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漁業権問題ゴリ押し図る新知事
上関原発・斗争機運高い祝島島民
                 当選直後に総会開催通知      2014年2月26日付

 山口県知事選の投開票が終わった翌24日に、上関原発にかかる漁業補償金の受けとりを拒否している祝島の漁民に対して、山口県漁協本店が補償金配分案を承認させるための総会を3月4日に開催する旨通知してきている。村岡嗣政(総務省キャリア官僚出身)知事体制が発足するやいなや、懸案の漁業権問題をごり押ししていく動きとなっている。選挙では原発についてなにも語らず、有権者を恐れて争点隠しをしていた者が、当選すると権限を握って手続きの最重要課題に手をつけ始めた。安倍晋三の肝いりで知事になった官僚上がりが「若さと行動力」でさっそく安倍仕込みの暴走をはじめ、山口県民にたたかいを挑んでいる。
 
 手続きの期限迫り急展開

 大急ぎで祝島に受けとりを迫っている背景には、山本前知事体制のもとで引き延ばしてきた、公有水面埋立許可の延長手続きの期限が迫っていることがある。4月11日までに中電が県に延長理由を補足説明し、それを受けて県が認可を認めるか否か判断するプログラムになっており、それまでに水面下で祝島に漁業補償金を受けとらせ、漁業権放棄の同意をとり付けなければ、推進勢力にとって再び塩漬け状態をよぎなくされるという事情がある。タイムリミットは一カ月。「年度内に片付けなければ…」といって、漁業権の推進手続きを引き受けてきた県当局が慌てている。
 福島事故の後、2011年に二井関成元知事が「現状では免許の延長は認められない」と表明し、後継の山本前知事も「脱原発はあたりまえ!」「上関原発は凍結する!」と叫んで、当選した。ところが当選すると失効させるのではなく中電の延長申請を受理し、そのもとで延長の理由を問う「補足説明」をさせる格好をして電力会社とボールを投げあい、時間稼ぎをしてきた。
 既に補足説明だけでも4回のやりとりが交わされているが、中電の説明が足りないのではない。祝島が崩れず、漁業権がそのまま生き続けていることが最大要因なのだ。本来なら「関係する漁協すべての同意」がなければ公有水面埋立許可は出せない。2008年時期のように先走って許可を出したとしても、現状では海面に手をつけることすらできない。かといって失効させれば、「やっぱり祝島の漁業権問題が未解決だから原発はできないのだ」とあからさまになり、次に公有水面埋立許可を出す体裁が見つからない。困ったあげく、祝島が受けとりになびくまで先延ばしする作戦に訴えたのが、山本県政と中電だった。
 いずれにしても、山本繁太郎前知事が1年判断を引き延ばした期限が1カ月後に迫っている。県当局なり原発推進勢力とすれば、それまでに是が非でも祝島に漁業権放棄を認めさせなければ、埋立免許を失効させるか、再び「延長申請」の手続きが行き詰まったような芝居をして時間を浪費するしかない。そこで、村岡当選が決まるやいなや、「年度内勝負だ!」といって、慌てまくして祝島に総会開催を通知することとなった。

 山戸に期待する推進派

 祝島島内では2月の町議選を前後して、反対派を裏切った補償金受けとり願望勢力や、県当局と直接のパイプを持ってきた転向勢力が山戸貞夫の再登板を応援し、「補償金がもらえるぞ!」「補償金が欲しくないか?」と、選挙そっちのけで漁民の懐柔工作に走り回っていた。知事選後の総会開催、分配案の決定というプログラムを知っていたというのなら、あれほど有頂天になったり、盛り上がっていたのも合点がいくものとなっている。カネが欲しくて仕方ない者たちに担ぎ上げられた「反対派のカリスマ」こと山戸貞夫が、どのような振る舞いをするのかも、祝島全島だけでなく全町、全県、全国が注目する点となっている。
 
 既に行き詰まりの原発 恫喝と超法規の異様さ

 上関海域のように「公有水面埋立許可」が宙に浮いた状態は、全国的にも例がない。というより、あまりに超法規すぎて真似する都道府県がない。そもそも、二井関成知事が出した2008年の許可そのものが、条件が整わないもとでごり押ししたものだった。おかげで免許失効となる3年が経過しても工事は何一つ手がつけられず、「3年間で埋立が完了しなかったら失効する。そのさいは現状回復させること」が迫られていた。
 前述したように、「関係するすべての漁協の同意」、すなわち漁業権放棄の総会議決による3分の2同意がなければ、本来「公有水面埋立許可」は出せる代物ではない。ところが上関の場合、関係8漁協で構成する107共同漁業権管理委員会の多数決をもって、「漁業補償交渉は妥結したのだ」と強行突破をはかり、さらに2008年に最高裁が出した「祝島は拘束される」(「祝島の漁業権は消滅した」とは表現せず)という曖昧な判決を持って「漁業権の問題は解決済み」扱いにした経緯がある。
 実際には漁業権は生きているのがわかったうえで、商業メディアや県当局、ゼネコン、原発製造メーカーなどの推進勢力は「反対しても原発はできるのだから、補償金を受けとれ!」とあきらめを煽り、同時に二井知事は早歌をうたって埋立許可を出した。上関町内にはゼネコンが大量に動員されて「準備工事」の大がかりなパフォーマンスを展開。福島事故が起きるまでは予定地の田ノ浦を掘り返したり、いまにも原発ができるような真似事をやっていた。しかし一年たっても、2年たっても祝島があきらめず、海は手つかずで、せいぜいブイを浮かべる程度のことしかできなかった。福島事故以前から、上関原発計画は行き詰まっていたのだ。「祝島が実力阻止をするから工事ができない」のではなく、それを表向きの口実にして海に手出しできない状況を糊塗していただけだった。
 その間、何度も祝島に乗り込んで「補償金を受けとれ!」と迫ったがはねつけられ、そうこうしている最中に福島原発の爆発事故が起き、名実ともに塩漬けとなった。
 新規立地の動きが再び活性化しはじめたのが、安倍晋三が再登板した直後からだった。調子に乗って原発輸出や再稼働を打ち出し、「為政者が思ったことはなんでもできる」という勘違いが深まるのとセットで、お膝元の新規立地をめぐっても動きが顕在化。県当局に指示された山口県漁協本店の幹部たちが、昨年は2度も3度も総会の開催を求めて祝島に上陸を試みてきた。しかし、その度に祝島の島民たちが波止場に押し寄せて抗議行動をおこない、追い返してきた。
 執拗に補償金の受けとりを迫るのは、一人残らず受けとらせなければ漁業権が未解決状態に置かれるからで、人のカネなら奪ったり焦げ付かせることしか知らない山口県漁協が、「受けとれ」と恫喝まで加える異様さとなっている。山口県漁協(旧県漁連、信漁連)は信漁連問題が起きて以降、県政のいいなりであることは山口県中の漁協関係者が知っている。県及び電力会社のバックアップで上関海域の森友信(旧室津漁協組合長)が組合長に持ち上げられ、県水産行政の指示にもとづいて祝島崩しの前面に立っているに過ぎない。
 
 県が推進の前面に 注目集める漁協総会

 上関原発をめぐっては、80年代に中電主導で行き詰まっていたのを、90年代に入って平井県政が身を乗り出して、国、県主導で進めてきて今日にいたっている。膠着状態を破ったのが94年の漁業権書き換えで、祝島漁協が四代田の浦の共同漁業権を放棄したことによって、原発手続きはいっきにすすむこととなった。九〇年代初めからマリンピア・信漁連問題で県内漁協をしめあげ、逆らえないようにし、一方で平井知事が何度も祝島を訪問して漁協組合長だった山戸貞夫と関係を結んだ結果が、共同漁業権の放棄だった。後にも先にも、原発反対運動にとってこれほどの裏切りはない。
 こうして90年代末には計画が電源開発調整審議会に上程され、公開ヒアリングが開かれ、漁業補償妥結パフォーマンスをやり、2000年には二井県政のもとで知事同意がやられた。神社地問題でも前面に躍り出たのが二井県政で、知事の後援会長をやっていた県弁護士会ボスが神社地売却に反対する宮司を攻撃する急先鋒になった。祝島の漁業補償金騒動でも、柳井水産事務所がいつも前線司令部になって暗躍し、水産部審議官たちが采配を振るっている姿が暴露されてきた。筋書きに至るまですべて実働部隊である県庁を起点にして事が動き、経済産業省や電力会社との連携プレイがくり広げられるのだ。そして、中電の最大株主である山口県からは、二井関成の親戚にあたる林孝介・元県商工会議所連合会会頭が電力会社の取締役に送り込まれた。
 「公有水面埋立許可」に限らず、上関原発をめぐる手続きはすべてが超法規で、まともに法律を信じていたら、頭がおかしくなるようなことがへっちゃらでやられてきた。祝島は漁業権交渉のテーブルすらついておらず、漁協総会の場で議決も上げていない。ところが、中電が勝手に振り込んだ漁業補償金を受けとらせて「漁業権放棄を認めた」とこじつけようとしたり、「受けとらない!」と何度も総会議決を上げてきたのを無視してやり直しを迫ったり、しまいには法務局に供託して国に没収される(漁業交渉が振り出しに戻ることを意味した)はずだった補償金を山口県漁協が勝手に引き出したり、常識では考えられないことが真顔でやられてきた。国策は超法規で、原発推進手続きについては日本国憲法など及ばず、特例でもあるのかと思わせる。法律はいつも権力者のおもちゃにされ、ならば実力斗争しかないというのが祝島島民の深い実感となっている。「審判によって選ばれた私が最高責任者だ」といって、法解釈のねじ曲げが自由自在というなら、なおさらである。
 林派が牛耳ってきた山口県政を安倍利権として奪いとったもとで、山本県政が公約破棄をやって行き倒れとなり、その後釜として登場した新知事もさっそく上関に手をつけている。親分ともども、選挙では姑息に振る舞っておいて、当選後も「エネルギー政策は国が考えること」といいながら、水面下では大急ぎで公有水面埋立許可対応を開始するという、「権力ポストをとったら好き勝手」な振る舞いをしている。
 3月4日の総会が天王山となっており、その行方が注目を集めている。祝島では全島で斗争機運が高まっている。わずか30人足らずの漁師が長年の反対運動を投げ出して、あぶく銭と引き替えに郷土を売り渡していくことへ強烈な怒りが充満している。推進勢力にとって最後の拠り所となっているのが反対派内部に潜んできた裏切り者で、「反対」の仮面をかぶって島民を欺いてきた化け物の正体が暴露されるところへきている。裏切りのカードを使い果たして行き詰まった時、祝島崩しの糸口を失うのは推進勢力の側で、ごり押しが諸刃の剣となっている。

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