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法律変え富奪う大企業の自由
 国民に隠して勧めるTPP
                米国に国益売り飛ばす     2013年9月25日付

 今年7月にTPP(環太平洋経済連携協定)交渉に正式参加した安倍政府は、18日からワシントンで開かれた主席交渉官会合では「年内妥結」の方向が出たとして、国民にはなにも知らせないまま、アメリカのいいなりになって手続きだけはどんどん進めている。TPPをめぐっては、まず農業者のあいだで農産物の関税撤廃が農業の全面的な破壊につながるとして全国的な反対行動が巻き起こった。その後、医療従事者の行動や知識人の発言などによってTPPは農業だけの問題ではなく、医療や労働、郵政、保険、著作権や国家主権の侵害等等、国民生活全般にわたってアメリカ型の基準を押しつけ、日本をまるごと売り飛ばすものだという実態が暴露され、TPP交渉参加反対の国民的な運動が巻き起こっている。この間の経過も振り返り、再度TPPが日本になにをもたらすのかを明らかにして、安倍政府をTPP交渉から即時撤退させるための世論を大きなものにしなければならない。
 
 反対運動の高揚恐れ秘密主義

 もともとTPPは、2006年に発効したブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの小国四カ国によるFTA(自由貿易協定)に過ぎなかった。ところが2008年の金融危機に直面したアメリカのオバマ政府が2010年1月、輸出倍増計画をうち出してアジア太平洋にまたがるTPPへの参加を表明、TPPを主導する地位に就いた。
 その後、オーストラリア、ペルー、ベトナムが加わり、2010年3月に8カ国で交渉が開始され、さらに2011年にカナダ、メキシコが参加して11カ国となった。2012年12月に就任した安倍首相は、今年二月にワシントンでオバマ大統領と会談し、「TPPに関する日米共同声明」を発表、3月に日本のTPP交渉参加を表明した。そして7月23日に米国議会の承認を得て、TPP交渉に正式参加することになった。
 安倍首相は、日米間ではすべての関税を撤廃対象にするという「TPPのアウトライン」を確認しているにもかかわらず、日本国民に対しては「聖域は守れる」とウソをつく一方で、米国議会の承認を得る環境を整えるために、譲歩につぐ譲歩をおこなった。
 米国の自動車業界の強い要求を受けて、日本車にかけられている米国の通関税を、TPP交渉で最大限後ろ倒しにすることに合意した。また、日本市場については、米国車に対する「非関税障壁」撤廃を前提に米国の要求に沿って交渉が進められることになった。
 また、保険分野でもアメリカに大きな譲歩をおこなった。日本の生命保険市場は米国に次いで世界2位の規模をもつ。生命保険全体では外資系は20%未満だが、がん保険については米国系が市場の80%を占める。その日本市場で、政府が100%出資する日本郵政グループのかんぽ生命が国内生保会社と提携してがん保険市場に新規参入する動きを、日本政府は認めないと決定した。
 こうして交渉が始まる前に日米間のTPP交渉は日本の全面譲歩で決着済みの様相である。

 多国籍企業は内容知る 国会議員はカヤの外

 日本が参加にあたってまず課せられたのは、「秘密保持契約」への署名であった。それは日本社会のあり方を決めるといっても過言でない重大な交渉を、一部の人人、巨大な多国籍企業や富裕層の代理人が謀議で決めることに同意したことを意味する。そこにTPPの反民主主義的な性格が明確にあらわれている。
 この「秘密保持契約」の中身について、ニュージーランドのTPP主席交渉官は「交渉文書や各国の提案、関連資料を入手できるのは、政府当局者のほかは、政府の国内協議に参加する者、文書の情報を検討する必要のある者または情報を知らされる必要のある者に限られる。また、文書を入手しても、許可された者以外に見せることはできない」とし、さらに「交渉文書は協定発効後四年間、秘匿される」となっていることを暴露した。国会議員は「政府当局者」ではないので交渉文書を入手できない。また民間人でも利害にかかわる者は交渉文書を見ることができ、事実上交渉に参加できる。アメリカでそれができるのは、通商代表部と600社の企業顧問である。
 TPPを取材した関係者は、「TPP交渉の場には、モンサント、ファイザー、ウォルマート、フェデックスなどアメリカの多国籍企業が参加して、各国の交渉官に圧力をかけていた」「アメリカの製薬会社と一緒になって、米国に在籍する日本の大塚製薬、エーザイ、第一三共などがロビー活動をおこなっていた」と報告している。
 TPPは、国と国との契約でありながら、国民や「国民の代表」とされる国会議員には内容を明らかにすることを禁止している。安倍政府はアメリカのいいなりになって、中身をまったく明らかにしないまま、年内妥結、国会批准にまでもっていきかねない。
 しかもTPPが締結されると、この条約に反する国内法は改廃義務が生じる。しかしTPPは秘密交渉であり、なにが抵触するかは締結後でなければわからない。
 「韓国」では、米韓FTA締結で数十の国内法が改廃義務を生じ、国会に提出されている。たとえば「韓国」の各自治体には、学校給食で地産地消を奨励し、地元の食材を使うという条例があったが、これは米韓FTA違反となり撤廃をよぎなくされている。TPPは憲法より威力を持っており、各国の立法権も奪い、国民主権を否定して「多国籍企業主権」に変えるものである。
 ただ、アメリカだけはこれを免れるというダブルスタンダード(二重基準)がまかり通っている。アメリカはたくさんFTAを結んでいるが、アメリカ憲法が「法律と条約は同等」と定めており、「条約は国内の法律を無効にしない」という態度をとっている。
 こうした秘密主義をとるのは、内容を国民に知られたら反対運動が巻き起こることを承知しているからであり、それを恐れてひた隠しに隠しているのである。秘密主義の本音は国民への恐怖心のあらわれであり、オバマや安倍政府の統治能力のなさ、政治的基盤の脆弱さの裏返しでしかない。

 外資の農地所有も狙う 漁業補助金禁止も

 安倍政府はアメリカの要求に従って、TPPの先取り実施を各分野で進めている。全国の郵便局でアフラックの保険を販売することを手はじめに、農業分野では「耕作放棄地解消」を掲げて、農地を株式会社が所有できるように規制緩和をはかっている。これにはローソンやイオンなど大手コンビニが触手を伸ばし、直営農場の経営に乗り出しているが、TPP参加を視野に入れ外資の農地所有を認める方向にある。
 また、安倍政府の「コメなど農産物の重要五品目の関税撤廃は阻止する」との主張とは裏腹に、大手資本はコメの関税撤廃を見込んで、ベトナムでの日本米栽培を進め、ベトナムからコメを逆輸入する動きを強めている。狂牛病(BSE)対策での輸入規制も、20カ月齢未満から30カ月齢未満に緩和し、それとともに国内でおこなってきた全頭検査への補助金を廃止した。
 農業分野では、農産物の関税撤廃でアメリカ産農産物を津波のごとく輸入し、国内農業を破壊するとともに、農地所有も外資に認め、多国籍企業が農業生産から加工、流通、販売までを支配することを狙っている。しかし一部の多国籍企業のために大多数の農家を消滅させれば、2008年のときのような食料危機に対応できないばかりか、森林や水田の荒廃から水源涵養・洪水防止機能が失われ国土崩壊・地域コミュニティーの消滅になりかねず、それは多国籍企業自身のよって立つ源泉を失うことを意味する。
 漁業界では、漁業補助金の廃止が重要な問題になっている。アメリカは「乱獲による海洋資源の枯渇防止」を口実に、漁業補助金の廃止を求めている。オーストラリアやニュージーランドは、「環境保護」を理由に米国を支持している。日本にはまだ内容が明かされていないうえ、結論も出ていないが、燃油代助成など漁船操業への補助金も禁止対象になる恐れがある。専門家は「日本の水産予算の多くはインフラへの補助。TPPで廃止されれば、漁港施設や漁船への補助が続く韓国や台湾など不参加近隣国との漁獲競争で不利になりかねない」と指摘する。
 日本政府は、漁港や水産加工施設の整備に補助金を出している。TPPは、東日本大震災で港や船を失い、風評被害にも耐えながら復興に努力している漁業者にも大きな打撃になる。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は漁業補助金廃止に反対して行動を強めている。水産物の関税は既に平均四%と低く、市場は輸入魚に押されているうえ、それに加えての補助金廃止に、漁業者は「漁業禁止と同じだ」と怒りの声を上げている。
 アメリカは日本の農漁業分野の補助金廃止を主張するが、しかしアメリカ国内では、コメと小麦、トウモロコシの穀物3品目について、1兆円もの輸出補助金を出して、安く世界中に売りさばくというダブルスタンダードである。アメリカのいう「自由貿易」はインチキであり、一%の大企業が社会を食いものにする自由であり、九九%を貧乏にし専制支配する自由にほかならない。
 インターネットでの薬販売も全面解禁された。医療分野での皆保険制度を崩壊させる混合診療の推進、安いジェネリック医薬品の販売禁止など、日本独自の医療政策の破壊につながるものである。また、安倍政府は「ISD条項(外国企業がある国の法律や制度で不利益を被った場合、その国の政府を訴えて損害賠償を請求できる)は認めない」といってきたが、最近ではISD賛成に舵を切っている。
 また、TPPのなかでは「政府調達」の問題も指摘されている。日本政府や各自治体が公共事業をやる場合、海外の企業にも提示して競争入札をしなければならないというもので、「地元の仕事は地元企業で」「地場の伝統産業を保護する」というのが「国内の事業者を差別的に取り扱ってはならない」という規定違反になる。それが実施されれば、巨額の資金を持つ多国籍企業が、日本の公共事業や医療、郵政、地方自治体の公共サービス等に自由に入り込み、「域内の労働者のビザなし就労を認めよ」との条項にもとづいて、締約国である東南アジアや中南米の外国人労働者を就労させて搾り取ることが可能になる。

 各戦線の運動大合流を 大衆運動の力で打破

 このようにTPPは、その内容を国民に公開しないまま決めていく、国会のチェック機能も制限する民主主義の破壊であり、アメリカの多国籍企業に国民主権を売りわたし、彼らが日本の国内法を勝手に変える「自由」を持つという超法規的な横暴をまかり通らせるものである。そしてすでに破産している市場原理改革をさらに徹底し、日本から農漁業も製造業もなくなろうが、医療制度が破たんして国民の生命と健康が危機になろうが知ったことではなく、アメリカの多国籍企業とそれを支える金融機関に日本市場を全面的に売り飛ばす、売国的で屈辱的な条約である。それは国家というものがアメリカと独占大企業の道具であるという現実を見せつけている。
 そのことは、国民が目前の課題に個々バラバラに対処しているだけではうち破ることはできないことを示している。「汚染水は完全にコントロールされている」といってオリンピックを誘致する一方で被災地の復興は放置する、「財政が危機だ」といって消費税を上げる一方で「経済対策」といって大企業にカネをバラまく、憲法を改悪し先制攻撃もやぶさかではないといって日本を対中国戦争の盾にし、原水爆戦争の火の海に投げ込もうとする――こうした安倍政治に、怒りの世論は全国各地で渦巻いている。独立、民主、平和、繁栄の日本をつくるという全人民の共通利益に立って、労働者、農漁民、中小商工業者、教師、知識人・文化人のすべての力を大結集し、断固とした民族の意志を表明しなければならない。

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