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疲弊に輪かけた中尾市政4年
来年3月に迫る下関市長選
                 産業政策なく若者流出      2012年10月24日付

 来年3月10日投開票の下関市長選挙が迫り、市民のなかで関心が高まっている。4年前の選挙で最大の公約だった「新庁舎は建設しない」は、任期最終年の今年は工事発注までたどりつき、23日におこなわれた工事の安全祈願祭では、中尾市長みずから「えぇいっ! えぇいっ!」と大声を張り上げて鍬入れするところまできた。公約破棄が連続した4年間を経て、下関市民のなかでは改めて安倍・林代理市政へのうっ積した思いが語られ、とくに有権者を欺いた中尾市長の悪質さには、民主党政府に対するそれと同じように強烈な批判世論が渦巻いている。市長選情勢と合わせて、この4年間、すなわちリーマンショックからの尋常でない衰退の過程で登場した中尾市政とはなんだったのかを見てみた。
 県下で最悪といわれるほど下関の経済は冷え込み、MCSをはじめとした大企業の撤退や首切り、老舗の倒産や商店・飲食店の廃業が後を絶たない。唐戸・赤間地域では9月末に10店舗近い商店や飲食店が店を閉めていったが、年内にどうなるかわからない店舗が市内にはたくさんある。年末年始にかけて一段と厳しさが増すだろうと各所で語られ、どの企業や商店でも「よそはどうやって資金繰りを回しているのだろうか…」と話題にされている状態だ。
 工業関係では三井金属の子会社MCSが3000人の労働者を解雇し、神戸製鋼も早くから海外移転モード。三菱重工は来年度の仕事がほとんどないため、造船部門の技術者などはインドへの配転が告げられ工場の改修工事もストップ。彦島の下請は真っ先に切り捨てられてきた。
 この4年間、職安の長蛇の列は途切れることなく続き、周囲では交通渋滞が起きるほど次から次へと人人がやってくる。職がなく幻滅した現役世代の人口流出が加速していることも、関係機関の職員たちは危惧してきた。昔から低所得者が多い街で、低所得どころか所得ゼロになってしまった話や、住宅ローンを抱えたまま解雇されて家も失ったとかの悲劇が各所で話題にされている。彦島の新興住宅地・飛翔台の空洞化が端的に示している。困った人人が最後に駆け込むのが生活保護課で、生活保護費は年間80億円近くにもなる。
 下関で起きている衰退コースまっしぐらの異常な実態は、人口20万人以上の全国の都市(111市)と比較しても、群を抜いていることがわかる。人口減少率はワースト5位、高齢化率はワースト2位の28・5%、納税者一人当りの平均所得の低さはワースト8位の279万円。人口1万人当りの就業者数はワースト1位の4446人で、いかに現役世代が少なくなっているかを示している。直近の20年間、つまり江島市政14年と中尾市政4年の期間に約1万5000人分の就業の場が失われ、3万人近い定住人口の減少に影響を与えたとされている。
 産業が育たず、若者が食っていけないから流出していく。そして、年寄りが残される。この悪循環をなんとか断ち切れないものか、という要求は各業界や階層のなかでも強いものがある。しかし現実には、地に足をつけた有効な産業政策がまったくといっていいほど機能しておらず、緊急事態に対応した行政対応もなし。大不況の最中にリーマンショック以前から計画していた観光・箱物行政にうつつを抜かしている。その結果、全国的にも突出した荒廃や衰退が顕在化している。

 市民から搾り箱物散財 市財政は窮乏化

 下関は全国先端の新自由主義政治を実行してきた江島市政14年のもとで、大不況以前から散散に疲弊し、衰退してきた。この14年は、安倍晋三代議士や林芳正参議院議員が中央政界に飛び出していった時期とも重なる。江島市政のもとで箱物狂いが市外発注を繰り返し、地元企業には過酷なダンピング競争を強いるなど、「産業政策」を語る以前のデタラメが横行し、つぶれなくても良いはずの企業が倒産したり、満珠荘閉館や全国最大規模の学校統廃合計画に見られるように、教育・福祉などは「自己責任」といってサービスを切り捨てるなど、小泉改革の下関版が真顔でやられた。一方では安倍派絡みで引っ張ってきた企業が巨額見積もりの公共工事を受注し、設計はODA利権のパシフィックコンサルタンツや代議士関連企業が独占。その度に市長周辺のブローカーにまつわる怪しいピンハネ疑惑が持ち上がるなど腐敗も相当のものだった。
 前回市長選では、長年来の市民の怒りが各方面で爆発し、満珠荘閉館の撤回を求める10万人署名が市民運動全体を激励しながら、市庁舎建て替え撤回を求めて市民総決起大会が開かれたり、あるいは学校統廃合計画に対して全市で父母の行動がおこり、江島打倒の機運が下から盛り上がった。そのなかで江島前市長は告示2週間前になって出馬断念に追い込まれ、反江島の世論に便乗した中尾市長が「市民基点」「新庁舎は建てない」「こんなご時世に本社建て替えをやる経営者がどこにいますか!」「満珠荘は老人休養ホームとして再開します!」「あるかぽーとは芝生公園にする!」等等と叫び、自民党・公明党が総力戦態勢をとった友田陣営を破って当選することとなった。
 多くの市民は、さもしい自民党林派としてあらわれた中尾氏のうさん臭さを認識しつつ、安倍代理市政を断ち切ることを第一義にして投票した。とくにマニフェストで約束し、選挙公報で全戸に配布された公約を取り得として、それを実行することを要求し投票した。
 ところが、当選するとリーマンショック以前からある江島市政が掲げてきた計画を引き継ぎ、市民と約束した公約は次次と投げ捨てていった。民主党が大嘘の選挙公約を並べて与党ポストを奪取し、破産に至っているが、下関で先行して公約破棄選挙をやったのが中尾友昭及び、陣営に巣くっていた汚れ選対や、勝ち馬に乗り換えた金融機関だった。そして安倍派とも「良好な関係」を築いて、箱物三昧を共に実行してきた。市民のたたかいを利用し、便乗することによって市政利権を手に入れた林派の勘違いがはじまった。
 箱物が改まらないのも、不況で貸出先がない銀行が食い物にしているからにほかならない。公約破棄の代名詞でもある新庁舎は前述のように本体工事がはじまり、「大不況の最中に本社建て替えをやるような経営者」は本人だった。震災からなんの教訓を得ることもなく、消防庁舎を海峡沿いの埋立地に建設するという無謀な計画もごり押し。新博物館、総合支所建て替えなど、残り200億円あった合併特例債の大盤振舞がはじまった。市財政から55億円を突っ込む駅前開発も、JR西日本と山口銀行の“潤いプロジェクト”ではないかと思うほど巨額の費用を投じて進み始めた。駅ビルの予定地周辺と同じく、新庁舎が建つ唐戸も、周囲はゴーストタウン化が進行し、そのなかに巨額投資の産物がそびえ立つことになる。
 そうした散財がやられる一方で市財政は窮乏化し、来年度だけでも40億円超が足りない、再来年度は50億円足りないといって、財政部が「財政健全化プロジェクト」を実行しようとしている。取り立てを強化することや、地方税法に定められていない新たな法定外税の導入をうたい、さらに市民から巻き上げようとしている。蛇口を全開にして「水が足りない!」「水道代がかさんで大変!」と騒いでいるのと同じで、それなら箱物投資を控えるとはならない。人のカネと思って散財することへのちゅうちょがないのも特徴だ。
 中尾市長になって市税滞納者への取り立て強化や差押えが容赦なくやられ、年寄りの年金を差し押さえたり、生命保険を差し押さえたり、企業活動の生命線である重機やトラックを押さえたり、会社の給料を先取りして差し押さえたり、横暴な取り立てがやられてきた。水道料値上げや各種料金の値上げもやられた。市役所に怒鳴り込んでいく市民の数も、江島市政時期よりもはるかに増えている。「苦労して納めた税金を端から使い果たされたのではたまらない」という思いと同時に、産業政策に対して無能な者が、箱物ばかりに明け暮れていることへの怒りが高まっている。市長ポストを得た者や周囲が勘違いして役所を私物化し、公共性や市民生活の心配は二の次にして開き直っているから、なおさら強いものになっている。

 二選を目指す中尾市長 露骨な選挙対策

 選挙情勢としては、中尾市長が二選を目指して意欲を燃やしているのは周知の事実となっている。当選後から熱心なのが人事を利用した選挙対策で、選対に入り浸っていた市退職幹部に論功行賞で重要ポストを与えたのも特徴だった。吉川副市長や来見田監査委員長をはじめ、生涯学習プラザのプラザ長や図書館長、文化振興財団理事長などのポストにも、冷や飯の恨みから反江島を唱えていた面面が返り咲き、中尾与党を満喫した。
 年配グループだけでなく、60代退職グループも同じで、年収1600万円の市立大学理事長には年配グループ直系の本間俊男・総務部長が天下り。中尾市長が気に入っていた大津修一氏(総合政策部)も独立行政法人化した中央病院の事務局長(年収900万円)に天下った。
 最近では、社会福祉事業団の理事長に濱本笙子・元出納室長が就任する出来事もあった。これまで市長が兼任してきた役職をわざわざ常任体制にしてポストを与えたことから「露骨な選挙対策だ」と話題になっている。濱本氏は江島市長時代から「票を持っている」ことを理由に幹部に登用され、退職後は社会福祉協議会の理事長を務めていたが、任期が切れたところでスライド。空いた社協理事長には引退した兼田一郎元市議が選挙対策で登用された。市議会落選・引退組のなかでは、彦島の桑原博元市議も市の緊急雇用制度で雇われて、中学校の図書室を占拠していることが話題になった。江島ブレーンからの転向組に部長職を与えたのもとり込みの一種だといわれている。
 市役所だけ見ても、きりがないほど税金を使った「票固め」がやられ、走り回っているのが吉川副市長。市役所退職時点でおよそ3000万円超もの退職金を手にし、文化振興財団の理事長ポストに天下り、70歳を過ぎて今度は年収1300万円の副市長になって、この4年間に対する退職金が1700万円。市民を裏切った中尾選挙で、もっともイイことをした代表格として有名になっている。
 現職の再選準備が進むなかで、安倍派が代議士の指名待ちをしている以外には、今のところ対抗馬はあらわれていない。

 市民運動の力が決定的 原因取除き立直しへ

 市民生活は困難になり、下関はさんざんに疲弊してしまった。これをどう立て直すのかが市民の最大関心になっている。少子高齢化が全国ダントツで進行したが、子どもが増えて活気がある町にどうするか。若い親たちの働く場を下関でどうつくるか。大企業があてにならないなら、農林水産業や製造業など、現金収入になる地場産業をどう守って振興していくのか。さらに大型店を規制して地元商業をどう守るか。箱物利権をやめて、市民の必要な事業に目を向けた地元業者への発注をどう増やすか。医療も介護も高負担を緩和し、老人が安心できるようにどうするか。旧豊浦郡の合併後の切り捨てに対して名ばかりの「地域分権」ではなく、どのようにして総合支所の機能強化なり、権限強化を実現するのか。課題は山積している。
 国が増税、TPP路線を突っ走り、アメリカと大企業の好き勝手をやり、地方切り捨てを実行するなかで、市政の側が地域を守る気がまるでなく、率先して市民生活の切り捨てをやるような姿勢を転換させることが待ったなしになっている。
 国政と同じように、下関でも市長も議員も自分の損得ばかりが関心で、市民の心配をするなど知ったことかという連中がはびこってきた。こうしたなかで、全国先端の衰退をもたらした原因を取り除き、公共性を取り戻すこと、市政に民主主義を回復して市民のために行政機能が働いていくようにすることが切実な要求になっている。
 市長選にさいして、中尾市政と市民との対立点を鮮明にして、市民の運動を一段と強くすることが求められている。市民のさまざまな要求を立候補者の個人的な善意に頼るだけでは決して実現できない。国、県の支配のもとで、さらに安倍・林代理、山口銀行代理の独特な政治支配の構造があるなかで、不断に市民世論と運動の力を発揮して、実行させるというのでなければならない。政策論議を旺盛に広げて候補を押し立てることも含めて、閉塞した状況を打開するのは、市民運動の力が決定的となっている。

 

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