線の出撃拠点になることは明らか。
 とくに狙い目になっているのが垢田沖の人工島で、かねてから指摘されてきた軍港化が決して笑い話では済まないものになろうとしている。いざ戦斗が勃発してオスプレイ二四機がいっせいに動けば、岩国基地から人工島まで六〇〇人近くが三〇分程度でいっきに運ばれ、二〇〇d以上の物資輸送ができる。
 佐世保から出航した強襲揚陸艦ボノム・リシャールが岩国まで行かなくても、中継点となる響灘で積み込めば距離も時間も半分で済む。滑走路がなくてもオスプレイなら人工島に離着陸することなど容易だ。そのような下関の最前線基地化が、直接には朝鮮半島に対する威嚇にもつながる。軍事物資を供給する最前線ポイントにもなる。
 今年に入って米軍は朝鮮半島有事のときに利用する重要港(下関、博多、長崎、鹿児島、新潟、秋田の六港)の一つとして下関を名指しした。安倍内閣時のミサイル騒動の際にも臨検港に指定されたが、米軍や戦争狂たちはしっかり軍事拠点とみなしていることをあらわしている。
 都市改造が熱心にやられてきたのも岩国と共通で、とりわけ響灘を意識した過剰な道路整備がやられてきた。下関北バイパス(国道一九一号、総事業費が約七二〇億円、計画延長六・八`)のほかに、それよりも巨大な道路となった「武久新垢田西線」(総工費三二億円)、「武久椋野線」(総工費一六三億円)が人工島から一直線で幡生ヤードの大高架橋へと連結し、緊急事態にでもなれば、縁石をずらすだけで片側三車線にもなりうる広さを完備。下関インターチェンジや関門トンネルへと接続する作りとなった。
 さらに新幹線駅からも人工島に向かって一直線に道路が建設されている。道路という道路がすべて人工島に向かって伸び、行き着く先は人工島正面ゲート。住宅地への接続道路が少なく、大量のコンテナ輸送が可能な鉄道、高速道路とつながっていることにも特徴がある。さらに都市改造では大規模な区画整理がやられ、これも“愛宕山流”に利用価値をひっくり返せば米軍住宅となりかねない。住む人間がいないのに、莫大な経費を注ぎ込んで行政がライフライン整備を実行している最中だ。
 目的や見通しがないものに中央省庁が予算を下ろさないのは行政の常識であるが、国土交通省が旗を振るこれらの事業は「なにに利用するか決まらない」といいながら、湯水のごとく巨費が注ぎ込まれている。人工島だけでもすでに七五〇億円を投じてきた。さんざん市財政に借金(港湾事業債は約四〇〇億円、利子だけで億単位を負担している)を背負わせたのち、米軍などの軍需物資集積ターミナルにもされかねない不気味さであり、それは近年、下関港が米軍や自衛隊の寄港地として頻繁に利用されたり、「タカ派」を自慢する安倍代議士が息を吹き返して改憲を叫び、尖閣問題で勇ましいことを叫び始めたり、下関を踏み台にしている姿とも重ねた実感となっている。

米軍艦等が
頻繁に寄港
「友好」の宣撫活動も

 近年、港湾には米軍を防衛するために鉄条網が張り巡らされ、釣り人すら入れないようになった。そこに米軍艦船や自衛艦が頻繁に寄港するようになり、安倍総理時期には、六連島に北朝鮮の潜水艦が来て戦斗員が上陸したという想定で、全国初の実働訓練までやった。港湾でのテロ訓練も関門海峡では頻繁に実施するようになった。
 イラクやアフガンで殺戮を繰り返し、原爆を投げつけ、下関空襲で市街地を焼き払った者が「友好」を求める格好をして下関にあらわれ、大平学園(児童福祉施設)で草抜きをして「親睦」を深めるようになった。また、下関市立大学には米空軍の太平洋音楽隊(横田基地所属)がやってきて、ジャズやブルース、ハードロックを奏で、マイケル・ジャクソンを歌い、オバマ大統領演説集(発行・米国大使館レファレンス資料室)や米国国務省国際プログラム局が米国の価値観や考え方、制度などを伝えるために発行している月刊誌『E―JOURNAL』を配布したり、よその大学では聞いたことがないようなアメリカ宣伝をやっていった。
 市長といえば在福岡米国領事館から独立記念日のお食事会に呼ばれる関係で、中尾市長にバトンタッチしてからも領事館から代表者が表敬訪問に来るなど、アプローチが積極的になっている。力任せに米軍再編を要求して費用まで日本に負担させる強面と、一方で「友好」の宣撫活動に勤しむ二刀流。こうしたとりこみ作戦や地ならしが意識的にやられ、実は寄港するたびに港湾機能などをチェックしていた。戦争開始で軍事利用が本格化すれば、もっともミサイルの標的にされ、狙われる場所になっていくことは明らかである。
 また、下関市民のなかで思い出されるのは、今年五月の天皇来関だった。ヘリを一〇機搭載できる海上自衛隊最大の護衛艦「ひゅうが」(基準排水量一万三九五〇d)が岸壁に接岸し、対岸の門司港にも自衛隊のミサイル艇、保安庁の巡視艇が停泊。狭い下関の市街地に全国から三〇〇〇人もの警察が動員され、陸海空総動員の全国統合訓練のような観を呈した。まるで戦争が始まったかのような厳戒態勢のデモンストレーションに、軍事都市化が進む下関の姿が重なり、決して無関係でないことをうかがわせた。なにかことがあれば全国動員で即時に暴動鎮圧やテロ対策を実施する警察の統合演習だったのとあわせて、戦争のきな臭さを強く印象付けるものとなった。
 市民のなかでは今回のオスプレイ飛行の過程を通じて、飛ぶだけなら岩国周辺で十分なのに、わざわざ下関まで飛んでくるのはなぜなのか? 下関にこだわりを持っているのはなぜなのか? という疑問が語られ、人工島を中心にした軍事要塞化への危機感が、さらに現実味を帯びた問題として論議になっている。
 人工島建設に道筋をつけた故・泉田市長は、「(人工島を)防衛省に売却すれば建設にかかった費用も返ってくるし、軍隊が常駐するなり下関に住むことになれば、人口が増えるだけでなく彼らの収入は国から支給されるので、下関にとっては外貨が増える」と支持者に吹聴していたことで知られている。その部下が副市長をやっている現在の市役所内でも「軍事施設になったとしても、市に税収が入ってくるからいいじゃないか」と真顔で口にし始める職員が出てきている。こうした“地獄の沙汰も金次第”の意識で郷土を差し出すわけにはいかない。
 かつての明治維新で、下関の父祖たちは欧米列強の侵略を許さず、四カ国連合艦隊と身を挺してたたかい、独立と維新を成し遂げた。高杉晋作は彦島割譲を断固拒否し、香港のようなイギリス植民地にもさせなかった。それは政治家や官僚、マスメディアに至るまで米国に隷属し、売国ぶりを競っているような現在の情けない連中の姿とは対極をなしている。
 尖閣問題など「放火魔」たちが火をつけているおかげで、アジアでの軍事的な緊張が高まり、中国をにらんだ米国の「アジア重視」戦略によって日本全土が前線基地にされ、戦火にさらされる危機が進行している。このなかで岩国、下関をはじめとした山口県の軍事拠点化に対して、郷土を廃虚にさせないための世論と行動を盛り上げていくことが待ったなしの情勢になっている。


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