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ハッタリだったアマ漁禁止令
洋上風力反対の安岡漁師恫喝
              混乱作った者の処罰必至   2015年6月12日付

 前田建設工業(東京)が下関市の安岡沖に全国最大級の洋上風力発電を建設しようとしていることと関連して、建設予定地に漁業権を持ち、同事業に反対している地元安岡の漁師たちに対して、山口県漁協副組合長の廣田弘光(元彦島漁協組合長)がアマ漁業(潜水漁業)を「違法操業」だとして禁止を通告し、大きな問題になってきた。安岡の漁師にとっては生活の糧を奪われる死活問題であるだけに、勝手にそのような通告を出したことへの怒りは尋常でなく、また九月から人工島周辺のアマ漁が始まるが「それも違反となって海上保安庁に捕まるのか」と不安が語られていた。ところが、ここまできてまったくのハッタリであったことが暴露されて衝撃が走っている。
 
 「なかったこと」ではすまぬ

 山口県漁協ひびき支店(旧安岡漁協)はアマ漁業が主力で、40代、50代のほかに、後を継ぐ20代も潜っている。昨年9月、同支店の漁師たちが正組合員48人中42人の署名・捺印を添えて中尾市長に風力反対を表明するよう求める陳情をおこない、11月には環境調査反対の決議も上げた。これに激怒したのが海域ボスの廣田弘光で、安岡に乗り込み、「安岡は七漁協のなかで孤立して、共同漁業権の海ではもぐりができなくなる」「計画がつぶれたら、前田建設工業から何億円もの損害賠償が請求される」といって脅した経緯がある。
 今回の問題の発端は5月15日、下関外海漁業共励会協議会(安岡、伊崎、南風泊、彦島、六連、吉見、吉母、蓋井の八支店の運営委員長会議)がおこなわれ、それを受けて19日付で「共第37号等共同漁業権代表権者 廣田弘光」の名前で安岡の運営委員長に「共有漁業権区域に於ける無承認操業の禁止について」という通告が渡されたことだ。内容は「共第37号等共同漁業権内の共有漁業権区域において、同じ漁業権を有する他支店の承認を受けることなく、アマ漁業を操業している実態があります。ついては、他の共有支店の承認を受けずに操業することは、漁業法違反(密漁)となりますので、該当支店の運営委員長におかれては、即時操業停止するよう指導方お願い申し上げます。なお、指導に従わない場合は、関係取締機関への通報及び告訴等厳正なる対応をとることとなりますので、この旨ご承知おき下さい」としている。
 つまり、「安岡のアマが他の支店の承認を受けずに密漁をしている」ので、安岡の地先に隣接する共有漁業権区域内と、人工島周辺の共有漁業権区域内の2カ所の操業は認めない、従わなければ海上保安庁なりへの通報や告訴も辞さないというものだ。この2カ所での操業は、安岡、伊崎、吉見、吉母、南風泊、彦島、六連の7支店の承認が必要と漁業権行使規則に記されており、承認するか否かは37号の漁業権管理委員会(各支店の運営委員長が兼務)が判断する。しかし運営委員長のなかには、15日の会議で、隣りあった漁協同士のもめごとを話しあったことは認めているが、「通告を見て、うちと安岡との話しあいはついているはずなのに、廣田さんはおかしいことをすると思った」という者もおり、この通告の文章そのものが会議で承認された形跡はない。

 漁師の首締る死活問題

 通告を見て驚いたのは安岡の漁師たちで、「人工島周辺では50年以上潜ってきて、これまで1度も問題にならなかったのに、なぜ突然こんなことをいうのか。風力反対への嫌がらせだ」「漁師が漁をできるようにするのが漁協の仕事なのに、逆に漁師の首を締めるものだ。アマを禁止して生活できなくなれば、組合員がいなくなって支店も廃止になる。バカげている」とあちこちで激しい怒りが語られた。
 ある年輩の漁師は、「漁師のみんなはこのたびの通告には本当に困っている。9月からは問題になっている人工島周辺でのアマ漁業が始まるが、もしも違反となって海上保安庁に捕まれば、操業停止になって一カ月は船を係留しておかなければならなくなる。漁師を身動きとれなくさせるものだ」と話していた。
 この通告にもとづいて5月30日にはひびき支店の組合員全員集会が急きょ呼びかけられた。議題は「共有漁業権区域における無承認操業の禁止について」であった。これに対して安岡の漁師のなかでは、「廣田をその場に来させてきちんと説明させろ」と求める意見が多かったが、結局集会は流会となった。今に至るも集会をいつ持つのかの連絡はない。その後、事態の対応に困っていた安岡の運営委員長は辞表を提出した。
 そんな最中の今月8日、下関外海漁業共励会協議会(8漁協の正副運営委員長会議)が持たれた。しかし不可解なことに、その場でも当面もっとも重要な問題であるはずのアマ漁禁止令のことは会議を仕切っていた廣田会長筆頭に誰もとりあげず、まるでなかったことのように扱われた。そして会議は、県の水産振興局から職員を招いて、響灘における漁業権と行使規則を再確認する「勉強会」となった。「漁場はお互いが有効活用できるように、お互いが話しあってお互いが生活できるように昔からやってきた」「ケンカしたらお互いが損。みんなで協力しあって助けあってやっていきましょう」と抽象的なことを何度も強調するものとなった。
 それでいったいアマ漁禁止令はどうなったのか。本紙が廣田弘光本人に問うたところ、「ワシの一存で出したのではない。運営委員長会議でみんなの総意で出したのだ」といい、「アマ漁は禁止になるのか?」と聞くと「ノーコメント」とのべて、逃げていく対応だった。
 関係する漁師にとっては死活問題であり、場合によっては生活の糧を奪われる重要問題であることから本紙は監督官庁である下関水産振興局(下関市大和町)の担当課に意見を求めた。すると、「文書を読むと、今回の場合は漁業権行使規則に違反した事実があるようだ。行使規則というのは、漁場の有効活用のために漁協のみなさん同士が自主的に決めたルールであって、そのルールを破ったからといって、それは違反操業ではないし、保安庁が来て捕まえることにはならない。操業停止にもならない。組合員でない者が勝手にアマ漁をする密漁とは違う」「8日の会議でも、直接この文書には触れなかったが、“無承認操業は禁止ということだが、今後一切できないということではなく、他の支店の承認があればできるということであり、後はお互い話しあって、たとえば資源保護のために期間や人数をどうするかなどを決めて進めてください”といったつもりだ」とのべていた。
 要するに、即時操業停止になるような問題ではないし、アマ漁をやったら保安庁に捕まるという代物でもない。ただの脅しとハッタリにほかならないことが暴露された。まかり間違って安岡の漁師が五月末の会議で「アマ漁禁止」を決議していたら、みずから自主規制したことになり、「おまえたちが自分で決めたことではないか」といわれる関係であった。法的根拠も何もないことから、アマ漁禁止令はなかったことになり、文書そのものの存在も含めて、すべて雲散霧消させる対応となっている。

 悪しき県漁協体質露わ

 嘘やハッタリで人人の暮らしを脅かす。このようなことが、平然とまかり通るほど社会は甘くない。しかし下関外海や山口県の沿岸では、歴史的にこんなことばかりがくり返されてきた。
 信漁連問題では自民党林派や桝田市太郎が焦げ付かせた負債にもかかわらず、全県漁民が尻拭いさせられ、従わなければ漁業免許を剥奪するとか、信用事業をできなくするとか、抗うことができないような脅迫で漁協や漁師を締め上げた。そして行政が支援する格好をして認めさせたのが人工島建設であり、岩国基地拡張であり、上関原発の埋立であった。漁協合併に際しても同じで、従わなければお先真っ暗な脅迫を施して、囲い込んでいくのが手口であった。祝島では、補償金を受けとらなければ法外な所得税がかかるのだ(もらってもいない補償金への課税)とか、平気で嘘ばかりつくのが山口県漁協なり水産行政の体質である。
 それを真似して廣田弘光が勝手な文書を配ったことから混乱が広がった。協同組合において上に立つ者は、まず第一に組合員の生活を守り、漁業生産の向上に寄与しなければ話にならない。それが恣意的に組合員の生活を脅かし、漁業生産を禁止するのだから、代表者を名乗る資格などない。また、海区を混乱させたことについても徹底的に追及されなければならず、「なかったことにします…」で片付けられるものではない。
 漁業法では海区調整委員会について、「漁業者および漁業従事者を主体とする漁業調整機構」であり、その目的は「水面を総合的に利用し、もって漁業生産力を発展させ、あわせて漁業の民主化をはかること」と規定している。海区調整委員は、漁業を発展させるために、漁民の意見をよく聞いて漁場計画を立て、漁民同士が話しあって共存共栄できるようにするのが本来の任務である。漁場を売り飛ばし、漁師をハッタリで脅かし、前田建設工業なり中国電力に協力すること、とは一言も書いていない。海区調整委員としても失格で、厳重にこの間の振る舞いについて委員会で審議し、不適格者としてその権限を剥奪することが求められている。
 まずは安岡の漁師に謝罪すること、そして一部始終を廣田弘光みずからの口で説明する責任がある。「あることないこと、尾ひれはひれつけて一方的に書かれた」のではなく、自分が印鑑まで押してばらまいた文書が騒動の引き金をひいたのだ。また、「ごめんなさい」だけで終わりになる問題ではなく、混乱を持ち込んだ責任をとって副組合長ポスト、海区調整委員ポスト、共励会長ポストなど、企業が群がってくるような利権ポストからみな外れることが求められる。高額日当の警戒船や調査船を一族がみな独占しているような権限についても剥奪し、海域の漁師たちみなに開放しなければならない。組合の責任ある立場に置かれた者が、組合員の生活の糧を奪うような振る舞いをしたことについて、決して曖昧にするわけにはいかず、その落とし前の付け方はみなが注目している。潔いか否かも含めて見ているのである。
 歪んだ漁協運営を改め、本来の民主的な漁業協同組合を取り戻すために、この海域八支店の漁師たちが結束して行動を起こすことが切望されている。山口県全県の水産業を振興し発展させるためにも、県漁協の悪しき体質を断罪し、親分としてあるまじき行為を働いた者については厳しい処分を科すことが求められている。


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