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漁民の権利放棄をめぐり攻防戦
原発問題抱える上関の漁協合併問題
             「水の泡」と怒る漁民 記名投票で脅しも 2005年1月25日付

 【上関】 山口県の1県1漁協合併問題で、中国電力の原子力発電所計画のある上関町と周辺漁協での攻防戦が激化している。
   
 祝島は合併反対いわせぬ手口
 23年間原発反対を貫いてきた祝島漁協では23日、第2回目の説明会が開かれた。山戸組合長は、「“原発問題の裁判が終わったら無条件で合併に合流する。それが待てないのであれば合併に反対する”と県と相談している。26日の臨時総会まえにそれぞれに連絡するので、それを受けて投票してほしい」とのべた。また投票形式については「合併協からいわれたので、印鑑も押した記名投票とする」とした。
 祝島では、漁協合併は漁協を解散し、漁民の権利を放棄することになり、23年の苦労が水の泡になるとして、全県の漁民と団結してこのような県の攻撃をはねつけなければならないという世論が沸騰している。裁判が終わっても原発問題は終わらず、漁民の共同事業の要求は終わらないのに、印鑑つきの記名投票で、だれが組合長の意向に反対したかがわかるやり方では、自由に合併反対・漁協解散反対がやりにくいものにしている。

 上関漁協説明会 数字並べ漁民騙す県に憤り
 さらに、上関漁協と平生町漁協でも緊張が強まっている。上関漁協では22日午後から、底引き漁師を対象にした説明会が開かれた。水揚げが多く若手も多い底引き漁師のなかでは、漁協解散反対で勢いこんで説明会に参加した。漁連次長と漁協役員は、「数字と言葉のマジック」を駆使して、「長い目で見れば、漁協は合併しなくてはならない。あとから合併すれば、負担がさらに重くなる」「出資金の85%はもどさないから漁協負担がふえる」、「信用事業や購買事業がなくなれば、若い者を困らせる」などとうとうと「説明」。
 参加した漁業者は、「むずかしい数字と言葉ばかりを並べて、チンプンカンプンになった。ああいえば、こういうというのはあのことだ」と、キツネにつままれたような説明会を思い出して腹を立てている。
 漁師の1人は、「簡単にいえば、エライ人間のつくった借金を漁師に払わせる。上関漁協を解散させ支所にして、漁師の権利はいっさいなくなる。もうけは、すべて上が吸い上げるということだ」といった。別の漁師は、「人をだまそうとするから、むずかしいことを並べて煙に巻くようになる。漁連や県は、ヤクザより素性が悪いことがよくわかった。漁師は、海には詳しいが、役人は数字で生活しているのだから、口げんかで勝てるわけがない。結論は、総会だ」と話した。

 平生町漁協組合長が権力バックに脅し
 平生町漁協では22日、役員会が開かれた。その後、各地区代表の運営委員会も招集され、山根組合長の合併参加の意欲が強烈に伝えられた。一般漁民には、臨時総会開催の通達、総会資料とともに、住所と署名捺印を求める書面議決書と委任状が届けられた。
 今夏の仮調印時には、年寄りや漁協に貸しのある漁師を集中的に家庭訪問し、賛成にマルをさせた。このたびも、「電話攻勢をはじめた」「そのうち家庭訪問もはじめるのだろう」といわれている。また中立ということで提出した議決書も賛成に数えていたといわれた。今回も、中電と県水産部に見こまれた権力をバックに、ヒトラー方式の個別漁民への脅しが、最大武器とみられる。漁師は「町議選挙で記名投票をすればどんな結果が出ると思うのか。公職選挙法が適用されないからと、好きなことをしている」と怒っている。
 漁協合併は漁協を解散するということであり、漁民の権利を放棄することになる。上関では、中電の原発計画があり、漁業権の問題は中電が撤退しないかぎり、何十年と大きな問題としてつづくことになる。ここで、漁協解散となれば、中電のような大企業にとってきわめて好き勝手がやりやすいことになる。

 企業の自由勝手させる合併
 これは全県を見ても、大企業が自由な商売をやるうえで、各地の漁業権の存在を面倒くさいものとみなしており、それをとっ払うのが規制緩和となっていて、上関の問題は合併問題をかかえる全県の漁協の共通問題となっている。
 上関や平生の大西組合長や山根組合長は、漁協解散推進であるが、それは漁民の権利を売り飛ばして自分のためをはかるものだとの怒りが強まっている。漁協解散をするということは、組合長もやめ、役員もやめたいということであるから、自分たちだけ先にやめてしまえばよいのだが、そうはせずに漁協をつぶして漁民全体を道連れにするところが、面目躍如というところである。
 内海漁業全体の命運を握る祝島、上関の漁協の漁民の困難にたいして、内海、全県の連帯の力がひじょうに求められている。
 
   圧倒的多数で合併否決 由宇・通津漁協が臨時総会

 山口県ですすめられている1県1漁協合併で、22日から各浜で合併の賛否を問う臨時総会がはじまった。先陣を切った由宇漁協、通津漁協の2漁協は、組合員の圧倒的多数により不参加を決定。仮調印に応じていない新宇部漁協では、正式に臨時総会にかけて賛否を問うた結果、圧倒的多数が反対票を投じて、県水産部による舞台裏の画策をはね除けた。山口漁協だけは合併への参加を決めた。
 22日午前中に臨時総会を開催した由宇漁協(玖珂郡由宇町)では、反対22票、賛成3票、棄権1票の圧倒的多数で否決した。その日の午後から開催した隣接の通津漁協(岩国市)は、出席した39人の全会一致で否決を決めた。賛成票は0票の完封となった。
 通津漁協の関係者は「当然の結果だと思っている。わたしどもからすれば、バカバカしいの一言につきる。信漁連がメチャクチャをやってつくった欠損金をどうして漁師がかぶらないといけないのか。それをあたりまえのように押しつけてくるので、みんな怒っていた。文句なしの反対です」と語っていた。
 由宇漁協の関係者は「大畠の動きが大きかった。漁業が圧迫されるのでは、基盤強化・漁業振興にはつながらない。脱退漁協は除名するなどの暴言が怒りを買ったのではないか。漁業者はなにも悪いことをしていないが、信漁連問題イコール漁師が悪いことをしたような印象で話がすすめられたことに不満が強くあった。抜本的な見直しにつながることを望みます」と話していた。
   
   大畠漁協 25日に決起大会 意気ごみ増す漁師
 
 岩国市から大島郡にいたる県東部の海域では、岩国市漁協、柳井市漁協、大島漁協、神代漁協が早くから合併不参加の姿勢をうち出していたが、昨年末に大畠漁協が下からの漁民の立ち上がりによって合併不参加を決定しており、海域の漁民に励ましを与えていた。上関海域につながる柳井地域では県水産部がことのほか力を入れているのが特徴。「県東部の牙城」といっていた大畠が崩れたことで、県水産部は大慌てした。柳井水産事務所長をやっていた潮田水産部長も直接に身を乗り出して、関係漁民への工作をこころみた。漁連・水産部側は、「永岡(県漁連会長)が土下座をしても賛成には回ってもらえないのか」などと情に訴えたが、漁師からは「おまえらの顔も見たくない」と突っぱねられた。大畠では25日、今後は単独漁協として全漁業者が力を束ねて、困難を乗りこえていく決意を固めようと「決起大会」が予定されている。
 なお、大島海域では、「安下庄、東和が否決だろう」と有力視されており、総会の行方が注目されている。攻防戦の激しい東和町では、「合併しなかったら、許可漁業の許可を県がおろさない」というデマまで飛びかっており、思考回路がおかしくなるほど数字のチンプンカンプンを「説明」して攪(かく)乱したり、推進工作は乱暴さを増している模様。
   
    新宇部も「正式」否決 床波でも説明会大荒れ

 県水産部が覆しに躍起となっている宇部海域では、新宇部漁協が22日に臨時総会を開催した。昨年9月、仮調印への参加について漁業者に賛否を問うたさい、118対15で反対世論が圧倒して仮調印にも参加していないが、今回の本契約をまえに「正式」に臨時総会にはかった。その結果、140対62(白紙5票)で否決した。県水産部・漁連が各浜の説明会で「2〜3漁協が参加する可能性がある」と吹聴して回っているのは、新宇部、宇部岬漁協のことを指しているといわれているが、望みは絶たれた格好となった。29日に予定されている宇部岬の臨時総会も、否決はほぼまちがいないすう勢にある。
 宇部海域では「宇部岬、新宇部につづけ!」と行動がはじまっており、これまで表面的な動きは起きていなかった床波でも22日の説明会は大荒れとなり、水産部職員・漁連職員は「帰れ!」コールに包囲された。29日の臨時総会にむけて、床波漁民の反対行動も攻勢に転じている。近海では、阿知須漁協も「否決はほぼ疑いない」と地元漁協関係者はみている。

 窮地でデマ・脅し、攪乱する県
 デタラメ合併との最終決戦の幕は切って落とされた。「○○漁協が否決した!」の一報は22日、県内の漁協関係者・浜をかけめぐって、それぞれのルートをつうじて連絡が行きかった。合併反対をうち出している漁協組合長の1人は「合併計画の完全破たん、信漁連再建問題の抜本的見直しにつなげることが重要だ」といい、別の漁協組合長も「全県漁民が踏んばるときだ。なだれ現象を期待したい。除名についてはすべての脱退漁協が力を束ねて抵抗すべきだ」と意気はあがっている。
 臨時総会は29日(土曜日)に多くが集中しているが、残り46漁協の動向が注目される。これまでのところ、臨時総会にかけた漁協では、山口漁協が全会一致で賛成させたのみ。防府水産事務所や県水産部からも役人が足を運び、臨時総会を監視した。

 「死んだ漁協」発言は許せぬ 宇部地区婦人部長会議
 宇部地区の婦人部長会議が22日小野田の高泊で開かれた。合併にかんする説明会もおこなわれ、途中から新宇部漁協の臨時総会に出席していた中村所長が退席してかけつけてきた。説明会のなかで中村所長が、「脱退した漁協は死んだ組合になるから、出資金はもどらない」と発言をしたことが話題にされている。
 「脱退しても漁師はいるのに、死んだ漁協なんて失礼すぎる。だいたい、だれのおかげで信連が生き残れたと思っているのか」「横柄な態度で来ていたけど、水産事務所も合併したら職員はいなくなるのに。あんなこといわれたら、絶対にわたしたちの出資金が損しないような形に持って行きたい。信連にただであげるなんて、絶対許せない」など、漁業婦人たちは怒っている。

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