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広島公演実行委が発足
『峠三吉・原爆展物語』
          体験継承の大運動の契機  2010年3月8日付

 広島市の西区民文化センター大会議室で7日、劇団はぐるま座の『峠三吉・原爆展物語』広島公演の第1回実行委員会がおこなわれた。原爆展を成功させる広島の会(重力敬三会長)の被爆者、主婦、労働者をはじめ、特攻隊体験者、母親など約20人が参加。下関を起点に10年にわたって広島、長崎、沖縄など全国で発展してきた原爆展運動を描いた劇は、対米従属の戦後社会を直視し、日本をふたたび原水爆戦争に叩き込むことを許さない被爆地の運動をさらに盛り上げるものとして期待を集めており、被爆・戦後65年記念公演として全市的な取り組みにしていく意気込みが語り合われた。
 はじめに劇団はぐるま座の宇田川純氏が、昨年末の台本感想交流会、広島・長崎市でおこなわれた現地公開稽古、公開舞台稽古をへて、観客から寄せられた意見をもとに検討を加えた台本の改訂部分について報告した。
 一幕一場で、旧日銀原爆展の宣伝のために広島市内に入ったキャラバン隊スタッフたちが、原水禁、原水協をはじめ既存の平和団体が市民からダカツの如く嫌われている実態を語り合う場面で「いろんな政治勢力はどうでもいい、とにかく市民の中へだ」などのセリフを挿入、大幅に骨格を改訂した沖縄場面では、「沖縄戦をせずとも戦争は終わっていた―基地を奪うための大殺戮」というパネルを起点に県民から沖縄戦体験が溢れるように語られ、「あれだけの虐殺をやって力ずくで奪い取ったのがアメリカさ。インディアンを皆殺しにして、土地を奪ってできた国だ。簡単に手放すわけがない」「アメリカを追い出すためには沖縄戦の仇を討つような覚悟がいる。でも諦めていたら、今度は沖縄に原爆が飛んでくる」という切迫した思いが語られる。市民から「違和感がある」と指摘されていた「日本軍美化」の色合いや、コザ暴動でホステスが叫ぶといった傍観的な表現が大きく改められ、「より沖縄の人人の切実な思いを伝える方向で改訂した」とのべた。
 また、二幕一場の戦地体験者が語り合う場面、全国の人人が大結集した8月6日の広島、スタッフたちが10年間を振り返って教訓を語り合う場面などで、「戦後は豊かになった、平和になったといわれてきたが、大間違いだった。このままでは日本は潰れ、日本民族の歴史は消されてしまう」「香港割譲は99年、日韓併合は36年、日本は64年だ。もういい加減に目を覚まして独立しなければいけません」などの体験者のセリフ、「原爆や戦争を体験している人は生きるか死ぬかというところで現在のことを考えている。自分たちは相当に平和ボケなんだ。抜き差しならないところでたたかいぬく覚悟がいる」「今度こそ戦争を阻止するたたかいに挑まなければいけない」「戦争で死んだ多くの人たちの命が返らないのなら、死なないためのたたかいを命がけでやらなければならない。黙っていたら、また原水爆戦争の戦場だ。仕方がないといって、また殺されるわけにはいかない」などのスタッフの言葉が要所要所に挿入され、戦争体験と現在の生活実感とを重ねて体験者の思いをより重層的に伝える印象となった。
 つづいて取り組みの過程で、「おもしろくて台本を一気に読んだ。助け合って生きていくしかない現代は、個人競争でバラバラにされ、みなが潰れていく社会になっている。働くものが食べていけない社会ではいけない」(20代、会社員)「高校生の就職難と教師のうつ病が増え、どうしてこんな社会になったのか根本的に考え直さないといけない」(30代、女性教師)など若い世代が衝撃的な感想を語って取り組みに参加し、原爆展賛同者をはじめ、戦争体験者、自治会長、詩吟団体、社会福祉協議会、マツダOB会、母親クラブ、商店主、会社員、学生など現在までに43人が実行委員会に連名している現状を報告。
 また、ポスターは470枚が市内に貼り出され、前売り券は、実行委員をはじめ、理美容室、お好み焼き店、書店などの各商店、病院など83の個人・団体に計933枚が預けられている現状を明らかにした。

 全市的運動へ意気込み

 討議では、ともに作りあげてきた舞台の発展に対する喜びや期待とともに、戦争体験世代、母親世代などそれぞれの使命感を胸に広島を席巻する取り組みへ意気込みが語られた。
 廿日市から訪れた母親は、「子どもが学校からチラシを持ち帰り、展示を観て、被爆者の方から話を聞く機会を得た。そのときの被爆者の方のまなざしに心を打たれた。現在、歴史や文化など受け継ぐべきものが若い世代に継承されていないことに残念な思いを抱きながら、自分になにができるのかわからず悶悶としていたが、できるかぎりのことをやりたい。被爆者の方方の思いに応えるために勉強していきたい」と意気込みをのべた。
 市内に住む50代の母親は、「3年前に父が入市被爆特有の白血病で他界した。原爆について知っているつもりだったが、自分の父が60年たって原爆病で亡くなったことにショックを受け、子どもや孫たちに原爆の苦しさや戦争を起こしてはならないことを伝えたいと思って参加した。できるだけ力になりたい」と決意をのべた。
 地域の学校へ観劇の呼びかけに回った五日市在住の婦人被爆者は、「校長先生からとても歓迎され、これまで体験を語ることで築かれてきた縁の大きさを感じた。動くことで次次に縁が生まれるし、家の中に引っ込んでいてはいけない。若い人と一緒にできる限りのことを取り組んでいきたい」と喜びをにじませて語った。
 70代の男性被爆者は、「私たちの意見をしっかり聞き入れて、台本を新しく改訂された努力に敬服している。それぞれ違う体験者の思いをよく研究され、しっかり伝えていこうという思いは私たちと一つであることを教えてくれた。この芝居にとても身近な印象を受けている。これからもしっかりと手を携えて進んでいきたい」と感動をの、近隣の学校へ呼びかけていく意欲をのべた。
 府中町から参加した男性被爆者は、「府中町では今年、原爆体験集を発行する準備をしているが、体験談だけを掲載し、被爆者の思いはカットされている。しかし、私たちは昔のこと以上にこれから先の日本をどうするのかという思いの方が切実なものがある。口で話すだけでは伝わらない思いを劇で表現されていることにとても感動している。これなら若い人たちの心に印象深く残ると思う。この劇を利用して、被爆・戦争体験を後世に伝えていく運動を一段と広げていきたい」と決意をのべた。
 「世界的には“核兵器を少なくしよう”という論議がされているが、“核兵器廃絶”という私たちの思いとは次元の違う論議になっている。このようなときに原爆展物語で広島の声を伝えてもらうことは、力強い援軍を得た気持ちだ」(男性被爆者)、「数少ない生き残りとしてこれまで毎年、戦友の慰霊碑を回ってきた。これを機に平和運動を勉強するチャンスだと思っている」(特攻隊経験者)、「沖縄や岩国などの米軍基地問題で現政府が民意をじゅうりんしていることに切迫した思いがある。この劇で、いまの日本の現状を変えていこうという人が一人でも増えてほしい」(男性公務員)など強い期待の声が語られた。
 また、「この劇がすべて事実であることに驚いた。米軍司令官ルメイが民家が軍需工場だとの発言には怒りを感じたし、後半部分では現代の問題を扱われ、後継者として若い世代が登場しているのがいい」(女子大学生)、「夢中になって読めるほど筋が魅力的。広島だけでなく、東京、長崎、沖縄、下関などそこに住む人人の実体験からくる発言が、全国各地でそれぞれの戦争があったことを改めて思い起こさせてくれた。語ることにさえ苦労があったこと、広島の会の人たちの人柄のよさと地道な努力もうまく表現されている。ぜひ見に行きたい」(女子大学院生)と観劇を申し出た学生たちの感想も紹介された。

 街頭原爆展広げ宣伝も

 今後の取り組みとして、若い人たちへの観劇を促すためそれぞれの居住区や学校に観劇を呼びかけに回ったり、幅広い層に台本を読んでもらい、市内での街頭原爆展をやりながら全市的に世論を喚起していくことなどが語り合われ、1000人の観客動員を目指して取り組みの輪を広げていくことが一致された。

 『原爆展物語』広島公演要項

 『峠三吉・原爆展物語』広島公演の要項は次の通り。
 日時 4月24日(土)昼の部午後1時30分、夜の部午後6時30分開演
 場所 広島市西区民文化センター(横川駅前)
 主催 同公演実行委員会
 後援 原爆展を成功させる広島の会、原爆展を成功させる長崎の会、下関原爆被害者の会
 前売り券 一般2500円、大学生1500円、中高生1000円、小学生500円(当日券はそれぞれ500円増し)

 連絡先 劇団はぐるま座広島事務所(082)264―0270

 

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