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福島の痛みなき異常な再稼働
伊方・川内に続き玄海・美浜
                日本列島墓場にするな    2016年12月14日付
 
 東京電力の福島第1原発事故から5年9カ月が経過するなかで、国による原発再稼働のゴリ押しに拍車がかかっている。地震列島のうえに54基もの原発を林立させたあげく、世界最大レベルの原発事故を引き起こし、福島周辺では人人の生活基盤や個人資産を根こそぎ奪い、核のゴミ処理場として自治体を崩壊させておきながら、当事者は誰一人刑事罰を問われることもなく、膨大な国民負担のうえに「原発安全神話」だけが復活するという異常事態が真顔で進行している。日本列島は紛れもなく地震活動期に入っており、日本全土を福島の二の舞にすることへの危惧と怒りは強まっている。このなかで、主体性すら失い、アメリカの原子力戦略のために国土を差し出す為政者に対して、日本社会の現実に立脚して転換させる世論と運動を強めていくことが求められている。
 
 核燃料サイクルの完全な破綻

 安倍政府は11月末、官民合同の「高速炉開発会議」で、9月に廃炉を決定した高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)に替わる新たな高速炉の工程表を2018年をメドに作成する方針を示した。メンバーは、世耕弘成経産相、松野博一文科相、日本原子力研究開発機構の児玉敏雄理事長、電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)、三菱重工業の宮永俊一社長という「原子力ムラ」を代表する面面だ。所管を従来の文科省から経産省主導に替え、誰の目にも破たんが決定的になった核燃料サイクルの維持のために国としてめくら判を押すものに他ならない。
 原発をはるかに上回る危険をともなう高速増殖炉の開発は、「実験炉」から「原型炉」「実証炉」という段階を経て、はじめて「実用炉」にたどり着けるという規定がある。1兆円を浪費したあげくに破たんした「もんじゅ」は「原型炉」にあたるが、その失敗の総括もないまま、さらに進んだ「実証炉」の開発に踏み切るというもので、原発再稼働の条件をつくるため、安全性、採算性、その責任の所在すら不明確のまま暴走を始めている。
 日本政府が進めてきた核燃料サイクルは、アメリカから輸入したウラン燃料を軽水炉(原発)で発電し、そこから出る使用済み核燃料をフランスやイギリスで再処理してプルトニウムを抽出。そのプルトニウムをMOX燃料として原発に再利用するプルサーマル(福島第1原発、伊方原発、玄海原発など)に加え、発電しながら燃やす量より多くのプルトニウムを再生産できる高速増殖炉の開発をサイクルの中核に据え、「エネルギーの自給」「夢の原子炉」といって膨大な費用を投じてきた。
 だが、核燃料サイクルの中核である「もんじゅ」は、3㌧のナトリウムを漏らすなど致命的な事故が頻発し、この20年でたった1㌔㍗の電気も生産することもなく、稼働実数250日で破たんした。動かなくても維持費だけで年間に200億円もかかり、新たに500億円以上かけなければ再稼働の新基準の適合すらできない。その陰で、事故の隠蔽や点検漏れなどは数知れず、内部では担当者が自殺するなど黒い闇に覆われてきた部分が多い。
 高速増殖炉は、核分裂速度が軽水炉(原発)の250倍も速く、冷却剤として使用する金属ナトリウムは、空気や水、コンクリート等に触れると大爆発を引き起こす。金属ナトリウムを使用する際は密閉空間に窒素ガスを充満させるため、人は容易に立ち入ることはできず、漏れた場合金属をも溶かすため建物は痛みやすく、地震などによる軽微な破損でも核暴走を引き起こす可能性が原発より高い。まき散らされるプルトニウムは、そもそも原爆製造のために人為的に抽出された大量殺戮物質であり致死性の高さは長崎に投下された原爆で日本人は経験済みである。
 世界を見渡しても、高速増殖炉の発祥地であるアメリカでは、莫大な研究開発費を投じても、商業炉として採算が採れる見込みがなく、核拡散を促進することへの懸念から、1994年に高速増殖炉を含む核燃料サイクルの研究と開発の中止を決定し、国内すべての実験炉を閉鎖した。原発開発の先進国フランスでは、世界唯一の実証炉「スーパー・フェニックス」を建設したが、85年の運転開始後、ナトリウム漏れ火災、ナトリウムへの空気混入等の重大事故をくり返し、九七年には国が廃止を宣言した。その他、研究途上のロシアを除いて高速増殖炉に手を付けている国はどこにもない。
 日本の核燃料サイクルは、プルサーマル発電だけだが再処理後のウラン燃料の純度が低く、原発に再使用できるプルトニウム燃料はわずか2%であるため燃料リサイクルにはならない。当初からサイクル(円)にすらなっておらず、原発から放出される「核のゴミ」だけが山積みされてきた。国内で唯一、青森県六ヶ所村に建設した再処理施設も稼働できず、各原発のプールは使用済み燃料で飽和状態になっている。
 プルトニウムは核拡散防止条約によって国際的に保有が制限されているが、日本はすでに47㌧も抱え込んでいる。核兵器を保有する米英仏露に次ぐ量で、非核保有国では最大であり、軍事用を含めた世界のプルトニウム(約500㌧)の10%を占めている。日本は余剰プルトニウムの不保持を国際公約に掲げており、年間4・8㌧消費しなければならないが、そのメドは20年前からない。核燃料サイクル開発にはすでに12兆円もの税金を費やし、それに巣くう政官財学の「原子力ムラ」を養っただけで、何の実益をもたらすことなく完全に破たんしている。原発再稼働は、再処理方法も処理する場所も見つからない核のゴミが一方的に溜まり続ける道でしかないが、それを世界でもっとも地震が多い日本列島で推進するという気狂い沙汰である。

 米国原発政策の代理人 輸出計画は暗礁に

 安倍政府は、福島原発事故以降、停止していた原発の再稼働を進め、現在、川内原発1、2号機(鹿児島県)と伊方原発3号機(愛媛県)の3基を稼働させている。今後は、稼働年数40年をこえた高浜原発(福井県)、美浜原発(同)、玄海原発(佐賀県)などの老朽炉にも稼働延長のゴーサインを出し、福島の痛みなどどこ吹く風で「原発神話」を復活させている。その背景には利権集団の温存だけでなく、1950年代に中曽根が日本に原発を持ち込んだ際に確約した「日米原子力協定」がある。日本に原発開発やプルトニウムの保有を認めるかわりに、アメリカの余剰ウランを消費させ、アメリカが特許を握る原発ビジネスの代理人を引き受けさせるというもので、日本の「原子力ムラ」はそれを忠実に実行することで存在が保証される関係だ。
 アメリカではスリーマイル原発事故以降、自国での核燃料サイクルを捨てて、原発の民生ビジネスは停滞した。そのかわりに日本に原発を乱立させ、日立、東芝、三菱など日本の主要原発メーカーを米ゼネラル・エレクトリック(GE)の傘下に入れた。近年では、東芝には白物家電部門を捨てさせてまで、倒産した米原子力企業であるウェスティングハウス(WH)を「買収」という形で救済させたが、粉飾決算をするほど経営を圧迫したことが暴露された。三菱重工も経営破たんした仏アレバの経営再建のために出資を名乗り出たり、フランスの高速炉「ASTRID」(アストリッド)での共同研究も、主体となる仏企業は膨大な赤字を抱えて行き詰まっており、日本は国ぐるみで数千億円の費用負担を負うことになる。
 GE製の福島原発だけでなく日本メーカーの原発はすべて中核の知的財産権をアメリカが握っており、日本メーカーはそのマニュアルに沿ってしか動くことはできない。福島原発後も、「アーミテージ・レポート」で「日本は後進国に転落する気か!」と原発再稼働の尻を叩いたが、その背景には原発ビジネスを独占したいアメリカのエネルギー戦略が関係している。
 だが、福島原発事故以降、膨大に膨れあがるコストとリスクを勘案して世界各国が原発から手を引き、日本が輸出をもくろんだベトナムでは白紙撤回となり、トルコでも建設費高騰や賠償費用をめぐって計画が暗礁に乗り上げている。国土全体を他国の原発実験のために差し出すだけでなく、「核のゴミ」や事故が起きた際の賠償、製造者責任まで国が丸ごと引き受けて輸出に躍起になる政府など他にない。

 安全な場所はない日本 地震活動が活発化

 福島では、いまだに十数万人が避難生活を強いられ、故郷を奪われたまま5年9カ月がたち、立地町とその周辺自治体そのものが消滅の危機に立たされている。事故原発の廃炉工程すら遅遅として進まず、メルトダウンした原子炉は手が付けられない。当初の放射能にさらされて放置された双葉郡は、高濃度汚染地帯として世界の研究の的となり、住民を強制的に追い出したまま六兆円もかけて核のゴミ処分場の建設だけが進んでいる。廃炉や賠償にかかる国民負担は当初試算の2倍にあたる21兆円にまで膨れあがり、各電力会社の電気代に上乗せされて国民から徴収される。
 日本各地で連日のように地震が発生し、国でさえ30年以内に80%以上の確立で発生すると予測している東南海トラフ地震に加え、首都圏直下、北海道から沖縄まで「想定外」の断層地震が頻発している。国土そのものが火山と地震帯である日本列島に安全といえる場所などない。イデオロギー云云をこえて、国土の自然条件と常識的に向きあったとき、原発を動かす無謀さなどどんな無知な為政者でも判断できる。
 「安全保障」や「国土保全」を声高に叫ぶ政治家ならなおさらで、核ミサイルなど撃ち込まれなくても、一基の原発が電源喪失するだけで県境をこえた広範囲にわたって人が住めなくなることは、福島で実証されている。
 今年だけ見ても、原発を抱える鹿児島、新潟の知事選では、なんの組織も持たない「原発再稼働反対」を掲げる新人候補が当選するなど、強烈な世論が突き動かしている。鹿児島では「再稼働反対」を最大公約にして当選した三反園知事(元テレビ朝日記者)が公約を覆すなど平気で裏切るたちの悪さを披瀝しているが、生命の危険さえ脅かされる県民にとって「仕方がない」で済まされることではない。
 また、若狭湾に面した原発銀座の美浜、敦賀、高浜、大飯がひとたび重大事故を起こせば関西圏全域が壊滅し、中央構造線の真上にある伊方原発が噴けば九州、中四国にまたがる全域に被害は及び、瀬戸内海は死の海と化す。安倍政府は福島の被害をもっけの幸いにして、溜まり続けて行き場のない核のゴミを引き受ける核処分場をつくっているが、この暴走の後に待ち受けているのは日本全土の福島化に他ならない。
 原発は停止すれば安全といえるものではなく、冷却し続けなければメルトダウンする使用済み燃料を抱えていれば常に同じ危険がつきまとう。廃炉には膨大な年月を要するが、日本社会の現実に誠実に向きあうなら、日本中の原発は早急に廃炉にとりかからなければならない代物である。「福島が大変」「東北が大変」というだけにとどまらず、立地自治体だけの問題でもない。平和ボケで日本中に54基も林立させてきた代償は余りにも大きいことを実感させている。
 日本列島をアメリカの原子力政策に差し出し、誰が考えても国民と国土を脅かすだけの「原発神話」を盲目的に推し進める為政者の姿は、批准が破たんした後もひたすら譲歩をくり返して国益の売り飛ばしを進めているTPP承認とも同質の売国性を暴露している。2発の原爆を投げつけられ、ふたたび国土を放射能によって壊滅させられることほど日本民族にとっての屈辱はない。日本社会の現実に立脚し、日本の将来を保障するまともな判断として、この非科学的で狂信的な原子力政策を転換させる力を全国で強めることが求められている。

 

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