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被爆者招く講義広がる
広島県内の大学
              使命感高める大学教員    2013年1月30日付

 広島県内の大学で、原爆展を成功させる広島の会(重力敬三会長)の被爆者を講師として招いた授業があいついでおこなわれている。受講した学生たちが原爆展運動にスタッフとして参加していく行動意欲を高める契機になり、大学教員のなかでも大学の使命感を高め、体験者から直接被爆の真実を学ぶことを通じて、現実社会に対する健全な批判精神や行動意欲を養う場として積極的にとりくまれており、被爆者と学生の世代を結びつける新しい流れをつくり出している。授業に被爆者を招いている教員の思いを聞いた。
 広島市内の大学の男性教授は、「広島で長年教員をやってきたが、広島の大学で被爆体験を学ぶという当然のことが今まで少なすぎたと感じる。今後の日本社会に対する不安は学生も含めてみんなが感じているし、普段は私語や立ち歩く学生たちも被爆者の話は微動だにせず聞いていた。総選挙後、安倍首相の“期待感”も株式市場やマスコミがつくり出したものであって国民生活の実態を伴っていない。アベノミクスという言葉が飛び交っているが、深刻な雇用問題、農業分野、学問分野など一つ一つの日本の現状に真正面から向き合ってとりくんでいくという姿勢が見られず、言葉遊びの裏側で旧態依然の利権政治が復活している。墓場から出てきた亡霊にしか見えない」と話した。
 そして、「3・11以後、災害対応にしても、原発行政にしても、マスコミや専門分野に関わる学識者の唱えてきた定説が現実に通用せず、私たち学者も含めて一人一人が自分たちの目で社会を見て感じたことを発言し、行動していくことが迫られている。学生たちにも視野を広げて真実を学ぶことにもっと貪欲になってほしいし、そのことに躊躇していたらいけない」と意欲を込めて語った。

 真実を発言しなければ 東北大震災機に

 数年連続で被爆者を講義に招いている男性教授は、「一昔前までは、被爆者を招いて講義するというのは、“変わりもの”のやることだと見られていたかも知れないが、今は社会問題を考えるうえでは抜き差しならない問題になっている。盛んに騒がれる環境や健康問題にしても、政府が強調する“自己責任”の範疇以上に社会に規定されている要素が大きい。その最大の例が戦争、原爆だと思う。学生たちのなかでも、尖閣諸島問題が起きてから戦争をより身近に実感し始め、“なにか行動したい”という意欲を高めている。私たちが講義で問題提起をしても、“この現状をどうしたら変えていけるのか。展望を示してほしい”と逆にいわれる。被爆者という立場で行動されている人たちの意見を学ぶこと、そのなかに少なからず答えがあると思っている」と話した。
 また、「かつての戦争では、真っ先に戦争に送り出す人間づくりのために教育が使われたし、安倍自民党が掲げる憲法改正や徴兵制度がオープン化していけば、私たちもその矢面に立たされる時代がくる。その切迫感も含めて学生たちと共有し、社会全体の戦争の流れに対して従順にレールの上を走る人間ではなく、問題意識をもってどんどん発言し、行動していく人間にならなければいけないと教えている。現に原発事故以来、それまでの常識は通用しなくなり、戦後の社会構造を根本的に見直すことがあたりまえの世論になってきた。そのなかで広島ならではの教育の場をこれからも増やしていきたい」とのべ、広島の会と連携して学内での原爆展開催に意欲を強めている。
 昨年から授業に被爆者を招いている女性講師は、平和公園での原爆展キャラバンに教え子の学生が参加していることをうれしそうに語り、「問題意識持った学生たちがすぐに行動できる場があるのは恵まれている。それを自分だけの知識にとどめずに、より多くの人を組織していけるようなアクションをこれから起こしてほしい」と語る。
 「私は被爆二世だが、原爆の問題というと広島では原水禁、原水協に分裂し、一般の市民が参加しても疎外感を持つような運動傾向があってこれまで敬遠してきた。でも、この原爆展や被爆者の話は、その先入観を取り払ってくれるし、真実そのものを学ぶうえですごく貴重な活動だと思う。今の低投票率の選挙をはじめ、原発、TPP、軍事などすべての問題を見るうえで、日本がアメリカから独立していないという現状を変えなければなにも解決しないし、広島にいるからこそその原点である原爆投下について学ぶことができる。学生たちも、自分の将来や利害のための勉強だけでなく、人間的な成長を求めたり、社会のために自分のできることを模索する学生が増えている。上澄みの知識ではなく、自分の人生を変えるくらいの学習をしてほしい」と話した。来期も再び授業に被爆者を招く予定にしている。
 各大学の教授たちのなかでは、今後も学内での原爆と戦争展の開催や授業での被爆講話とともに、学生と被爆者との懇談会を設けるなどのとりくみに意欲を高めており、広島の会との連携を求める動きも強まっている。

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