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被爆地から原爆展広げる
広島県内大学教員
              真実伝える力になりたい     2013年2月13日付

 広島県内の大学では、原爆展を成功させる広島の会(重力敬三会長)による「原爆と戦争展」や被爆者を講師に招いて体験を学ぶ授業が広がりを見せている。東日本大震災や原発事故などの未曾有の災害に見まわれ、アジア諸国間でかつてない緊張感が高まるなど戦争局面が現実に浮上するなかで、戦後社会を根本的に見直す世論に先行して知識人の自発的な行動意欲が高まっており、大学人からは戦後社会の原点として第二次大戦と原爆投下の真実を伝える運動への強い共感が語られている。本紙は、「原爆と大戦の真実」パネル冊子をもって広島県内の大学教員から意見を聞いた。
 
 米国の行為正当化許さぬ

 国際政治を教える教員は、最近の尖閣列島や北朝鮮との緊張激化に触れ、「“のどもと過ぎれば…”という言葉通り、愛国心と中国への軍事圧力が結びつけられ、平和を唱えれば中国派というレッテルを貼る傾向がメディアにも強く、あたかも世論をバックにしているという格好で軍事力に訴える傾向が強まっていることに危うさを感じている。戦後68年たっても、アジア諸国との関係で領土問題でもめたり、経済や歴史教育問題などで摩擦が起こるのも、かつての戦争で何百万人という死者を出したからにほかならない。戦争を始めるのは簡単だが、その禍根を消すことはいまだにできない。同じ轍を踏まないためにも2度と戦争を起こさない努力を広島からやっていかないといけない」とのべ、原爆と戦争展のパネル冊子を買い求めた。
 経済学部の教員は、「ゼミ生7人中2人しか就職が決まっていない」とのべ、「学生自身も深刻な就職難に苦しんでいる。求人枠も少ないが、製造業に就職してもすぐにリストラされるのではないかという心配も強く、より安定志向を求める傾向にあるので銀行や公務員志望が増えている。安定した人はいいが、底辺はどんどん落ちていく経済構造に問題がある。アベノミクスも先行き不透明だ。国民が政治に冷めていくのではなく、行動していく国民性にならなければいけないと思う」と話した。
 法学部の教員は、学内でおこなわれた「原爆と戦争展」にゼミ生をつれて参観したことを明かし、「私自身も他県から原爆について学びたいという意欲をもってこの大学に来たが、今の学生たちにもその意欲が強い。被爆者の話を生で聞けるというのは広島ならではのことだし、貴重な場だと思っているので続けていきたい」と語り、パネル冊子を買い求めた。
 また、「提携しているフランスの大学でおこなわれた学会シンポジウムに参加した際、現地の人たちが原爆写真展を開いていたのを見て世界的な関心の高さを感じた。国際化のなかで原爆について広島の学生が知らないというわけにはいかないし、法律を学ぶ基本は、実際にあった歴史的な体験を学ぶことにあると思う」と話し、協力姿勢をあらわした。
 教育学部の教員は、同大学が広島市内にあったころは学内に原爆慰霊碑があり、被爆校として慰霊祭もおこなっていたが、80年代に東広島市に移転してからは原爆に対しての意識が薄れてきた実情を語り、「大学で原爆展を継続していることはいいことだし、続けてほしい。原爆の運動に関しては“原水禁”“原水協”に分裂して、市民の運動を潰してしまった。あんなものは平和運動でもなんでもない。市民の声を伝え続けてほしい」と期待を寄せた。
 別の教員も「原爆を落としたアメリカがいまだに犯罪者として裁かれないことが根本的におかしいし、若い人たちにはかつて日本がアメリカにされたことを知らない人も多くなっている。この大学でも以前は被爆体験を授業で教えていたが、最近は教育カリキュラムを遵守することを求められるので難しくなっている。日本の戦争責任といってアメリカの行為が正当化されることはあってはならないこと。これからも協力していきたい。戦後の占領期について関心を持っている」と共感をのべ冊子を購入した。
 「平和教育に関心がある」という教員は「戦争体験者が訴えることが身にしみて分かるほど、きな臭い世の中になっている。アメリカを中心とした侵略戦争が、アジア地域で起ころうとしている。私はあまり反米を訴えてきた方ではないが、国際交流や研究の関係で海外出張もたびたびあるなかで、各国で紛争やテロも勃発しているし世界的にも反米思想が高まっていると感じる。中東やフィリピンに行くときは、万が一のことを家族にいい聞かせて行っている。平和を願うだけでは変わらないし、やはり行動を起こしていくことは大事だと思う。マスコミも権力にとりつかれてもうけさえすればいいという態度で、真実を取材して国民に知らせるという役割を投げ捨てている」と憤りを語った。
 中東研究専門の教員は「この大学でも最近、平和問題を必須科目に取り入れて講義をやるようになっている。被爆体験、戦争体験は、そのなかでももっとも重視しなければいけないことだ。平和科学研究に役立てたい」とのべてパネル冊子を買い求め、「アルジェリア問題でも、マスコミはすぐにイスラム過激派と決めつけて報じるが実際はそうではない。フランスによる長期にわたるマリへの侵攻が背景にあり、国内紛争もそのなかで起きている。フランスが介入すればするほど反植民地の動きが強まってテロ行為となってあらわれている。日本企業の被害も、その国際的な緊張感がわからず単なる同情論で報じても仕方がない」とマスコミの報道姿勢に違和感を語った。

 必要な研究できぬ状態 学問のあり方論議に

 理学系の教員は、以前、製薬会社と提携した研究機関に勤めていたが企業の都合で予算を打ち切られて研究員が全員リストラされた経験をのべ、「法人化された今は企業の要求にそわなければ研究費がもらえない状況になって、本当に必要な研究ができなくなっている」と話した。本紙のアルジェリア問題の紙面などを見て「いかなる権威にも屈せずに真実を伝えることは今からもっとも必要なこと。私も力になりたい」と冊子を買い求めた。
 また、「国立大学は全国に約90校あるが、国からの予算の10分の1を東京大学が取って、残りを地方大学で分けあう仕組みになっている。必然的に研究費が不足してくるが、それを自助努力で外部資金をとってくるようにいわれるので、企業と提携できる理工学系の学部を持たない大学は苦しくなるのは当然だ。本学も10年前から職員を非正規雇用に切り替えて人件費をカットするようになったことが大学の質低下につながっている」など法人化の問題点を指摘する声もあいついで語られた。
 今後学内での原爆展が予定されている大学では「学生を連れて行きたい」「ぜひ見に行きたい」という意欲的な声が多く、今後の連携を求める教員も見られるなど強い共感が寄せられた。

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