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変貌した民営郵便局の姿
                儲け第一の営利会社に     2007年10月8日付

 「構造改革の本丸」といわれた「郵政民営化」がスタートして、郵便局の現場で矛盾が噴出している。「サービスは変わらない」「競争で今より良くなる」と宣伝されたが、送金手数料は倍近くになり、窓口はコンピューター処理で待たされる市民があふれる。大きな局では別会社となった郵便局会社(窓口専門)、郵便事業会社(郵便事業全般)、かんぽ生命保険、ゆうちょ銀行ごとに壁が設けられた。違う部門の局員が連携しあう体制がつぶされた結果、以前は1つの窓口で済んでいたのに、今はいくつもの窓口をたらい回しにされ利用する市民は激怒している。日を追うごとに営利優先一本槍で公益を破壊する「民営化」の実態が露呈し、局員や郵便配達員もふくめて「地域を守れ」「地方や弱者の切り捨ては許せない」との声が噴出している。

 利用する市民も局員も憤り

 市民と関係が深い特定郵便局では民営化以後、順番を待つ客の前で、2、3人の局員がバタバタしながらコンピューター処理に追われる光景が目立つようになった。市民からすれば窓口で送金を頼むと高い料金が告げられるし、扱う金額が大きいと収入印紙を買わされるし驚くことばかりだ。
 普通郵便局でも「ゆうゆう窓口」(事業会社)に行き貯金のことを聞くと「ここは事業会社だからわからない。受付は局会社です」とオレンジ色の窓口(局会社)を指さす。しかしそこでも「それはゆうちょ銀でないとわかりません」と今度は緑色の窓口に回される。杖をつく年寄りなどは「もううんざり」と話す。
 そのうえ手続きに時間がかかる。貯金通帳の余白がなくなるとゆうちょ銀の通帳に切り換えるが「あなたは○年に○○に住んでいましたか」「○年に転勤しましたか」など、以前はなかったような質問を受け、すべて答えないと手続きは終わらない。局員の1人は「郵貯が銀行と同じ扱いになり政府の全額保障がなくなった。もし倒産すると1000万円までしか保障されない。そのときのために分散した顧客データを整備している。生年月日と姓名が同じ人もいるからいろんな質問が必要になる」と話す。しかし「このデータが必要になるのはゆうちょ銀が破産したとき。もう破産時の準備までさせられていると思うとばからしくなる」と語った。
 手作業の窓口処理をへらすための「ATM(現金自動預払機)による電信振替が1年間だけ無料」というサービスにも疑問は大きい。簡易局の局員は「簡易局は端末機を借りるだけだからATMはないし手数料がかかる。だから地域の人は“ATMがあるところに行こう”となる。簡易局からの顧客離れを促進している」と話す。一方、特定局には「ATMはどれか」と年寄りが訪れるが、コンピューターの扱いがわからず、かわりに局員が処理する。局長の1人は「今後どうなるのだろうか。コスト削減ばかりいうが、簡易局もなくなり、職員も削られてATMだけになれば、地域の年寄りは年金を受けとることもできなくなる」と怒りを露わにした。
 地域との関係も変化している。窓口局員の1人は「これまで郵便局は地域の人が持ってくるその土地特有の中元見本や行事を知らせるチラシは、当然無料で置いてきた。でもそれまで手数料を取る。ほんとうにせちがらくなった」と話す。別の局員も「過疎地からは役所も銀行も農協も漁協もなくなり、今度は郵便局までつぶす気だ。市町村合併からその方向だったことがよくわかる。このまえ“この局も閉鎖かね”と年寄りに聞かれたが、“なくさせないようにがんばります”としかいえなかった。手遅れになるまえになんとかしないといけない」と強調した。
 郵便局の内部も変わった。大きな局では1つの建物に4つの別会社が入る状態。そのため別会社に行くときにはドアや壁が設置され、それぞれセキュリティー(安全防護)装置まである。建物内のイス1つにいたるまでどこの会社の備品か線引きされた。地域の特定局でも「すべて損益で考えるようになり、人件費がいくら、1日の電気代、電話代などのコストはいくらかかったと毎日報告するようになった」「民営化のためにシステムやパソコンなども全部変わった」と話されている。

 郵便ポスト存続も危機 配達現場で問題に
 こうした変化がもたらす市民への影響について配達現場は「いいことはなにもない」と強調する。配達員に聞くと「収入源は切手や葉書、ゆうパックなどの収益だけ。それで以前はなかった手数料を局会社に払わないといけない。今は葉書も封筒も全国一律の値段だが、いつ距離に応じた値段に変わるかわからない」と警鐘を鳴らす。別の配達員も「これまで免除されてきた税金がすべてかかってくる。最近は郵便配達車を営業車に変え、バイクにも税金をかける処理をしたらしいが、国がわざとつぶそうとしているとしか思えない。ばかばかしいのは郵便ポストにも固定資産税がかかること。1本で年間6000円かかるそうだ。この調子では郵便ポストの存続すら危ない」といった。
 事業会社では昨年6月から集配業務の廃止が進行中。これまで、集配業務をおこなってきた4696局のうち1088局を集荷・選別・配達をおこなう「統括センター」とし、2560局を集荷・配達だけの「配達センター」に変える。残る1048局は今年3月までに集配業務を廃止し窓口だけにする。集配業務は隣局などに振り分けられ配達範囲は拡大している。地域を熟知した末端の配達員が切られるため、郵便物が届かないことなどトラブルもある。計画は「約1000人の人べらしと約100億円の人件費コストを浮かせる」というが、地域住民にとっては大迷惑となっている。さらに昨年10月から「年間30億円のコスト削減」を掲げ、全国に約19万本ある郵便ポストのうち4万本を対象に郵便物回収の回数をへらした。公益を破壊する営利優先の「コスト削減」への怒りは大きい。

 すでに417局が一時閉鎖 地域密着の簡易局
 地域で心配されている僻地の郵便局閉鎖も、将来の話ではなくすでに簡易局閉鎖が続出している。簡易局は自宅などに端末機などを借り受けて営み、地域の世話役が担当している場合が多く、地域を結ぶ情報交換の場でもある。
 しかし郵政民営化開始の1日、16道県で簡易局がいっせいに68局閉鎖。うちわけは、長野県=19局、北海道=16局、鹿児島県=6局、三重県=5局、愛知、福岡、岐阜県で各3局など。新たなコンピューターシステムに対応できないと断った年配局長が多い。「簡易局の収入は委託手数料と販売実績に応じた手数料だが十分な人件費は出ない」という局長の1人は、「防犯対策上2人以上が義務づけられたし、一家を養っていける状態ではない」と話す。現在4299ある簡易局のうち「一時閉鎖」は417局に上っている。
 全国に1万9000ある特定局でも昨年以来、締付けが強まっている。「世襲制が残っている局長の既得権益を排除する」と局長定年を65歳から60歳に引き下げたり、「賃借料負担を削る」と局長が私有する局舎(これまでは公社が賃借料を負担)の買い上げを始めた。局会社が特定局の実権を握り、地域への情実にとらわれずにコスト削減を実施するためである。しかし今年3月時点で買い上げ対象とした2400局のうち4割の局長が拒絶。すると「不要スペースを局長に返還する」といい賃借料1〜5割削減の交渉に入ると通知した。事実上の兵糧攻めによって特定局買い上げを強行したが、現在も57局が頑強に買い上げを拒絶している。これまで公益のために「儲けてはいけない」「市民に還元するのだ」と全国一律の安価なサービス提供に努力し、それを喜びにしてきた郵便局員にとって「今度は儲け優先でいく」「そんな儲けにならないことはやめろ」といわれても、黙って引き下がれる問題ではない。
 局員の1人は「儲からない駅は自動券売機だけ置いて無人駅にされた」と国鉄民営化で大惨事を引き起こしたJRの顛末を重ねる。そして「コスト削減というが地方切り捨てにしかならない。業務分割の非効率さを見てもわざとやりにくくさせているとしか思えない」と怒りをぶつけた。

 世界的には失敗が続出 国営に戻す国も
 「郵政民営化」は世界的に失敗が常識となっている。87年に民営化したニュージーランドは郵貯をオーストラリアの銀行が買収し、90年代初めには同国内99%の銀行が外資に乗っとられた。その結果、露骨な地域切り捨てで支店閉鎖が続出。銀行もATMもない町が急増し、99年の総選挙で「郵貯復活」を掲げた野党に与党が惨敗。02年に郵貯のキウイ銀行が復活している。郵便部門のNZポストも数100単位で不採算局を閉鎖したが、人口約900人の町・ノーマンビーでは郵便局閉鎖に抗議して住民が抗議デモを展開した。
 97年に民営化したアルゼンチンでも、6000あった郵便局のうち2000〇局が閉鎖され郵便料金は4倍化。国内の猛反発で2003年に国営に戻された。イギリスでは民営化にむけ02年に全国9000郵便局のうち3000局閉鎖を打ち出したが批判世論が噴出。過疎地の局は政府補助で存続させると手直しした。
 1990年に民営化したドイツでは2万9000あった郵便局が2003年末に1万3000に激減。住民は郵便物を出すために遠く離れた郵便局まで出かけなければならず郵便料金は大幅値上げ。それが社会問題になり政府は「1万2000局以下にしてはならない」とする政令をつくった。フランスでも国営郵便「ラ・ポスト」が実験的に不採算局の縮小に着手したが全国の5000自治体の首長が反対を表明した。
 こうしたなか日本に執拗に「郵政民営化」を要求してきたアメリカは郵便事業国営を維持している。それをみても「競争でサービスがよくなる」という宣伝が大ペテンでしかないことを浮き彫りにしている。
 郵政民営化はアメリカが出す年次改革要望書にもとづき、小泉内閣が「構造改革の本丸」「官から民へ」といって強行してきた。そのもとで広がる実感は郵便局をつぶし地域をつぶし、アメリカに日本が乗っ取られるという実感である。そして国民の資産である郵貯・簡保資金約345兆円をかかえる金融2社を早期に株式上場させ、その株を買い占めて支配権を握り、日本の企業買収・乗っ取りを図る米国をはじめとする、外資への憤りである。郵政民営化を撤回させるうえで、米国の占領支配を立ちきり日本の独立を勝ち取る課題と結びつけてたたかうことがきわめて重要になっている。

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