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原発による国土廃墟計画に怒り
上関町内の本紙世論調査
              段階を画す町内の寂れ方    2008年9月5日付

 中国電力が進めている上関原発建設計画は、世界的な原発バブルがうごめくなかでごり押し調になっている。中電は立地点の四代田ノ浦でボーリング調査をしながら、公有水面埋め立ての許可を求めて県に申請手続きをすませ、保安林指定の解除、林地開発許可など各種手続きを進め始めた。親族を中電取締役ポストにつけた二井関成知事が、許認可乱発で応じる作戦のようである。隣接の岩国には、極東最大の米軍基地を配備し、目と鼻の先に国内最大規模の137万`h原発2基を建設するという、“あとは野となれ”の国土廃虚計画に、県民の怒りの世論が高まっている。本紙では、町内の世論調査を進めているが、その概況を紹介する。

 岩国基地増強と連動し標的に

 今年4月、四代地区共有地を巡る裁判で、最高裁は5人のうち2人の裁判官は反対したが、反対住民の上告を棄却し敗訴が決定した。その結果、何度も延期をくり返していた現地のボーリング調査が前に進み始め、「年内にも作業終了の目処がたった」といい始めた。原発建設は初めから「国家プロジェクト」なわけだが、島根原発で活断層騒動や耐震補強であがいている中電の“のらりくらり”が一変したのは、国の側から新規立地で強行突破する力が働いたからである。
 中電は6月になると、山口県に対して公有水面埋め立て免許の申請手続きをおこなった。9月から10月にかけて二井知事が許可を下ろすと見られている。また埋め立て用の土砂を搬出するため保安林指定解除・林地開発許可の申請もおこなった。さらに連動して、田ノ浦へ向かう町道の拡幅工事なども自腹で進め始める動きとなった。来春にも国に対し原子炉設置許可申請をおこなうとしている。
 長年、陸と海の条件整備が進まず共有地、神社地、漁業補償などの裁判を抱えていたほか、地元同意についても選挙のたびに6対4の比率が崩れず、着工は7回の延期をくり返してきた。中電は手を付けられる部分からごり押しし、国も上関については電調審のクリア項目もハードルを下げるなどして「最後の新規立地点」を確保していた。
 電力自由化による外資乗っ取りの懸念や耐震基準の強化などで、近年、電力会社は明らかに原発建設に及び腰になっている。東京電力ですら、柏崎刈羽原発を襲った地震によって赤字決算に陥り、1基につき100億円の補強を強いられるなど散散な目にもあっている。そんな折りに、田舎電力の中電が島根原発の巨額な耐震補強に対応し、さらに8000億円投資して上関原発4基をつくるというのである。
 原発推進で突き進んでいるのはアメリカであり、アメリカのエネルギー戦略が動いて、日本の自民党政府が付き従っているという構図となっている。

 盛り上がらぬ土建業者 衆院補選後に沈静化
 中電が上関原発計画を動かし始めると、お祭り騒ぎになっていたのが柳井など周辺地域も含めた土建業者だ。ところが春の衆院山口2区補選で自民党が惨敗したのちは、それまでの熱気が一変して沈静化している。20年来でもっとも熱烈に推進してきた柳井市の井森工業は、従業員を36人削減したり、3年前からボーナスが出ないなど、落ち目の一途なのも特徴だ。地元業者は下請・孫請で原発の仕事を拾っても、「汗水流してくたびれ儲け」「単価が安くて稼ぎにならない」と大部分が冷めきっている。「いいことするのは浜田(上関の業者) だけ」という意見もある。
 飛び交っている話としては「海の仕事は五洋建設」「建屋の仕事は鹿島建設」となっていて、美味しい汁を吸うのは大手ゼネコン。そこに中電立地事務所の幹部などが天下っている洋林建設や、借金まみれの井森工業、浜田組などがくっついて仕事をするのだという。
 町内では、推進派勢力が「埋め立て許可が下りたらできたも同然」「漁業補償の残り半分も年内には出る」と浮かれ気味になっている。2000年にばらまかれた漁業補償は全国でも前例がない「半金払い」だった。四代では最高額が2500万円、上関では1700〜2000万円を手にした人もいる。しかし不思議なことに税金が一切かからず、無税扱いのまま8年が経過した。2回目の残り半分が支給されると、所得換算でいけば4〜5割が所管の国税局から抜き取られる計算ともいわれている。あとの半金を漁業者がもらっても、税金でまるまる取られて、大騒ぎになることが懸念されている。というより漁業者が激減することが心配されている。
 目下、「利権を牛耳っているインナーグループ」と目されている柏原町長や、漁協運営委員長の大西氏の鼻息が荒く、中電が寄付した8億円のなかから温泉を掘って25℃の水が出てきたり、国からの電源立地特別交付金を利用して温泉施設をつくるのだとか、文化施設をつくるのだとか、「町が採石会社をつくってカネ儲け」といった話まで飛び交う状態。ところがカネはいくら入っても、町内の寂れ方は段階を画し、廃村まっしぐらコースを突き進んでいる。箱物ばかりはびこるのとは裏腹に、農業・漁業、海運や造船などの既存の町民生活を支えている産業が、よその過疎地と同様に廃れているからである。
 町民の会話はなまなましい。室津地区では、地区の人口の2割以上が75歳以上の「後期高齢者」が占めているという現状がある。最近では、高齢者が畑で死んでいるのが見つかった。室津住民の1人は「高齢化という場合には65歳以上が基準だが、上関で65五歳といえばまだまだ若手。昨年1年間で10人以上が亡くなった地区では、“香典倒れ”しそうだと話になっている」という。「原発のおカネで箱物ばかりできても利用する人がいなければなんの意味もない。原発ができたら仕事ができて人口が増えるといっていたが、人間が暮らせなければ意味がない」と語る人もいる。

 メドのない難題が山積 土地買収も避難道も
 中電が原子炉設置許可申請を国に出すと、それから原子力保安院などが審査に2年を費やすことになる。しかし計画全般の進ちょくを見てみると、予定地の埋め立てまでは強行突破の気配であるが、その先の目処がはっきりしないのが現状だ。原子炉周辺で買収できない虫食いの土地は放置されたままである。送電線は通そうにも、送電コースとなる室津半島の山の上には風力発電が林立している。避難道が必要だが、現在は老朽化した上関大橋1本だけで、その大改修やもう1本の新設が必要となる。これらはなんのめどもない。
 未買収の土地について地権者の間では「以前は中電の職員がしつこくやってきては、売ってくれといっていた。最近は全く寄りつかない」「“もう反対派の土地はいらない”といっていた」などと語りあわれている。四代、白井田の反対派地権者の土地はいまだに点在している。原発建屋を眼下に見下ろしたり、取り囲むように存在しているこれらの土地について、現実的には「いらない」で片付けられる問題ではない。祝島の山戸氏や清水議員など複数の人間が個人の地権者から名義をかえた形で権利を持っている土地も、彼らが「反対してもダメだ」などといって売り飛ばすのか、大変注目されている。
 現在建設中で外資に揺さぶられている大間原発(青森県・電源開発) の事例では、たった1人の地権者が土地の売り渡しを断固拒んだため、原子炉設置許可が下りず計画変更を余儀なくされた例もある。埋め立てまでごり押ししてあきらめるのを待っていた、お手本のような前例がある。
 事故が起きた場合の避難道確保も大きな課題の1つである。現在の上関大橋では、緊急時に長島住民が避難しようと押しかけたら、大パニックに陥ることは容易に予想できる。また、田ノ浦へ向かう建設トラックが走り出すとひとたまりもない。尾熊毛にある中電の立地事務所周辺から戸津方面に大きな橋を新設した場合「7年はかかる」という会話もある。

 原発利権狙う投機資本 原油買占め市場創出
 立ち腐れ状態に置かれていた上関原発計画が強行突破で動き始めた背景には、世界的な原発情勢の変化がある。スリーマイル島事故やチェルノブイリ事故で、原発は世界的に撤退の流れとなっていた。しかし、再び“原発”回帰の流れとなっている。サブプライムではじけた世界経済のなか、ブッシュ政府は投機買い占めによる原油高騰の一方で、食べ物を燃やすバイオ燃料のほかに原発を目玉にしたエネルギー戦略を強行している。
 豊北原発の70年代は「石油は20年で枯渇するから原発が絶対に必要」というのが目玉だったが、今度は「二酸化炭素による地球温暖化」と騒いでいる。自分のふところの心配しかしない連中が、地球の心配などといっているのである。
 世界では今後20年間で150基以上もの原発立地が見込まれており日立・GE、東芝・WH、三菱重工・アレバ(仏) の3陣営が、日本を足場にして世界中で火花を散らしている。建設工事までひっくるめると、1基につきざっと4000億円規模のカネが動くとされ、諸諸の費用を含めるとさらに莫大なカネが動く。150基建設するとなると、だいたい約100兆円の新規市場創出と指摘されている。そこに投機などが食らいつくというものだ。
 西日本では近い将来起きることが必至の南海地震が近づくことで、地震活動が活発になると指摘されている。専門家の研究では、日本の西半分を震源としたM9クラスの空前の破壊力をともなった巨大地震すら起こりうるとの指摘もある。岩国は米軍基地の前線基地をおいて核攻撃の盾にする、上関の原発は格好のミサイルの標的をつくることになる。
 原発計画が続いてきた上関町は、町が中電に乗っ取られ、原発推進の中電下請町政が続いてきたばかりに、人が住めない廃村コースをたどっている。この廃村状態は、上関だけではなく全国的な農漁村の状況と同じになっている。また都市に出た子や孫が、コメを送ってくれといってくる。田舎だけではなく都市でも食うことができない世の中になってしまったことがさめざめと語られている。
 年寄りが多いことは戦争体験者が多いという上関町民の中では、戦争体験を思い起こし、アメリカに占領されたままになっているのが根本の問題だとの論議が起こっている。原発は国土を廃虚にするものであり、アメリカに隷属した売国政府がやってきた亡国政治の象徴だと論議されている。
 上関原発問題は、原水爆戦争を引き寄せる問題として、広島にとって抜き差しならぬ問題である。また隣接する岩国の米軍基地増強と連動して標的になる問題である。そしてエネルギーも農水産物の食料も自給できず、アメリカのいいなりになって国土を廃虚にするものである。したがって、上関町民の生活の問題にとどまらず、全山口県、広島、全国人民の根本的利害のかかる問題として、それらの運動を結びつけ、撤退に追い込む力を結集することが求められている。
 とくに「しっかり聞いてしっかり実行」などといって、中立のような顔をしてきた二井知事が推進の先陣を切っており、埋め立て申請にたいして県民の圧力を加えることが求められている。来る解散総選挙は今春の衆院山口2区補選に続いて全県世論を示す絶好の機会になることは疑いない。

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