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漁業つぶす大型店の支配
江島市長の大型店誘致
            無関税の水産物輸入が急増  2005年3月8日付

 山口県では、県1合併問題をめぐって、全県の漁民のなかで日本の水産業を守らなければならないという強い世論が起こっている。漁民が死活の問題として考えているのが、「魚価がかつての半値以下、3分の1ぐらいに下がってやっていけない」「いくらとっても買いたたかれる」という問題である。なぜそうなっているのか、市場の関係者、魚の加工業者などに聞いてみた。ここで共通して語られているのが、魚屋が少なくなり大型店が魚のあつかいを独占して、徹底的に買いたたいていること、その背景に商社をつうじて輸入魚が他国のような関税もかけられずに野放しで入っていること、そのようなアメリカのWTOを無条件で受け入れて規制緩和をやる政府の、民族主権を放棄した政策があることなどが語られている。江島市長は大型量販店の出店を野放しにし、あげくは市の税金を使ってショッピングセンターを誘致しようというバカげたことをしているが、この大型店の出店問題は、たんに商店にとって大打撃を与えるだけではなく、漁民や市場、魚屋、水産加工業者にとって、買いたたきの重大問題となっている。それは農民や農産加工業者など製造業者にとっても同じ事情であり、日本の農水産業破壊の重大問題となっている。
   
 漁民や市場に深刻な打撃
 下関市内の漁業者Aさんは、北九州の中央卸売市場に鮮魚を出荷している。船で関門海峡を渡れば十数分で小倉日明の市場につく。「とにかく安すぎて話にならん。わしらがいくら一生懸命にとってきても、仕切り(購買伝票)は腹が立つほどの安値だ。昔だったら4万円ぐらいにはなっていた量を水揚げしても、1万5000〜2万円くらいだったりする。食っていけないから漁師をやめるものがふえるんだ。3分の1くらいにまで魚価は下がっている。この10年間でいっきに値が落ちてきた」といった。
 なぜ魚価が安いのか唐戸市場の仲卸Bさんに尋ねると、「輸入魚と大型店だ」と即答した。「市場や流通が量販店や大型ナショナルチェーンに牛耳られて、すごい勢いで変化している。やり方が破壊的だ。量販店のあつかう魚はほとんどが輸入魚。それに生産者が太刀打ちしようと思ってもむりな話。国内市場で輸入物とバッティングするから、全体の値を押し下げて、わしら仲卸だけでなく、漁師のみなさんを泣かせている」と説明する。
 つづけて、「輸入物とセットで量販店がふえたおかげで、街の魚屋さんがどんどんへっている。小売店がへっていくとわしら仲卸にも影響は大きい。地元生産者がとってきた魚を地元市場で競って、地元仲卸が小売店に売りさばいていく、それが食卓に並べられるという図式が崩れてきている」とのべる。
 下関市内の鮮魚店の数を調べてみると、減少の一途をたどっている。25年ほどまえには市内全域(旧下関市)に350店以上あったものが、2002年現在では3分の1以下の118店と激減している。輸入物や他市場の水産物を驚異的な低価格であつかう量販店に客足を奪われて、店をたたまざるをえなくなっているのである。下関駅近くの長門市場には、かつて市場の周辺だけで40店以上はあったというが、いまでは四〜五店のみという状況。そして小売店に魚を供給していた唐戸市場や漁港市場の卸や仲卸の経営にも影響をおよぼしている。
 一方で、下関市内には大型店がすごい勢いで出店をつづけている。大型店35店(電機専門店などをふくむ)のうち、13店(四割)が8年まえの大店法廃止、2000年の「大規模小売店舗立地法」の施行後に出店したものである。大型店同士のつぶすかつぶされるかの競争も激化しており、生産者からの買いたたきを激化させている。
 長府外浦町の旧マリンランド跡地に、「イオン長府ショッピングセンター」(総店舗面積1万5700平方b)が出店準備をすすめているほかに、昨年末には豊前田町3丁目にスーパー「ハローデイ」(1700平方b)がオープンして、レッドキャベツと競合。江島市長の推進する「あるかぽーと」も当初の計画では海浜公園になる予定であったが、大手量販店を誘致するのだといって地元商売人の猛反発をくらっている。
 市長選に当選したら市有地を量販店に売り飛ばすのだという話もささやかれている。よその自治体では街づくり条例を定めて規制したりもしているが、長府商店会がイオンの出店を規制するべきだと申し入れたのにたいして、江島市長は「下関市は規制しない」と突っぱねた。
 下関市役所・水産課職員の話では、下関市内の量販店・スーパーがあつかう魚の8割が、北九州などの市場から流れてきた魚だという。地元の市場をとおったものは、2割しかない。

 輸入魚が溢れる量販店
 それでは下関市民の食卓を支配しつつある量販店・大型スーパーの売り場を実際に見てみると、半分以上輸入物が占めているところも少なくない。輸入物は市場外流通がほとんどで、通関を切られたものは大手商社傘下のさまざまな会社によって、スーパーに直接持ちこまれるのだと、中堅どころスーパーの鮮魚部担当者は語る。
 インドネシア産むきエビ、タイ産むきエビ、ノルウェー産サケの切り身、カナダ産冷凍ズワイガニ、ロシア産冷凍タラバガニ、タイ産衣つきエビフライ、アイスランド産冷凍赤魚、ノルウェー産サバのフィーレ、アメリカ産タラ、モロッコ産タコ、タイ産イカそうめん、ノルウェー産カレイ、中国産ウナギ、中国産ホタテ、中国産ベビーホタテ、タイ産むきイカ、ペルー産アナゴ、中国産ウニなどざっと見わたしても世界各地から輸入してきた水産物であふれている。輸入物の多くがすでに下処理されており、あとは調理するだけの状態である。
 前述のスーパー関係者に聞いてみると、「大手になると販売ルートのレベルがけた違いで、しかもシステム化していく。鮮魚というのはとれる日もあれば不漁のときもあってきわめて不安定な分野。市場価格は乱高下するのがあたりまえ。ところがそれを規格化したいから、相対で安定的な安値を求めたり、画一化された輸入物を疑似魚としてあつかったりする。鮮魚部の仕事も小さなスーパーとはちがって切り身になったもののパックづめなどが多い。ダイエーの鮮魚部出身者がうちに移ってきても、魚のさばき方すら知らないくらいだ。下関市内の同業者は北九州の市場で買いつけているところが多いが、ダイエーさんはどこで仕入れるのかまったくわからない。丸紅との関係が深いから輸入物がそちらから流れてくるのでしょう」と話した。
   
 意図的な輸入拡大 産地価格を破壊
 漁師がいくら魚をとってきても魚価が安くて経営が成り立たない。それは、大手商社が世界中の魚を買い占めて輸入水産物を国内にあふれさせもうけをはかっているからにほかならない。しかも日本の魚介類にたいしての関税率はきわめて低く、平均四・一%なので、どんどん輸入魚が入ってくるシカケになっている。
 「韓国」では日本のアワビにたいして190%の関税をかけるとか、タイには70%、イカ、ウナギ、エビ、スズキなどにも70%とか80%、あるいは40%というように高い関税をかけている。中国は平均38・9%、EUは10・2%、ノルウェー19・0%などのきなみ高い関税をかけている。それは競争力のない零細な自国漁業生産者を保護するためとされ、安い価格で輸入魚が入ってくるのを防ぐ常識的な措置とされている。
 世界最大の水産物輸出国家であった日本は、為替変動相場制(外貨の通貨交換レートが自由に変化する)に移行した1971年を境に輸入国に転じ、急速に輸入拡大を進行させてきた。その後70年代後半の200カイリ体制への移行によって、商社などが日本の設備、資材、技術や資本を出して、諸外国の安価な労働で魚をとらせ、輸入の拡大をすすめた。円高などの影響も加わっていっそうの輸入拡大をすすめていった。
 きわめつけとなったのが、一九九四年のGATT(関税と貿易にかんする一般協定)ウルグアイ・ラウンドの決定によってWTO(世界貿易機関)が設立されたことで、よりいっそうの自由貿易体制の推進をはかったことだ。94年以後、水産物輸入量は国内消費の限界300万dをこえるほどの集中豪雨的な数値を示している。
 沿岸漁師が「10年まえから魚の値が極端に下がった」と指摘しているのはそういう背景があったのだ。国産魚を押しつぶす勢いで入りはじめ、同時進行の大店法撤廃の規制緩和でつぎつぎと出店した量販店が売りさばくシカケで産地価格を暴落させてきた。
 日本の政府には、アメリカが指図する構造改革・市場開放にたいしていいなりで、「韓国」や中国と比べても関税主権すら行使していない。世界一を誇ってきた日本の水産業は、アメリカの機嫌をとり、アメリカの核の傘で守られて多国籍企業としてもうけていくトヨタなどの大企業のためには、つぶしてもかまわぬという政治をとっているのである。
 農業とともに水産業を保護するのでなくつぶすという独立国家はない。アメリカは補助金づけであり、ヨーロッパも補助金を出して自国の食糧生産を保護している。「韓国」や中国ですら高い関税をかけているのと比べても、日本の政府がいかに売国的で亡国政治をやっているかをあらわしている。
 歴史ある日本の水産業を守るという問題は、たんに漁民の生活を守るだけの問題ではなく、日本民族の食糧生産を守るという死活問題である。生産を破壊するグローバル化というものが時代の先端で、農漁業などは時代遅れなどというのはとんでもない本末転倒である。金もうけ一本やりの市場万能主義などというものはただの悪徳商人にすぎない時代遅れであって、生産を守り発展させることが社会を支え時代を前にすすめる進歩的なことである。
 下関の江島市長は、アメリカの要求するグローバル化・自由化要求をいいなりに受け入れる小泉政府の構造改革を全国の都市に先がけて実行し自分の手柄にする市政をつづけてきた。下関への大型店の積極誘致姿勢について、直接のなぎ倒しにさらされる商店だけの問題ではなく、漁民、農民、加工などの製造業者の死活問題として、市長選の重要な争点とすることが求められている。

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