トップページへ戻る

広島・岩国・漁民の斗いが連携
意味深な中電の調査中断
               上関原発白紙撤回に追い込む力    2005年9月24日付

 上関原発計画は1982年の公表から23年が経過し、いまや白紙撤回を勝ちとる大転換期を迎えている。中電は今月16日、詳細調査の中断を突如発表したが、この背景に上関原発をめぐる力関係の大きな変化がある。最近の大きく浮上してきた力は、広島の被爆市民と山口県全域で強まった原水爆禁止の運動であり、それが米軍岩国基地への厚木基地移転などによる広島湾を核攻撃基地にすることに反対する岩国、広島を結ぶ運動と結びついて広大な力となってきた。そして、全県の漁民のなかで、漁協解体に反対する運動をつうじて、原発で漁場を壊滅させることに反対する力が大きく登場していることである。それと連動して祝島をはじめ上関全町で政治的激動がはじまっている。上関町は、中電の植民地のような状態におかれ、国からは見放されて、原発ができるまえにすっかりつぶされて、人が住めないようにしてしまおうとしていると、怒りが語られている。漁協の解体は組合長をなくし、親分衆の力をなくしてしまった。最後に残った漁協など推進派勢力はすっかり崩壊してしまった。また反対の顔をして推進をしてきたインチキ反対派の正体もすっかり暴露され瓦解してしまった。議員連中は、推進も反対も中電に認められて自分の損得だけが関心で、町民を食い物にする集団だという評価が定着してきた。このような状況は、中電と国、県をして上関原発を白紙撤回させる力を結集する条件が強まっていることを示している。

  上関町内の政治的激変
 予定よりも遅れて強行した詳細調査は、中電が陸上ボーリング調査で使用した濁水を、事前の約束を破って現地に捨てていたといって、二井県政が怒って見せて即中断の運びとなった。
 近年、中国電力としては時折「やる気」を見せたり、スナメリとか貝とか、裁判などで意味深な理由をつけて足踏みしてみたり、のらりくらりをつづけてきた。詳細調査も「急いでいない」というのが地元での評価だった。放射能垂れ流しを推進する二井県政が、“泥水垂れ流し”に怒ってみせるという、「立派な環境派」となって怒って見せ、中電側もいそいそと調査を中断した。ようするに県も中電も中断したい別の事情があったのである。
 町民の目には、原発をつくるまえから中電も県もやりたい放題で、「泥水」などかわいい話であった。人情はさんざんに破壊されてきたし、選挙も中電支配、町の運営も中電支配で、約束など平気でほごにするし、気にくわないものは推進派であろうと切り捨てたり制裁を加えてきた。ブッシュや小泉のトップダウン・独裁政治など、上関ではとうの昔からやられてきた。
 だれの目にも明らかなことは、県民世論に逆らって知事同意を強行したり、商工労働部や水産部を走らせて水面下での条件整備に狂奔してきた張本人が、“泥水”ごときに怒るわけもない。なんらかの判断が上層部の世界で動いたとしか説明がつかないことだ。

  早くから決着がついていた力関係
 上関原発をめぐる力関係は早くから決着がついていたものであった。80年代に中電主導ですすめたがとん挫。そののち90年代に入ってからの上関原発の推進は、平井前知事が乗り出して、一見目に見えにくい形で、行政の力を使い、反対運動の裏切り者を使ってすすめたのが特徴だった。
 平井前知事は92年から4度にわたって祝島に渡ったが、その結果は山戸氏の「活躍」で祝島漁協が四代・田の浦地先にあった共同漁業権を放棄したことだった。漁業権は94年1月から書き換えが発効。中電が行きづまっていた環境調査をその年に実施するのを保証した。山戸氏を抱きこんだのも、環境調査に同意させるために栽培漁業センターをつくってやるという買収策を出したのも平井前知事、県商工労働部、県水産部であった。
 中電にとって推進手続きがすすむかどうかは、片山前町長ら正面の推進派にできることではなく、用地問題も漁業権問題も、反対派のなかの裏切り者に頼るほかなかった。反対の力をつぶし、反対派があきらめて、海も山も売りとばさせることによってだけすすむ関係であった。それは現在でもかわりはない。
 96年には環境調査をへて、中電が上関町に正式申し入れをして、四代、上関漁協は埋め立て同意を決議。町内には敗北ムードがただよった。しかしここまでが平井前知事が仕組んだ90年代推進体制の限界であった。
 97年には反撃開始となり、信漁連問題をはじめ推進のために県が仕組んだ漁協抑圧の構図が暴露され、平生町を先頭に周辺地域から反対世論が表面化し、電調審上程はとん挫をくり返した。98年の町議選は無投票を演じることとなり、結果山戸氏を中心とする反対派議員が推進派に移行している実態があまねく暴露されるハメになった。
 99年には東海村臨界事故が起こり、「原発はこれまで」の空気が支配するなか、背後勢力はなおもごり押しを強行。年末から年明けにかけて中電は125億円の破格の値段を提示して「漁業交渉妥結」。一方で住民世論、周辺世論は原発反対の強烈な包囲網が渦巻いていった。
 2000年の衆院選では佐藤信二氏が「原発はわししかできない」と叫んで自爆。知事選を終えた二井知事は県の公聴会を開催して、第一次公開ヒアリング開催に道を開かせた。01年4月には、二井知事が反対の理由を山ほどあげてまるで反対しているかのような顔をして、合意の意見書をあげるという変態的な正体を暴露した。
 国は上関原発を電源開発基本計画に組みこんだが、しばらく詳細調査に手をつけることはできなかった。手続きだけは力ずくですすめてきたものの、現地の海や山をめぐる権利関係は山積したままで、なにより地元および周辺、県域での反対世論はますます火がつく形となっていた。上から強烈に推進するほど、反発は増幅し、揺るぎない力になっていったのが特徴だった。
 長年の沈黙を破って「死んでも神社地は売らない」と宣言した林春彦宮司には、渦中で徹底的に攻撃して宮司職を奪うなど、ヤクザから県公安委員長、裁判所のインチキ裁判長まで登場して“なんでもあり”でつぶしをはかった。これは山谷氏(四代区長)の借地料横領疑惑が発覚したり(いまだに真実は明らかにされていない)、二井知事の盟友・末永汎本弁護士のヘタクソでヤクザ的なやり口が暴露されることにもなったが、地元住民の「そこまでやるか!」の怒りを強めた。

  問題山積で原発できるメドはなし
 現在計画が立ち往生しているのは、神社地や共有地のほかにも計画用地は虫食いのまま進展がなく、漁業権も港や警備区域にすべき沖合は消滅海域がないなど、不完全なまま課題が山積していることがある。町内では推進派はすっかり「絶滅危惧種」になって表で推進をいうものなど、中電と議会で給料をもらっている少人数以外いなくなった。詳細調査を完了したところで、原発ができる見こみなどない。電力自由化で原発どころではない中電の事情もある。
 なにより地元の根強い反対世論が崩せず、反対派も裏切り者は正体が暴露され、20年以上にもわたって頑強に原発をつくらせなかった力は、祝島を筆頭に崩れるような様相にはない。

  背景に怒濤の反撃  撤回させる好機
 そして、今回の意味深な中断騒動は、国がアメリカの要求する米軍再編、岩国基地への厚木基地移転を優先するために、上関原発を引っこめるという意図が働いていると思われる。山口県内および広島県西部一帯で、核攻撃基地を大増強すること、しかもミサイルの標的となる原発を隣接地域につくるという無謀さに怒る大衆行動が広がりはじめた。とりわけ原発を投げつけた広島に隣接する地域を核攻撃基地にするという侮辱への怒りの行動はきわめて強烈なものである。
 岩国基地への厚木基地移転にいち早く反対の行動を起こしたのは広島県の各自治体であった。そして岩国を中心とした地域では、郷土を廃虚に導く強権にたいして、かつてない反対運動が婦人団体や自治会を中心にはじまり、周辺自治体では反対決議があいついだ。今月13日に井原市長に提出された署名は、全市民の半数以上にあたる6万人分にもなり、さらに拡大するすう勢にある。
 一方でテロの標的になる原発を推進し、もう一方で世界中で殺りくをくり返す野蛮人部隊・米軍の巨大核攻撃基地化をすすめるというバカげた破滅政治にたいして、怒涛の反撃がはじまろうとしている。
 このたびの衆議院選で二区からは自民党候補が返り咲いたものの、兄弟宰相の地元において佐藤信二前代議士を落選させる最大の原動力となったのは、ほかでもない原発・基地問題への反発であり、ほとんど組織的な力のない民主・平岡秀夫代議士でも10万票とるのは、その反自民世論が動いているからである。
 もうひとつ、中電と県の上関原発計画を追いこんでいるのは、全県の沿岸で漁民の漁業を守れの行動が画期的に強まっていることである。全県の漁民は、原発を死活問題とみなしてきたが、信漁連問題で県と県議会から足かせをはめられ、身動きつかない状態におかれてきた。この信漁連問題の尻拭いとして押しつけられた県一漁協合併は、漁協解体で漁業権管理の権限を奪うものにほかならないが、上関原発は漁業を壊滅させ、漁協もつぶしてしまう重大テーマとなっている。「支援」と称した漁協支配の構図は暴露され、二井県政にたいする抵抗が強まっている。
 伊方原発三号機が稼働しはじめて以来急激な漁獲減少を見せているなかで、玄海原発の沖合から移動して南方に生息していたナルトビエイが「出稼ぎ」に来たり、金魚みたいな熱帯魚が姿を見せはじめるなど、水温の上昇も深刻。「上関原発をつくらせるな」「瀬戸内海を守れ」の世論はかつてなく高まっており、上関現地と連帯した力となってきた。
 立ち腐れの上関原発は詳細調査を中断して、一時的に「頭を引っこめた」格好だが、これは全県的、全国的な力関係が押しこんでいることのあらわれである。ここで、上関原発を、岩国基地の増強に反対し、ミサイルの標的にして原水爆戦争を引き寄せることに反対する、全県、全国、そして現地の共同斗争を強めることが重要となっている。さらに、伝統ある日本の漁業を守り、漁業による振興の道に展望を開くという、現地、全県、内海各県の漁民の共同斗争を強めるならば、上関原発を白紙撤回に追いこむことは可能な状況となっている。来年二月には上関町議選が控えているが、そのような全県とつながった現地のたたかいが注目されている。

トップページへ戻る