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非人間的な扱いに反乱
「すき家」バイトの集団離職
                184店舗が閉店状態に      2014年6月4日付

 労働法制の規制緩和が2000年代に入って急速に進められ、今や就業人口のうち4割近くがパートやアルバイト、派遣や契約社員といった非正規雇用になり、まともな収入が得られないために、現役世代は子どもを産み育てることすら難しい社会になった。ところがこの状況に追い打ちをかけるようにして、安倍政府が外国人労働者の移入や残業代ゼロ、解雇自由化といった政策を打ち出し、貧乏人を大量生産する国作りに奔走している。TPPによって商品市場だけでなく労働市場も開放し、後進国並の低賃金労働を全産業分野に拡大する動きとなっている。このなかで、一方で労働者の反発も強烈に渦巻いており、奴隷化を強いるやり方に様様な形で反撃を試みる動きがあらわれている。
 
 低賃金労働拡大する安倍政府

 今年に入ってから、牛丼チェーン店「すき家」で労働者を人とも思わないような過酷な働かせ方に対して、アルバイト店員たちの反乱が起こっていることが話題になっている。「パワーアップ工事中」と貼り出されて閉店したままの店舗が各地にあらわれ、四月下旬に再びオープンする予定だったのが、いまだに閉まったままの状態となっている。アルバイト一人が辞めていくと現場が回らないほどギリギリの人員体制といわれていたなかで、そのアルバイトたちが全国一斉蜂起を起こして辞めていき、たちまち100以上もの店舗が麻痺することとなった。
 低賃金にもかかわらず「ワンオペ」といわれる深夜一人営業をさせられ、皿洗いから調理、レジや接客などをみなやらなければならないことが以前から問題にされていた。おかげで深夜に強盗が頻発し、「すき家強盗」は社会問題にもなった。
 アルバイトたちの堪忍袋の緒が切れた発端は、今年の3月中旬に登場した新メニュー「牛すき鍋定食」だったとされている。経営者にとっては利幅の大きい定食メニューだったが、アルバイトたちの仕事量は倍増し、しかも残業代未払いやワンオペに不満が募っていたのもあって、次次とやめていった。ツイッターやSNSを通じて若者たちは呼応し、集団離職という形で反乱を起こした。
 すき家を展開しているゼンショーは当初、人手不足による閉店を否定し、「パワーアップ工事中」という看板をかけて「4月23日リニューアルオープン」としていた。ところが募集をかければ集まると見ていたアルバイトが1カ月たってもそろわないのか、4月末になっても163店舗が閉鎖したまま、リニューアルオープンは「5月下旬から8月下旬」と大幅に延期された。
 その間もすき家の反乱はネットで話題にされ、ワンオペの実態や過酷な労働状態が世間に知れ渡った。ゼンショーは5月に入ってようやく人手不足による閉店を認めたが、あくまでネットの風評被害によるものだと主張し、小田社長が「日本人は3Kの仕事をしたがらなくなってしまった」と発言したことが余計に反発を買った。
 5月中旬には184店舗が「パワーアップ工事中」表記の閉店状態に追い込まれ、営業時間を短縮する店舗も続出。経営者が居直れば居直るほどアルバイトの反乱は拡大し、5月29日「肉の日」には、ストライキを決行しようという呼びかけがツイッターでおこなわれ、「#すき家ストライキ」のハッシュタグ付きで拡散されるなど、世間の注目を集めた。
 ブラック企業という印象が広まるなかで、ゼンショーは「すき家」の名前を隠して、派遣会社にバイトを募集させようとしたり必死の対応となった。また、ゼンショーユニオンという収支ゼロ、活動内容なし、メンバー不明とされる労働組合が「違法なストはやめましょう!」「組合を介さずストを実行すれば威力業務妨害となる可能性もあります。抗議する内容に正当性があっても、抗議の手段を間違えば本末転倒な結果を導くことになります。どうか、考え直してください」と呼びかけるなどの事態となっていた。
 労働者を奴隷くらいに見なしている資本側の体質は、以前からアルバイト経験者や現役アルバイトのなかで話題にされていた。残業代未払いで刑事告訴した元従業員に対して、ゼンショー側が「どんぶり五杯分を無断で食べた」として窃盗の疑いで逆に告訴して圧力をかけたり、深夜のワンオペを狙った強盗があいついだときも、「経営を度外視してまで防犯にとりくむ必要があるのか考えたい」と発言するなど、対応の一つ一つにも経営者の感覚はにじみ出ていた。

 赤字に転落したワタミ 強欲経営者が代議士に

 すき家だけでなく、代表者が自民党代議士に出世した渡邉美樹率いる大手居酒屋チェーンのワタミグループも、似たような経営体質が若者たちのなかで嫌悪され、「ブラック企業」という評価が定着してきた。
 ワタミグループ全社員に配られる社長の著書「理念集」のなかに、「365日24時間死ぬまで働け」と書かれていることや、入社内定者に配布される人材開発部作成の質疑応答では、勤務時間について「“仕事は成し遂げるもの”と思うならば、“勤務時間そのもの”にとらわれることなく仕事をします。なぜなら、“成し遂げる”ことが“仕事の終わり”であり“所定時間働く”ことが“仕事の終わり”ではないからです」と記されていることなど、経営者が都合の良い屁理屈を労働者に擦り込んでいることも話題にされてきた。
 ワタミ理念研修会では「目の前にいるお客様に対して命をかける。別に強制しているわけじゃない。営業12時間の内に飯を食える店長は二流だと思っている。命がけで全部のお客様を見ていたら、命がけで全部のお客様を気にしていたら、物なんか口に入るわけがない。水ぐらいですよ」といったり、講演会でも「自分を犠牲にしてでも働くべき。残業代のような小さいことをいっているような人間はどうかと思う」と発言していたことも、労働者たちが世間に発信している。
 ワタミでは2008年に、入社3カ月の26歳の女性社員が、1カ月141時間の時間外労働を強いられて抑うつ症状となり、飛び降り自殺をしたことがあった。過労による自殺として労災認定され、女性は1日15時間の勤務で休憩はたったの30分だったことが明るみに出た。
 労災認定について、渡邉社長は自身のツイッターで「労災認定の件、大変残念です。4年前のこと昨日のように覚えています。彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました。労務管理できていなかったとの認識は、ありません。ただ、彼女の死に対しては、限りなく残念に思っています。会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです」「バングラデシュに学校をつくります。そのことは、亡くなった彼女も期待してくれていると信じています」と述べ、社会的に対応が注目されていたなかで、なぜか「バングラデシュの学校」に話がすり替わっていた。
 このような経営者が、その後は自民党の参議院議員に取り立てられ、それこそ残業代ゼロや解雇自由化、移民労働者の受け入れなど労働法制の改悪論議に参加するという、笑えない事態が進行している。国会議員に立候補するさいは、過労死した女性の親が自民党本部に抗議に出向いて注目を集めた。
 ワタミも2015年3月に居酒屋の1割となる60店舗の閉鎖を決めている。そして14年の3月期は49億円の赤字となった。

 労働者の政治斗争急務 全社会構造に対抗

 低賃金で若者を大量に雇用して使い捨て、急成長を遂げてきた一連の企業が、しっぺ返しをくらって慌てている。すき家の反乱は無数のアルバイトの若者たちが離職という形で資本側に三行半を突きつけ、みずからも職を失うことによって抗議の意志を示している。いわゆる労働組合が組織するストライキとも形態が異なるが、全産業分野で非正規雇用が蔓延しているなかで横暴な資本をこらしめている点である種の共感を持って受け止められている。また、いったん火がつくと爆発的に行動が広がる機運が充満していることを示している。
 国内大企業はみな多国籍企業化し、工場を閉鎖して海外に出ていった。そして、労働法が緩和されたもとで新興の派遣業や飲食チェーン、介護ビジネス大手などが台頭し、低賃金で労働者を酷使することによって急成長してきた。融資する銀行資本やヘッジファンドなどの株主が、分け前をかすめ取っていく構造にもなっている。
 こうした資本側にとって何でもありの労働規制撤廃を進めているのが安倍政府で、搾取の野蛮化が一方で進められている。
 全産業分野で、労働者としての権利はもちろん、国民生活全般を擁護する政治斗争を起こすことが待ったなしの課題として迫っている。遠慮を知らない連中には、遠慮なくたたかわなければならないこと、労働者の旺盛な斗争によって貧乏人を大量生産する社会構造に対抗していくことが迫られている。


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