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破綻した小泉・安倍外交
                米国の州知事扱いに     2007年7月27日付

 参院選もいよいよ大詰めにきたが、安倍自民党は勝手に「年金問題」を争点にしてしまって、憲法や外交問題への国民の審判をかわそうとしている。日本の進路とかかわる外交問題について見れば、5年余りの小泉首相の対米従属外交を引き継いだ安倍外交は、今やアジア、中東はもとより欧州、中南米、アフリカなどで「非常識外交」と呼ばれ「世界の孤児」となっている。対朝鮮では、アメリカの先制攻撃、体制転覆戦略に従って、拉致問題を前面に掲げて制裁・圧力一辺倒できたが、イラクやアフガニスタンの泥沼にはまってアメリカが頭越しに政策転換をはじめたため、誰からも相手にされず手も足も出なくなっている。
 「ブッシュのポチ」と呼ばれた小泉外交は、イラクへの自衛隊参戦でアラブ諸国から見放され、中国や朝鮮、「韓国」などとは靖国神社公式参拝や歴史教科書、領土問題などをめぐる頑迷きわまる挑戦的姿勢で反日デモが起こるほど関係を悪化させた。反米の高まる中南米では相手にされず、カネをちらつかせて国連安保理常任理事国入りの支持をとりつけようとしたアフリカ諸国からも蹴られ、同じ敗戦国のドイツにもバカにされるようになった。
 その中心問題は、独立国としての独自の外交戦略もなく、ひたすらアメリカの世界戦略に付き従い、日本を動員したことであった。日本の国益をアメリカに売り飛ばし、属国に変えるような売国政治を実行している政府を、世界の国国が対等に扱いまともな外交関係を結べるものとみなさないのは当然である。朝鮮の非核化問題を話し合う6者協議に、「アメリカの第51州の代表の出席は無用だ」といわれたのも、無理からぬことである。

 肉弾を米国に差し出す 自衛隊イラク派遣
 小泉首相の対米従属外交の最たるものは、戦後初めて自衛隊をイラク戦場に派遣し、日本の若者をアメリカの肉弾として差し出したことだった。1996年の日米安保共同宣言、日米防衛協力指針にもとづいて、自民党政府は世界的範囲での米軍への軍事協力を進めるため、周辺事態法、有事法制など戦時体制をつくってきた。それを実行に移したのは、まず「反テロ戦争」への後方支援としてインド洋での給油活動に海上自衛隊を派遣したこと、ついで武器使用を解禁した陸自のイラク派遣だった。
 それまで中東・アラブ諸国は、「日本はアメリカに原爆を投下された国」として連帯する感情が強かった。だが、武装部隊の派遣でアメリカの占領政策に加担したことで世論は一変した。サマワの陸自駐留地が10数回もロケット弾攻撃を受けたり、陸自車両が路肩爆弾で襲われたばかりでなく、「日本の占領軍は早く帰れ」と叫ぶデモ行進が起こるようになった。
 また、イランのアザデガン油田の開発権を持っていた日本は、アメリカの圧力でそれをみずから放棄する羽目となった。アラブ諸国との関係を悪化させたことは、中東に八割の石油を依存する日本にとって、どれだけ大きな損失であったかはかりしれない。
 安倍政府となって、陸自部隊は護衛する英軍、豪軍が存在しなくなったとして撤兵せざるをえなくなったが、空自の輸送機部隊は2年延長して米軍輸送を続けることになった。ブッシュ政府のイラク開戦の口実がまったくウソであったことが明らかとなり、当初「有志連合」として参戦した各国が相次いで撤退しているなかで、「同盟国支援」の理由だけで駐留する国は数少ない。安倍首相は今年4月、訪米の帰路財界人180人を引き連れて中東諸国を歴訪したが、その目的は米軍のイラク占領を批判する各国首脳を日本の投資拡大をエサになだめすかすことと、ついでに自衛隊部隊を「激励」することであった。

 けんか腰の挑発ばかり アジアとの関係も
 アジアとの関係を見ると、小泉政府は靖国神社参拝、侵略肯定の歴史教科書、尖閣諸島や竹島の領有権問題など、ことごとにけんか腰の挑発をやり、日本の孤立をきわだたせた。それは、台湾海峡有事への介入、ミサイル防衛(MD)配備など中国や朝鮮を敵視するアメリカの受けを狙ったものであった。アジア近隣諸国との平和と友好を望み、2度と戦火を交えないことを願う日本国民を裏切る行為だった。
 昨年秋、安倍首相は就任早早に中国と「韓国」を訪問、中国とは「戦略的互恵関係」構築で「一致」した。今年4月には胡錦涛国家主席も訪日、軍事交流や経済、文化など幅広い分野で協力を促進するとなった。だがそのパフォーマンスは、中国を長期の「潜在的脅威」としながら当面は市場の実利を求めるブッシュ政府の願望を満たし、そのおこぼれに預かろうとするものだった。
 安倍自身、靖国神社参拝について「するともしないともいわない」し、ガス田開発問題について中川自民党政務調査会長は「黙っていると泥棒に入られる」と放言。日中戦争70周年で中国が「反日宣伝をしている」と抗議もしている。当面はアメリカの中国戦略に合わせているだけで、日本国民の利益に立って中国を含め東アジアで平和・友好の秩序を構築する独自の戦略などはない。
 ところが、安倍首相は対朝鮮政策ではアメリカの政策転換に合わすことすらできず、あたふたしている。
 戦後日本の歴代政府は、アメリカの朝鮮敵視政策にぴったり従って、朝鮮侵略、体制転覆をめざす基地を提供、米軍との共同作戦計画を持って合同演習をくり返してきた。小泉は02年、日朝平壌宣言の演出をして日本の植民地支配の清算、国交正常化を約束しながら、相手が「拉致」を認めたことを逆手にとって「朝鮮の脅威」を煽りたて、排外主義宣伝とMD配備やスパイ衛星打ち上げなど実際の先制攻撃態勢を準備してきた。昨年10月の朝鮮の核実験に対して、安倍政府は国連安保理で制裁決議を採択する先頭に立ったことを自慢していた。
 だが、ほぼそれと同じ時期にブッシュ政府は、支配層中枢のキッシンジャー元国務長官らの指図で対朝鮮政策の手直しを始めた。イラク占領が泥沼化しアメリカ内外でイラクからの米軍撤退世論が高まったことを反映して、ブッシュ政府内でイラク戦争を主導したネオコン(新保守主義)勢力が次次に閣外に去った。議会も中間選挙の結果、支配層内部では、イラクや朝鮮の2正面で強権的政策をとり続けることができないとの声が強まった。
 対朝鮮では、相手も核兵器を持ったこともあって、これまでアメリカが拒んできた2国間協議に応ずる姿勢に転換した。今年1月のベルリンでの米朝協議をへて開催された2月の6者協議では、朝鮮の核放棄の見返りとして五カ国が重油を提供し、アメリカは朝鮮へのテロ国家指定の解除を検討することをうたった合意が生まれた。日本は拉致問題が解決しなければ重油支援に参加しないと表明、まったくカヤの外の存在となった。
 この合意を受けてニューヨークで開かれた米朝協議では、アメリカが金融制裁の解除を表明、テロ国家指定解除に向けての検討に入った。あわてた安倍首相は、4月の日米首脳会談で拉致問題解決をテロ国家指定解除の条件とするよう泣きついたが、ライス国務長官から「それはアメリカ国内法の問題だ」とにべもなく退けられた。拉致問題は安倍の命綱であったが、今ではその政治資本もなくなり、今回の参院選では拉致のらの字も口にできなくなった。
 もともと安倍首相は、アメリカのネオコン人脈に認められて首相の座に着いた男だ。ウルフォビッツ国防副長官、ボルトン国連大使、ラムズフェルド国防長官、ジョセフ国務次官らは、彼を「タフな男」とほめそやし、アメリカの使い勝手のいい人物として起用したのだ。その連中がブッシュ政府から去れば、安倍は無能なただの人にすぎない。
 アメリカ議会では従軍慰安婦問題について、日本政府の公式謝罪を求める議案が提出されていた。なのに安倍はあえて「日本軍の狭義の強制はなかった」と発言、反発を浴びるや一転して軍の関与を認めた1993年の河野談話を踏襲すると発言するなど右往左往した。そのうえに、かつて安倍が役員をしていた右翼組織の議員や評論家、知識人ら44人が河野談話を否定する広告をアメリカの新聞に掲載し、アメリカ議会での慰安婦問題決議への賛同者を一気に増大させた。

 米国の政策転換読めず 欧州で権威失墜
 こうした国際世論の変化やアメリカの政策転換を読み切れずに、いつまでもアメリカのイラク侵略に加担したり、拉致問題に固執したりする安倍首相は、今や欧州の同盟国からも「非常識」とバカにされるようになっている。今年初め、安倍は初の外遊先として欧州諸国を歴訪、北大西洋条約機構(NATO)理事会にまで出席して「自衛隊の海外派兵をためらわない」と演説した。
 麻生外相は同じ時期に、ユーラシア大陸の外周に位置する親米諸国を支援する「自由と繁栄の弧」構想を持って、東欧や中央アジア諸国を歴訪した。
 安倍のNATO演説は、ブッシュが昨年末提唱したNATOと日、豪などとの戦略的提携を売り込み、アフガンへの自衛隊派遣を約束するものだった。その限りでは、NATO諸国は賛同したが、安倍が対中武器輸出禁輸解除に反対したり、朝鮮の拉致問題解決に協力を求めたりしたことにはまともに対応しなかった。欧州には朝鮮と国交を持つ国が多く、フランスやドイツなどは対中武器輸出解禁に賛同しているだけに、いまさら何を寝言みたいなことをいっているかというものだった。
 「自由と繁栄の弧」構想に対しては、中国、ロシアを取り囲み、とくに中国封じ込めと受けとられ、中国への関与を強めようとする欧州には反発が強かった。安倍が海外派兵を随時可能にする恒久法制定を自慢げに強調したことには、アメリカの下請として日本が海外派兵を拡大するものとして強い警戒感を持ったといわれる。
 いずれにせよ、日本がアメリカの下請として海外に拡張し、核攻撃態勢を強めていることは、世界各国にさげすみと警戒の念を強めざるをえない。昨年の国連安保理常任理入りの策動に対して、アジアで賛成した国はわずか3カ国、票数の多いアフリカ連合(AU)も結局は総会で否決、欧州諸国も足並みがそろわずに最終的にはアメリカも反対に回った。
 “冷戦”崩壊後の世界で、日本がこれほど孤立し、権威を失ったことはない。小泉から安倍に至る6年余りの外交が1にも2にもアメリカの国益を優先する従属外交であり、世界から見れば「それでも独立国か」とバカにされている。

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