トップページへ戻る

貧困と戦争の道くり返すな
国内食い尽くし海外進出
               覇権守るため若者肉弾に    2014年11月21日付

 「求人が増え雇用失業情勢が改善した」とメディアがもてはやしているものの、職安にいって求人を見てみると、契約社員や派遣・パートなど低賃金の非正規雇用ばかりが並んでいる。終身雇用がすっかり崩壊して短期使い捨て型の“雇用”が蔓延し、一方では深刻な人手不足も社会問題になっている。リーマン・ショックを経て、大企業はみな海外移転して国内の労働力を切り捨て、現地生産方式によって最高益を更新するようになった。そして、街角のコンビニや中小企業にいたるまで外国人労働者が「研修制度」によって投入され、自民党が標榜していた多民族国家を先取りするような状況が広がっている。90年代から拍車がかかった規制緩和、2000年代の構造改革、それに輪をかけて新自由主義政策を徹底した「アベノミクス」によって社会全体の崩壊が進行しており、とりわけ労働者・国民が食べていけない貧困状態に置かれていることが問題になっている。

 全国団結した政治斗争に展望

 北九州市の職安を訪れた40代の男性は、10月に「契約終了」で事務関係の契約社員を切られた。1カ月ごとの更新を続けてきたため蓄えもない。しかし出向いて職安で目にする求人は契約社員ばかりだ。「正社員募集」とあっても、早くて6カ月間、長くて4〜5年程度の契約社員期間を経ないと正社員にはなれない。最近は雇用保険に加入していない企業も多い。「突然切られたときや体を壊したときのことを考えるとうかつに応募できない。求人数は確かに多い。でも契約社員ばかりだから一カ月先の生活設計すらたてられないのが現実」と話した。
 正社員でもいつ切られるかわからない。日産の下請を退社した元正社員の男性(40代)は、50種類にのぼる自動車部品を10dほどトラックに積み製造ラインに供給する仕事をしていた。しかし3年目になる今年9月、「自己都合」の退職に追い込まれた。職場は重労働に加えて、つねに時間に追われる。部品を一つでも落とすと社員証がブラックリストに登録され、構内立ち入り禁止となる。「コンピューター管理だから、1回のミスでもすべての日産の工場内にデータが回り、入場証明を出した段階で入場拒否となる。会社の方はやめろとはいわないが、仕事ができなくなるから“自己都合”でやめるしかない。自己都合退職だから3カ月ぐらい失業保険も出ない。自分はまだ独身だから生活できるが結婚して子育てをするとなるととても無理だ」といい、その理不尽な扱いについて語った。
 日本全体の労働者の非正規社員(パート、派遣、契約など)は2012年9月段階で1829万人だった。それが今では1952万人(14年9月)となり「アベノミクス」の期間だけで123万人増えた。正社員の数は3327万人(12年9月)だったのが3305万人(2014年9月)となり、逆に22万人減っている。
 現役世代が簡単にクビを切られ再就職先がないなか、一方では「人手不足」の傾向がさまざまな業界で顕在化している。建設業界ではリーマンショック以後の不況で建設業者の倒産があいつぎ、技術や経験を持つ熟練工が育っておらず、急に人を集めようとしても集まらない。鉄鋼、造船、溶接など熟練した技術が必要な産業でも共通した現象として語られている。いったん退職させた熟練工を呼び戻して、働いてもらう工場もあるほどだ。技術立国を支えてきた中小企業を「コスト削減」で叩きあげ、技術継承を蔑ろにしてきたことが、いかに社会にとって損失になるかが語られている。
 下関市内の設計会社の経営者の男性は「うちの業界でも人手不足は深刻。この10年来、設計コンサルなどの分野でも公共工事が減らされてきたこととかかわって、どこも人員をギリギリまで削ってきた。そのために後継者の育成が滞り、いざ公共工事が山ほど出ても請け負えず、求人を出しても技術者が集まらない。知り合いの会社は給料をかなり高値に設定して募集をかけているが、半年近く音沙汰がないと嘆いていた。災害対応でもお呼びがかかるが、地方の中小企業がなくなれば地域の防災一つとっても対応できないのが現実で、その役割は大きい。大手コンサルが地方の仕事まで手を伸ばしてくる過程で、中小零細が淘汰されてきた。しかし大手一人勝ちでは社会が保たない」と思いを語った。
 バス運転手のなかでは「人の命を預かる職場なのにダイヤはギリギリ、人員はギリギリで睡眠時間がない。事故を起こすのを恐れたり安全面に責任が持てずやめていく」という。介護士や保育士も「実質一日中拘束され、将来にむけた貯蓄もできないから若い子が集まらないし、育たない」という。コンビニ店経営者も「求人をかけてもなかなか人が来ない。最近は高齢者が夜中のシフトで働いたり、年金だけで食べていけない人人が募集に応じてくる。そんな社会になった」と話していた。いくら時給を上げても応募者が集まらない業種もある。牛丼チェーン店「すき家」では、深夜ぶっ続けの勤務を一人でさせる「ワンオペ」で若手従業員の反乱があいついだため、時給を1000円に引き上げたが人が集まらない。
 人手不足を集中的にあらわしているのが高校生の新卒求人で、厚生労働省がまとめた来年3月卒業予定の生徒の求人・求職状況を見ると求人数約23万8000人(前年同期比38・4%の増)に対し、求職者は18万6000人(同0・1%増)。「求人倍率は1・28倍。前年より0・35増え改善した」と評価されるが、地方の実業高校進路担当の教師に聞くと、「せっかく求人がたくさん来ているのに応募する生徒の数が足りない」と頭を抱えていた。非正規雇用の増加、工場の海外移転などで地域が疲弊しきってしまい、「景気が回復した」といって大企業が求人を募集しても少子化で応募者がいない。「仕事がないとき、地場の企業に頼み込んでとってもらったのに、“景気がいい”となると大企業のネームバリューだけで判断して関東ばかりに応募が集中する。地場企業は技術継承ができず倒産するかもしれないと危機感を持って何度も生徒を回してくださいとお願いに来る」と明かしていた。
 求人数は増え、求人倍率は上がったが人手不足でどこも大変な状態にある。2010年に6632万人だった労働力人口は2013年に6577万人になり55万人減った。とくに15歳から34歳の若者の減少幅が大きく、1873万人(10年)から1757万人(13年)に推移し、116万人も減っている。「求人倍率改善」というより、大企業が現役世代を生活できないまでに搾りすぎた結果、将来日本を支えていく若者の減少に歯止めがかからない事態となっている。「倍率」をはじき出す分子と分母の関係が狂い始めていることを示している。
 現役世代が「生活できない」と敬遠する仕事は、この間、年金をもらいながら高齢者が働きに出ているのも特徴になっている。定年退職して夫婦で年金暮らしをしている女性は、保育施設に週2回出て働き、それとは別にシルバー人材センターが統括する掃除に週3回出て働く。受けとる年金は少ない方ではないが、医療費の自己負担額は多いし、家賃、住民税、介護保険などが引かれるとギリギリの生活だ。「年金は減るし、物価は上がっていくばかり。それに自分がいつ倒れるかわからないし、子どもたちになにがあるかもわからないからできるだけ蓄えをする。今後の先行きが不安だし子どもに迷惑をかけられない」という。
 年金プラス新聞配達、警備員、公園の草刈り、タクシーやバスの運転手などをして生活する高齢者は増え続けている。就職したり職を探す65歳以上の労働力人口は2000年代は400万人規模だったが、2012年に600万人をこえ、今では720万人(14年9月)に達した。年金切り捨てや医療費の自己負担増など福祉切り捨ても直撃している。
 
 海外進出の要員に 増加する外国人労働者 反発拡大の中

 国内で若者や年寄りからも搾り上げすぎた結果、資本にとって市場のバロメーターでもある人口の減少が止まらない。しかし食い物にしたら使い捨て、海外に権益を求めていったのが大企業や独占資本だった。より人件費の安い中国に行き、そこからベトナムやタイ、ミャンマーなどさらに人件費の安い東南アジアに進出し、それを日本政府がODAで支援してきた。
 自動車大手各社を見てみると、部品も組み立てもみな海外でやり、日本へ逆輸入する動きが加速している。日産やホンダ、マツダはメキシコにあいついで新工場を建設。三菱自動車はタイ製トラック、スズキはハンガリーでつくった多目的スポーツ車(SUV)、日産はスペインでつくる電気自動車などを日本で発売するという。トヨタはトルコでSUV生産を始めるため200億円投資してラインを改造したり、ブラジルでプリウスの生産をおこなう計画を明らかにしている。円高になろうが円安になろうが、新興国で極端に安い人件費で大量生産させた方がもうかるためで国内では工場閉鎖によって労働者が職を失い、部品関連の中小企業まで淘汰が進んでいる。
 海外で生産する工場は1カ月の給与相場が中国なら4万円程度、タイが3万5000円程度、ベトナムが1万5000円程度といわれ、日本の労働者の十分の一以下になる。給与水準が低いことに加え、労働時間の規制、安全面の規制などもないため、国内以上に過酷な境遇に置いて反発を買っている。今年四月に上海のTOTO子会社で、給与引き下げに抗議し1000人の大規模ストが発生したが、低賃金に加え、工場内を監視カメラで監視して労務管理をするなど、奴隷労働の一端が露呈した。
 そうした海外生産を拡大するために外国人研修生を呼び寄せ、スーパーやコンビニで働かせながら日本語を習わせたり、鉄工所や食品加工などさまざまな職場での受け入れが急増している。国策として高度人材、留学生の受け入れが奨励されており、外国人労働者数は71万7504人(昨年10月末)に到達した。国籍は中国人=30万3886人、ブラジル人=9万5505人、フィリピン人=8万170人、ベトナム人=3万7537人となり、ベトナム人が前年より1万人増えている。都会に限った話ではなく、地方の隅隅までコンビニやスーパーに行けば東南アジアの若者たちがレジを打つ姿が珍しくなくなっている。経済植民地の現地要員として配置していくために国が奨励しているものだ。
 研修生たちについて「東南アジアの若者は素直で、給与はむだ遣いせずみな母国の家族へ仕送りしてやる。とてもまじめ」と評価は高い。しかし第一線で働く技術者は「従順さだけではモノ作りはできない。素直なのはとてもいいことなのだろうが、それが裏目に出ることもある」と警鐘を鳴らす。「日本の技術者なら車の部品製造でも余りにむちゃくちゃにラインを早くしたり、おかしなことをいわれると、そんなことはできないとはっきりいう。そうしないと車に乗った人が事故にあうからだ。技術の蓄積もないし、教えないから、自分たちがとても危険すぎてできないようなことも上からいわれれば素直にやる。こんな状態が広がれば、いつ大事故が起きてもおかしくない」と指摘していた。素直で従順で、なおかつ低賃金であるから「使いやすい」というもので、「人材育成」「後進国への技術援助」の仮面をかぶって、奴隷労働を拡大させている。
 
 社会の再生産破壊 大企業に奉仕する政府 公益守るたたかい

 「アベノミクス」によって上場企業はもうかった。トヨタは「1円の円安で400億円の利益」といわれ、4〜9月期は800億円ほどの利益押し上げで営業最高益を記録した。日産や富士重も円安の利益押し上げ額が200億円以上にのぼった。一般庶民を苦しめる消費税増税もトヨタにとっては輸出額に応じて消費税分還付される「還付金」増額として作用した。しかも海外に子会社をつくってそこで利益を上げれば優遇される「外国子会社配当益金不参入制度」など大企業は税金を免除される制度もある。
 大企業の海外生産比率はすごく、自動車製造の国内生産比率はトヨタが36%(今年4〜9月期)、日産が16%、ホンダが20%とほぼ海外頼みの構造になっている。一方で、「安ければいい」「もうかればいい」と海外へ出て行った結果、技術低下が進行して欠陥品製造も増加し、昨年度のリコールは自動車業界全体で過去最多の七九八万台にのぼった。粗製乱造で、国内で走る10台に1台が自主回収の対象となる規模となった。
 「規制緩和」「構造改革」で働く者が生きていけない社会に変貌してきたことが強い実感を伴って労働現場では話題にされている。この間、進められてきたのは多国籍企業にとって搾取しやすい国づくりにほかならなかった。そして小泉改革の旗を振った竹中平蔵が派遣会社パソナの顧問についたり、人が驚くようなマッチポンプが平然とやられてきた。
 労働者のたたかいによって勝ちとられてきた労働基準法や労働法を取り払い、労働条件を押し下げることを「国際競争力に打ち勝つ」といい、国内労働力保護のために規制されてきた外国人労働を野放しにしたり、過労死を防ぐための安全衛生基準をなし崩しにし、女子の深夜労働を禁じた女子保護法撤廃など強行してきた。そして企業の都合で雇ったり解雇できる自由を認め派遣労働を自由化するなど、ムキ出しの搾取を横行させてきた。
 労働基準法や労働法は、労働者が人間として生活するために必要な社会的規制として維持されてきた。労働者から労働力を買って働かせることで利潤を得るのが資本で、一方的な解雇を認めず、残業代を払うことなどを定めてきた。労働者は奴隷のように24時間束縛される資本の所有物ではないからだ。八時間労働制についても資本主義登場以来、労働者が結束したたたかいで勝ち得てきた人間としての権利である。産業革命後の生成期には児童労働までやらせ、死ぬまで働かせるような強欲資本とストライキや争議でたたかい、仕事を終えたあとは休憩したり、社会的な活動に参加したり、次の世代を産み育てていく、人間としての尊厳を認めさせてきた。これを百年以上後戻りさせるものとして、強欲資本の本性を丸出しにした攻撃があらわれている。
 歴代政府が公益を守るどころか、大企業や財界の道具となって社会にとって必要な規制や法律をみな取り払い、国鉄、郵便、医療、教育、保育、福祉、介護などの機能がみな営利追求の道具に変えられ、増えるのは非正規雇用ばかりで貧困化に歯止めがかからない。子どもを産み、育てることができないまでに社会の再生産機能を破壊している姿を暴露している。そして国民負担ばかり増やしながら「個人消費が増えない!」「デフレから脱却できない!」「年寄りばかり増えて社会保障費が大変」といってのたうち回っている。
 さらに国内だけでは利潤追求が頭打ちとなり、多国籍企業化して世界を股に掛けて「国際競争」(覇権争奪)をするなかで、今度はその海外覇権を守るために集団的自衛権の行使を可能にし、少子化の国内から若者を肉弾として放り込むところまできた。国民の生命や安全、国益などどうでもよく、最後はその利潤を守る為に「死んでこい!」といってはばからない。
 遠慮を知らない資本に対して、たたかわなければ現状を打開することはできない。国内市場の狭隘化にともなって海外市場を求め、しまいにはアジア侵略に乗り出して320万人を殺したのがかつての大戦だった。今や「貧困になって戦争になった」六九年前とそっくりな社会状況が広がっている。労働者として勝ちとってきた歴史的な権利を含め、国民生活全般を擁護する全国的な政治斗争を戦争反対の斗争とつなげて強力なものにすることが迫られている。

 

トップページへ戻る