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被爆・戦争体験継承へ熱気
『原爆展物語』長崎公演実行委
             長崎の様相一変させる運動に   2010年3月1日付

 長崎市中央公民館で2月28日、劇団はぐるま座による『峠三吉・原爆展物語』(2幕6場)長崎公演に向けた第1回実行委員会が開かれた。原爆展を成功させる長崎の会(永田良幸会長)の被爆者、戦争体験者、主婦などが参加し、公演の成功に向けてこれまでの取り組みの経験や意見を交換。この公演を通じて、原爆と戦争の真実を伝える運動をさらに広げ、被爆地長崎の本当の声を全国へ発信していく契機とすることが確認され、戦争体験者をはじめ若い世代にも幅広く観劇を呼びかけていく意気ごみが語り合われた。
 冒頭、原爆展を成功させる長崎の会の吉山昭子副会長があいさつ。開催に先立って、これまで同会の副会長として奮斗してきた山下諫男氏(享年80歳)が2月25日、白血病の一種である悪性リンパ腫で急逝したことを伝え、故人を偲んで全員で黙祷することが呼びかけられた。
 同会事務局からは、山下氏が毎年の西洋館での長崎原爆展の開催に尽力するとともに、地元小学校にも働きかけて原爆展を実現させ、2年にわたって長崎の被爆者代表として8月6日の広島に赴き、長崎の心を全国に伝える役目を果たしてきた功績を振り返り、病気が発覚して斗病生活に入った昨年秋からは「原爆は80歳の体にも襲いかかってきた。これからは1日でも長生きすることが原爆とのたたかいだ」「早く復帰して、被爆体験を語り継ぐ仕事をやらなければいけない」と語りながら、体験記を書き残すために病床にありながらもペンと紙を持って執筆に励んでいたことなどを紹介。「山下氏の逝去は大きな痛手だが、私利私欲なく、二度と原爆を使わせないため被爆地長崎の面目を一新させるためにがんばられた故人の遺志を受け継ぎ、その分まで私たちががんばりたい」と決意が出された。生前の姿を思い浮かべ、黙祷がおこなわれた。
 つづいて、劇団はぐるま座の加笠美鈴氏が厳粛な使命を胸に公演を成功させる決意とともに、取り組みの経過と概要について報告した。
 加笠氏は、長崎市民のなかでは2005年から長崎西洋館でおこなわれてきた「原爆と戦争展」の継続が喜ばれ、この10年間で全国を席巻してきた峠三吉の原爆展運動を劇にして公演することが強い歓迎を受けていると報告。
 とくに、あの悲惨な戦争、原爆投下から六五年たって、農漁業をはじめとする産業、政治、経済、文化、教育にいたるまでズタズタにされてきた戦後社会を見つめ直し、戦争体験者が真実を語り、若い世代がそれを受け継ぎ、魂を込めて日本を立て直す大運動にしていくという呼びかけが歓迎され、原爆展賛同者をはじめ、自治会長、商店主、美容師、飲食店主、少林寺拳法指導者、スポーツ少年団指導者、母親、中学生など現在までに四五人が実行委員に連名していることを明らかにした。
 また、市民の熱い期待と協力を受けて、これまでにポスター775枚が町中に掲示され、チラシ6000枚が回覧や各戸配布などで配られるなど宣伝が広がっていること、前売り券は、被爆者、戦争体験者などの市民をはじめ、理美容室、和菓子屋、花・酒・魚・八百屋などの各商店、歴史文化協会、自治会、詩吟団体など58の個人・団体に840枚が預かられていると紹介した。

 居住区で積極的な取組

 論議では、それぞれの居住区での取り組みの経験や、成功に向けた意気ごみなど積極的に意見が語られた。
 戦争体験者の男性は、「南方戦線に3年6カ月いってきたが、明日をも知れぬわが命で結局生き延びてきた以上は、文無しでも戦争体験を話して戦争は二度としないように子どものころから戦争反対の精神を育てないといけない。軍閥のバカどもがシナ事変からマレー半島まで巻き込んで大きな戦争を引き起こし、何百万人もの犠牲者を出した。内地では原爆、空襲によって人が虫ケラのように殺された。その多大な犠牲の上に今の平和があるはずだが、今はそれを忘れている。命を大事にし、社会のために貢献する人間を育てるため、原爆展を末永く続けていくようにがんばりたい」と思いをのべた。
 16歳で被爆した婦人は、すでに自治会で20枚を完売したことを報告し、「戦争の苦労を知らない若い人は、目前の生活に一生懸命だが、困ったときには助け合うのではなく、戦後教育のなかで埋め込まれた、利己主義で自分さえよければいいという考えだから世の中はよくならない。戦中、戦後の苦労話を通じて、戦争反対と平和を守ることの大切さを伝えなければいけない。この公演は、地域の小中高校にも呼びかけ、4、50代の戦後世代にもどしどし見せて、体験も語っていきたい」と力強くのべた。
 父親をビルマ戦で亡くした戦争遺児の婦人は、「終戦時は五歳だったが、戦後も苦労の連続だった。学校でも父親がいないことでいじめられ、先生からも貧乏人扱いされたことは忘れられない。学校にいけずに奉公に出たが、戦後が悲劇のはじまりだったという人が日本中にたくさんいたと思う。こんなことになるとわかっていながら、なぜこんな戦争をやったのか、天皇はなぜ戦争を早く終わらせなかったのか、なぜいま先の見えない時代になっているのかということをつなげて考えるようになった」とのべた。
 原爆で母親を失った婦人被爆者は、近所の市場でポスターが貼られている休憩所に一日中座って、訪れる客に被爆体験とともに『原爆展物語』の観劇を呼びかけた経験を語り、「このままでは絶対にまた戦争が起こる、絶対に戦争反対しなければいけないと話すが、若い人はなかなか振り向かない。どうやって見てもらうか工夫が必要だ」と提起。
 また、「原爆によって母親が左のてのひらだけ残して全身ヤケドで亡くなり、兄も中学校の教師をやめて家業の商売に身を投じたが、その後は他人に財産をみんな奪われ、生活が激変した。福岡にいる人が、原爆にあっていないのに原爆手帳をもらったり、他人の受け売りでデタラメな被爆体験を語る人がいることに腹を立てていた。最近になって兄と2晩かけて2人で涙を流しながら原爆の話をした。私も原爆によってこういう目にあった以上は、この歳になって自分が実際に経験した原爆の苦しみを語らなければいけないと思いはじめた。実際に受けていない今の子どもたちにどこまで受け継いでもらえるか不安もあるが、語りたいという気持ちは強い。精一杯努力をしていきたい」とのべた。
 別の被爆婦人は、「学校の先生に見てもらいたい。大人がまず知らなければ子どもには受け継がれない。個個人で語るだけではなく、この劇のように伝える手段がなければ、原爆も戦争もただの空想のお話になってしまう。今の子は親も戦後世代で知らないし、親は経験を聞いてないから知らない。まずは人を教育する先生方にぜひ勧めていきたい」とのべた。
 また、「原爆展にきた他県の先生に被爆資料や浦上川の写真を渡すと感動して、学校で教えると約束した。年賀状をやりとりしている。ねばり強く伝えることが大切だ」「この公演を通じて、戦争を語り継ぐ基礎をつくらないといけない。広島では学校が原爆を伝えることに力をいれている。長崎ものほほんとしていてはいけない」「体験者にはもう時間がない。残された時間でどれだけ若い人に伝えていけるか正念場だ」と、教育にかける切実な思いが語り合われ、それぞれの居住区の学校にも観劇を働きかけていく意気ごみが語られた。

 日本を立て直す契機に

 また、論議の中では、長崎で「原爆」というと、カトリックの宗教色が前面に出たり、被爆者団体も手帳を取得するためだけの運動に切り縮められ、「日共」系の病院にいけば簡単に手帳が手にはいるというなかで、「“祈りの長崎”といわれて、原爆投下者ではなく、殺された市民が反省しなければいけないという陰鬱な空気が作られてきた」「市民の中では原爆を個人的な利益のために利用するものに対して強い嫌悪感がある」ことが語られ、「この運動は党派を超えて、原爆と戦争の真実を語り継ぎ、長崎の面目を一新させ、日本を変えていく純粋な運動だ。このデタラメになった日本社会を変えていくためには、あれだけの国民が殺された戦争と原爆の経験に立ち返って、世代間の壁を取り払い、日本を立て直す大論議を起こしていかないといけない」「長崎には欧米列強の侵略や原爆投下による植民地化に対抗して歴史と文化を守ってきた伝統があるし、それがくんち文化として受け継がれている。広島と長崎市民が本当のことを語れば日本が変わる。本当の長崎の姿を伝えるためにも、この公演を多くの人に伝えていこう」と語りあわれた。
 劇団はぐるま座からは、公演に向けて市内各地で街頭原爆展をやりながら、被爆体験を語り、観劇を呼びかけていく取り組みをしていくこと、実行委員を100人を目標に募り、市内全域に取り組みの輪を広げていくことが提起され、被爆者たちも「ぜひ体験を語りに駆けつけたい」「一人で語るだけではなく、被爆者の思いを伝えるためにはこの劇を見せることが一番いい。チケットを思い切り売って、公会堂を満席にしよう」と活発に意気ごみが語られた。
 公演活動を通じて、切り離されてきた歴史を受け継ぎ、被爆地長崎の空気を一変させる一大運動にしていくことを確認し、参加者はそれぞれ宣伝物やチケットなどを持ち帰った。

 長崎公演要項

 劇団はぐるま座『峠三吉・原爆展物語』長崎公演の要項は以下のとおり。
 日時 4月11日(日)昼の部午後1時30分、夜の部午後6時30分開演
 場所 長崎市公会堂
 主催 同実行委員会
 後援 原爆展を成功させる長崎の会、原爆展を成功させる広島の会、下関原爆被害者の会
 前売り券 一般2500円、大学生1500円、中高生1000円、小学生500円(当日券はそれ        ぞれ五500円増し)
 連絡先 劇団はぐるま座長崎事務所(095)823―4142 

 

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