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平和で真っ当な社会作る糧に
礒永詩の鑑賞・論議広がる
              12月3日の詩祭へ活発な取組    2016年11月9日付
 
 12月3日に海峡メッセ下関の四階イベントホールで開かれる「没40周年記念・礒永秀雄詩祭」のとりくみが、下関市内を中心に各地で広がっている。詩祭のポスターは下関市内の商店、官庁・公民館、図書館、学校、自治会掲示板などに900枚が貼られ、礒永秀雄が活動していた光市や周南市などの県下を含めて1000枚以上が掲示されている。また詩祭のチラシや、礒永秀雄の詩や童話を紹介した長周新聞号外一万枚が学校や職場、地域で配布され論議になっている。詩祭のとりくみは、礒永秀雄の詩や童話を世代をこえて共有しあいながら熱を帯びて広がり、詩祭当日へ向けて、「礒永秀雄の世界」を現代に蘇らせるための出し物、展示出品の内容も充実してきている。
 
 教師やPTA関係者も意欲的

 下関の被爆者の女性は、詩祭を知人に勧めると「ポスターの『夜が明ける』の詩を読み、すごくいい詩を書く人だと思っていた」といっていたことを語った。そして「私自身も最近もう一度『礒永秀雄の世界』を読み返してみた。するとこんなにすさまじい戦争を生き抜いてきた人なのに、どうしてこんなに優しい、温かい詩が書けるのだろうかと思った。そしてこれというときにはとても激しい。『輪姦』(安保斗争で殺された樺美智子の死を悼んだ詩)は、他の新聞社は断ったが、長周新聞だけが載せた。怒りが伝わってくる。礒永さんはいろんな詩人の勉強をされているからだろうか、言葉がすごくきれいでリズムがある。戦争を経験した同じ世代として作品を身近に感じる」と語り、被爆者の会として出演することも伝えて知人、友人に精力的に詩祭への参加を呼びかけている。
 礒永秀雄のいまわしい戦争体験に根ざした真実を貫く詩精神が、デタラメな戦後社会のありようを根本から見直し、まっとうな生き方を確かめあう多くの人人の魂に分け入って深い感動を呼び起こしている。戦後71年たって戦争の匂いを敏感に感じとっている戦争体験者や遺族が、詩祭のとりくみを平和の力を強める契機にしたいと周囲に参加を呼びかけている。
 昨年11月の劇団はぐるま座の『礒永秀雄の詩と童話』公演が市民のなかに深い印象を残しており、今回の礒永秀雄詩祭を親近感を持って受けとめている。市内の自治会長が快くポスターを掲示したりチラシを回覧する動きになっている。
 子どもの教育に携わる児童クラブやPTA関係者のなかでも、詩祭のとりくみに関心が高まっている。児童クラブの職員の女性は、いつも自宅近くを散歩しながら、商店に掲示された詩祭のポスターが気になっていたという。「昨年劇団はぐるま座が児童クラブで紙芝居をしてくれたが、今年もやるのかと関心を持っていた」といい、スマホやゲームなどデジタル機器が溢れるなかで子どもたちに良質な文化に触れさせたいという願いを語った。別の児童クラブ指導員は、詩祭のイメージを伝えると「上手な人の絵や書の展示、発表ではなく、子どもも大人も本当に心に響く部分を共有する催しに共感できる。つくられたものではなく、ストレートに響いてくると思う。優しさや思いやりを持って困難に負けずに強くたくましく育ってほしいという父母と、戦争を経験した世代の人たちが一緒に詩祭に参加して、子どもとともに礒永さんの作品を共有できることはとてもいいことだ」と語り、礒永作品をぜひ親子で読んでほしいと、子どもたちに配るためのチラシや号外を預かった。
 市内のPTA関係者のなかでも宣伝が広がっている。中学校のPTA会長は、「戦地に行って生きて帰ってきた礒永さんの詩や童話を読んだが、中身がいいので、こういうものに子どもたちに触れて欲しいし、親子で観てほしい。戦争や原爆についても子どもに学ばせたいし、そのために親が学ばないといけないと思う。東京大空襲なども知られていないことが多く住民を逃げられないようにして回りから蒸し焼きにして、死者は10万人どころか20万人以上だ」と語り、詩祭には家族で参加することを決め、近く開かれるPTA役員会でみなに呼びかけることを約束した。またまちづくり、地域づくりのためにも、親が地域コミュニティを支える意識を持つことで子どもが育っていくのではないかと詩祭のとりくみと重ねて問題意識をのべた。
 また別のPTA関係者は、TPPの強行、「駆けつけ警護」といって日本が再び戦争の方向に進むなかで、「戦争を経験し死んだ戦友の思いを背負って詩人を志した礒永さんの生き方は、これからの戦争反対の指針になるのではないか」と五年ごとの詩祭の意義を語った。礒永秀雄という詩人が残した詩や童話を通じて、子どもから大人、戦争体験者も含めて世代をこえて戦争反対の思いや、人間の優しさ、まっとうな生き方をあらためて確かめ、次の世代につなげていくとりくみにしたいと語っている。

 戦争を許さぬ魂の叫び 小学校教師の感想

 山口県内や北九州市の小学校では、礒永秀雄の詩や童話を読み聞かせて子どもが感想文や感想画にとりくんでいる。ある小学校では「おんのろ物語」などの童話を読み聞かせたところ、子どもが大喜びし、日ごろ学校の中ではおとなしい子どもほど礒永作品のいいたいことを自分なりにつかんで感想を書いていることが教師の驚きとなっている。「鬼の子の角のお話」を読んだ物静かな女の子が、「牛さんは鬼に力ずもうで負けて悔しいはずなのに、鬼さんを助けてすごい。そんな優しい牛はいないと思う」という感想文を書いた。今まで教師が見えなかった子どもの良い面が、礒永作品を通して引き出されている。
 また教師たちは、子どもたちが童話に描かれている弱い者への優しさや思いやりに深く共感し、みなを苦しめる者に対して立ちむかっていく勇気に励まされ心を解放していく様子を語っている。
 礒永作品を読んだ若い教師たちが、礒永作品にストレートに感動して感想を寄せている。20代の小学校教師は、「一言ではいいあらわせない、元気の出るような、深く物事を考えさせられるような気持ちになった。なかでも『一かつぎの水』は陰ひなたなく、無償の行為を続ける馬新さんの姿に、自分はどれだけ無償の行為ができているだろうか、深く考えさせられ、自分のおこないを反省させられた。また、馬新さんのようにいつまでも謙虚な心を忘れず、自分が正しいと思ったことをやり抜ける人にもなりたいと思った。…わたしは礒永さんの詩を読んで、2度と戦争の起こらないように人と人とが助け合う世の中を作りたいという礒永さんの思いを受け止め、これに恥じない生き方をしたいと思う」と書いている。別の小学校教師は、「私は、礒永秀雄さんの書かれた詩を知りませんでした。…この度いくつかの詩を読み、…人間を破壊する戦争への強い憤りと、それを絶対に許さないという鋼のような決心、この2つが、詩の中の根底にあるということです。“戦争反対”といううわべだけの言葉ではなく、魂の叫びのように思えます。だからこそ、自分自身に対して厳しさを求めているのではないでしょうか。それが詩の中に深く表れていると感じました」と感想を寄せた。
 礒永秀雄が「高度経済成長期」の繁栄ムードのまやかしを拒否し、退廃的な風潮とのたたかいのなかから生み出した作品に対して共感が強い。「自分さえよければいい」という個人主義がまん延し、他人をけ落としても平気という風潮のなかで、みんなのために無償の奉仕を尊ぶ礒永精神が改めて多くの人人の感動を呼び、「『一かつぎの水』を子どもたちにぜひ読ませたい」といって、授業にとりいれる教師も出てきている。
 10月末におこなわれた小中高生平和教室では、詩祭にむけて詩の朗読と詩を読んでの感想画にとりくんだ。絵や音楽、書道などに親しむ文化関係者のなかでも集団で参加する動きになっている。
 また豊北町では23日におこなわれる劇団はぐるま座の『礒永秀雄の詩と童話』公演のとりくみと礒永詩祭が響きあって、礒永作品の顕彰の意義が論議となっている。戦争の真実を子や孫世代に伝え、まっとうな生き方を励まし、次代を担うたくましい子どもを育てるためのとりくみとして、現役世代を巻き込んで広がっている。

 具体化進む発表や展示 礒永秀雄の世界描く

 各団体、個人による詩祭当日の舞台発表も詩の朗読、紙芝居や音読劇、寸劇、詩劇の発表など多彩な内容で具体化が進んでいる。
 下関原爆被害者の会は、詩「前へ」を朗読することが決まった。小中高生平和の会の子どもと教師は、「一かつぎの水」「夜が明ける」の朗読と詩の感想画を出展する。北九州市の子どもたちが授業で「鬼の子の角のお話」の音読劇をおこなっており、それを詩祭でも発表することが決まった。名古屋市在住の予科練経験者の男性は、地元の原爆展会場でいつも朗読してきた「十年目の秋に」を発表する。名古屋で活動する紙芝居サークルの男性は、「天狗の火あぶり」の紙芝居を披露することが決まった。
 また下関市内の会社員有志は「一かつぎの水」の大型絵本の準備を進めており、下関市民の会が「連帯」ともう一編の詩を朗読するほか、別府市の病院内の劇団は童話「サルカニ合戦」の寸劇を発表する。劇団はぐるま座は「修羅街挽歌」を詩劇として発表し、画家が礒永秀雄への思いを曲にして披露する。その他、沖縄からの参加者、佐賀県で『原爆展物語』公演をとりくんだ人人、『礒永秀雄の詩と童話』豊北公演実行委員会による発表も予定されている。
 展示部門では、書道が多数展示される。故道岡香雲の作品をはじめ下関市内の書道家数人が作品を出展するほか、沖縄の2人の書道家が出展する。また下関市内で書道教室を開く書道家の協力により、子どもが礒永作品を読んで好きな言葉を書にあらわした作品110点を展示する。「今学校でも書道の時間がほとんどないなかで、書道を通して自分と向き合ってほしい。原爆や平和のことを考えさせる良い機会だ」と論議になっている。
 絵では、沖縄県うるま市文化協会顧問の男性が、版画3点を出展し、光市の元教師が礒永童話3話の紙芝居原画を事務局に寄せている。また名古屋の美大生による「天狗の火あぶり」の紙芝居原画も展示する。小中高生平和の会の子どもたちや、下関市や北九州市の子どもたちの感想画も多数展示する予定となっている。『礒永秀雄の世界』のパネルと写真も展示する。

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