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原発震災が各種産業を直撃
               下関 工場被災で住宅資材不足     2011年4月6日付

 東日本大地震と大津波によって、西日本の経済活動にも影響が出ている。東北や関東にある部品工場や製油所、木材工場や製紙工場などが操業停止に追いこまれて、建築資材や住宅備品、紙やインキが手に入らず、在庫でやりくりしている状況が各種産業を直撃している。放射能汚染の広がりから農水産物の流れにも変化が生まれている。下関市内でどのような影響があらわれているのか見てみた。
 
 存在感増す西日本の農林水産

 この間、とくに影響が出ているのが建築関係といわれ、ペンキや断熱材、コンパネなどの資材が手に入らず、一軒家の工事がストップするなどしている。資材を扱う企業からは「売り物がなければ商売にならない」といった声も上がる。
 製材所の経営者は「外壁材やベニヤ、コンパネといった新建材の入荷が難しい状況になっている。鹿島にある中国木材の大工場が液状化で被災したとメーカーから連絡があった。在庫があるにはあるが、大量の注文には応えられない。震災後、コンパネは2〜3割値段が上がっている。年度の切り替わり時期で、いまは民間も公共も仕事が少ない時期だから大丈夫だが、入荷の見込みが立たないことが不安だ。昨日、ナフコ(ホームセンター)のコンパネ売場を見てみたら完売していた。取引先の工務店さんのなかには、仕事に必要だから2〜3社に発注してそろえようとしている会社もある。10頼んでも2、3しか入荷しないからだ。しかし、いざ全量入荷して余分の在庫を抱えるハメになったら、逆に困るのではないかと心配している。なにが起きて、どうなっていくのか分からないのが実情」と語っていた。
 断熱材を扱っている卸会社の関係者は「断熱材は昨年末から地震・津波に関係なく不足気味で、一月にメーカーに問い合わせると“4月か5月には落ち着くだろう”といっていた。そこに巨大地震・津波が追い打ちをかけて入荷が困難になっている。ペンキも生産がストップして入荷が止まっているというし、建築関係では家を建てるにも、すべての資材が揃わないと工事がストップしてしまう」と心配していた。
 住宅設備や配管材料を扱っている企業では、水道工事やエアコン設備などに使う塩化ビニルが入荷しない状況が語られている。関東地方の製油所がやられているために原料であるレジン(樹脂)そのものがないこと、計画停電などの影響もあって生産が停滞していると指摘されている。
 関係者の一人は「今のところ在庫でまかなっているが、実質的に配給制のような状態。メーカーに注文しても注文数ほど入ってこない。被災地の復興が本格的に始まると、余計にでもこちらには回ってこないと思う。業務用エアコンも部品が生産できないために遠隔地の工場まで影響を被っている。ガス給湯器やエコキュートもリンナイやノーリツの工場が生産停止になっており、入荷できない。来月竣工する民家などは外回りが完成してもガス給湯器が設置できず、水風呂に入るわけにもいかないだろうし、完成が遅れると思う。トイレの便器(福島のTOTOの工場が被災)も4月から配給制になると卸から連絡があった。メーカーは10つくったら9割を被災地に回す方針のようで、小さなマーケットに過ぎない山口県にはなかなか回ってこないかもしれない。ただでさえ経済的に苦しい下関において、本来動くべき仕事までがストップし、お金が循環しなくなったときの怖さを感じる」と様子を語った。
 そして「私が入社した二十数年前にオイルショックがあったが、あのときはお金を出せばなんとかなって4dトラックとか10dトラックを博多まで走らせて配管資材を確保することができた。今回はそれすら難しい。入荷のメドだけでもわかればまだ見通しがつくのだが…。国土交通省の仕事が止まるわけでもないし、民間の仕事はなおさらストップしない。生産機能がいつ回復するかにもよるが、在庫だけで日本全国の需要を満たすのは限界だろう。私たちのような資材販売をしている企業にとって、販売する資材そのものがないというのは致命的だ」と影響の大きさを語っていた。
 別の資材メーカーの担当者は「うちは鉄骨や電線など様様扱っているが、被災地優先でドッと向こうに資材が向かっている。関東や東北地方の工場群では、地震で工場の配管が壊れて大変なようだ。復興のために山口県内の町工場の鉄工所にも工場の配管などの仕事が回ってきて、それを船で運搬している状況がある。茨城県の日立の工場では、精密機器の生産工程をオートマチック・機械化していたようだが、地震でラインがだめになっている。少しの振動やズレが製品に直結するから、人力でないことが逆に仇になっている。パーになった投資額や生産設備をやり替える金額だけでも少少でない。あと防府のJTでも“たばこは作ることができるが、パッケージが生産できないから困っている”と様子が話されていた」といった。
 「影響がないというより、仕事そのものがない」と語る企業も多い。土木関係の企業では「4月は年度替わりで仕事がない。6月頃に本格的に公共事業が動き始めたときにどうなるか。仕事を受注して、必要な資材についてメーカーに在庫を問い合わせてみないとわからない」と語られていた。また、「サッシも入荷できるようになって、震災直後の混乱はおさまっている。むしろ日本経済全体が落ち込んでいくこと、税収も確実に減るだろうし、貧乏国家になって需要が細っていくことの方が心配」と語る関係者もいた。

 海洋汚染の被害も危惧 水産関係者

 三陸沿岸の水産地帯が津波で壊滅したため、本州最西端の水産都市にもその影響は及んでいる。
 水産加工や冷凍魚類を扱っている大和町のある企業は、宮城県からスケソウダラをとり寄せて韓国へ輸出していた。韓国では鍋に一匹丸ごと入れる風習があり、需要が高かったからだ。関係者の一人は「スケソウダラの入荷そのものは道路も復旧して大丈夫なのだが、今度は放射能の影響で韓国側が日本からの輸入物をすべて放射能チェックするようになった。日本の水は全国的に微量の放射能を含んでいるため、低い数値でも反応してしまう。そのために、三陸沖の製品だけでなく中部も関東も出荷しなくなり、水産物の輸出が減っている。逆に三陸で生産していたワカメや海藻類が品薄になり、韓国から日本に輸入物が入ってくるようになった」と様子を語った。
 もずくとメカブをメインに水産加工している企業では、「三陸の海藻加工場がダメになって、スーパーからこっちに注文が来るようになった。それでもスーパーの棚が空いてしまうからフル稼働の状態。原料は韓国から仕入れている。こっちは忙しくなっている」といった。アンコウの加工をしている別の水産会社も「東北の加工場が被災して、東京のメーカーから“そちらで何とか作ってもらえないか”と依頼があり、アンコウ加工の注文が舞い込んでいる」という。全国の水産加工品の2割をまかなっていた東北地方が壊滅しているため、西日本の生産機能の存在感が増している。
 中国人研修生を多く受け入れている南風泊加工団地の業者のなかでは「中国人研修生たちの親が心配しているので中国本国へ電話させてくれ」と伝達が回っていることも話題になっている。
 水産関係者のなかで心配されているのが海洋汚染だ。仲卸業を営んでいる男性は、「水産市場によっては西日本側で魚価が二倍に跳ね上がったり、関東圏の需要を満たすためにダイナミックな動きが起きている。福島の沖合は親潮と黒潮がぶつかって太平洋に流れ出す蛇口みたいなところらしく、沖合の黒潮に乗れば北西に向かってアメリカ大陸方面に拡散していくが、沿岸部の親潮に乗ると放射性物質は三重県あたりまで来るのではないか、と話になっている。汚染されたコウナゴが水揚げされているとニュースで出ていたし、それを食べる魚たちへの食物連鎖も心配だ。需要と供給の関係がどうなるのか想像がつかないが、日本海側が頑張る必要がある」といった。
 林兼産業で働いている婦人は「林兼では自衛隊の“さんま丼の素”(非常食)など作っている」といって、レトルトパッケージの同じ商品を見せた。「今回、東北の災害支援で自衛隊が何万人と出動しているが、食料が足りないといって急いで増産しはじめた。通常は三カ月くらい在庫を寝かせて出荷するのだが、今回は3日後に発送した。50食入りを50箱送ったがそれでも足りない。原料のサンマは気仙沼から仕入れていた。あっちが壊滅してしまったので、第二弾でいま製造しているものはサンマの型が小さくなっている。あと、関係あるのかわからないが、下関漁港に入ってくる魚をミンチにしていたのだが、ミンチにする魚が入ってこなくなった」と語った。

 品薄に直面する小売店 大商社は買占め

 青果市場でも影響が出始めている。八百屋を経営している男性は、市場でレタス、白菜、キャベツ、大根の値が上がっていること、茨城県のゴボウ、ホウレン草、レンコンなどは入ってこなくなり、下関の青果市場でもゴボウの値が高騰していることを指摘した。「九州産の野菜が東の方に上がっている。品薄になっているのも影響して、輸入野菜が入り始めた。ニンジンは台湾産、タマネギはアメリカ産、もうすぐニュージーランド産やタイ産の物も入るといわれている。ブロッコリーもアメリカ産が入っている。うちの客でも関東の子どもに大根を送るからと買っていく人がいた。向こうでは大根半分が300円もすると話していた」と語った。
 青果卸業者の間では「怖いのは6月から」と語られている。下関や西日本で現在出回っているレタス、キャベツ、白菜などの野菜は九州の長崎や宮崎、鹿児島がメインだが、通年なら6月以降は産地が群馬、長野、茨城などに切り替わっていく。「茨城を除いて2つの県がまだ生産地として生きている(放射能の被害がない)のが救い。あと2つの県が汚染されたり、風評被害にあうと大変なことだ。気候がかわって偏西風が南向きにかわったときにどうなるか。そして一番怖いのが梅雨だ。六月までに原発からの大気への放射能汚染が止まらなければ、全産地がダメになってしまう。夏にかけては野菜も魚も関東、東北の方が中心になるから今後の動向を注意しないといけない」と語られていた。
 また、下関の市場の場合、「中央」卸売市場から「地方」卸売市場に格下げされたので、品薄になればさらに荷が集まらなくなると心配されている。現状のままであれば品薄に直面し、商社・イトーヨーカドーなど資本力があるところが産地を買い占め、小規模な零細店舗は経営が難しくなると指摘されている。
 業者の一人は「産地がやられて品薄になるのははっきりしている。輸入が増えることを危惧する声もあるが、国内でなんとかできる可能性はある。いまからならまだ遅くはない。西日本の農家がこれまでの作付面積を1・5倍に増やせば生産量も上がるだろう。しかし個人個人でやってもダメで、県なり国なりが主導するべきだ。遊んでいる土地もたくさんあるし、今植えつければ3〜4カ月後にはできる。夏から秋にかけて東北に依存していた生産分を西日本が少しは補えるだろう。夏場はこちらがいつも世話になっていたのだから、今度は山口県産のキャベツが仙台で売られたっていい。九州の熊本、大分、長崎、鹿児島、宮崎と農業県がそろっているのだからやれると思う」と話していた。
 各種産業で流通及び生産活動に変化があらわれていること、事態にどう照応していくかが問われ、情報収集や関係するメーカー、元請や下請業者との連絡が活発にやられている。

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